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初期地球の気候変動と生命進化    北海道大学 理学部 地球科学科 4年 渡辺 健介.

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1 初期地球の気候変動と生命進化    北海道大学 理学部 地球科学科 4年 渡辺 健介

2 目次 研究目的 太古代の地球環境 暗い太陽のパラドックス 酸素の出現と蓄積 古気候について豊富な情報を持つもっとも古い地質体
南アフリカ・バーバートン(32億年前)  温度推定:地球化学的制約・堆積学的制約 当時の地球は温暖 暗い太陽のパラドックス 太陽光度の進化 温室効果ガスとアルベドの寄与 二酸化炭素に加えメタンの温室効果とアルベドが重要 酸素の出現と蓄積 酸素濃度の進化 全球凍結と生命のかかわり

3 地球の歴史 Hessler 2011

4 研究目的 将来的な目標 今回の目的(本発表) ハビタブルな惑星環境が形成されるための条件 模索中
Hessler, A. M. (2011) Earth’s Earliest Climate. Nature Education Knowledge 3(5):6 のレビュー 地層中に残された過去の主な気候変動の理解 気候変動と生命の関係の理解 地球は,現在私たちが知っている唯一のハビタブルプラネットなので,地球のハビタブルな環境を理解することは,太陽系の惑星のテラフォーミングや系外惑星のハビタブルプラネットを考える上で必要であると思います.

5 気候と生命の最も古い地質が記録されている場所
Hessler 2011

6 あああああああああああああ 太古代の地球環境 南アフリカ・バーバートン 古気候について豊富な情報を持つもっとも古い地質体
気温,大気組成を記録 グリーンストーンテレーン 年代測定(U-Pb法)より32億年前に形成 緑色岩やチャート,砂岩,頁岩などの層構造 ここからは,最古とされる気候記録について説明します.最古の気候記録というのは,今のところ発見されている中で,一番昔のものという意味です.それで,現時点で確証の持てる証拠は南アフリカのバーバートンなどで見つかった32億年前のグリーンストーン帯です.グリーンストーン帯とは,変成苦鉄質火山岩のコマチアイトや海洋堆積物などがたいをうけて最初の大陸地殻を形成し,保存されたものです.コマチアイトは火山岩の一種で,マントルが全融解して急激に固まったものです.現在よりも高温のマントルで作られるので現在では見られず,当時の地球内部が高温であったと推測されています. □液体の水の証拠 氷河による堆積物または浸食作用の証拠として、漂礫土、ドロップストーン、岩盤上の氷河の削痕が存在しないとされます.これらの証拠により,当時地球は凍っていなかったと推定できます.そして次に液体の水による堆積物の証拠を挙げますと,具体的には、砂岩中の漣痕、砂岩と頁岩の互層、そして川によって運ばれた丸い礫岩などがあります.この自由に動ける液体の水があるという証拠より、温度がおよそ0~100 ℃の間にあっただろうと推測できます. ・ 氷の証拠 漂礫土…氷河による砕屑(さいせつ)物が,氷河の融解後,流水や氷山によって遠くまで運ばれて堆積したもの。 ドロップストーン…氷河によって運ばれた石.液体の水によって運ぶことが困難なものや,周りの石とは明らかに形状が異なるもの. 削痕…氷河が移動するときに,岩盤と擦れることによってできるあと. ・水の証拠 漣痕…堆積物の表面を水などが流れることで周期的な波上の模様が作られる規則的な地形のことを指します.川底や海底などに形成される. 互層…海の中に土砂が流れてきたとき,その粒子の沈降する速度は粒径や比重に依存する.なので,砂の粒子は比較的速く沈降し,逆に泥など比重が軽く粒径が小さいものはゆっくりと沈み堆積することで互層が出来る. あああああああああああああ Hessler 2011

