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商法Ⅰ講義レジュメNo.05 商号・名板貸人の責任
名板貸人の責任に関する判例を扱う前提として、名板貸人の責任に関する規定の基礎知識を習得する。 テキスト参照ページ:新商法講義 54~72p プライマリー 46~62p
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1 商号とは何か? Ⅰ.商号の意義 →商人が営業上自己を表す名称(判例) ※法規制の必要性
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 1 商号とは何か? Ⅰ.商号の意義 →商人が営業上自己を表す名称(判例) ※法規制の必要性 ①商人の信用の基礎として経済的価値を有しているため、その保護が必要 ②商号制度の濫用を制限し、社会・公衆の利益を保護する必要 ・会社の場合は、会社の名称を商号としなければならないので、会社が行う事業ごとの名称ではなく、会社の全人格を表す名称
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①商号は名称である 氏名と同じように文字で表示できて、発音できるものでなければならない
図形、紋様、記号は、商標とはなりえても商号にはなりえない 商号は登記できるものでなければならない →従来、外国文字による登記はできなかったため、商号は日本文字で表示されねばならないと解されていた (例:NTT西日本株式会社→エヌティーティー西日本株式会社)
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外国文字による商号の登記 平成14年11月1日施行の改正商業登記規則51条の2により、ローマ字その他の符号を商号の登記について使用できることとなった。 追加された商号に使える文字その他の符号 1 ローマ字(A,a,B,b,・・・) 2 アラビヤ数字(1,2,3,・・・) 3 アンパサンド(&) アポストロフィー(‘) コンマ(,) ハイフン(-) ピリオド(.)及び中点(・)
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商法Ⅰ講義レジュメNo.05 ②商人の営業上の名称である 商人でない者が営業・事業上用いる名称は商号ではない 例: ・会社以外の法人の名称(公益法人、相互保険会社、協同組合など) 小商人(7条)が営業上用いる名称も商号である(ただし、登記に関する規定は適用されない) 小商人の範囲(改正商法施行規則3条):営業の用に供する財産として最終の営業年度に関する貸借対照表に計上した額が50万円未満の商人(商法4条1項、2項に該当する商人で法人その他の団体を除く)をいう。(商法施行規則2条1号参照)
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Ⅱ.商号自由の原則(11条) 個人商人は原則として自己の商号を自由に選定できる(商号選定の自由)
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 Ⅱ.商号自由の原則(11条) 個人商人は原則として自己の商号を自由に選定できる(商号選定の自由) 自己の氏、氏名その他の名称:つまり、特別な制限はない 営業の内容と関係のない商号の使用も可能である(屋号の伝統) 商号を用いないこともできる
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会社の商号(会社6条) 会社(外国会社を含む)はその法人としての名称を商号とする(商号を使わない自由はない)
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 会社の商号(会社6条) 会社(外国会社を含む)はその法人としての名称を商号とする(商号を使わない自由はない) 会社は(外国会社は除く)、その種類にしたがい株式会社、合名会社、合資会社、合同会社(整備法による有限会社)という文字を用いなければならない 会社は、商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない(罰則978①) 有限会社は、株式会社として存続するが、商号中に「有限会社」という文字を用いなければならない(特例有限会社)
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会社の商号に関する制限 商法Ⅰ講義レジュメNo.05 【趣旨】 会社の種類によって組織や社員の責任が違うため、取引相手(会社債権者)保護のためにこれを明らかに示す必要がある。 会社でない者は、商号中に会社であることを示すような文字を使ってはならない(会社7:罰則978②) →会社でない者が会社から事業の譲渡を受けた場合でも同様(会社から譲り受けるのは事業、個人商人の場合は営業の譲渡) 例:「・・・商会」は許されるが、「・・・合名商会」は禁止される(通説・判例)
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商号選定に関する制限 商法Ⅰ講義レジュメNo.05 商号単一の原則「1個の営業については、商号は1個でなければならない」 (通説・判例)→1個の商号で複数の営業を営むことは許される ※会社の場合は複数の事業を営む場合であっても、商号は必ず1個(~支店という文字を付加することは差し支えない) →制限の目的:社会・公衆の利益保護、取引の安全、他人の営業上の利益保護 個人商人:一営業一商号 会社:会社の名称=商号
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Ⅲ 商号に対する法的保護 個人商人は、商号を登記することができる 会社は必ず商号を登記しなければならない
Ⅲ 商号に対する法的保護 商法Ⅰ講義レジュメNo.05 個人商人は、商号を登記することができる 会社は必ず商号を登記しなければならない 登記商号に対する保護規定(旧商19・20条)は、廃止された 19:他人が登記した商号と同じ商号を同一市町村内で同一の営業のために登記することはできない 20:不正の競争の目的をもって同一または類似の商号を使用する者に対して使用を止めるよう請求することができる(損害賠償も可) ・商業登記法27条の改正により、会社は同一商号・同一住所の登記はできない。(不動産登記等において、法人は住所と商号によって特定されることとされているため)従来の実務もこのような登記を認めていなかった。
