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光ファイバー通信入門 通信システム工学B 山田 博仁 Communication Systems Engineering B

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1 光ファイバー通信入門 通信システム工学B 山田 博仁 Communication Systems Engineering B
通信コース6セメ開講 光ファイバー通信入門 山田 博仁

2 光導波路の構造 コア クラッド n1>n2 n1 n2 光ファイバー 屈折率分布 n1>n2 n1 n2 屈折率分布 コア
スラブ導波路 屈折率分布 n2 n1 n1>n2 コア クラッド

3 光導波路が光を導くメカニズム n2 n1 j1 j2 入射波 屈折波 反射波 n1<n2の場合 n2 n1 n1>n2の場合
全反射 臨界角 qc Snellの法則 全反射 n1 n2 n1>n2 放射モード qc 2qmax 光が伝搬可能な入射角度の範囲 開口数: NA=sin(qmax)

4 全反射角 コアとクラッド界面での全反射角qcは、前スライドの臨界角より で与えられるが、 ここで、 と置いたが、Dは比屈折率差と呼ばれている
従って、n1とn2との差が小さい時、全反射角qcは以下の式で与えられる さらに、導波路が受け入れることのできる受光角(2qmax)は、 また特に、 を開口数 (Numerical Aperture)という

5 導波路内での光伝搬 -f: Goos-Haenchen Shift n2 -f -f a k0n1 n1 k0n1sinq コア q -a
クラッドへの光の浸み出し -f: Goos-Haenchen Shift n2 -f -f a k0n1 n1 k0n1sinq コア q -a k0n1cosq n2 n1>n2 -f 真空中での伝搬定数: k0=2p /l (l: 波長)、媒質中ではk0n1 光の伝搬方向の伝搬定数成分bは、b = k0n1cosq 光が伝搬方向に伝わる速度は、 であり、vgを群速度(Group Velocity)という (cは光速度) 光の伝搬と垂直方向の伝搬定数成分(k0n1sinq)に対して、以下の式が成り立つ時、光伝搬と垂直方向に定在波ができる N: モード番号 (0, 1, 2 ‥‥)

6 導波モードと定在波 E N =0 Df =0 E N =1 2p E N =2 4p モード番号Nは、横方向の強度分布における節の数を表す

7 入射角度 光伝搬と垂直方向での定在波条件の式より、モード番号Nに対する入射角度qNは、
ここで、 Goos-Haenchen Shiftの値fNは、入射角度qNの関数になるが、 qNが全反射角qcよりも十分に小さい場合には、      と近似できる。 従って、モード番号Nに対する入射角度qNは、 モード番号がある値よりも大きくなると、全反射条件が満たされなくなり、伝搬できなくなる。つまり、伝搬可能なモードは、以下の条件を満たす。 従って、導波路内を伝搬可能なモード番号の最大値Nmaxが存在し、以下の条件を満たす。

8 モードの数 従って、導波路内を伝搬可能なモード番号の最大値Nmaxは以下の式で与えられる。
ここでVは、Vパラメータ或いは規格化周波数と呼ばれている Nmaxよりも大きなモード番号のモードは伝搬できないので、カットオフにあると言う N=3 カットオフ領域 (放射モード) N=2 群速度 w/c (k0) 1/n2 曲線の傾きはvg/cで 、群速度に対応 N=1 1/n1 モードによって群速度の値は異なる N=0 b 単一モード条件: V < p/2 導波路の分散関係

9 光ファイバーの種類 モード数 屈折率分布 材 料 特 徴、用 途 コア: 屈折率n1 光ファイバー通信網に幅広く使用
材 料 特 徴、用 途 コア: 屈折率n1 光ファイバー通信網に幅広く使用 (海中、幹線、メトロ、加入者系) 様々な光部品(光スイッチ、光合分波器、光増幅器など)に加工されて使用 5~10 mm コア: 石英ガラス クラッド: 石英ガラス 単一モード n2 Step Index型 コア: 屈折率n1 短距離の光伝送、光インターコネクション(コンピュータ、ストレージ筐体間データ通信)、接続容易 コア: 石英ガラス クラッド: 石英ガラス 約50 mm コア: プラスチック クラッド: プラスチック 接続や取り扱いが容易なので、AV機器用データ通信に利用 n2 Step Index型 多モード コア約50 mm 一部の光ファイバー通信網で使用 (接続が容易なので主にLAN用) 比較的高価 屈折率分布 コア: 石英ガラス クラッド: 石英ガラス Graded Index型

