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大型で高エネルギー分解能の CdTe半導体検出器の開発
2011年9月18日 京大理 平木貴宏、中家剛、木河達也、 山内隆寛、市川温子 @日本物理学会 2011秋季大会
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CdTe検出器とは 化合物の半導体であるCdTe(テルル化カドミウム)の結晶を用いた放射線検出器
アクロラドより 半導体 バンドギャップ (eV) 電子移動度 (cm2/V/s) ホール移動度 密度 (g/cm3) 電子寿命 (μs) ホール寿命 Ge 0.67 3800 1900 5.33 >1000 1000 Si 1.11 1400 500 2.33 2000 CdTe 1.44 1100 100 5.85 3 2 化合物の半導体であるCdTe(テルル化カドミウム)の結晶を用いた放射線検出器 e-h対生成エネルギー4.43eV 大型化して、ダブルベータ崩壊探索(130Te等が崩壊候補核)に用いたい バンドギャップが大きいためリーク電流が小さく常温で使用可能 14Siや32Geよりも原子番号が大きい(48Cd52Te)ので光電吸収断面積が大きい ホールの移動度が低く、また寿命も短い @日本物理学会 2011秋季大会
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半導体中でのキャリアの再結合 ドリフト中にキャリアが不純物準位等に再結合される ホールはドリフト速度が遅くこの影響が大きい
キャリアの再結合は分解能を悪化させるため大型化すると SiやGeに比べエネルギー分解能は著しく低い CdTe検出器では通常は厚さ2-3mm 以下のものを使うが高いエネルギーの放射線を検出しにくい 大型のCdTe検出器でも高い分解能を得られないか? 荷電粒子 + - CdTe ホール 電子 陽極 陰極 高電圧を極板間にかける 荷電粒子の通過位置によって再結合されるホールの数が変わる @日本物理学会 2011秋季大会
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PC セットアップ CdTe FADC preamp CdTe結晶: (株)アクロラド製 特注品5mm×5mm×5mm
プリアンプを通し電圧をかける bias supply preamp CdTe 5mm×5mm×5mm オーミック型 CdTe検出器 FADC PC CAEN v1724 まず20℃に設定 PCでデータ取得のコントロール ショットキー型もある CdTe結晶: (株)アクロラド製 特注品5mm×5mm×5mm プリアンプ: (株)クリアパルス製 時定数600μs gain約10倍 Flash ADC: CAEN社製 sampling rate 100MHz resolution 14 bit @日本物理学会 2011秋季大会
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5mm角素子をFlash ADCで見た波形 FADC counts ホールのドリフト 電子のドリフト Time (μs) ドリフト時間 1
FADCで取得 ホールのドリフト 電子のドリフト 5mm×5mm×5mm CdTe に極板間に1000Vかけた時 sampling rate 100MHz Time (μs) ドリフト時間 ペデスタル 1 2 3 4 電子はすぐにドリフトしきるがホールはドリフトしきるのに数マイクロ秒かかる その間にホールの一部が再結合されてしまう @日本物理学会 2011秋季大会
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波高の補正 60CoをCdTe検出器に当てる まっすぐになるよう補正
上の図のように、ドリフト時間が長くなると再結合の効果により波高が下がり、 エネルギー分解能が悪くなってしまう そこで、プログラムで波高がまっすぐになるよう補正する 上の図の赤線の間のイベントを1333keVのγ線由来だとして多項式でfitし 得られた曲線がまっすぐになるような係数を全eventに掛ける @日本物理学会 2011秋季大会
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エネルギー分解能を求める 補正 補正後の波高分布 補正前の波高分布 1333keV γ線 FWHM 1.7%
bias電圧750V 補正後の波高分布 補正前の波高分布 1333keV γ線 FWHM 1.7% 補正 750V 20℃ 5mm×5mm×5mm CdTe検出器に 60Co線源(1173keVと1333keVのγ線を出す)を当てて データを取得し、上に述べた波高の補正を行いエネルギー分解能を求めると 1333keVのγ線の光電ピークでFWHM1.7%を得た @日本物理学会 2011秋季大会
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分解能に影響する要因 再結合されるホールの数のふらつき 生成されるキャリアの数のふらつき ~0.1% キャリアの熱励起による内部リーク電流
生成されるキャリアの数のふらつき ~0.1% キャリアの熱励起による内部リーク電流 CdTe結晶の表面で発生するリーク電流 電子回路(プリアンプなど)で発生するノイズ CdTeにかかる電場の非一様性 ~0.2% CdTe結晶の非一様性 波高やドリフト時間をプログラムで求める時に発生する誤差 次の スライド @日本物理学会 2011秋季大会
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ノイズからの分解能への影響の評価 検出器のリーク電流と電子回路由来のノイズは信号の ペデスタルのふらつきからその合計の大きさを評価
