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Published byまれあ ふじつぐ Modified 約 7 年前
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2 二次分析の実例 日本透析医学会統計調査の公開データを用いた 目 的 結 論 二次分析とは? 二次分析の利点1) 方 法2) 結 果2)
若杉 三奈子(わかすぎ みなこ)1)2)、風間 順一郎2)、成田 一衛2) 1)新潟大学 臓器連関研究センター、2)第二内科 目 的 結 論 統計調査データを用いた考察は「考える透析」に繋がる。 透析医学会統計調査の公開データを用いた二次分析として、 脳血管障害死亡率を一般住民と比較検討した。 二次分析とは? 二次分析の利点1) ・データ収集の過程を省略 ⇒限りある時間や労力を研究の中心部分(仮説構築・データ分析・結果解釈等)に集中的に投入可能。 ・全国規模のデータ分析も可能 ⇒地域限定研究から無理な一般化をすることがなくなる。 ・別の研究者による分析結果の再現・検証が可能 ⇒研究の精度向上。 ・類似した調査がすでにある場合、そのデータを二次分析すれば良く、新たに実施する必要が少なくなる ⇒回答者に無用な負担を掛けなくて済むため、調査環境の悪化を防ぐことに貢献。 ・多大な経費・時間・労力などを投入して作成された既存データの有効活用。 など 二次データを用いた分析のこと。 二次データ:本人以外が収集したデータ。 一次データ:研究者本人が直接収集したデータ。 方 法2) 結 果2) ・使用データ 2年間の観察期間、一般住民2億5千万人年および透析患者55万人年中、 一般住民および透析患者の、脳内出血死亡は51,994人および933人、脳梗塞死亡は79,124人および511人、クモ膜下出血死亡は24,957人および147人であった。 日本透析医学会 統計調査委員会 わが国の慢性透析療法の現況 人口動態統計 脳内出血 死亡率 (1万人年あたり) 年齢 (歳) 標準化死亡率比 3.8 (95%信頼区間 ) 脳梗塞 死亡率 (1万人年あたり) 年齢 (歳) 標準化死亡率比 1.3 (95%信頼区間 1.2 – 1.4) クモ膜下出血 死亡率 (1万人年あたり) 年齢 (歳) 標準化死亡率比 1.3 (95%信頼区間 1.1 – 1.6) 会員HPから表データを入手 e-Stat3)から表データを入手 ・アウトカムの定義 脳内出血、脳梗塞、クモ膜下出血による死亡は、ICD-10コードで定義(注:現在の透析学会データは異なります)。 ・年齢階級別死亡率の計算方法2)4)5)6) = 観察期間内の死亡数 死亡率 Σ (Patient time at risk*) Σ ti i =1 n *イベントを起こす可能性のある人年です。 図1 年齢階級別死亡率および年齢調整した標準化死亡率比 脳内出血、脳梗塞、クモ膜下出血のいずれも透析患者で死亡率が高いが、特に脳内出血で著しい。 2008年12月31日の患者数×2 (分母) 2007年12月31日 Patient time at risk (ti) tn t1 t2 t3 死亡 t4 離脱 導入 2008年末データ 死亡数 (分子) 2009年末データ 透析患者数は死亡や導入などで日々変化する。 一般住民も同様。 それぞれのpatient time at riskも、 このデータからはわからない。 分母をどうやって計算したらいいの? 観察期間の真ん中の時点の人数に 観察期間をかけることにより patient time at riskを推計することができます。 ただし、戦争や大災害など、急激な人口変化があった場合には、この方法は不適切です。詳細は文献4)をご参照ください。 2009年12月31日 2008年12月31日 死亡率(1万人年あたり) 死亡率 (1万人年あたり) 脳内出血 脳内出血 脳梗塞 脳梗塞 ・標準化死亡率比の計算方法2)5)6) 実際の観測数を期待数で割ることで求められる。 透析患者の 実際の 観測数 クモ膜下出血 クモ膜下出血 透析歴(年) 標準化死亡率比(SMR) 一般住民の 年齢階級別 発症率 透析患者の 年齢階級別 patient time at risk 透析患者の 発症 期待数* 図3 透析歴別 死亡率 いずれの透析歴でも、脳内出血、脳梗塞、クモ膜下出血の順で死亡率が高い。 エラーバーは95%信頼区間を示す。 ただし、本図では年齢補正をしていない点に注意。 図2 一般住民と透析患者の死亡率 一般住民は、脳梗塞、脳内出血、クモ膜下出血の順で、透析患者は脳内出血、脳梗塞、クモ膜下出血の順で、死亡率が高い(一般住民の死亡率は透析患者の年齢分布で補正)。 *もし透析患者が、一般住民と同じ発症率(今回の場合は 脳卒中死亡率)なら、透析患者の年齢分布では、このくらいの発症(今回の場合は脳卒中死亡)が起こっただろうという期待値。これにより年齢の影響が補正される。 ・透析患者については、透析歴別にも死亡率を求めた。 この研究のきっかけ 心房細動を合併した血液透析患者では、ワルファリンを投与したらいいのか、しないほうがいいのかを悩んでいた時7)、 「そもそも心房細動の重篤な合併症である心原性脳塞栓症が、血液透析患者では一般住民よりも多いのか? ワルファリン投与時の合併症の一つである脳内出血は多いのか?」と疑問に思ったことが本研究のきっかけである。悩みと疑問は、まだまだ続く・・・ 本研究の限界 透析患者の脳内出血、脳梗塞、 クモ膜下出血死亡率は、確診例のみのため、低めに見積もっている可能性がある。 もちろん公表されているデータからの解析には限界もある。しかし、数字が示す現状と、実際の臨床での経験を繋ぎ合わせ、「なぜ?」と考えることにより、改善に繋がる新たな気づきが生まれる可能性がある。 文 献 謝 辞 1) 佐藤 博樹, 間淵 領吾.特集 二次分析の新たな展開を求めて.理論と方法 2002;17: 1-2 2) Wakasugi M, et al. Higher mortality due to intracerebral hemorrhage in dialysis patients: A comparison with the general population in Japan. Ther Apher Dial. (in press) 3) 4) Esteve J, et al. Techniques for the analysis of Cancer Risk. In: Statistical Methods In Cancer Research: Volume IV: Descriptive Epidemiology. Lyon, France: International Agency for Research on Cancer, 1994;49–105. 5) Wakasugi M, et al. High mortality rate of infectious diseases in dialysis patients: a comparison with the general population in Japan. Ther Apher Dial. 2012;16: 6) Wakasugi M, et al. Cause-specific excess mortality among dialysis patients: comparison with the general population in Japan. Ther Apher Dial. 2013;17: 7) Wakasugi M, et al. Association between warfarin use and incidence of ischemic stroke in Japanese hemodialysis patients with chronic sustained atrial fibrillation: a prospective cohort study. Clin Exp Nephrol Oct 11. [Epub ahead of print] 本研究は一般社団法人 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況2008年12月31日現在」および「同 2009年12月31日現在」のデータを用いました。 統計資料利用許可をいただいた日本透析医学会 統計調査委員会ならびに本統計調査にご協力いただいた、すべての関係者に心より感謝申し上げます。 なお、本研究内容は著者らの見解であり、統計調査委員会の公式見解ではありません。
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