7 当時の温度推定 堆積学的制約 液体の水の証拠 氷河による堆積物または浸食作用の証拠がな い 液体の水によって運ばれ た堆積物などの存在
 た堆積物などの存在 南アフリカ・バーバートンの緑岩体に残された地表プロセス(右図) (A)浅海堆積物由来の薄い砂岩と頁岩の積層 (B)砂岩中に残されている波紋 (C)浅海堆積物由来の斜層理 (D)河川によって運ばれ丸くなった礫岩   (ボーリングのコア) Hessler 2011

8 当時の温度推定 地球化学的制約 チャート(SiO2) リン酸塩の酸素同位体比 (Blake et al.2010)
形成過程 海水や熱水からの直接的な堆積 シリカに富む海洋生物の殻が沈降し堆積 酸素同位体測定 (Kasting et al , Jaffres et al , Kurauth & Lowe 2003) 当時のチャートは18Oに強く乏しい                                        (Clayton et al.1972)  海洋温度は~70℃である.(現代海洋と始生代海洋の酸素同位体は同じと仮定) シリカの溶脱反応 (Sleep & Hessler 2006) 70℃以上で溶脱反応が起きるが,その痕跡は見つかっていない 温度は~70℃であった. リン酸塩の酸素同位体比 (Blake et al.2010) 海洋温度は26~35℃ 始生代と現在の海洋の同位体値は変化していない

9 暗い太陽のパラドックス 当時の太陽は現在よりも光度が低い(約70%) 太陽放射 40 30 20 10 0 年代 (億年前) 1.0 0.9
   0 年代 (億年前) 1.0 0.9 0.8 0.7 太陽放射 (現在を1とする) 太陽放射 疑問 液体の水が存在していたのはなぜか? 解消案 以下の寄与を考える 温室効果ガスの寄与 アルベドの寄与 -50 -25 25 温度 (℃) 温室効果 時間変化する理由は? もし大気組成と惑星アルベドが現在と同じならば → 約20億年前以前は全球凍結していたことになる!? パラドックスの理由 太陽光度は太陽内部(中心核)で起きる核融合反応に依存する.その核融合反応は,水素原子4個がヘリウム原子1個になることです.ヘリウム原子1個分の質量は水素原子4個分の質量より0.7パーセント軽いのでこの分の,圧力がわずかに下がる事で,それを補うために中心部は収縮し,温度が上がる.その結果核融合反応の効率が上昇し,明るさを増していったとされる.  地表温度 (大気組成とアルベドが 現在と同じ場合) 温室効果 有効温度 (温室効果がない場合) 田近,2011 フロンティアセミナー

10 温室効果ガスの寄与 Kasting 1993 のモデル計算 地質学的制約 二酸化炭素(CO2)のみで考えると100~1000PAL必要
PAL : Present Atmospheric Level (現在の大気の組成を1とする) 地質学的制約 堆積岩中の鉱物の共存関係をもとに二酸化炭素分圧を推定 高いCO2濃度は左側へ反応を進ませる.   (FeCO3 : 菱鉄鉱,NaHCO3 : ナーコライト,FeOFe2O3 : 磁鉄鉱) それぞれの分子に着目した話し方 スライドづくり 証拠をつなげる.

11 CO2濃度の地質学的制約 菱鉄鉱と磁鉄鉱が共存 10PAL未満の可能性 CO2以外の温暖化の機構が必要 Rosing et al. 2010
12,13の数式と図をあわせる 磁鉄鉱などの名前を統一する 菱鉄鉱と磁鉄鉱が共存 10PAL未満の可能性 CO2以外の温暖化の機構が必要 Rosing et al. 2010