10 光ファイバーにおける導波モード n2 2a n1 Step Index型多モード光ファイバー Vパラメータ 導波モードの数
ファイバー内の基本モード(HE11)パターン 出典: 末松安晴、伊賀健一共著、光ファイバ通信入門、オーム社

11 光ファイバーの分散 多モードファイバーにおける分散 モード分散 (Mode Dispersion) 伝搬モードによって群速度vgが異なる
vg1 > vg2 > vg3 モード1を伝搬してきた光パルス モード2 入射光パルスは複数のモードに分配されて伝搬していく モード3 伝搬モードによって群速度が異なるため、光パルスの出射時刻が異なる 光パルスの幅が広がるため、符号間干渉が起こり、ビット誤りが起こる

12 光ファイバーの分散 単一モードファイバーにも存在する分散 波長分散 Chromatic Dispersion
石英ガラスの材料分散  母材の石英ガラスの屈折率が波長に依存 導波路の構造分散  導波路の伝搬定数が波長に依存 l1: vg1 l2: vg2 l3: vg3 vg1 < vg2 < vg3 入射光パルスが多波長成分を有すると 波長によって群速度が異なるため、光パルスの出射時刻が異なる 偏波モード分散 Polarization Mode Dispersion ファイバーにねじれなどがあると、直交する2つの偏波モードの縮退が解け、 2つのモード間で群速度に違いが生じるようになる

13 光ファイバーの波長分散 光ファイバーの伝搬損失と分散特性 単一モード光ファイバー(SMF)の波長分散
出典: 末松安晴、伊賀健一共著、光ファイバ通信入門、オーム社

14 様々な分散特性を有する光ファイバー 分散シフト光ファイバー (Dispersion Shift Fiber: DSF)
ゼロ分散となる波長を、1.55 mm帯にシフトさせた光ファイバー DSFの構造  ・単純ステップ型  ・2重コア/セグメントコア型 分散補償光ファイバ (Dispersion Compensation Fiber: DCF) 単一モードファイバー(SMF)の分散を補償するためのもので、SMFとは逆の符号の大きな分散を有する 逆分散光ファイバー (Reverse Dispersion Fiber: RDF) 単一モードファイバー(SMF)と全く逆の分散特性を有する 分散フラット光ファイバ (Dispersion Flat Fiber: DFF) 広い波長域に渡り分散をフラットにしたファイバー ノン零分散シフト光ファイバ (Non-Zero Dispersion Shift Fiber: NZ-DSF) WDM用途のため、分散を完全には零にせず、使用波長域で若干の分散を持たせたもの

15 その他の光ファイバー 偏波保持(保存)光ファイバー
PANDA: (Polarization-maintaining AND Absorption reducing)型ファイバー HE11evenモードとHE11oddモードの伝搬定数差が大きく、少々の外乱では両モード間に結合が生じないため、ファイバーの固有偏波方向と一致する光を入射させるとその偏波が保存されたまま伝搬する コア断面が真円から歪んでいたり、特定方向に応力がかかると基本モードの縮退が解ける PANDA型ファイバーの断面 HE11xモード HE11yモード 高非線形光ファイバー 波長変換やラマン効果など、非線形光学効果を利用するための特殊な光ファイバー プラスチック光ファイバー (POF) 850nm波長帯での短距離光リンク用に開発された光ファイバーで、AV機器のデジタルデータ伝送用ケーブルとして身近になっている

16 フォトニック結晶光ファイバー 2. 低屈折率コア型 (コアが空気) 1. 高屈折率コア型 Photonic Bandgap Fiber
T. A. Birks et al., 12B3-1 OECC2000 1. 高屈折率コア型 Holey Fiber 特徴: ・ 分散量を自由に設計可能 ・ 高効率非線形光学効果利用可 2. 低屈折率コア型 (コアが空気) Photonic Bandgap Fiber 特徴: ・ コアが空気なので非線型効果小 ・ 超低損失材料の必要は無い

17 分散補償技術 光学的分散補償デバイス 原理: 伝送路としての光ファイバーとは逆の分散特性を有するデバイスを接続
分散補償光ファイバー (Dispersion Compensation Fiber) (長さに応じて)大きな分散でも広帯域に補償できる。補償する分散量は長さに応じて固定。波長分散の補償のみに有効(偏波分散は×) 分散補償素子 様々なタイプのものが有るが、比較的小さな分散を補償。補償する分散量を可変できるものも有る。ただし、応答速度は比較的遅い 電気的分散補償 (Electronic Dispersion Compensation) 比較的小さく、時々刻々変化する分散量を電気的信号処理により補償。高速応答

