涌元と賀張の永楽通寶について 第47回全道高等学校 郷土研究発表会 函館工業高等専門学校 埋蔵文化財研究会 加澤 晴華 川上 桐佳

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1 涌元と賀張の永楽通寶について 第47回全道高等学校 郷土研究発表会 函館工業高等専門学校 埋蔵文化財研究会 加澤 晴華 川上 桐佳
加澤 晴華  川上 桐佳 多田 佳歩  杉本 紬 渡邉 健一朗

2 涌元古銭とは 銭種 39種類(現時点) 総計 996枚 組成 唐銭から明銭まで 最新銭 宣徳通寶(1433年初鋳)
・2006年、知内町在住工藤勇治氏が、知内町郷土資料   館に寄贈したもの ・佐々木馨監修『函館・渡島・檜山の歴史』(郷土出版社 年)に紹介されているが、詳細は未報告である 銭種 39種類(現時点) 総計 996枚 組成 唐銭から明銭まで 最新銭 宣徳通寶(1433年初鋳) 涌元古銭は知内町涌元地区で道路工事の際に出土した古銭で、2006年、知内町在住の工藤勇治(ゆうじ)氏が、知内町郷土資料館に寄贈したものです 銭種(お金の種類)は現在わかっているだけで28種類で、総計996枚、組成は唐銭(とうせん)から明銭(みんせん)で、最新銭は宣徳通寶(せんとくつうほう)です。

3 脇本館と涌元古銭出土地 涌元古銭 脇本館 出土場所 こちらが涌元古銭の出土地です。
出土地の近くに脇元館(わきもとだて)と呼ばれる、いわゆる「要塞」があります。

4 賀張古銭とは 1972年に日高町賀張で発見され、現在は日高町立 門別図書館郷土資料館に収蔵されている 銭種 35種類 総計 664枚 組成
唐銭から明銭まで 最新銭 宣徳通寶(1433年初鋳) 賀張古銭は1972年に日高町賀張で暗渠(あんきょ)排水工事のさいに出土した古銭で、現在は日高町立門別図書館郷土資料館に収蔵されています。 銭種は35種類で、総数は664枚。 組成は唐銭から明銭までで、最新銭は涌元古銭と同じく、宣徳通寶です。

5 賀張古銭出土地 日高町賀張 こちらが日高町賀張の位置です。 2つの古銭に含まれる銭種のなかでも、今回は永樂通寶に注目しました。

6 涌元古銭205枚,賀張古銭216枚出土 写真の永楽通寶の計測結果
永楽通寶について 涌元古銭205枚,賀張古銭216枚出土 写真の永楽通寶の計測結果 外径 2.54mm 内径 0.545mm 厚さ 0.135mm 重さ 3.59g では、永樂通寶について簡単に説明していきます。 永樂通寶は涌元古銭に205枚、賀張古銭に216枚含まれています。 こちらが涌元古銭に含まれる永樂通寶のサンプルです。大きさは、外形2.54mm、内径0.545mm、厚さ0.135mm、重さ3.50gです。 たくさんある銭の中でも文字や輪郭がはっきりしているのが特徴で、日本では数多く流通していまいしたが、生産国である中国ではほとんど流通していませんでした。 初鋳年 1408年 古銭の種類 明銭 ※「永楽通寶が中国ではほとんど流通していない」   ことが最近わかった。

7 真田幸村で有名な真田家にまつわる 「真田六文銭」に使用されている お金は永楽通寶!!
ちなみに… 真田幸村で有名な真田家にまつわる 「真田六文銭」に使用されている お金は永楽通寶!! ちなみに、永樂通寶というのは武田信玄の家臣で有名な真田幸村の真田家にまつわる「真田六文銭」に使用されているお金で、 三途の川の渡り賃が六文といわれたため、常にそれを所持していることで、「自分たちは死ぬことを怖れない。死ぬ覚悟はいつでもできている」という意味があったそうです。 つぎに制銭と鐚銭の違いについて説明します。 三途の川を渡る時に必要な渡賃が六文なので いつ死んでもいいようにい六文持っておこう…!! 私たちは死をも恐れません!!!