12 高濃度ではないCO2-CH4の温室効果が存在していた可能性
メタン 二酸化炭素よりも温室効果が高い 貧酸素地球環境下ではCH4の生産が活発 (Kharecha et al. 2005) メタン生成菌の繁栄 メタン酸化菌によるO2やSO4を用いたCH4の除去が不活発 CH4/CO2>0.1の条件下で炭化水素ヘイズの生成 (Trainer et al. 2006) 炭化水素ヘイズ 大気上層で太陽光を吸収する特徴 反温室効果  高濃度ではないCO2-CH4の温室効果が存在していた可能性 (Haqq-Misra et al.2008) 根拠をしっかり示す 二酸化炭素よりも温室効果が高い気体なので,二酸化炭素が少なくても,メタンが十分あれば温室効果が働いていると考えることが出来ます.当時の地球はまだ酸素が無い時代なので,その環境下では嫌気性生物のメタン菌が繁栄して生成が活発に起きており,またメタンを酸化させるために必要な酸素や硫化基 遺伝子の系統樹的に解析してみると,真核生物などはメタン生成菌などの古細菌から進化したと考えられているので,真核生物は19億年前程度に誕生したとみられておりメタン生成菌はそれよりも昔から存在していたとされ,メタン生成菌は嫌気性生物なので貧酸素環境下で生きていたことが分かります.

13 アルベドの寄与 CO2とCH4などの温室効果ガス,そしてアルベドの寄与を 総合的に考える必要がある. Rosing et al. 2010
(現在よりも)陸域が小さいため,アルベドが小さかった 35~32億年前の地塊はピルバラとバーバートンにしか存在していない. (現在よりも)雲が透明で,アルベドが小さかった 雲は太陽光を宇宙空間に反射する役割がある 今日の雲は生物起源の雲凝結核(CCN)に起因(全体の50%) 雲は今日程の反射率は無い 真核生物の進化以前は役立つ生物起源の硫黄ガスが無い CO2とCH4などの温室効果ガス,そしてアルベドの寄与を 総合的に考える必要がある. いまだに,雲や生命,そして気候の相互関係は複雑で,初期地球にこのプロセスを適用するには多くの不確定要素がある. なぜ,生物起源の雲凝結核はあれなのか?

14 酸素の出現と蓄積 酸素濃度の進化 27億年前の堆積物– 西オーストラリア・ピルバラ 24億年前~22.5億年前の大酸化イベント
頁岩中の鉱物が“弱く”酸化 酸素発生型光合成生物の進化 (Anbar et al. 2007) 酸素濃度の進化 24億年前~22.5億年前の大酸化イベント 地質学的証拠 24億5千万年前以降の破屑性ウラン鉱床は知られていない ウラン:富酸素条件下で水溶性,貧酸素条件下で不溶性 地球化学的証拠 硫黄の質量非依存同位体分別(MIF-S)の異常 MIF-Sの異常を持つ硫黄が保存される制約 オゾン層による赤外線遮断が起きていない 光化学反応の生成物であるS6が大気中で酸化されてSO2に戻らない 0≦O2≦0.001[PAL]では,MIF-Sの異常が起きる

15 大酸化イベント 地球化学的証拠 硫黄の質量非依存同位体分別(MIF-S)の異常 Δ33S (‰) 40 30 20 10 0
年代 (億年前) 4 3 2 1 -1 -2 Δ33S (‰) Stage I StageII Stage III イベント後,世界中の堆積岩に  酸化鉱物が出現 砕屑性ウラン鉱床(uraninite),黄鉄鉱床(pyrite)   流水のもとで分級されて堆積(粒状でよく円磨されている)した還元的な鉱物   富酸素条件下ではすみやかに酸化されてしまうはず (ステージ I)   約24.5億年前以降にはほとんど存在しない ■ 赤色土層(Redbeds)   赤鉄鉱(Fe2O3)の皮膜に覆われた石英を主体とした細粒堆積物   富酸素条件下で地表鉱物が風化を受けて生成されたもの (ステージ II 以降)   最古の確実なものは22.2億年前以降 ■ 縞状鉄鉱床(Banded Iron Formations, BIFs)   酸化鉄(Fe(OH)3, Fe2O3)に富む層とシリカ(SiO2)に富む層が縞状に互層   陸源物質や海底熱水系に由来した溶存二価鉄を含む貧酸素的深層水が   富酸素的表層水と接触することで酸化鉄が沈澱した? (ステージ II?)   その形成は約20億年前に最大,18億年前以降のものは例外的 Farquhar et al., 2000, 2003 [Kump (2008) Nature]