18 光伝送方式 強度変調-直接検波 (Intensity Modulation - Direct Detection: IM-DD)方式
現在の光通信で最も広く用いられている方式。光のコヒーレンス性はあまり利用して                                                 いない LDのI-L特性 光出力 光信号 PD 電流 検波出力信号(電気) 変調信号(電気) LDの強度変調 PDによる直接検波 コヒーレント方式 光のコヒーレンスをより積極的に利用する先進的方式。光の振幅、周波数、位相などに情報を載せるASK, FSK, PSKなどがある。IM-DD方式に対して受信感度が改善される。今後徐々に普及する見通し アナログ変調方式 CATVによる映像のアナログ伝送や、マイクロ波の光伝送、リモートアンテナなど、 ごく限られた用途で用いられている

19 伝送帯域 同軸ケーブルによる伝送 Loss2/B=一定 Loss: 伝搬損失(dB/m), B: 伝送帯域(Hz) 光ファイバーによる伝送
出展: Loss2/B=一定 Loss: 伝搬損失(dB/m), B: 伝送帯域(Hz) 光ファイバーによる伝送 多モードファイバー  主にモード間の群速度差によるモード分散によって制限 B: 帯域(Hz), L: 長さ(m) D=0.005とすると、B=40MHz・km 単一モードファイバー  波長分散と偏波モード分散によって制限

20 単一モードファイバーの伝送帯域 波長分散による帯域制限 i) 光源の波長スペクトル幅Dlsが広い(FP-LDやLEDを使用の)場合
B: 帯域(Hz)、L: 長さ(m)、Dls: 光源のスペクトル幅 (nm) 例えば、Dls=1nm、L=50kmの時、B=1GHz ii) 光源の波長スペクトル幅Dlsが狭い(DFB-LDを使用の)場合 B: 帯域(Hz)、L: 長さ(m) 従って、L=100kmに対して、B=6.8 GHz

21 伝送距離 平均受信電力と誤り率 出典: 末松安晴、伊賀健一共著、光ファイバ通信入門、オーム社 光ファイバー通信における伝送距離

22 光増幅器による2R (Reamplification、Reshaping)再生
伝送中継技術 光-電気変換 OE/EOによる3R (Reamplification、Reshaping、Retiming)再生 送信機 OE/EO 中継器 OE/EO 中継器 OE/EO 中継器 受信機 光中継器の構成 出典: 末松安晴、伊賀健一共著、光ファイバ通信入門、オーム社 光増幅器による2R (Reamplification、Reshaping)再生 光信号を一旦電気信号に変えることなく、光のまま増幅、等化を繰り返して中継 送信機 光増幅器 光増幅器 光増幅器 受信機

23 3R再生とは 振幅増幅 (Reamplification) 弱くなった信号強度を増幅して強くする 減衰 増幅
波形整形 (Reshaping) 分散などの影響で劣化した波形を整える タイミング再生 (Retiming) 符号のビットタイミングがズレたのを修正する 1 1 1 ファイバー 減衰 1 1 1 増幅 1 1 1 t t t 波形劣化 1 1 1 ファイバー 1 1 1 1 1 1 波形整形 t t タイミングのズレ タイミング 修正 1 1 1 ファイバー 1 1 1 1 1 1 t t t

24 信号の多重化伝送 複数の信号を1本の伝送路に乗せる手法 多重化方式 多重化を行う領域
時分割多重 Time Division Multiplexing (TDM) 電気信号の時間 周波数多重 Frequency Division Multiplexing (FDM) 電気信号の周波数 サブキャリヤ多重 Subcarrier Multiplexing (SCM) 電気信号の周波数 波長多重 Wavelength Division Multiplexing (WDM) 光の波長 偏波分割多重 Polarization Division Multiplexing (PDM) 光の偏波(偏光)面 空間多重 Space Division Multiplexing (SDM) 空間 符号分割多重 Code Division Multiplexing (CDM) 符号

25 電気信号の多重化 時分割多重化 t2 t3 t1 時間 t1 t2 t3 1秒 周波数多重化 f1 f2 f3 f4 周波数
利用可能な周波数帯域 f1 一人当たりの帯域 f2 f3 f4 周波数

26 制限速度15 mphの4車線一般道路 (波長多重、空間多重)
多重化の方法 制限速度15 mphの一般道路 (多重化無し) 制限速度60 mphの1車線高速道路 (時分割多重、周波数多重) 制限速度15 mphの4車線一般道路 (波長多重、空間多重)

