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世界金融危機と国際通貨体制 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016
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グローバル・インバランスから世界金融危機へ
マクロ金融論2016 グローバル・インバランスから世界金融危機へ グローバル・インバランス=世界的な経常収支不均衡 アメリカ ①1990年代後半:ITブームによる民間設備投資増 ②2001年~2003年:財政赤字 ③2000年代半ば:住宅投資増 アジア:貯蓄過剰⇒アメリカ国債購入 石油輸出国オイルマネー⇒欧州金融機関⇒アメリカの住宅投資(サブプライムローンの証券化商品) ⇒アメリカの住宅バブル崩壊が①欧州金融機関のB/Sを毀損し、②英・アイルランド・スペインの住宅バブル崩壊
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マクロ金融論2016 グローバル・インバランス 原典:IMF, World Economic Outlook, October 2015
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穏やかなドル高とユーロの暴落 リーマン・ブラザーズ・ショック(2008年9月)以降、穏やかなドル高とユーロの暴落。
マクロ金融論2016 穏やかなドル高とユーロの暴落 リーマン・ブラザーズ・ショック(2008年9月)以降、穏やかなドル高とユーロの暴落。 リーマン・ブラザーズ・ショックがインターバンク市場でカウンターパーティ・リスクを顕在化。 特に、サブプライム・ローン関連の証券化商品の損失によってバランスシートの悪化した欧州金融機関がドル資金を調達できない。 ユーロ圏の域内取引はユーロが利用可能だが、域外取引にはドルが必要。
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マクロ金融論2016 ユーロとポンドの対ドル為替相場
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EUにおけるインターバンク市場取引 世界金融危機時(2008年8月~2008年10月)
マクロ金融論2016 EUにおけるインターバンク市場取引 世界金融危機時(2008年8月~2008年10月) ⇒サブプライムローン証券化商品の焦げ付き(信用リスクの所在が不明)。 ⇒カウンターパーティ・リスク(信用スプレッドが4.5%へ)が欧州金融機関のドル流動性調達を困難に。 【基軸通貨ドル体制下でのユーロの無力が露呈】 ⇒対応:FRBからECBへ通貨スワップ取極めを通じたドル流動性供給、そして、ECBから金融機関へのドル流動性供給
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マクロ金融論2016 世界金融危機時の米ドル流動性不足 住宅価格バブルの崩壊によってサブプライムローンの問題が発生した。サブプライムローン及びMBSなどの証券化商品に資金運用していた米国の金融機関とともに欧州の金融機関のバランスシートの資産サイドが毀損した。 そのため、欧州の金融機関は、カウンターパーティ・リスクのために欧州の銀行間金融市場において米ドル流動性を調達することが困難となった。カウンターパーティ・リスクとは、銀行間金融取引において取引相手の金融機関がどれほどの不良債権化した証券化商品を保有しているかについて不確実性を意味。 米国ではFRBが中央銀行として米ドルを供給できるが、欧州ではECBなどが中央銀行として米ドルを供給することに限りがあったために、米ドル流動性の供給不足となった。そのため、外国為替市場でドルに対する超過需要が発生していた。
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信用スプレッド 信用スプレッド=安全資産(国債)との金利差 信用スプレッド=LIBOR-US TB金利
マクロ金融論2016 信用スプレッド 信用スプレッド=安全資産(国債)との金利差 信用スプレッド=LIBOR-US TB金利 ⇒信用スプレッドを信用リスク・プレミアムと流動性リスク・プレミアムに分解。 ・信用リスク・プレミアム=LIBOR-OIS金利 ・流動性リスク・プレミアム=OIS金利-US TB金利 LIBOR=London InterBank Offered Rate (無担保) OIS=Overnight Index Swap (有担保)
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LIBOR (USD,3mo)とOIS金利(USD,3mo)とUS TB金利(USD,3mo)
マクロ金融論2016 LIBOR (USD,3mo)とOIS金利(USD,3mo)とUS TB金利(USD,3mo) Data: Datastream
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信用スプレッドと信用リスク・プレミアムと流動性リスク・プレミアム
マクロ金融論2016 信用スプレッドと信用リスク・プレミアムと流動性リスク・プレミアム Data: Datastream
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マクロ金融論2016 米ドル流動性不足に対するFRBの対応 FRBは、米ドル流動性不足を解消するために、政策金利であるFF金利をゼロとして量的金融緩和政策を開始するとともに、通貨スワップ協定を締結して、主要諸外国の中央銀行に無限の米ドル供給を行った。 そして、ECBなどの中央銀行は、欧州の金融機関に対して、FRBによって供給された米ドル流動性に基づいて欧州の金融機関に無限の流動性供給を行った。 =>カウンターパーティリスク及び信用スプレッドが2008年11月以降縮小。 このことは、ユーロ圏やEU域内において域内経済取引のためにユーロが利用されているにもかかわらず、米ドルを域外経済取引の決済通貨として必要としていたことを意味する。