16 全球凍結と生命のかかわり ヒューロニアン氷河期(25~23億年前) はじめて全球凍結を経験 トリガー 古地磁気学による“古緯度”の推定
ヒューロニアン氷河期(25~23億年前)  (Marmo & Ojakangas 1984, Evans et al. 1997) はじめて全球凍結を経験 古地磁気学による“古緯度”の推定 赤道付近にも氷河堆積物が存在 全球規模の氷期であった可能性 トリガー 酸素の出現 温室効果ガス(特にメタン)の減少 メタンの酸化 (Kopp et al ) ダイアミクタイト…巨礫から粘土まで様々な大きさの砕屑物が入り混じった堆積物のこと 赤道:地面と平行,磁極:地面と垂直 岩石が形成時の地磁気の方向を記録 それと同時に、地球は初めて全球凍結期を経験した(Marmo & Ojakangas 1984, Evanset al. 1997)。酸素を吐き出す生命体が地球の第一氷河期を引き起こしたと考えられるのか?なぜなら、たぶんメタンは、酸化によって大気から除去され、弱い温室効果ガスであるCO2 に変化するからだろう(Kopp et al. 2005, Bekker & Kaufman 2007)。温室効果は24 億年前の氷河期の直前にほかのイベントによってもさらに弱まった可能性がある。例えば、大規模な大陸の分裂イベントは、新たに露出した地殻の風化作用時に大気中のCO2 を吸収させる働きをし(言い換えると、CaSiO3 + CO2 + H2 ! Ca2+ + HCO−3 +H4SiO4)(Evans 2003, Melezhik 2006) 、またその後、新しく開かれた熱帯の海路に豊富に海成炭酸塩(言い換えると、Ca2+ + HCO−3! CaCO3 + H+) を沈殿させる。  1. 南アフリカ・ナミビア北部の8億年前〜6億年前にかけての地層からホフマン博士等によって発見された、氷河によって運ばれたと推測される直径1mにも及ぶ迷子石(dropstones:氷河堆積物)の存在。 (古地磁気分析により、当時赤道近辺であったと推定される場所も含まれる)  2. 同じく南アフリカ・ナミビア北部の氷河堆積物を示す地層の上の約50mにもなる厚い炭酸塩岩層(キャップカーボネイト、cap carbonate)の発見。  全球凍結の終結時には、火山活動によって放出された二酸化炭素が大気中に蓄積(現在量の200〜1500倍)されており、全球凍結が終結して海の氷が溶融すると大量の二酸化炭素が海水中のカルシウムイオン等と反応して炭酸カルシウムとなって沈殿し、分厚い炭酸塩岩層を形成した。  3. 氷河堆積物の前後の炭素同位対比(carbon-12とcarbon-13の存在比)の精密測定の結果、氷河期の地層のcarbon-13の存在比が高く、本来ならば生物活動により有機物に取り込まれるためにcarbon-13の存在比が低くなるはずだが、このことは海洋の大部分の生物活動がほぼ完全停止していたことを示していた。またその範囲は、全地球規模であった。 古緯度 11°± 5°  氷河堆積物の分布  田近,2011 フロンティアセミナー

