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法とコンピュータ 法的知識の構造(3) 慶應義塾大学法学部 2008/11/25 吉野一
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目次 はじめに 事例問題5_0の回答および議論の講評 事例問題5_0を解く法的知識の構造
まとめ(以上前回081021まで)、前回の補足(ここから) 事例問題5の回答についての検討 事例問題5を解く法的知識の構造 むすび
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補足:事例5_0の解決における自然言語文と論理式の対応
結論: 成立(契約(anzai,bernard,売買), t070409) . 理由: 事実の記述 到達(申込(anzai,bernard,契約),t070408). (資料1,2) 到達(承諾(bernard,anzai,申込),t070409). (資料2) 法ルールの記述 (法原則)(必要な場合?) 成立(契約(A,B,売買),T):-効力発生(承諾(B,A,申込),T). (23) 効力発生(承諾(Y,X,申込),T):-到達(承諾(Y,X,申込),T) (18(2)) 事実の法ルールへの当てはめの記述 (2.3) & (1.2) ⇒ 効力発生(承諾(bernard,anzai,申込), t070409) (2.2) & (3.2) ⇒ 成立(契約(anzai,bernard,売買), t070409) 結論が論証されたことの記述 ⇒ 成立(契約(anzai,bernard,売買), t070409) 結論: AnzaiとBernard間に売買契約が4月9日に成立した。 理由: 事実の記述 Anzaiの申込の手紙がBernardに4月8日に到達した。 (資料1,2) 電話によるBernardのAnzaiに対する承諾がAnzaiに4月9日に到達した。 (資料2) 法ルールの記述 (法原則)(必要な場合?) 契約は、申込に対する承諾が効力を生じた時に成立する。 (23) 申込に対する承諾は、同意の意思表示が申込者に到達した時にその効力を生ずる。(18(2)) 事実の法ルールへの当てはめの記述 BernardはAnzaiの承諾が4月9日到達した。故に承諾が4月9日効力を生じた。 (18(2)) 承諾が4月9日効力を生じた。故に、契約が4月9日に成立した。(23) 結論が論証されたことの記述 故に、AnzaiとBernard間に売買契約が4月9日に成立した。
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5.事例問題5の回答についての検討 5.1.はじめに
事例問題5の解とそれについてのコメントについて、コメントを与える。 事例問題解決の推論の論理構造を検討する。 事例5の解法を例に解法の論理構築を試みる。 法の事実への当てはめにおける体系化の解釈命題の創設の必要性を学ぶ。 体系化の論理構築のための手がかりを得る。 体系化の課題
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5.2. 検討の進め方 掲示板に掲載された事例問題5の諸解答とそれに対する諸コメントに基づいて検討する。
5.2. 検討の進め方 掲示板に掲載された事例問題5の諸解答とそれに対する諸コメントに基づいて検討する。 ソクラティックメソッドとディスカッションメソッドを融合的に用いて学生諸君の解答の「検討」を進める。すなわち、 教師からの質問と学生の回答と 学生同士の議論を 適宜組み合わせる。
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5.3.事例問題5および5_1の知識ベースの講評 「事例問題5_1の学生知識ベースと教師のコメント」のワードファイルを参照。
回答についての印象:全体として知識の体系的理解と表現が大分よくなってきた。 一部プログラム上の誤りがある。 諸ルール間の体系的関連を正確に把握する必要がある。 体系的に無駄のない形で、すっきりと表現したい。 以下、 「事例問題5_1の学生知識ベースと教師のコメント」に基づく個別のコメント
