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認定看護師研修センター がんのプロセスとその治療    2.がんの特徴                                                                         2010年                              生命基礎科学講座 

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1 認定看護師研修センター がんのプロセスとその治療    2.がんの特徴                                                                         2010年                              生命基礎科学講座                                                                   小林正伸

2 がんの特徴 1.がんはどのようにしてできるのか? 2.がん細胞の特徴は? 3.がんはどのような結末を迎えるのか?

3 癌細胞増加の時間経過 1012 109 106 1g: 最小臨床検出可能体積 1kg: 致死体積 109 1012 106 10
1個の細胞からスタートしておよそ30回以上の分裂を繰り返して、初めて検出可能となる。 検出可能となってからおよそ10回分裂すると致死的なサイズとなる。 109 1012 106 10 臨床検出可能体積に達するまでに10年以上の年月が要する。

4 がんの原因は何か? がんとは遺伝子病である。 1.遺伝子変異のないがんは存在しない。 2.がんの発生には1つの遺伝子変異だけではなく、複数の
  遺伝子変異が必要である。 3.複数の遺伝子変異は、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、DNA   修復遺伝子の変異の組み合わせである。 がんとは遺伝子病である。

5 腫瘍の発生分子機序 1.癌遺伝子の活性化 2.癌抑制遺伝子の不活化 3.細胞周期関連遺伝子の異常 4.アポトーシス機構の異常
(どのように遺伝子異常が発生するのか?) 1.癌遺伝子の活性化 2.癌抑制遺伝子の不活化 3.細胞周期関連遺伝子の異常 4.アポトーシス機構の異常 5.DNA修復酵素の異常 6.DNAメチル化 7.テロメラーゼ活性の異常

6 癌遺伝子の活性化 1911年ラウスによってニワトリに癌を起こすウイルスが発見された。ラウス肉腫ウイルス中の癌化を起こす遺伝子としてsrcが見いだされ、それ以降各種癌ウイルスからがん遺伝子が同定された。1976年Bishopらが、ラウス肉腫ゲノム中のsrc癌遺伝子とほとんど同じ相同遺伝子が正常遺伝子配列中にも存在するということを発見し,現在の癌遺伝子の概念を明確にした。正常細胞中の遺伝子を癌原遺伝子と呼ぶ。 狭義の癌遺伝子とは,片方のallele(アリル)の遺伝子変異によって機能を獲得した結果,トランスフォーメーション能を有するドミナント(優性)型の遺伝子と定義される。

7 癌遺伝子 癌遺伝子を機能的に分類してみると、ほとんどが増殖に関係する蛋白をコードしている。 機能別分類 癌遺伝子 備考
機能別分類 癌遺伝子 備考 増殖因子 sis 血小板由来増殖因子 int-2 線維芽細胞増殖因子 受容体型チロシンキナーゼ fms MCSFR her2 EGFR met HGFR 非受容体型チロシンキナーゼ src abl セリンスレオニンキナーゼ raf シグナル伝達 GTP結合蛋白 ras シグナル伝達 核蛋白 myc myb 癌遺伝子を機能的に分類してみると、ほとんどが増殖に関係する蛋白をコードしている。

8 癌遺伝子・・・・・・癌原遺伝子 正常細胞 癌細胞
増殖因子 int-2 sis wnt EGFなど 増殖因子レセプター ErbB2 fms kit met など 増殖シグナル伝達分子 raf src ras pimなど 転写因子 fos egr ets mycなど 正常細胞では増殖の刺激を伝達するのに使われている遺伝子である(癌原遺伝子) 正常細胞 癌細胞 癌細胞では増殖因子の刺激が無くても、例えばシグナル伝達分子に異状が入ると増殖シグナルが常にスイッチオンになる(癌遺伝子)

9 癌抑制遺伝子の不活化 染色体欠失を検討した結果網膜芽細胞種では,13番染色体が欠失していることが判明した。1986年Weinberg らによって世界初の癌抑制遺伝子Rbが単離された。癌抑制遺伝子は,ひとつのalleleの変異ではなく,二つが機能欠失することによって発癌に結びつく遺伝子である。

10 癌抑制遺伝子 癌抑制遺伝子 遺伝性癌 非遺伝性癌 機能 Rb 家族性網膜芽細胞種 骨肉種,肺癌など 転写制御
癌抑制遺伝子 遺伝性癌 非遺伝性癌 機能 Rb 家族性網膜芽細胞種 骨肉種,肺癌など 転写制御 P53 Li-Ffraumeni症候群 大腸癌,肺癌など 転写制御 P16 家族性悪性黒色腫    食堂癌など 細胞周期制御 WT1 ウイルムス腫瘍 腎芽腫 転写制御 APC 家族性大腸ポリポーシス 大腸癌,胃癌など 接着因子 vHL von Hippel lindau病 腎臓癌 ユビキチン化 BRACA1 家族性乳癌 乳癌 不明 BRACA2 家族性乳癌 乳癌 不明 DCC 不明 大腸癌 接着因子 IRF1 不明 不明     転写制御

11 癌抑制遺伝子 発癌性の刺激 正常 p53 欠陥 変異の修復 アポトーシス (細胞死) 腫瘍 癌遺伝子に変異がおきた時の「保険」として遺伝子が変異すると細胞増殖を抑制するシステムを細胞は持っている。これが癌抑制遺伝子と呼ばれるものでp53が代表的なもの。正常のp53の存在下では、発癌刺激によってDNAに変異が入った細胞は細胞周期のG1期に停止する。その期間で変異を修復するか、修復できない場合にはアポトーシスを誘導する。 553の機能が失われていると、細胞周期が停止せずに細胞分裂が起こり、娘細胞に変異が引き継がれる。