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Ⅳ改正後の商号に対する保護 19、20条の規定は廃止され、12条による規制のみとなる(会社については会社法8条)
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 19、20条の規定は廃止され、12条による規制のみとなる(会社については会社法8条) 何人も不正の目的をもって他の商人(他の会社)であると誤認されるおそれのある名称・商号を使用してはならない(保護の客体は商人・会社に限定) 前項の規定に違反する名称・商号の使用によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある商人(会社)は、その営業上の利益を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止または予防を請求することができる 罰則:商13条、会社978③ ・商号を登記することによる事前の予防制度がなくなる ・商法、会社法上は損害賠償請求権の規定はなくなった ・不正競争目的による商号使用に対しては、不正競争防止法による保護が受けられる
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商法Ⅰ講義レジュメNo.05 不正の目的(12、会社8) 多数説:他の商人または会社の商号等の名称を勝手に自分の営業に使用して、自分の営業をその名称によって表示される他人の営業であるかのように一般世人に営業主体を誤認させる意図 最高裁S 判決・少数説:他人の本店移転登記を妨害し、不当の利益を収めようとする意図など違法性ある目的ないし他人の利益を害し、もしくは公序良俗に違反する目的など営業主体を誤認させる意図よりも広く解する 判例百選(総則・商行為)16事件参照 ・既登記商号と同一の商号の登記を禁ずる規制が廃止されたこと、12条(8条)の保護対象が商人・会社に限られると解されることから、多数説の解釈が妥当。
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Ⅴ.不正競争防止法による商号の保護(登記の有無を問わない)
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 Ⅴ.不正競争防止法による商号の保護(登記の有無を問わない) 広く認知されている商品等表示(商号を含む)を保護:著名商号と周知商号 「不正競争の目的」(主観的要件)は不要 周知商号:同一または類似の商号を使い、他人の営業と混同させる行為が不正競争とされる(不正競争2Ⅰ①) 著名商号:同一または類似の商号を使う行為が不正競争とされる(同②) 不正競争行為に対しては、差止(3)、損害賠償(4)が認められ、罰則(21)もある ・インターネットで用いるドメイン名についても不正競争防止法で保護される ・「周知」とは、「需要者の間に広く認識されている」ことをいい、一地域で又は特定の取引者・需要者の間で知られていれば、「周知」に該当します。なお、全国販売されるような商品の名称である場合には、1県だけでなく数県にわたって広く認識されている必要があります(東京高判昭 )。例えば、上記裁判例では、コーヒー等の全国的に流通するものの名称は広島県だけでなく、隣接する山口県や岡山県等においても広く認識されている必要があるとされています。逆に菓子等の特産品の名称の場合には、1県内で広く認識されていれば「周知」に該当するといえます。 一方、「著名」とは、「周知」の程度が高く、日本全国に知れわたってるような場合をいいます。
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Ⅵ.商号権:商人がその商号について有する権利
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 商号使用権:他人の妨害を受けずに商号を使用する権利→商号の登記の有無を問わずに認められる 商号専用権:他人が同一または類似の商号を不正に使用することを排斥する権利→商号の登記の有無を問わずに認められる(通説的見解) ⇒旧商法では、登記することにより、周知・著名商号でなくても保護されたが、20条の廃止により、登記により保護が強化されることはなくなった。 ・個人商人は商号を登記することはできる(11Ⅱ)が、登記をすることによって得られる法的効果は特にない。
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Ⅶ 商号の譲渡(15条) 商法Ⅰ講義レジュメNo.05 個人商人の商号は、営業とともに譲渡する(営業譲渡)場合、または営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる(15Ⅰ)。 商号は営業の同一性を判断する基準となるので、営業と切り離して商号のみを譲渡することはできない。 営業を廃止する場合、商号の経済的価値を無にしないため譲渡することができる 商号の譲渡は登記をしなければ第三者に対抗できない(15Ⅱ:不動産登記の対抗力と同じ) ・会社法には類似の規定はない。
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Ⅷ 自己の商号使用許諾者の責任(14条、会社9条)
Ⅷ 自己の商号使用許諾者の責任(14条、会社9条) いわゆる名板貸人(名義貸人)の責任:以下「名板貸し」の用語を用いる 商法と会社法の文言の違いは、「商人か会社か」、「営業か事業か」 名板借人が個人商人の場合は営業を行うこと、会社の場合は事業を行うこと、と区別される 名板貸人は商人または会社
