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コンピュータが変えるクスリづくり ~薬剤のデザインはこうして行う~ 関西分子設計研究会 合田 圭吾
~薬剤のデザインはこうして行う~ 関西分子設計研究会 Computer-Aided Molecular Modeling Research Center Kansai (CAMM-Kansai) 合田 圭吾
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コンピュータが変えるクスリづくり クスリが効くとは? クスリづくりとコンピュータ ≫ スクリーニング試験 ≫ 候補化学物質の最適化 ≫ 薬物の体内動態
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医薬品(クスリ) ペニシリン アスピリン アオカビから発見 1928年、フレミング 抗生物質 細菌の細胞壁の生合成を阻害
アオカビから発見 1928年、フレミング 抗生物質 細菌の細胞壁の生合成を阻害 → 異物の体内進入を阻止 アスピリン ヤナギ樹皮の抽出エキス物質由来 1897年、ドイツバイエル社 解熱鎮痛消炎薬 プロスタグランジンの産生抑制 → 体内の代謝・機能の正常化
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病気の発症メカニズム ~「鍵と鍵穴」理論 伝達物質-受容体 複合体 情報伝達物質 病気の情報が伝達される 標的受容体
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クスリの作用 ~「鍵と鍵穴」理論 情報伝達物質 クスリ候補の 化学物質(鍵) 結合できない 病気の情報をブロック 標的受容体
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「鍵と鍵穴」理論: クスリの効き目の基本的な仕組み ↓ 「鍵」を探すことが、すなわちクスリづくり
化学物質 病気の情報をブロック ?? 標的受容体 「鍵と鍵穴」理論: クスリの効き目の基本的な仕組み ↓ 「鍵」を探すことが、すなわちクスリづくり 1988年ノーベル生理学・医学賞受賞 「薬物療法における重要な原理の発見」 James W. Black, Gertrude B. Elion & George H. Hitchings
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新薬の研究開発の流れ 5 ~ 8 年 3~7 年 2~3 年 非臨床試験 (動物試験) 創薬研究 臨床試験 承認申請 標的受容体の同定
標的受容体の同定 スクリーニング試験 候補化学物質の 最適化 薬効薬理試験 毒性試験 安全性試験 第1相試験 第2相試験 第3相試験 審査 発売 5 ~ 8 年 3~7 年 2~3 年 期間
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創薬研究 ~スクリーニング試験 スクリーニング試験: 疾患細胞や病態モデル動物に化学物質を
創薬研究 ~スクリーニング試験 創薬研究 標的受容体の同定 スクリーニング試験 候補化学物質の 最適化 スクリーニング試験: 疾患細胞や病態モデル動物に化学物質を 手当たり次第に試験 ↓ 効き目のある化学物質(ヒット物質)を探す → 偶然に頼る方法、確率は0.1%以下 疾患細胞 化学物質 病態モデル動物
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創薬研究 ~スクリーニング試験 高速大量処理スクリーニング: HTS
創薬研究 ~スクリーニング試験 高速大量処理スクリーニング: HTS ロボットを使って、数万~数十万の化合物を 短期間にスクリーニングする方法 → 大規模な設備が必要 化学物質 標的受容体
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計算化学的手法: ヴァーチャル・スクリーニング
ヴァーチャル・スクリーニング: コンピュータ ・スクリーニング 効き目の強さを、鍵と鍵穴の形の一致度を計算することで予測する 化学物質(鍵) クスリ候補 (ヒット物質)
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ヴァーチャル・スクリーニング ~実際例 抗がん剤: タモキシフェン(鍵) - エストロゲン受容体(鍵穴) エストロゲン受容体 化学物質(鍵)
ヴァーチャル・スクリーニング ~実際例 抗がん剤: タモキシフェン(鍵) - エストロゲン受容体(鍵穴) エストロゲン受容体 標的受容体(鍵穴) 化学物質(鍵) タモキシフェン (TMX) タモキシフェン (TMX)
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ヴァーチャル・スクリーニング ~実際例 ● 3段階のスクリーニングを実施 → 1000個+1個(タモキシフェン:TMX)の化学物質
ヴァーチャル・スクリーニング ~実際例 ● 3段階のスクリーニングを実施 → 1000個+1個(タモキシフェン:TMX)の化学物質 1st スクリーニング: TMX 354位 1. BLT kcal/mol 2. BR 3. BTB 354. TMX -12.9 2nd スクリーニング: TMX 58位 1. BLT kcal/mol 2. BTB 3. BLT 58. TMX 3rd スクリーニング: TMX 1位 1. TMX kcal/mol 2. BLT 3. BLB 4. BLT タモキシフェン(TMX)が1001個の 化学物質の中で、最もよいエストロゲン 受容体との形の一致度を示した。 ↓ タモキシフェンが最も効き目が高い
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ヴァーチャル・スクリーニング ~実際例 エストロゲン受容体-タモキシフェンの複合体 計算構造(緑) 計算構造(緑) vs X線構造(青)
ヴァーチャル・スクリーニング ~実際例 エストロゲン受容体-タモキシフェンの複合体 計算構造(緑) 計算構造(緑) vs X線構造(青) ヴァーチャル・スクリーニングを、スクリーニング試験の前に用いることによって、実際に試験をする化学物質の数を大幅に減らすことができる
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製薬企業比較 ~研究開発 02 01 製薬会社 百万ドル 1 2 グラクソ・スミスクライン (英国) 28,871 ファイザー (米国)
製薬企業比較 ~研究開発 02 01 製薬会社 百万ドル 1 2 グラクソ・スミスクライン (英国) 28,871 ファイザー (米国) 28,288 3 メルク (米国) 21,446 4 7 アベンティス (仏) 18,441 5 アストラゼネカ (英国) 17,343 6 8 ノバルティス (スイス) 17,175 ジョンソン・エンド・ジョンソン (米国) 17,151 ブリストル・マイヤーズスクイブ (米国) 14,705 9 12 ロシュ (スイス) 12,806 10 ファルマシア (米国) 12,037 15 武田薬品工業 7,227 22 三共 3,743 23 エーザイ 3,727 25 24 山之内製薬 3,471 28 30 藤沢薬品工業 2,882 2000年産業別研究費の対売上高比率 ( 総務省「科学技術研究調査報告」) 全産業平均 3.04% 医薬品工業 8.60% ソフトウエア業 5.79% 電気機械工業 5.65% 総合化学・化学繊維工業 3.64% 自動車工業 4.09% 食品工業 1.01%