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6.事例問題5を解く法的知識の構造 6.1 問題の所在
6.事例問題5を解く法的知識の構造 6.1 問題の所在 事例問題5が事例問題5_0と違う点? 資料3の評価? 撤回か取消か? 到達か非到達か? 15(2)と16(1)の違い? 事例問題5_0を解くために用いたルール群(スライド3参照、23他)だけを適用すると「契約成立」の結論が証明される。 15自体をどう形式化するか? 15を「契約成立」のルール(23)とどうつなげるか? 体系化(の解釈)の問題
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法適用の推論の論理構造(詳細化された法的三段論法)
創造(体系化) 法原則 法規 法の目的 確認 法常識 法的正当化の推論 創造(具体化) 法創造の推論 解釈 視線の 往復 認定された事実 創造 記述された事実 理論的解明の成果として、まず「法適用における法創造推論の論理構造」が明らかとなった。 法適用の推論は、法的正当化の推論と法創造の推論から成り立つ。 法の適用では、ある出来事に対する法的決定自体を創設する。 法規の意味を具体化する解釈命題の創設と諸法規を体系化する法原則の創設がなされる。これらの法文の創設により法的決定が正当化される。この図式は、法的推論の構造の基本を示しており、法的推論の多くの局面に当てはまる。 (55秒) 出来事 具体的妥当性 創造 法的決定
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6.1 法的論証(正当化の推論)の記述(2) 詳細化された法的三段論法による
6.1 法的論証(正当化の推論)の記述(2) 詳細化された法的三段論法による 結論の記述 理由の記述 事実の記述 法ルールの記述 法原則(必要な場合) 制定法規定(条文名を必ず挙げる) 事実の法ルールへの当てはめの記述 解釈命題(法規・判例・学説) 当該事件向けの補助解釈(必要な場合) 解釈命題(または補助解釈命題)の事実の記述への当てはめ 推論 認定された事実 結論が論証されたことの記述 前回の事例5の解法の論理構築に際しては法規定の具体化の解釈を追加する論理構築を学んだが、今回の事例5の解法の論理構築に際しては体系化の解釈の論理構築を学ぶ。
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事例5_0用ルールの適用 事例5用のルールの創設
事例5_0用ルールの適用 事例5用のルールの創設 結論:契約成立(t070409). 理由: 事実の記述 申込到達(t070408) (資料1) 承諾到達(t070410) (資料2) 撤回到達(t070407) (資料3) 法ルールの記述 契約成立(T):-承諾効力発生(T). (23) 承諾効力発生(T ):-承諾到達(T) (18(2)) 事実の法ルールへの当てはめの記述 (2.2) & (1.2) ⇒ 承諾効力発生(t070410) (2.1) & (3.2) ⇒ 契約成立(t070410) 結論が論証されたことの記述 ⇒ 契約成立(t070410) 推論実験して確認! 結論:「契約成立」は証明できない 理由: 事実の記述 申込到達(t070408) (資料1) 承諾到達(t070410) (資料2) 撤回到達(t070407) (資料3) 法ルールの記述 事実の法ルールへの当てはめの記述 結論が論証されたことの記述 「契約成立」は証明できない
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考えるヒント 申込撤回と申込取消の違い? 資料3は撤回か取消か? 仮に撤回としたら次の問題をどう考えるか? 撤回が到達したらその効果は?
撤回が効力を生じたらその効果は? 申込が効力を生じなかったらその効果は? 契約成立のルールはいかにあるべきか? 承諾効力発生のルールはいかにあるべきか?