これらのノイズにより波高とドリフト時間がずれて求まり 分解能の悪化をもたらす Time(μs) V.S. RMS バイアス電圧を上げていくと 再結合されるホールの数のふらつきが小さくなりエネルギー分解能は 良くなっていく(~1000Vまで) しかしノイズがバイアス電圧の増大と共に増加してゆきエネルギー分解能を 悪化させる ノイズには周期の長い成分と短い成分が存在し 電圧を上げると長い成分の影響が大きくなる 1000V 750V 500V 250V 0V @日本物理学会 2011秋季大会 9
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MCを用いたノイズの分解能への影響の評価
MCで1333keV γ線が検出器に光電吸収、 再結合されるホールの数のふらつきがないと仮定し ノイズのみが収集電荷のふらつきを与えるものとする FADC count (換算値) FWHM 1.0% ノイズにより波高と ドリフト時間がふらつく 補正 Energy (keV) time (μs) この分布を同様に補正し分解能を求めFWHM1.0%を得る これはFWHM全体のうちの35%程度を占める
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温度を変えた時の測定 恒温槽を用い低温での分解能を見る
低温にするとノイズは小さくなるがキャリアのドリフト速度が落ちる(20℃から0℃で10%程度遅くなる) 恒温槽を動かすとその振動ノイズが混入する RMS 低温ではノイズが小さくなる FWHM -10℃ 0℃ 10℃ 20℃ 1333keV 1.5% 1.4% 1.6% 1.7% 662keV 2.1% 2.3% 2.4% 黒20℃ 赤10℃ 青0℃ 緑-10℃ μs 0℃付近で良い分解能を示す 今後ペルティエ素子(振動がない)を用いた冷却を行う @日本物理学会 2011秋季大会
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まとめと将来 ドリフト時間の情報から波高に補正をする手法により、 大型のCdTe検出器のエネルギー分解能を向上した
エネルギー分解能を悪化させる主な要因は 再結合されるキャリア数の統計的ゆらぎ 検出器のリーク電流、電気回路由来のノイズ CdZnTe(CZT)検出器でも同様の手法を試す予定 ガードリングによるリーク電流の低減も試みる 上手くいけば更に大型の検出器を用いてダブルベータ崩壊の観測を目指す 測定条件を最適化したり解析方法を改善してO(10cm3) でFWHM0.5% @日本物理学会 2011秋季大会
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back up @日本物理学会 2011秋季大会
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波形サンプル short drift time event long drift time event @日本物理学会 2011秋季大会
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ダブルベータ崩壊 2ν ダブルベータ崩壊 0ν ダブルベータ崩壊 p n W e- ν (Z,A)→(Z+2,A)+2e-+2ν
2ν ダブルベータ崩壊 (Z,A)→(Z+2,A)+2e-+2ν 普通のダブルベータ崩壊は2つのβ崩壊が 同時に起こるような過程 電子2つと反電子ニュートリノ2つが出る 連続的なエネルギースペクトルを持つ 0ν ダブルベータ崩壊 p n W e- (Z,A)→(Z+2,A)+2e-(+0ν) もしニュートリノがマヨラナ粒子ならば 右図のようなダイアグラムで崩壊することが 可能になり電子2つしか出ない ほぼ単一のエネルギースペクトルを持つ 未だ誰も見たことがない @日本物理学会 2011秋季大会
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CdTeに含まれるダブルベータ崩壊核種 CdもTeもダブルベータ崩壊を起こす同位体が存在 他にも114Cd、108Cd、120Teがある
(将来的に)CdTe検出器で0νDBDを見たい そのためには大型のCdTe検出器が必要 自然存在比 Q値(MeV) 崩壊形式 130Te 34% 2.53 β-β- 116Cd 7.5% 2.80 128Te 31% 0.866 106Cd 1.5% 1.75 β+/EC @日本物理学会 2011秋季大会
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温度を変えた時の測定 恒温槽を用い低温での分解能を見る
低温にするとリーク電流は小さくなるがキャリアのドリフト速度が落ちる(20℃から0℃で10%程度遅くなる) 恒温槽の振動ノイズが乗る 5mm×5mm×5mm 750V FWHM -10℃ 0℃ 10℃ 20℃ Co(1333keV) 1.5% 1.4% 1.6% 1.7% Cs(662keV) 2.1% 2.3% 2.4% 0℃付近で良い 分解能を示す 15mm×15mm×10mm 1000V FWHM -10℃ 0℃ 10℃ 20℃ Co(1333keV) 4.0% 3.9% 4.2% 4.1% Cs(662keV) 5.7% 5.8% 6.4% 6.6% 今後ペルティエ素子を用いた冷却を行う @日本物理学会 2011秋季大会
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左:5mm 750V 右: 10mmCdTe 1000V 横軸:陽極からの距離(mm) 縦軸:収集効率
一方、FADCでとったデータはdrift timeの1番長い所が1番短い所に比べて 収集効率の比が5mmで約80%、10mmで約66%でかなり差がある 原因は不明 多重散乱の効果?