17 全球凍結と生命のかかわり 原生代後期の氷河作用 (7億年前~6.5億年前) 全球凍結の証拠 トリガー 全球凍結の融解
原生代後期の氷河作用   (7億年前~6.5億年前) 全球凍結の証拠 全球的に氷河堆積物が残っている トリガー ロディニア大陸(10~7億年前に出現)の  分裂によるCO2の固定,O2濃度上昇 全球凍結の融解 火山ガス(CO2)の供給による温室効果 現在の酸素を含む大気を形成する ための酸素生成シアノバクテリアの増加や、それに続くメタン生成菌と炭素に富んだ大 気の減少と一致した。  先カンブリア時代(2)−全球凍結(2)からつづく  8億年前から6億年前の期間に訪れたスターティアン氷期(Sturtian glacial period)やヴァランガー氷期(Varangian glacial period )と呼ばれる2度の氷期における全球凍結が起きた原因については諸説があって未だ確定したものは無いようですが、ひとつの仮説として二酸化炭素の減少による温室効果の喪失によるものがあります。  1. 当時の地球上には、約10億〜7億年前に誕生し、約6億年前に分裂を開始したと考えられている超大陸ロディニア(Rodinia; based on a Russian word for "homeland")が存在していましたが、その分裂による裂け目に生じた広大な浅い海は、光合成により酸素を発生する細菌シアノバクテリアや光合成藻類の繁殖地となり、その光合成により大気中の二酸化炭素は大量の有機物となって海底に蓄積されて行きました。  2. この大気中の二酸化炭素の減少により、温室効果が次第に失われて地球全体の寒冷化が始まり、極地から発達してきた氷床は赤道にまで及んで太陽光を反射し、一層の寒冷化を促していきました。  3. 一度加速した寒冷化は相乗効果によって進行し、最近の全球凍結時の気温分布シミュレーションによれば、極地で−90℃、赤道付近で−50℃、陸上では3,000m級の氷床に覆われ、海洋では水深1,000mまで凍結するスノーボールアース(Snowball Earth、全球凍結)と呼ばれる状態になり、数千万年続いたと考えられています。  4. 凍結しなかった深海底や地中深部ではごく微少な範囲での生命活動が維持され、凍結中でも火山活動による二酸化炭素の供給(年間約9千万トン)が続けられて、大気中の二酸化炭素濃度が高まって行きました。  5. 火山活動の放出による大気中の二酸化炭素濃度が一定比率に達すると気温が上昇しはじめ、大量の二酸化炭素の温室効果によって一気に氷床の解凍が始まり、大気温は約50℃まで上昇したと推測されています。  6. 海水の表面温度が45℃を越えたときに、「ハイパーハリケーン」と呼ばれる中心気圧300ヘクトパスカル、最大瞬間風速300m以上の猛烈な巨大ハリケーンが発生し始め、海上は大時化になり、海岸には高さ100mの巨大な高波が押し寄せたと計算されています。  7. 温暖化した気候の影響により岩石の風化が促進されて大量の金属イオンが海中に供給され、また、全球凍結期間中に海底の熱鉱床から噴出したミネラル分が「ハイパーハリケーン」によって攪拌され、浅い海にまで持ち上げられました。  8. 大気中の高濃度の二酸化炭素は海水中のカルシウムイオン等と反応して大量の炭酸カルシウムとなって沈殿し、50m以上にも及ぶ分厚い炭酸塩岩層が海底に形成されました。  こうして全球凍結後の地球では、浅い海の海水に含まれたミネラル分を養分として緑色の光合成生物が浅い海全域に広がり、大量の酸素を大気中に放出します。    酸素濃度が低かった時代には、酸素呼吸する生物にとって酸素は貴重品でしたが、酸素濃度の増加により水にほとんど溶けない、繊維状のタンパク質である大量のコラーゲンを作ることができるようになり、生物は体を大きくするだけではなく、複雑な構造の器官が進化するのを手助けし、今日のように進化することができたと考えられています。 株式会社スタジオエル/スタジオアール Kasting, 1993