8 政府の命により材料・製法が定められている
制銭と鐚銭の違い(1) 〈制銭〉中国で作られた貨幣 ・確かな原材料を使用。 ・高い技術 ・鮮明な文字、輪郭 制銭というのは中国で正式に作られたお金で、確かな材料、高い技術、鮮明な文字輪郭で作られています。これは政府が厳しく管理していたため、金属の割合がほぼ決まっています。 これらはきっちりと成分が決まっている 政府の命により材料・製法が定められている

9 〈鐚銭〉(私鋳銭:勝手につくった貨幣) ・安い材料 ・未熟な技術 ・ぼやけた文字、輪郭
制銭と鐚銭の違い(2) 〈鐚銭〉(私鋳銭:勝手につくった貨幣) ・安い材料 ・未熟な技術 ・ぼやけた文字、輪郭 つぎに鐚銭というのは正式に作られたものではない粗悪なお金で、安い材料、未熟な技術、ぼやけた文字や輪郭で作られています。 これらは厳しく管理されて作られたわけではありませんので、金属の割合がきちんときまっていません。 成分がはっきりと決まっていない! 適当に材料をブレンド?

10 従来の方法 文字がぼやけている、 文字の位置がおかしい等、 見た目で判断
制銭と鐚銭の見分け方 従来の方法 文字がぼやけている、 文字の位置がおかしい等、 見た目で判断 制銭と鐚銭を見分けることは難しい これまでは、文字の輪郭がはっきりしているなど見た目だけで判断していました。ですが、この方法では、制銭と鐚銭を見分けることができません。 決め手がない!!

11 永樂通寶をめぐる大論争 永樂通寶ほとんど鐚銭説 中国国内ではほとんど流通していない だから日本でつくられた鐚銭に決まっている
永樂通寶ほとんど制銭説 中国国内ではほとんど流通していない だから日本でつくられた鐚銭に決まっている 少しは鐚銭があるだろうが、 これだけ大量に質のそろった鐚銭を日本でつくることはできたとは考えられない 永樂通寶は中国でほとんど流通しなかったのだから、日本で作れたお金つまりは鐚銭であろうという説と、 多少は鐚銭があるだろうが、字体の正確さや大きさが均一であることから制銭を上回るような量の鐚銭はありえないだろうという説があり、 この対立する2つの説をはっきりさせることができまん。 そこで、新しい方法を私たちは考えました。 どちらの説にも根拠があり、決着がつかない

12 「制銭と鐚銭では、 金属の成分が違う」 古銭の成分分析をしてみよう! 私たちの考え 我が函館高専には蛍光X線分析装置が…!!
「制銭と鐚銭では、   金属の成分が違う」 制銭は中国で作られたお金なので、金属の割合がほぼ決まっている・・・つまり成分がほぼ決まっているはずです。 鐚銭は厳しく材料を定めているわけでもなく、作る技術が未熟だったので、制銭とは違って、金属の割合がバラバラ・・・つまり、成分がバラバラになるはずです。 制銭と鐚銭の金属の成分に着目し、私たちは、成分分析を行うことで、制銭と鐚銭を見分けることができるのではないかと考えました。 古銭の成分分析をしてみよう! 我が函館高専には蛍光X線分析装置が…!!

13 蛍光X線分析装置 今回、分析に使用したのは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置です。
簡単に使い方を説明します。これが装置の写真です。黄色の部分を開くと、下の写真のようになります。ピンクの部分に測りたいものをおいて蓋を閉め、スタートボタンを押すと分析を開始します。

14 蛍光X線分析装置(原理) 金属原子 X線を照射 X線管 核 X線 電子 この分析装置の原理を説明します。
物質は原子と呼ばれる非常に小さい粒子から成っています。そして原子の1つ1つはこのように原子核、そのまわりに電子とよばれる小さい粒子がまわっているような構造をしています。 ちなみに、回っている電子の数、核の大きさはその原子によって異なります。 この分析装置はX線を原子に照射します。 電子

15 電子を弾き飛ばす X線を吸収した電子は原子から離れる 核 電子 電子が抜けた孔
すると電子がなくなった内側の軌道は1つ空きになります。 電子 電子が抜けた孔

16 X線のエネルギーは原子ごと決まっている 特性X線 X線 分光器 外側の軌道の電子 (高いエネルギー状態) 核 エネルギー差を X線として放出
電子は、できるだけ内側の軌道を回ろうとするので、外側の電子は内側の軌道に移っていきます。 このとき、電子は特性X線と呼ばれるX線を出します。 このX線の波長は電子により異なるので、このX線を分析することで、原子の種類を特定します。 内側の軌道の電子 (低エネルキ゛ー状態)

17 原子が出すX線は固有のエネルギーを持っている
成分によって波長がかわる 銅Cu 鉛Pb 特性X線 スズSn 古銭 古銭にX線を照射すると、古銭の成分である銅、鉛、スズからそれぞれの原子が発する特性X線が出ます。 X線 特性X線 原子が出すX線は固有のエネルギーを持っている