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創薬研究 ~候補化学物質の最適化 候補物質の最適化:
創薬研究 ~候補化学物質の最適化 創薬研究 標的受容体の同定 スクリーニング試験 候補化学物質の 最適化 候補物質の最適化: スクリーニング試験で得られたヒット物質を、さらに効き目が高くなるように、化学実験により構造の最適化を行う。
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創薬研究 ~候補化学物質の最適化 コンピナトリアル・ケミストリ: 化学合成を手助けするロボットを用いて、様々な化学物質を一度に数多くつくる
創薬研究 ~候補化学物質の最適化 コンピナトリアル・ケミストリ: 化学合成を手助けするロボットを用いて、様々な化学物質を一度に数多くつくる → 化学者は1年間で 個の化学物質を合成 → 50,000個/年以上の化合物
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計算化学的手法: 薬物受容体構造に基づいた医薬品設計法 (Structure-Based Drug Design: SBDD)
化学実験による最適化
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薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例1
薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例1 解熱鎮痛消炎剤: 「アスピリンから、スーパーアスピリンへ」 アスピリン アスピリン、非ステロイド抗炎症剤 → 胃腸出血、血小板凝集阻害、腎毒性、肝毒性 炎症などを引き起こす物質(プロスタグランジン)を産生する酵素: COX(シクロオキシゲナーゼ) COX1: 胃腸粘膜の保護、正常な腎機能、血小板の凝集 COX2: 1990年に発見。炎症状況下で発現。発熱、痛み、腫れ → COX2だけを選択的に阻害すれば、副作用が少なくできる
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薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例1
薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例1 COX1とCOX2の受容体(鍵穴)構造の比較 COX2 COX1 セルブレックス (スーパーアスピリン) → COX2の鍵穴にうまく一致するが、COX1の鍵穴には入らない
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薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例1
薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例1 COX1 COX2 COX1とCOX2の鍵穴の違い
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計算(Compute)化学(Chemistry) ~語源
中世ヨーロッパの錬金術師 化学: Chemistry ラテン語 ALCHEMY 「錬金術」 → 13~17世紀のヨーロッパ、銅や錫から 金を人工的につくる、不老不死の薬 化学の知識の発見、磁器の製法発見、 アイザック・ニュートン ⇒ chemistry 化学、相性 計算する: Compute ラテン語 PUTARE 「木を剪定する」 → 比喩的に「判断する」の意 → COMPUTEは「共に判断する」 ⇒ 「計算する」 ENIAC (1946年:ペンシルバニア大学)
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薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例2
薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例2 抗インフルエンザウイルス薬: 吸 着 侵 入 膜 融 合 出 芽 ノイラミニダーゼ(NA) NA阻害剤が理論的に デザイン 1993年、世界最初の NA阻害剤ザナミビルが 合成・開発
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薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例2
薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ~実際例2 ノイラミニダーゼ酵素の立体構造 抗ウイルス剤が結合した状態 シアル酸(酵素の本来の鍵) 抗ウイルス剤ザナミビル
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非臨床試験 ~薬物の体内動態 非臨床試験: 創薬研究で見出されたクスリの候補物質の 体内での働きを実験動物を用いて調べる
非臨床試験 ~薬物の体内動態 非臨床試験(動物試験) 薬効薬理試験 毒性試験 安全性試験 非臨床試験: 創薬研究で見出されたクスリの候補物質の 体内での働きを実験動物を用いて調べる 薬物の体内動態(ADME) 吸収(Absorption) 分布(Distribution) 代謝(Metabolism) 排泄(Excretion)
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計算化学的手法: 薬物の体内動態シュミレーション
市販薬の化学物質(分子)の大きさ 全体の割合(%) 分子の大きさ
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薬物の体内動態シュミレーション(in silico ADME)
計算によって、化学物質の性質(物理化学的性質:脂溶性、溶解性、水素結合能など)を算出し、薬物の体内動態を予測 例) Lipinski の「rule of 5」 ・ 分子量 > 500 (膜透過性) ・ clogp > 5.0 (溶解性) ・ 5個以上の Hbond donors (膜透過性) ・ 10個以上の Hbond acceptors (膜透過性) ↓ 経口薬剤となるためには、これらの性質を 満たすこと 分子量 = clogp = 2.185 Hbond acceptors = 1 Hbond donors = 1
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コンピュータが変えるクスリづくり: まとめ
クスリが効くとは? クスリづくりとコンピュータ ≫ スクリーニング試験 ≫ 候補化学物質の最適化 ≫ 薬物の体内動態 ⇒ 「鍵と鍵穴」理論 計算化学的手法 ⇒ ヴァーチャル・スクリーニング ⇒ 薬物受容体構造に基づく医薬品設計法 ⇒ in silico ADME
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今後の展開 ゲノム情報の解析に伴って、計算化学的手法を 用いた研究開発は重要性を増す テーラーメイド / カスタマイズド治療 → 副作用が少なく、より安全で有効なクスリづくりを目指して
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