18 全球凍結と生命のかかわり カンブリア爆発の発生 原生代後期の氷河作用 生命進化 高濃度酸素によるコラーゲンの産出 全球凍結の融解後
田近,2011 フロンティアセミナー 原生代後期の氷河作用 全球凍結の融解後 大気や深海の   酸素濃度の最終上昇 生命進化 高濃度酸素によるコラーゲンの産出 多細胞生物の出現 カンブリア爆発の発生 全球凍結中 栄養塩の蓄積(~数千万年間) PO4 (b)全球融解直後    温暖化と栄養塩の供給増加 CO2 PO4 CO2 CO2 O2 PO4 富栄養化 爆発的な光合成活動 現在の酸素を含む大気を形成する ための酸素生成シアノバクテリアの増加や、それに続くメタン生成菌と炭素に富んだ大 気の減少と一致した。 全球凍結中  ・火山活動でCO2が脱ガス   → 大気中に蓄積 ・海底熱水系から鉄イオンが供給   → 海水中に蓄積 何しろ昼は光合成、夜は酸素呼吸とまさに両刀使いである。うらやましい。ミドリムシは光合成機能はあるが、今ひとつ働きが悪い為に他のエサを取るため動かねばならないが、ほとんどの植物たちは太陽の光を浴びていれば生きられるので、もう捕食の為にあくせく働く必要はなくなった。10億年前頃、真核生物達のなかに新たなたんぱく質コラーゲンを合成するものがあらわれる。コラーゲンは細胞外に分泌されたその後に酸化され、それを足場にして3本のコラーゲン同志が結合し、3つ編み状態の強い繊維になるものだ。 この真核生物は、誕生後に細胞分裂すると同時に吐き出したコラーゲンで接着して量を獲得、ひとつの「個体」になってしまう。  先カンブリア時代(2)−全球凍結(2)からつづく  8億年前から6億年前の期間に訪れたスターティアン氷期(Sturtian glacial period)やヴァランガー氷期(Varangian glacial period )と呼ばれる2度の氷期における全球凍結が起きた原因については諸説があって未だ確定したものは無いようですが、ひとつの仮説として二酸化炭素の減少による温室効果の喪失によるものがあります。  1. 当時の地球上には、約10億〜7億年前に誕生し、約6億年前に分裂を開始したと考えられている超大陸ロディニア(Rodinia; based on a Russian word for "homeland")が存在していましたが、その分裂による裂け目に生じた広大な浅い海は、光合成により酸素を発生する細菌シアノバクテリアや光合成藻類の繁殖地となり、その光合成により大気中の二酸化炭素は大量の有機物となって海底に蓄積されて行きました。  2. この大気中の二酸化炭素の減少により、温室効果が次第に失われて地球全体の寒冷化が始まり、極地から発達してきた氷床は赤道にまで及んで太陽光を反射し、一層の寒冷化を促していきました。  3. 一度加速した寒冷化は相乗効果によって進行し、最近の全球凍結時の気温分布シミュレーションによれば、極地で−90℃、赤道付近で−50℃、陸上では3,000m級の氷床に覆われ、海洋では水深1,000mまで凍結するスノーボールアース(Snowball Earth、全球凍結)と呼ばれる状態になり、数千万年続いたと考えられています。  4. 凍結しなかった深海底や地中深部ではごく微少な範囲での生命活動が維持され、凍結中でも火山活動による二酸化炭素の供給(年間約9千万トン)が続けられて、大気中の二酸化炭素濃度が高まって行きました。  5. 火山活動の放出による大気中の二酸化炭素濃度が一定比率に達すると気温が上昇しはじめ、大量の二酸化炭素の温室効果によって一気に氷床の解凍が始まり、大気温は約50℃まで上昇したと推測されています。  6. 海水の表面温度が45℃を越えたときに、「ハイパーハリケーン」と呼ばれる中心気圧300ヘクトパスカル、最大瞬間風速300m以上の猛烈な巨大ハリケーンが発生し始め、海上は大時化になり、海岸には高さ100mの巨大な高波が押し寄せたと計算されています。  7. 温暖化した気候の影響により岩石の風化が促進されて大量の金属イオンが海中に供給され、また、全球凍結期間中に海底の熱鉱床から噴出したミネラル分が「ハイパーハリケーン」によって攪拌され、浅い海にまで持ち上げられました。  8. 大気中の高濃度の二酸化炭素は海水中のカルシウムイオン等と反応して大量の炭酸カルシウムとなって沈殿し、50m以上にも及ぶ分厚い炭酸塩岩層が海底に形成されました。  こうして全球凍結後の地球では、浅い海の海水に含まれたミネラル分を養分として緑色の光合成生物が浅い海全域に広がり、大量の酸素を大気中に放出します。    酸素濃度が低かった時代には、酸素呼吸する生物にとって酸素は貴重品でしたが、酸素濃度の増加により水にほとんど溶けない、繊維状のタンパク質である大量のコラーゲンを作ることができるようになり、生物は体を大きくするだけではなく、複雑な構造の器官が進化するのを手助けし、今日のように進化することができたと考えられています。 [Kump (2008) Nature]