18 永楽通寶の鐚銭は スズが少ないのではないか?
鐚銭についての仮説 永楽通寶は中国では ほとんど流通していない 日本はスズが ほとんどとれない 鐚銭のほとんどが 日本で作られている 先に述べましたように永樂通寶は中国ではほとんど流通しませんでした。つまり、鐚銭をつくるとしたらそのほとんどが日本でつくられているでしょう。 日本ではスズがほとんどとれないので、日本で作られる鐚銭はスズが少ないのではないか 以上のことから、永樂通寶の鐚銭は成分がバラバラでスズが少ないのではないかと考えました。 永楽通寶の鐚銭は スズが少ないのではないか?

19 制銭についての仮説 分析結果はすべて似たような値になるのではないか! 制銭は、成分がほぼ決まっている! 制銭は政府が正式に作った貨幣!
作り方、材料が厳しく決まっている! 制銭は、成分がほぼ決まっている! 一方、制銭は中国が正式に作ったお金なので、作り方、材料が厳しく決まっているはずです。 ということは、制銭は金属の成分がほぼ決まっていて、制銭の成分分析結果はすべて似たような値になるのではないかと考えました。 分析結果はすべて似たような値になるのではないか!

20 鉛 銅 銅 永樂通寳の分析結果(1) 賀張古銭 涌元古銭 鉛 スズ 文字、輪郭がはっきりしていて制銭と思われるもの
今回の成分分析では、1枚の古銭につき4ヶ所、「永」の文字、「樂」の文字、「永」の字の裏、「樂」の字の裏をそれぞれ測定し、その平均を1枚の古銭の分析結果としました。 見た目が綺麗で、従来の分け方でも制銭とわかる古銭の分析結果です。どちらも銅60%,鉛30%,スズ10%です。

21 永樂通寳の分析結果(2) 賀張古銭 涌元古銭 鉛 銅 銅 文字、輪郭がぼやけていて、鐚銭と思われるもの
文字や輪郭が不鮮明で、従来の見分け方で、鐚銭とされるものです。ほとんどが銅で、スズは1%未満でした。

22 三角ダイアグラム 読み方(1) Cu 65% 分析結果を三角ダイアグラムに表します。 このグラフの読み方を説明します。
三角ダイアグラム 読み方(1) Cu 65% 分析結果を三角ダイアグラムに表します。 このグラフの読み方を説明します。 このグラフ3つの成分、銅・鉛・スズを表しています。 この点を左に伸ばして、交点を読むと、「銅65%」となります。

23 三角ダイアグラム 読み方(2) 今度は、こちらに伸ばして、交点を読むと、「鉛25%」となります。 Pb 25%

24 三角ダイアグラム 読み方(3) Sn 10% 最後に、こちらに伸ばして、交点を読むと、「スズ10%」となります。 以上から
三角ダイアグラム 読み方(3) Sn 10% 最後に、こちらに伸ばして、交点を読むと、「スズ10%」となります。 以上から 銅65%,鉛25%,スズ10%の青銅であることがわかりました。

25 永樂通寳の分析結果(3) 賀張古銭216枚、涌元古銭205枚、それぞれの分析結果はこのようになります。 賀張古銭 涌元古銭

26 永樂通寳の分析結果(4) 2つの図を重ねるとこのようになります。 プロットを拡大します。

27 A群 制銭と鐚銭の判別は可能か? B群 ほとんど純銅 D群 スズが多い C群 鉛が多い
どちらの古銭も銅50-75%,鉛15-40%,スズ8-15%の部分にプロットが集中していることがわかります。 このまわりでは、銅が多いもの・鉛が多いもの・スズが多いもののグループに分かれています。 C群 鉛が多い

28 制銭と鐚銭の判別は可能か? A群 50〜75% どちらの古銭も銅50-75%,鉛15-40%,スズ8-15%の部分にプロットが集中していることがわかります。 このまわりでは、銅が多いもの・鉛が多いもの・スズが多いもののグループに分かれています。

29 制銭と鐚銭の判別は可能か? A群 どちらの古銭も銅50-75%,鉛15-40%,スズ8-15%の部分にプロットが集中していることがわかります。 このまわりでは、銅が多いもの・鉛が多いもの・スズが多いもののグループに分かれています。 鉛15〜40%