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商法Ⅰ講義レジュメNo.05 1:名板貸の意義 自己の商号を使用して営業または事業をすることを他人に許諾すること →信用のある者が信用の乏しい者に、営業免許を取得した者が無免許者に、名義を貸すためなどに用いられる。 使用許諾を与えた者= 名板貸人 使用許諾を得た者= 名板借人 名板貸は、もともと、取引所の取引員がその名義を取引員でない者に賃貸したことから生じた商慣習であるが、それが一般化して、名義を貸して営業をさせる場合を広く名板貸と呼ぶようになった。 ・改正後(14条)「自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任」:自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
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2 名板貸人の責任 ①名板貸人は、自己を営業主または事業主と「誤認」して名板借人と取引した者に対し、
2 名板貸人の責任 ①名板貸人は、自己を営業主または事業主と「誤認」して名板借人と取引した者に対し、 ②その「取引によって生じた債務」について、 ③名板借人(本来の債務者)と 「連帯して弁済の責任を負う」
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名板貸し関係図 社会的に信用のある商人Y ②Y商会という名義で営業をするA 売買などの取引 ③Yが取引相手だと勘違いしたAの取引相手X
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 名板貸し関係図 ③Yが取引相手だと勘違いしたAの取引相手X 社会的に信用のある商人Y 売買などの取引 ②Y商会という名義で営業をするA ①Y商会という商号で営業をなすことをAに許諾 AはY商会という(名義)商号で営業を行っているが、Yは名義を貸しているだけで営業主ではなく、営業主はA自身である。法律上、AとXの間の取引にYは関係ない。
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商法Ⅰ講義レジュメNo.05 自分の取引相手はYだと思っていたから信用して取引したのにYは関係ないというし、Aは破産して支払能力がない。なんとかYに請求できないだろうか? Y 名板貸人としての責任を追及(14条) 不真正連帯債務 A XのYに対する請求と、XのAに対する請求とは両立する。Xはどちらか一方を主張しても良いし、両方を同時にあるいは順次請求することもできる。(不真正連帯債務) X 本来の契約当事者としての責任を追及
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商法Ⅰ講義レジュメNo.05 【責任の根拠】 商号等を他人が使うことを許諾した者は、自己を営業主と誤認した第三者に対して「禁反言の法理」(英米法の理論)により連帯して責任を負うものとしたとする見解。 商号等の使用許諾により名板貸人が営業主であるかのような外観が生まれた。外観を作出した名板貸人はその外観を信頼した者を保護するため外観通りの責任を負う、という「外観法理」(ドイツ法)に基づく点を強調する見解。 商号は商人の営業上自己を表す名称であるが、社会的には当該営業の同一性を表示して、その信用の標的となる機能を有する。
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〔基本用語解説〕 「禁反言の法理」:ある表示をした者は、その表示を信じてその地位を変更した者に対して、その表示と矛盾する主張をすることが許されないという法理。 「外観法理」:事物の外観と真相とが一致していない場合に、その外観を信頼して、ある行為をし、またはある行為をしなかった者に対して、外観によって事物を決することができるようにする理論。
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3名板貸人の責任の要件 ①営業または事業をなすことに対する名義使用の許諾 ②営業または事業の同種性 ③相手方の誤認:善意の第三者
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①名義使用の許諾:1 独立に営業している者(商人・会社)に対し、使用を許諾したこと(文言解釈)
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 ①名義使用の許諾:1 独立に営業している者(商人・会社)に対し、使用を許諾したこと(文言解釈) 単に手形行為をすることについての名義使用の許諾には本条は適用されない(判例:名板貸人の責任は名板借人の責任が前提になっているため) ←下級審判例、学説は類推適用するものもある 但し、営業について名義使用の許諾が行われ、手形行為についてだけ名義が使用された場合は、本条が類推適用される(判例) 学説は、商人以外の者が他人名義を借りて経済的取引をなす場合にも類推適用するべきであるとする見解が多い。
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①名義使用の許諾:2 許諾者(名板貸人)は商人・会社に限る(文言解釈) 名義は付加語(支店、出張所)などを加えたものを含む
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 ①名義使用の許諾:2 許諾者(名板貸人)は商人・会社に限る(文言解釈) 名義は付加語(支店、出張所)などを加えたものを含む 許諾は黙示でもよい ex.名義使用の事実を知りながら、社会通念上の放置してはならない義務に違反して、放置する(不作為)場合も許諾に当たる(通説) ・改正後の条文からは、名板貸人は商人または会社に限られる。従来は、有名人など →芸名、通称などでもよいとされていたし、自己の氏、氏名と商号以外の名義貸しも対象とされていた。 ・判例にも協同組合の名称について名板貸人の責任を認めたものがある。 ・商法1条1項は、商法を商人の営業、商行為その他商事に関して規定する法律であることを明確化した。
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黙示の許諾 社会通念上放置してはならない義務が生じる場合とはどんな場合か?