27 電気によるTDMおよびFDM 2.4 Gbps 光源 光変調 光検出器 復調 光ファイバー 2.4 Gbps 2.4 Gbps
時間領域または 周波数領域で多重化 bps: bit per second Multiplexer Demultiplexer 1Gbps 1Gbps 100 Mbps 100 Mbps 64 kbps 64 kbps

28 複数本の光ファイバーによる空間多重 1Gbps 光源 光変調 光検出器 64 kbps 光源 光変調 光検出器 100 Mbps 光源
復調 光ファイバー 復調 復調 1Gbps 1Gbps 100 Mbps 100 Mbps 64 kbps 64 kbps

29 波長多重光通信 1本の光ファイバー λ1 1Gbps 光源 光変調 光検出器 λ2 64 kbps 光源 光変調 光検出器 100 Mbps
λ3 光源 光変調 光検出器 復調 Wavelength Multiplexer Wavelength Demultiplexer 復調 復調 1Gbps 1Gbps 100 Mbps 100 Mbps 64 kbps 64 kbps

30 光ファイバー通信における超多重化 電気通信における多重化 (時分割多重、周波数) 1本の同軸ケーブル 数~数十Gbpsの高速道路
光ファイバー通信における多重化 電気領域での多重化 (時分割多重、周波数多重)+光領域での波長多重化 1本の光ファイバー 各々が数~数十Gbpsの高速道路 波長による多重化 (数十~数百波長)

31 光通信の展望 光通信の今後は? 世の中の動向 ・ インターネットの進化 (Web 2.0 Googleの台頭)
・ 通信と放送の融合 (ビデオ・オン・デマンド) ・ デジタルコンテンツの大容量化 (スーパーハイビジョンTV、4Kデジタルシネマ) ブロードバンド → 光ファイバー通信  (10G Ether → 100G Ether) ユビキタス → ワイヤレス ビデオ配信用サーバー TV電話 ホーム 旧貸ビデオ屋さん 放送局 スーパーハイビジョンTV AWG ルーター PON 次世代光IPトランスポート網 大学 ONU 病院 家庭用ビデオサーバ

32 IPトラフィックの増加 国内の全インターネット トラフィックは平均で約500Gbps 2倍/1.5年
Internet traffic of IXs in Japan

33 ITネットワークの将来像 データは全て安全な サーバーに保管 Web2.0のサービス 映画製作会社 街中の至る所でBBでネットに接続
PCはHDDレス、CFメモリーのみに 100Mワイヤレスと10G Ether装備 PCは単なるデータ検索端末に NHKアーカイブス 受信料を払えば 過去のTV番組も 自由に視聴可能 本や音楽は、読みたい時聴きたい時にダウンロード オンデマンドTV どこでもTV電話

34 世代別IT企業の役割 Intel MPUチップ Motorola 1960年代 TI Apple Dell パソコン サーバー HP
1970年代 Microsoft OS・アプリ 1980年代 ジャストシステム Adobe Yahoo アマゾン・コム 楽天 NWアプリ (Web1.0) 1990年代 Google NWアプリ (Web2.0) 2000年代 皆さん? 2010年代 NWアプリ (Web3.0?) 情報を蓄積処理する装置の部品を提供 情報を蓄積処理する装置を提供 情報を蓄積処理するシステムを提供 情報をNW上に蓄積して提供 NW上の全ての情報を体系化して提供 NW上に体系化された情報を加工して提供 William Henry GATES III 1955年~ Sergey Mikhailovich Brin 1973年~ Gordon E. Moore 1929年~

35 レポート課題 以下のいずれかについて、A4用紙3枚以内にまとめよ 1. 光ファイバー通信の特徴について述べよ
  (電気通信との比較、伝送路としての光ファイバーの特長など) 2. 光通信にレーザーを用いる理由について述べよ   (レーザー光の特徴、コヒーレント光を用いる理由など) 3. 光通信の要素デバイスのうちいずれか一つについて述べよ   (光ファイバー、半導体レーザ、受光素子、光増幅器などの構造、役割、   どのような種類のものが有るのか、その動作原理は) 4. 光ファイバーの伝送帯域について述べよ   (伝送帯域は何によって決まり、どのくらいの帯域があるのか) 5. 光ファイバー通信における信号多重化方式について述べよ   (各種多重化方式の違い、伝送可能帯域など) 提出〆切: 1月末 提出場所: 教務係

36 講義資料のダウンロード


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