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151510mmCdTe検出器の分解能 FWHM 4.1% 補正 補正 一方、大型のCdTeでは同様の方法で補正しエネルギー分解能を求めると
20℃ 1000V 補正 一方、大型のCdTeでは同様の方法で補正しエネルギー分解能を求めると FWHM4.1%と5mm角に比べて悪い @日本物理学会 2011秋季大会
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PC セットアップ CdTe FADC preamp CdTe結晶: (株)アクロラド製 特注品
5mm ×5mm CdTe セットアップ プリアンプを通し電圧をかける 15mm ×15mm ×10mm CdTe bias supply preamp CdTe 1000V FADC PC CAEN v1724 PCでデータ取得のコントロール まず20℃に設定 CdTe結晶: (株)アクロラド製 特注品 5mm×5mm×5mm mm×15mm×10mm(極板間) プリアンプ: (株)クリアパルス製 時定数600μs gain約10倍 Flash ADC: CAEN社製 sampling rate 100MHz resolution 14 bit @日本物理学会 2011秋季大会
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波高とドリフト時間の求め方 波高はペデスタル(信号が来る手前のFADCの値)と max(FADCの値が最大)の差をとる
ドリフト時間は波高の5%と95%となる高さでの時間の差をとる drift time = endtime - starttime start end t(max) t(pedestal) time Charge pulse height @日本物理学会 2011秋季大会
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CdTe検出器の個体差 5mm×5mm×5mmと15mm×15mm×10mmのCdTeは それぞれ3つあり、分解能の個体差を調べる
5mm×5mm×5mm 750V 20℃ FWHM cdte1 cdte2 cdte3 Co(1333keV) 1.6% 1.7% Cs(662keV) 2.4% 2.3% 15mm×15mm×10mm 1000V 20℃ FWHM cdte1 cdte2 cdte3 Co(1333keV) 4.1% 5.1% Cs(662keV) 7.0% 8.6% 6.6% @日本物理学会 2011秋季大会
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CdTe 線吸収係数 コンプトン効果 光電吸収 by XCOM
60Coの出すγ線エネルギー(1173keV,1333keV)ではほとんどコンプトン散乱される 60Coのヒストグラムのピークの多くが複数回散乱されて全てのエネルギーを落としたもの @日本物理学会 2011秋季大会
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ペデスタルのふらつき ノイズには周期の長い成分と短い成分が存在し 電圧を上げると長い成分の影響が大きくなる
Time(μs) V.S. RMS ノイズには周期の長い成分と短い成分が存在し 電圧を上げると長い成分の影響が大きくなる 冷却すると長い成分の影響は小さくなる 1000V 750V 500V 250V 0V
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ノイズからの分解能への影響の評価 MCで検出器のリーク電流と電子回路由来のノイズによる波高、
ドリフト時間のふらつきのみが乗った1333keV γ線の分布を生成し ノイズが分解能に与える影響を見る Charge 単色γ線の 信号にノイズを 加えたMC 波高の落ち方は実データと同じもの、図は大CdTeの時 time (μs) 4 8 12 16 20 この分布から同様の補正分解能で求めFWHM1.0%(5mm厚)、 3.1%(10mm厚)を得る @日本物理学会 2011秋季大会
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MC 手法 pulse heightにpeaking timeに相当する
ペデスタルのふらつきを与えdrift timeにはΔt=Δh/aを入れる aはend time付近の波形の傾き Δhはend timeからmax timeのノイズの大きさを使う pulse heightに補正をかけエネルギー分解能を求める
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研究室で測定したバックグラウンド 15mm×15mm×10mm CdTe検出器で測定した background放射線のスペクトラム
208Tlは放射性核種の中で最も高い単一のγ線を放出する 15mm×15mm×10mm CdTe検出器で測定した background放射線のスペクトラム 40K(1461keV)や208Tl(2615keV)が見える @日本物理学会 2011秋季大会
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高電圧をかけた時 15×15×10mm CdTeを常温で使用 電圧を上げるとドリフト時間は短くなるがエネルギー分解能は良くならない
FWHM 2000V 1500V 1000V 60Co(1333keV) 4.7% 5.4% 5.2% 137Cs(662keV) 9.3% 8.6% 8.9% 15×15×10mm CdTeを常温で使用 電圧を上げるとドリフト時間は短くなるがエネルギー分解能は良くならない リーク電流が大きくなることが原因 これ以上高い電圧はまだかけていない
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新しいCdTe素子 新しい5mm角のCdTe素子を購入 現在性能評価中 @日本物理学会 2011秋季大会
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キャリアの移動のMC デトラッピングによりドリフト時間が長くなり、収集効率が上昇 2成分のデトラッピングを考えると実データとよく合う
横軸:時間 (μs) 縦軸:収集効率 左:デトラッピングあり 右:デトラッピングなし デトラップとは1度トラップされたキャリアが解放されること デトラッピングによりドリフト時間が長くなり、収集効率が上昇 2成分のデトラッピングを考えると実データとよく合う
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