19 まとめ 太古代の地球環境 暗い太陽のパラドックス 酸素の出現と蓄積 古気候について豊富な情報を持つもっとも古い地質体
南アフリカ・バーバートン(32億年前)  温度推定:地球化学的制約・堆積学的制約 当時の地球は温暖 暗い太陽のパラドックス 太陽光度の進化 温室効果ガスとアルベドの寄与 二酸化炭素に加えメタンの温室効果とアルベドが重要 酸素の出現と蓄積 酸素濃度の進化 全球凍結と生命のかかわり 地層中に残された過去の気候変動と生命関係 30億年前は温暖であった可能性 二酸化炭素,メタン,アルベドの寄与 24億年前に起きた大酸化イベント 酸素発生型光合成の進化

20 参考文献 Anbar, A. D. et al. A whiff of oxygen before the Great Oxidation Event? Science 317, 1903–1906 (2007). Blake, R. E., Chang, S. J. & Lepland, A. Phosphate oxygen isotope evidence for a temperate and biologically active Archean ocean. Nature 464, 1029–1033 (2010). Clayton, R. N., O’Neil, J. R. & Mayeda, T. K. Oxygen isotope exchange between quartz and water. Journal of Geophysical Research 77, 3057–3067 (1972). Gough, D. O. Solar interior structure and luminosity variations. Solar Physics 74, 21–34 (1981). Evans, D. A., Beukes, N. J. & Kirschvink, J. L. Low-latitude glaciations in the Paleoproterozoic era. Nature 386, 262–266 (1997). Farquhar, J., Bao, H. & Thiemans, M. Atmospheric influences of Earth’s earliest sulfur cycle. Science 289, 756–758 (2000). Haqq-Misra, J. D. et al. Revised, hazy methane greenhouse for the Archean Earth. Astrobiology 8, 1127–1137 (2008). Jaffres, J. B. D., Shields, G. A. & Wallmann, K. The oxygen isotope evolution of sea water; A critical review of a long standing controversy and an improved geological water cycle model for the past 3.4 billion years. Earth-Science Reviews 83, 83–122 (2007). Kasting, J. F. Earth’s early atmosphere. Science 259, 920–926 (1993).

21 参考文献 Kasting, J. F. et al. Paleoclimates, ocean depth, and the oxygen isotopic composition of seawater. Earth and Planetary Science Letters 252, 82–93 (2006). Kharecha, P., Kasting, J. & Seifert, J. A. A coupled atmosphere-ecosystem model of the early Archean Earth. Geobiology 3, 53–76 (2005). Knauth L. Paul and Donald R. Lowe. High Archean climate temperature inferred from oxygen isotope geochemistry cherts in the 3.5 Ga Swaziland Supergroup, South Africa; Geological Society of America Bulletin 2003;115, no. 5; Kump Lee R., The rise of atmospheric oxygen; Nature 451, (17 January 2008) | doi: /nature06587; Published online 16 January 2008 Marmo, J. S. & Ojakangas, R. W. Lower Proterozoic glaciogenic deposits, eastern Finland. Geological Society of America Bulletin 98, 1055–1062 (1984). Pavlov, A. A. & Kasting, J. F. Mass-independent fractionation of sulfur isotopes in Archean sediments: Strong evidence for an anoxic Archean atmosphere. Astrobiology 2, 27–41 (2002). Rosing, M. T. et al. No climate paradox under the faint Sun. Nature 464, 744–747 (2010). Sleep, N. H. & Hessler, A. M. Weathering of quartz as an Archean climatic indicator. Earth and Planetary Science Letters 241, 594–602 (2006).

22 参考文献 Hessler, A. M. (2011) Earth’s Earliest Climate. Nature Education Knowledge 3(5):6 田近 惑星科学フロンティアセミナー 2011


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