例:従来名板貸人が同じ営業を営んでいた、名板貸人が自己の土地建物を使用させていた等の付加的事情が存在している場合
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②営業の同種性 許諾を受けた者と名板貸人の営業は、 特段の事情のない限り、同種であることを要する(判例)
特段の事情→商号の名称自体からは特定の業種を推認し得ず、名板借人が名板貸人から従前の店舗、印鑑、看板等を引き継ぎ、それをそのまま使用している等の事情がある場合
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【同種性必要説の根拠】 商号は、法律上は特定の営業につき特定の商人を表す名称であり、社会的には当該営業の同一性を表示して、その信用の標的となる機能を有するものであって、14条はこのような事実に基づいて第三者を保護した規定であるから →営業の種類が異なる場合は、特段の事情がない限り、保護すべき信頼は生じない。
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商法Ⅰ講義レジュメNo.05 ※不要説 近時、営業の範囲は流動的であって、個人商人は数種の営業を営むことが、また会社の定款記載の目的も多目的であることが常態である。非商人の氏名の使用許諾にも名板貸が成立する。従って、営業の同種性は責任要件とする必要はなく、相手方の重過失の有無の判断において考慮すればよい 下線部は、改正法では不要説の理由にはできないと思われる ・
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③相手方の誤認:善意の第三者 善意重過失保護説:悪意以外は保護
善意軽過失保護説 (善意無重過失保護説) :判例、多数説→重過失は悪意と同様に取り扱うべき 善意無過失保護説
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(4)名板貸人の責任内容 名板貸人は名板借人と相手方の間の取引によって生じた債務について、名板借人(主たる債務者)と連帯して責任を負う
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①取引によって生じた債務 名板借人と相手方との取引上の債務の他、名板借人の債務不履行による損害賠償債務、売買契約の解除による手付金返還債務など取引上生じた債務の変形を含む(判例・通説) 事実行為としての不法行為に基づく損害賠償債務は含まないが、取引の外形をもつ不法行為により負担した損害賠償債務は含む(判例・通説) 例:詐欺的な取引(不法行為)にもとづく損害賠償債務
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②連帯して弁済する責任 名板借人の債務を肩代わりしたり、保証したりするのではなく、名板借人と取引した相手方に対して、直接に弁済の責任を負う
商法Ⅰ講義レジュメNo.05 名板借人の債務を肩代わりしたり、保証したりするのではなく、名板借人と取引した相手方に対して、直接に弁済の責任を負う 名板借人との関係は「不真正連帯債務」となる ⇒名板貸人と名板借人ともに責任を負い、両者に主従の関係はない 1 意義 同一内容の給付を目的とする債務が偶然に競合した場合をいう。多数の債務者が同一内容の給付について全部の履行をしなければならない義務を負い,一債務者の弁済によって他の者も債務を免れる点で連帯債務と近似するが,債務者間に主観的共同関係がなく,したがって弁済を除いて債務者の1人に生じた事由が他の債務者に効力を及ぼさない〔民434~440参照〕点でそれと区別される。例えば,他人の家屋を焼いた者の不法行為に基づく賠償義務と保険会社が保険契約に基づいて負うてん補義務,受寄物を不注意で盗まれた受寄者の債務不履行に基づく賠償義務と窃取者の不法行為に基づく賠償義務などのように,同一の損害を数人がそれぞれの立場においててん補しなければならない義務を負担する場合などに生ずるとされる。共同不法行為者の賠償義務は連帯と規定されている〔民719〕が,不真正連帯であるとする学説が有力である。 2 不真正連帯債務概念の有用性 上記の例はすべて各自がそれぞれ全部の義務を負い,1人が弁済すれば他の者も責任を免れる点で共通性を有するにすぎず,それ以上のことを示していない。そこでこれらを不真正連帯債務と呼んで1つの特殊の債務関係と考えることは不正確であり,これらの債務関係は全部義務であって,上記の法律関係以外の法律関係はそれぞれの領域で決めればよいとする学説が有力になっている。