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設例5_0の回答例1(○○) 法的正当化の推論 出来事 直接適用 Case5_0 契約成立←承諾効力発生23
申込効力発生←申込到達15(1) 契約成立←承諾効力発生 23 承諾効力発生←承諾到達18(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←口頭で伝えられた(24) 創造 口頭で伝えられた←電話で言う Case5_0 申込の通知が4/8にBに到達 創造 例えば、国際動産売買契約法(CISG)の条文を与え、事例1を与えると、学生はというCISG 23条の条文をそのまま適用する。 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 創造 4/9に契約成立
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設例5_0の回答例2( ○○ ) 法的正当化の推論 出来事 Case5_0 契約成立←申込効力発生& 承諾効力発生 発見(創設)
申込効力発生←申込到達15(1) 契約成立←承諾効力発生 23 承諾効力発生←承諾到達18(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←口頭で伝えられた(24) 創造 口頭で伝えられた←電話で言う Case5_0 申込の通知が4/8にBに到達 創造 例えば、国際動産売買契約法(CISG)の条文を与え、事例1を与えると、学生はというCISG 23条の条文をそのまま適用する。 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 創造 4/9に契約成立
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設例5の回答例3(設例5_0の回答例1の法的知識のみの場合)
契約成立←承諾効力発生 直接適用 申込効力発生←申込到達15(1) 契約成立←承諾効力発生 23 承諾効力発生←承諾到達18(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←口頭で伝えられた(24) 創造 口頭で伝えられた←電話で言う Case5 申込撤回の通知が4/7にBに到達 創造 申込の通知が4/8にBに到達 例えば、国際動産売買契約法(CISG)の条文を与え、事例1を与えると、学生はというCISG 23条の条文をそのまま適用する。 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 創造 4/10に契約成立
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設例5の回答例4(法的知識の体系化と改定) 法的正当化の推論 出来事 Case5 契約成立←申込効力発生& 創設(体系化) 承諾効力発生
申込効力発生←申込到達& not (□□□□) 15(1) 契約成立←承諾効力発生 23 承諾効力発生←承諾到達18(2) 申込撤回可能 ←申込到達前 15(2) □□□□ ← ○○○○ 創造 さらにいかなるルール を創設すればよいか 法的正当化の推論 創造 申込撤回可能 ←申込到達前 15(2) Case5 申込撤回の通知が4/7にBに到達 創造 申込の通知が4/8にBに到達 例えば、国際動産売買契約法(CISG)の条文を与え、事例1を与えると、学生はというCISG 23条の条文をそのまま適用する。 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 創造 契約不成立
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設例5の回答例4a(学生による法的知識の体系化と改定A)
契約成立←申込効力発生& 承諾効力発生 創設(体系化) 申込効力発生←申込到達& not(申込撤回効力発生) 15(1) 契約成立←承諾効力発生 23 承諾効力発生←承諾到達18(2) 申込撤回可能 ←申込到達以前 15(2) 申込撤回効力発生←申込撤回到達& 申込撤回可能 創造 左のルール を創設 法的正当化の推論 創造 申込撤回可能 ←申込到達以前 15(2) Case5 申込撤回の通知が4/7にBに到達 創造 申込の通知が4/8にBに到達 例えば、国際動産売買契約法(CISG)の条文を与え、事例1を与えると、学生はというCISG 23条の条文をそのまま適用する。 4/10にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 創造 契約不成立
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設例5の回答例4b(学生による法的知識の体系化と改定B)
契約成立←承諾効力発生 23 創設(体系化) 承諾効力発生←承諾到達& 申込効力発生 18(2) 契約成立←承諾効力発生 23 申込効力発生←申込到達& not(申込撤回効力発生) 15(1) 申込撤回可能 ←申込到達前 15(2) 申込撤回効力発生← 申込撤回到達&申込撤回可能 創造 左のルール を創設 法的正当化の推論 創造 申込撤回可能 ←申込到達前 15(2) Case5 申込撤回の通知が4/7にBに到達 創造 申込の通知が4/8にBに到達 例えば、国際動産売買契約法(CISG)の条文を与え、事例1を与えると、学生はというCISG 23条の条文をそのまま適用する。 4/10にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 創造 契約不成立
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7.まとめ 今日の学習(事例問題5 について) 事例問題5を検討し、事例の5_0を解決するに必要な知識以上の知識が必要なことを確認した。
申込撤回が効力を生じると何故契約が成立しなくなるか? 申込撤回の直接効果:¬申込効力発生 撤回の効力は申込の効力発生の障害要件であるとことが明らかにされた。 契約成立を判断するルールに「申込の効力」が重要な要件であることが明らかにされた。 申込の効力は承諾の効力発生の要件としても形式化できることが示された。 今日の学習(事例問題5_1 について) 事例問題5_1を解決するに必要な知識は何か? 申込取消の効果は何か? 申込取消が効力を生じると何故契約が成立しなくなるか? 「撤回」が申込到達後、承諾発信前に到達したら取消として効力発生する。そのためのルールは?
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