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マクロ金融論2016 原典:日本銀行
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FRBの量的金融緩和政策 2008年12月16日にFF金利の目標値を0%~0.25%に設定。
マクロ金融論2016 FRBの量的金融緩和政策 2008年12月16日にFF金利の目標値を0%~0.25%に設定。 2008年10月以降、第1次量的金融緩和政策(QE1)を採用。3000億ドルの国債と1.25兆ドルの住宅抵当担保証券(MBS)と1750億ドルのその他証券を購入することによって、マネタリーベースを2008年9月の3000億ドルから2010年3月には2.1兆ドルに急増。 2010年11月から2011年6月にかけて第2次量的金融緩和政策(QE2)を採用。6000億ドルの長期国債を毎月750億ドル、購入するものであった。それによって、マネタリーベースは2011年6月には2.64兆ドルに達した。 2012年9月より第3次量的金融緩和政策(QE3)を採用。2012年12月まで毎月400億ドルのMBSと450億ドルの長期国債(合計850億ドル)を購入し続け、マネタリーベースを増加。2014年10月終了。
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マクロ金融論2016 日米欧の政策金利 Data: Datastream 14
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マクロ金融論2016 米国マネタリーベース Data: Datastream
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マクロ金融論2016 世界金融危機の国際通貨システムへの影響 短期的には、ドルの信認失墜よりもドル流動性不足(インターバンク市場におけるドル資金取引の欠如)が深刻。⇒ユーロに対してドル高 長期的には、アメリカ政府の金融機関への資本注入が財政赤字を深刻化。⇒アメリカの経常収支赤字を拡大⇒ドルの全面安(但し、欧州も同様の状況にあり、依然として、ユーロ安が続く。) ↓ 短期的には、金融機関への資本注入によるバランスシート健全化とともに、中央銀行によるインターバンク市場へのドル資金の(無限の)供給によって対応(米国連邦準備銀行制度と各国中央銀行と通貨スワップ協定)。 今後、上記の長期的な問題が露呈するだろう。
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基軸通貨とは、 ドル基軸通貨体制とは、 ブレトンウッズ体制における各国通貨価値のアンカー(ドル・ペッグ)
マクロ金融論2016 基軸通貨とは、 ブレトンウッズ体制における各国通貨価値のアンカー(ドル・ペッグ) 国際貿易取引及び国際資本・金融取引における決済通貨(⇒通貨の交換手段としての機能が重視。通貨の価値貯蔵手段として機能が軽視。) ドル基軸通貨体制とは、 ドルが唯一の基軸通貨である体制(ブレトンウッズ体制)
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ブレトンウッズ体制における基軸通貨ドル(1944年~1971年)
マクロ金融論2016 ブレトンウッズ体制における基軸通貨ドル(1944年~1971年) 金 $ £ 円 DM
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マクロ金融論2016 ブレトンウッズ体制崩壊直後(1973年~1978年) 金 $ £ 円 DM
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マクロ金融論2016 共同フロート制(EMS)(1979年~1998年) 円 $ EMS ECU EMS通貨の加重平均値 £ DM F.Fr
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マクロ金融論2016 ユーロ導入後の国際通貨制度(1999年~) 円 $ EU28 EU19 € £
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ガリバー型国際通貨システムにおける基軸通貨ドルの慣性
マクロ金融論2016 ガリバー型国際通貨システムにおける基軸通貨ドルの慣性 国際通貨の交換手段としての機能は、一般受容性と関係する。一般受容性においてはネットワーク外部性が作用する。規模の経済が働く。 規模の経済が働く市場では、有効な通貨競争が行われにくい。(ガリバー型国際通貨システム) 基軸通貨ドルに慣性が作用する。
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ドル基軸通貨体制vs.複数基軸通貨体制 ドル基軸通貨体制: 交換の効率性が高い。
マクロ金融論2016 ドル基軸通貨体制vs.複数基軸通貨体制 ドル基軸通貨体制: 交換の効率性が高い。 通貨独占状態のため、アメリカの対外通貨政策(ドルの対外価値の安定)にガバナンスが働かない。 ⇒アメリカの対外通貨政策の規律付けが必要。 ⇒米国連邦準備制度は、世界各国の中央銀行に対する「最後の貸し手」としての役割を果たす必要がある。 複数基軸通貨体制: 交換の効率性が低い。 通貨競争によって対外通貨政策(通貨の対外価値の安定)に規律が働く。 ⇒基軸通貨国間において、世界各国の中央銀行に対する「最後の貸し手」としての役割の協調。
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