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商法Ⅰ講義レジュメNo.05 最近の判例1 会社の商号を使用して営業を行うことを許諾した後ある程度外観排除の措置をとったが同じビルで営業を継続しているのを黙認していたとして名板貸責任が認められた事例(東京地判H7・4・28) 不動産売買、賃貸借の仲介等を営むY会社は、不動産仲介業を営むAに対し、Y名義(Y会社取締役・支店長)を使用して不動産仲介取引をすることを許諾しYが管理していたビルの4階フロアで営業させていたが、Aの契約違反を理由に許諾を撤回し、取締役の退任手続をなした。しかし、4階の営業所の荷物を3階の空きフロアに置くことを認めていた。 《全 文》 【文献番号】28010323 預託金返還請求事件 東京地裁平六(ワ)七五一九号 平7・4・28民二三部判決 原告 平和情報サービス株式会社 右代表者代表取締役 野口和男 右訴訟代理人弁護士 土岐敦司 右訴訟復代理人弁護士 和智洋子 被告株式会社インターブレイン 右代表者代表取締役 老山幸文 右訴訟代理人弁護士 竹田章治 主 文 一 被告は、原告に対し、九五〇万円及びこれに対する平成五年一二月二五日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。 二 訴訟費用は、被告の負担とする。 三 この判決は、仮に執行することができる。 事 実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 1 主位的請求 (一)主文第一、第二項と同旨の判決 (二)仮執行宣言 2 予備的請求 (一)被告は、原告に対し、九五〇万円及びこれに対する平成五年一二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 (二)訴訟費用は、被告の負担とする。 (三)仮執行宣言 二 請求の趣旨に対する答弁 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 第二 当事者の主張 一 請求原因 1 原告は飲食店の経営等を業とする株式会社であり、被告は不動産の売買及び賃貸借の仲介等を業とする株式会社である。 2 預託金返還合意 (一)大野則夫(以下「大野」という。)は、被告会社原宿支店の支店長である。 (二)原告は、平成五年九月末ころ、被告に対し、被告会社原宿支店の従業員から案内を受けた新宿区歌舞伎町一丁目二九所在の東急文化会館一階の店舗(以下「東急物件」という。)の賃貸借について仲介を依頼し、同年一〇月一日、同支店において、右仲介契約に基づき、大野から、右物件についての説明を受け、かつ、同物件について物件説明書を受領した。 原告は、同日、大野に対し、東急物件の賃貸借契約の手付金として一〇〇万円を預託し、 さらに、同月一三日、大野から、仲介手数料七〇万円のうち五〇万円と礼金三〇〇万円のうち手付金として既に預託した一〇〇万円を除いた残金二〇〇万円との合計二五〇万円を被告に預託して欲しいとの申入れを受け、翌一四日、大野に対し右二五〇万円を預託した。 (三)原告は、平成五年一〇月一八日、被告に対し、大野から案内を受けた新宿区新宿三丁目三六番一六号所在の国際会館一階の店舗(以下「国際物件」という。)の賃貸借について仲介を依頼し、翌一九日、同支店において、右仲介契約に基づき、大野から、右物件についての説明を受け、かつ、同物件についての物件説明書を受領した。 原告は、同日、大野に対し、国際物件の(a)仲介手数料及び礼金合計八〇万円、(b)手付金一二〇万円及び(c)保証金の中間金四〇〇万円の合計六〇〇万円を預託した。 (四)原告は、同年一二月一五日、東急物件の管理会社である株式会社東急リクレーションに対し電話で問い合わせたところ、同物件について、被告に賃貸借の仲介を依頼したことはないとの回答があったので、大野に対しその旨を連絡すると、東急物件及び国際物件のいずれも被告が仲介を依頼されていなかったことが判明した。 (五)原告は、右同日、被告に対し右(二)(三)記載の預託金合計九五〇万円の返還を申し入れ、同月二〇日、大野との間で、被告が同月二四日までにその全額を返還する旨の合意をした。 3 名板貸人の責任(商法二三条) (一)被告は、大野に対し、被告名義(株式会社インターブレイン)を使用し、業として不動産仲介取引をすることを許諾していた。 原告は、大野の営業を被告の営業と誤認して、右各取引をした。 (二)請求原因2(二)ないし(五)に同じ。 4 使用者責任(民法七一五条一項) (一)請求原因2(一)ないし(四)に同じ。 (二)大野は、原告との間で、いずれも実体のない虚偽の取引であることを知りながら東急物件及び国際物件の賃貸借の仲介契約を締結し、これによって、原告は、九五〇万円の損害を被った。 5 よって、原告は、被告に対し、主位的請求として、預託金返還合意ないし名板貸の責任に基づき、原告が被告に対し預託した九五〇万円及びこれに対する弁済期の翌日である平成五年一二月二五日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を、予備的請求として、使用者責任に基づき、原告の受けた損害九五〇万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成五年一二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二 請求原因に対する認否 1 請求原因1の事実は認める。 