30 制銭と鐚銭の判別は可能か? スズ 8〜15% A群 どちらの古銭も銅50-75%,鉛15-40%,スズ8-15%の部分にプロットが集中していることがわかります。 このまわりでは、銅が多いもの・鉛が多いもの・スズが多いもののグループに分かれています。

31 A群 制銭と鐚銭の判別は可能か? B群 ほとんど純銅 D群 スズが多い C群 鉛が多い
どちらの古銭も銅50-75%,鉛15-40%,スズ8-15%の部分にプロットが集中していることがわかります。 このまわりでは、銅が多いもの・鉛が多いもの・スズが多いもののグループに分かれています。 C群 鉛が多い

32 この塊の古銭は文字輪郭がはっきりしていた 成分の分布が綺麗にかたまっている
A群について この塊の古銭は文字輪郭がはっきりしていた 成分の分布が綺麗にかたまっている それぞれのグループについてまとめます。 銅50-75%で多くのプロットが集まっている部分 これらの古銭は型が綺麗です。そして、これだけ成分が定まっているということは、中国で高い技術、厳しい決まりの下につくられた制銭であると推測します。 これらは 制銭である!!!

33 B群について 明らかに鐚銭!! (1)文字、輪郭が不鮮明 (2)銅が著しく多い 銅が著しく多いものは、この写真のとおり
文字輪郭がボヤけていて見ただけで鐚銭とわかります。 明らかに鐚銭!!

34 C群について 明らかに鐚銭!! (1)文字、輪郭が不鮮明 (2)鉛が多い こちらが鉛が多いものの写真です。
B群と同様に文字輪郭がボヤけていて見ただけで鐚銭とわかります。 明らかに鐚銭!!

35 D群について(1) 成分を分析すると スズが多い 粗悪な制銭? 鐚銭である!! (1)文字、輪郭は比較的鮮明 (2)外縁がずれている
スズが多いものの写真です。 今までの鐚銭比べると型が綺麗ですが、制銭というには文字や輪郭がブレています。 「できの良い鐚銭」「できの悪い制銭」か見た目はどちらとも言えます。 しかし、今回の分析で制銭は成分が大体決まっており、鐚銭は成分がバラつくということが前の3つのグループからわかりますので、このスズが多い銭は「できの良い鐚銭」と言えます。 鐚銭である!!

36 D群について(2) 今回の調査(成分分析)で、 はっきり鐚銭と見分けることができた!! 従来の方法(外観での判断) 制銭か鐚銭かはっきりと
見分けることができなかった! 外観で判断した従来の方法では制銭か鐚銭かはっきりと見分けることができない場合でも 成分分析を行うことで、鐚銭と見分けることができました 今回の調査(成分分析)で、 はっきり鐚銭と見分けることができた!!

37 まとめ1 ほとんど鐚銭説 「ほとんど制銭説」が正解だと思う 制銭と思われるものは成分がだいたい同じ
まとめ1  制銭と思われるものは成分がだいたい同じ 制銭が大多数 鐚銭もあるが、少ない 予想「制銭は、成分がほぼ決まっている」は正しい 本日の発表をまとめます。 制銭と思われるものは大体成分が同じでした。 私たちの予想は正しいものでした。 永樂通寳についての2つの説は、多くの古銭が同じような成分だったことから、「ほとんど制銭説」が正しいと考えます。 ほとんど鐚銭説  「ほとんど制銭説」が正解だと思う

38 「永楽通寶の鐚銭はスズが少ない」はハズレ
まとめ2 鐚銭は銅が多いもの、鉛が多いもの、スズが多いものと様々 文字、輪郭が綺麗なものでも、鐚銭があった 「永楽通寶の鐚銭はスズが少ない」はハズレ 鐚銭は銅や鉛が多いものばかりではなく、スズがお多いものが存在したことから、「鐚銭はスズが少ない」という仮説はハズレました。 文字輪郭が綺麗なものでも、金属成分が制銭と異なるものがあることから、成分分析は制銭鐚銭の判別に有効であることがわかりました。 成分分析は 制銭と鐚銭の判別に有効

39 謝辞 古銭や資料をご提供くださいました、知内町郷土 資料館様、日高町立門別図書館郷土資料館様に御 礼申し上げます。
エネルギー分散型蛍光X線分析装置の使用につい てご指導くださいました、函館工業高等専門学校 小林淳哉先生に御礼申し上げます。

40 私たちの活動は、こちらで公開しています。
埋蔵文化財研究会webサイト 私たちの活動は、こちらで公開しています。 函館工業高等専門学校 埋蔵文化財研究会 まいぶん

41 ご清聴ありがとうごさいました


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