2 請求原因2について (一)(一)の事実は否認する。被告は、大野に対し給料を支払ったことはなく、その他一切同人を社員として扱ったことはないのであり、また、大野は被告の支店長でももちろんない。 被告に原宿支店は存在せず、被告は、原告と大野との取引に何ら関与していない。 (二)(二)ないし(五)の事実は、いずれも否認する。 3 請求原因3の事実は、いずれも否認する。 なお、被告と大野との関係は、次のとおりである。 (一)被告は、平成五年四月ころ、大野から不動産に関する仕事がしたいので相応の肩書が欲しいとの申入れを受け、同年五月、同人に対し、被告の取締役の名称を名乗ることを承諾し、同月末ころ、その旨の登記手続をした。また、被告は、大野との間で、同人の営業所として、被告で管理していたソシアル原宿ビル四階部分約二〇坪を使用料を月額二五万円で使用させる契約をし、大野は、同月、右営業所に入居した。 (二)被告と大野との協議では、大野は、店舗仲介業務を主体とすること、被告に対し毎月成約について報告すること、成約したときは、被告に対し、受け取った手数料の四〇パーセントを支払うことが取り決められた。 (三)被告は、大野に対し被告原宿支店の名称の使用を許諾していなかったが、その営業所に「原宿支店」の表示がされていたことがあり、同人に指示し、それを取り外させたことはある。 (四)被告は、平成五年八月中旬ころ、大野から成約の報告も手数料の入金もないことを理由に大野との関係を絶縁することとし、同人に対し被告の取締役を名乗ることを禁止し、同年九月一五日同人の営業所にあった名刺類、ゴム印等を没収し、さらに、同年一〇月一三日取締役の辞任登記を手続し、かつ、同年一一月同人を右営業所から強制的に立ち退かせた。 4 請求原因4の事実は、いずれも否認する。 三 抗弁 1 原告の誤認についての重過失の存在(請求原因3に対し) 被告は、前記二3のとおり、平成五年八月中旬ころ大野に対し被告の取締役を名乗ることを禁止し、同年九月一五日同人の営業所にあった名刺類・ゴム印等を没収し、さらに、同年一〇月一三日取締役の辞任登記を手続し、かつ、同年一一月同人を右営業所から強制的に立ち退かせており、同年一〇月以降被告と大野との間の名板貸関係は終了している。 2 過失相殺(請求原因4に対し) (一)東急物件について ア 原告は、平成五年一〇月一日、大野から東急物件についての説明を受けた際、同物件の物件説明書を受領しているが、この説明書の記載には不自然な点が多い。すなわち、現在礼金を取る例は極めて少ないのに礼金が三〇〇万円とされており、他方、保証金四五〇万円は月額八一万円の賃料に比較して低額に過ぎ、契約期間は一般に二年ないし三年であるのに、五年とされていて異例である。また、更新料や保証金の償却についての記載がないこともおかしい。 イ 仲介業者に対し何の理由もなく金員を預託することは、宅建業法上禁止されており、実際に預託する者もいないのに、原告は、大野に対し、契約が成立しないうちから手付金を預託している。 ウ 原告は、平成五年一一月一三日、大野から東急物件の重要事項説明書と題する書面を受領しているが、本来、重要事項説明書は、賃貸借契約成立時に貸主及び借主の立会いのもとで交付されるべきものである。また、右受領した書面は、定型の用紙によっていないため、所有者の記載が不明確であり、しかも、必要的である解約に関する事項が記載されていない。 エ 原告は、右同日、賃貸借契約成立が未だ成立していないのに、大野に対し、仲介手数料を前払いし、かつ、礼金を支払っている。 (二)国際物件について ア 原告は、平成五年一〇月一九日、大野から国際物件についての説明を受けた際、同物件の物件説明書を受領しているが、この説明書の記載にも不自然な点がある。すなわち、現況は「営業中」とあるに、管理費が「未定」というのは変則的であるし、備考欄の「立て替え」(建て替え)の誤字も不動産仲介業者の文書としては気になるところである。 イ 原告は、右物件説明書には礼金の記載がなく、また、物件の説明を受けただけであるのに、右同日、その説明を受けると直ちに、大野に対し仲介手数料及び礼金を預託している。 ウ 原告は、右同日、大野に対し、手付金及び保証金の中間金を、同人に言われるまま漫然と支払っている。 (三)両物件について ア 原告は、平成五年一〇月一日から同年一二月一五日までの間、東急物件及び国際物件について、いずれのビル所有者に対しても、被告の仲介に関する事実の確認をしなかった。 イ 原告は、平成五年一二月一五日、大野に騙されたことを知ったのに、遅滞なく被告に連絡することをしなかった。 四 抗弁に対する認否 1 抗弁1のうち、被告が平成五年一一月大野を営業所から強制的に立ち退かせたとの事実は否認し、その余は不知。 2 抗弁2の事実は、いずれも否認する。 五 再抗弁 1 原告の誤認についての重過失の不存在(抗弁1に対し) (一)原告代表者が、平成五年一〇月一日、被告の原宿支店の事務所を初めて訪ねた際、同ビルには「株式会社インターブレイン」との看板が取り付けられ、同ビルの入口にある郵便受けにも同様の表札が取り付けられていた。 (二)被告原宿支店は、平成五年一一月ころ従前使用していたソシアル原宿ビル四階から同ビル三階に移転したが、大野は、その後同年一二月二〇日ころまで右移転後の営業所で執務しており、かつ、被告はこれを許諾していた。 (三)右(一)記載の看板と表札は、同年一二月二〇日ころまで存在していた。 2 原告の過失の不存在(抗弁2に対し) 原告が出店を予定していたファーストフード系の飲食店は、競争が激しく、対象となる物件が少ないことから、そのような物件についての情報が出た場合には、貸主の言いなりに近い契約が交わされているのが実情である。 六 再抗弁に対する認否 1 再抗弁1のうち、(二)の事実は否認する。 2 再抗弁2の事実は否認する。 原告の大野に対する出金の仕方は、経済上の自殺行為に等しい。 第三 証拠《略》 理 由 一 請求原因1の事実(当事者)について 請求原因1の事実(当事者)は、当事者間に争いがない。 二 請求原因2(預託金返還合意)について 1 大野が、原告と原告主張の取引行為をするについて、被告から必要な代理権を与えられていたか否かを検討するに、《証拠略》によれば、大野は原告代表者に対し被告の原宿支店長の肩書を名乗っていたが、被告は、大野に対し被告名義で営業することを許諾していた(この点は後に詳しく判示する。)ものの、大野を従業員として雇用してはいないこと、ソシアル原宿ビル四階所在の営業所は被告の営業所(原宿支店)としてではなく同人の営業所として使用させていたことが認められるのであって、大野が被告に手数料の一部を支払う旨の合意が存在しても、それは名義使用の対価ということができ、右合意をもって直ちに大野に右の代理権が授与されていたと推認することはできず、また、取締役を名乗らせることが当然に代理権の授与を伴うということもできないから、大野を支配人その他被告の営業に関し代理権を与えられた者ということはできない。 2 右のように、大野が代理権を有しなかった以上、原告と大野との間の預託金返還合意の効果を被告に直ちに帰属させることはできない。 三 請求原因3(名板貸人の責任)について 1 《証拠略》によれば、被告は、平成五年四月ころ、大野から「不動産に関する仕事がしたいので、相応の肩書が欲しい。」との申入れを受け、同年五月ころ、大野との協議で、店舗賃貸借の仲介業務を主体とすること、被告に対し毎月成約について報告をすること、成約したときは、被告に対し、手数料の四〇パーセントを支払うことを取り決めたうえ、その営業所として、被告が賃借していたソシアル原宿ビル(同ビルは被告が管理委託された建物である。)の四階部分約二〇坪を使用料を月額二五万円で転貸する契約をし、大野に対し、被告の取締役の名称を名乗ることを許諾して、同月二五日、その旨の登記手続をしたこと、大野が右営業所に「株式会社インターブレイン」と表示するについて、被告はこれを許諾していたこと、平成五年八月中旬ころ、大野に対し被告の取締役を名乗ることを禁止し、かつ、大野の営業所にあった名刺類・ゴム印等を没収し、同年一一月中旬ころ、大野を右営業所から立ち退かせたが、その荷物を同じビルの三階に置かせていたところ、大野はその後も右三階で営業しており、被告代表者も大野が三階で何かしているようだと気付き、電話機を外すなどしたが、結局同年一二月末まで、同ビル内において、被告名義で大野がその営業を継続するのを黙認していたことが認められる。 商法二三条の趣旨は、第三者が名義貸与者(名板貸人)を真実の営業者であると誤信して名義貸与を受けた者(名板借人)との間で取引をした場合に、名義貸与者が営業主であるとの外観を信頼した第三者を保護し、もって、取引の安全を期することにあるというべきであり(最高裁判所昭和五七年(オ)第三八四号同五八年一月二五日第三小法廷判決・判例時報一〇七二号一四四頁)、名義貸与者の責任の根拠は、名義貸与者の作出した外観を第三者が信頼するところにあるのであるから、ひとたび名義貸与者が作出した外観がその基本部分において存続する限り、名義貸与者が名義貸与の許諾を撤回したとしても、名義貸与者の帰責性は残存し、したがって、名義貸与者の負うべき責任には何ら消長を及ぼさないものと解するのが相当である。 この見解に立って、本件をみるに、右の事実によれば、被告は、大野に対し被告の取締役を名乗ることを禁止した後、大野の営業所にあった名刺類・ゴム印等を没収し、従来使用させていた営業所を立ち退かせるなどある程度外観排除のための行為をしているが、右営業所が所在していたのと同じソシアル原宿ビル内に大野の荷物(営業所から運び出したものであるから、営業用の荷物であると推認できる。)を置くことを認めており、四階と三階との違いなどはあるものの、被告が管理委託されていた右建物内で、大野が被告名義で営業を継続していたのを阻止しなかったいうのであるから、被告が未だその作出した外観の基本部分を排除したということはできない。 2 《証拠略》によれば、原告は、大野の営業を被告の営業と誤信して、請求原因2(二)ないし(五)記載の各取引をしたことが認められる。 四 原告の重過失の存否(抗弁1及び再抗弁1)について 1 前判示のとおり、名義貸与者がその意思に基づいてことさら作出した外観によって、名義貸与者が営業主であると誤認して取引をした第三者を保護し、もって取引の安全を期するとの商法二三条の趣旨からすれば、たとえ誤認が取引をした第三者の過失による場合であっても、名義貸与者はその責任を免れ得ないものというべく、ただ重過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、誤認して取引をした第三者に重過失があるときは、名義貸与者はその責任を免れるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和三八年(オ)第二三六号同四一年一月二七日第一小法廷判決・民集二〇巻一号一一一頁)。 2 抗弁1の事実は、《証拠略》により、これを認めることができ、再抗弁1の事実は、《証拠略》により、これを認めることができる。 以上の事実によれば、原告は、大野との取引を開始した当初の平成五年一〇月一日から、ソシアル原宿ビルの入口にある被告会社の表示を見て、同ビル内の被告の原宿支店こと大野の営業所に赴いており、同年一二月二〇日も、三階と四階の違いはあるが、未だ入口の被告の表示が取り外されていない同ビル内で大野と預託金返還合意をしたと認められるのであり、原告と大野とのそれまでの取引の経緯からしても、原告が大野の営業を被告の営業であると誤認した点につき、重過失があるということはできない。 3 したがって、被告は、大野との間でした請求原因3(一)(請求原因2(五))記載の預託金返還合意に基づく債務について、名義貸与者として大野とともにその連帯責任を負うものというべきである。 五 結論 以上によれば、原告の主位的請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官 塚原朋一)
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最近の判例2 Aは4階営業所を立ち退かされた後も、3階を営業所として使用し、営業を継続していた。
飲食店を経営するX会社(原告)は、Aの紹介する物件につき仲介手数料と礼金をAに預託したが、当該物件につきAは仲介する権限を持っていなかったことが判明した。 XはAがYの支店長であると誤認して取引した(自分の取引相手はY会社である)として、Aに預託した仲介手数料・礼金の返還をYに求めた。
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最近の判例3 東京地裁の判断 Yに名板貸人としての責任を認めた。
ひとたび名義貸与者が作出した外観がその基本部分において存続する限り、名義貸与者が名義貸与の許諾を撤回したとしても、名義貸与者の帰責性は残存し、したがって、名義貸与者の負うべき責任には何ら消長を及ぼさないものと解するのが相当である。 Yが管理委託されていた右建物内で、AがY名義で営業を継続していたのを阻止しなかったというのであるから、Yが未だその作出した外観の基本部分を排除したということはできない。 Yに名板貸人としての責任を認めた。
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①AはYの従業員でも取締役でもないが、AがY会社原宿支店長(取締役)という名称を使って不動産仲介業務をYが管理するビルの4階で営むことを許諾。AはYに対して毎月成果を報告することと、契約が成立した場合に得る手数料の40%をYに納めることを契約した。 Y会社 ②Aが契約を守らないため、YはAに対してYの取締役を名乗ること、Yの名称を使って営業を行うことを禁止した。 X Yが管理するテナントビル ③AはYの名称を使用し続け、営業に使用していたビルの4Fを立ち退かされた後も、3Fに荷物を置き、営業を続けていた。 XはAの仲介で飲食店用のテナント2件についての賃貸借契約のため、礼金とAへの手数料を預託した。 A
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名板貸し人の責任規定の類推適用 商14、会社9(旧商23)が、外観への信頼を保護する趣旨を含んでいることを根拠に、他の制度で救済できない虚偽の外観を信頼した者を保護するため類推適用する場面が拡大している →判例百選(総則・商行為法)21事件(最判平7・11・30民集 )参照 商14、会社9がどのように活用されるか、今後の判例の蓄積を注目する必要がある
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