12 DNA修復酵素異常の関与は? DNAミスマッチ修復遺伝子異常とLynch症候群(HNPCC (hereditary nonpolyposis colorectal cancer) )として知られていた癌多発の家系との関連が明らかにされつつあり, DNAミスマッチ修復遺伝子異常は癌体質とか,癌多発家系の原因の一つと考えられる。

13 DNA修復とは? 2本鎖DNAに活性酸素が働き、グアニンに酸素が結合すると、複製される時に相手としてアデニンが対応する。もう一度複製されると、グアニンがチミンに交換され、GCが最終的にはATに変異してしまう。 このようなDNAの損傷を修復する酵素をDNA修復酵素と呼ぶ。

14 Lynch症候群(HNPCC (hereditary nonpolyposis colorectal cancer) )
壊れた遺伝子を修復する蛋白」をつくる遺伝子に異常が起こることによってHNPCCの体質を持つ。この遺伝子はMMR遺伝子(mismatch repair gene:ミスマッチ修復遺伝子)と呼ばれ、現在までに6種類の遺伝子が確認されており、なお未確認のものがあると考えられている。遺伝子変異は6つのいずれの遺伝子にもおこりえる。

15 DNAメチル化の関与は? プロモーター領域がメチル化された遺伝子は転写が阻害されており,増殖関連遺伝子の脱メチル化による活性化や,癌抑制遺伝子のメチル化による不活化が癌化の一要因となっている可能性が指摘されている。メチル化のようなepigeneticな変化は可逆性であり,治療の対象となることが期待できる。 Cold Spring Harb Symp Quant Biol. 2005;70: Aberrant gene silencing in tumor progression: implications for control of cancer. Baylin SB, Chen WY. The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center at Johns Hopkins, Baltimore, Maryland 21231, USA.

16 DNAメチル化とは? DNAの遺伝子読み込みを開始をスイッチオンする部位には転写因子が結合する。
この部位がメチル化されていると、転写因子が結合できないために遺伝子の読み込みが開始されない。このような機構は、胃の細胞で発現すべきでない遺伝子がサイレントである機構として働いている。

17 テロメアDNA,テロメラーゼの関与は? 各種癌細胞株のテロメラーゼ活性を測定すると100株中98株でテロメラーゼ活性が検出されるなど,テロメラーゼ活性が癌の不死化に関与している可能性が考えられる。 Cold Spring Harb Symp Quant Biol. 2005;70:205-8. Telomerase and cancer stem cells.     Armanios M, Greider CW.           Department of Oncology, Johns Hopkins University School of               Medicine, Baltimore, Maryland 21205, USA.

18 Initiation/Promotion
発癌機構の考え方の変遷 19世紀 Two step theory Initiation/Promotion Multi-step theory 癌刺激説 Virchow 1915年、山極と市川がウサギを用いてコールタールを刺激物として実験的に癌を発生させることに成功した。 発癌物質の探求が進むにつれ、発癌性を持つ物質(発癌イニシエーター)とそのもの自体は発癌性は持たないがイニシエーターが共存すると発癌確率が大幅に向上する物質(発癌プロモーター)が発見され、イニシエーター/プロモーター発癌仮説が提唱された。 1980年代以降の分子生物学の急速な進展により、プロモーター作用とされていたものが複雑な細胞内シグナル伝達と遺伝子発現制御機構であることが徐々に判明し、現在では発癌には複数の遺伝子の順次変化が必要であるとする多段階発癌説が提唱されている。

19 遺伝子とがん 1890−1914 細胞分裂の際の染色体分布の研究より 1987 それががん化に関係? 「Ph1染色体」の原因遺伝子
BCR/ABLが発見される。 1950−1960 腫瘍ウイルス遺伝子の注入ががん化 1990 ヒトゲノム計画開始。 1960 慢性骨髄性白血病特異的ゲノム異常 の発見。「Ph1染色体」 1993 グリベックの臨床試験開始。 1976 非ウイルス性の遺伝子srcががんの 原因。 1999 遺伝子活性ががんのタイプによって異なり、 抗がん剤の感受性を決めることが示される。 1979 P53遺伝子の発見。 2001 グリベックがFDAの承認をえる。 1981 最初のがん遺伝子H-RASが発見。 2003 ヒトゲノム計画終了。 1983 癌細胞でのDNAメチル化異常。 1986 ダルベッコがヒトゲノム解析を呼びかける。

20 発癌の原因は? 1.自然に生じるDNA複製エラー 2.発癌物質(細胞障害性、炎症性) 3.発癌物質(DNA直接障害性)
4.放射線(紫外線を含む) 5.染色体異常 6.ウイルス起源がん遺伝子の導入 7.遺伝的要因 遺伝子の変異は、2-6 にあげたような機序で積極的に変異が導入される機構もあるが、もともと持っていたポリメラーゼという酵素の単純ミスが原因と考えられる自然に生じる複製のエラーも原因となる。

21 がんの原因:遺伝的素因と環境要因の関係する割合
からだの科学「がんの新事典」日本評論社2007年より引用 がんは食事や喫煙などの後天的要因と生まれつきの体質(遺伝的要因)の相互作用によって発症する疾患である。遺伝的素因の多くは、複数の遺伝子が関与する多遺伝子病と考えられるが、一部の癌は単一遺伝子病として発病し、特定の主要の家系内集積、若年発症、多重多発がんへの罹患などの特徴を示す。

22 遺伝的要因によって起こる癌 女性のBRCA1遺伝子がもたらす、乳がんあるいは子宮がん
多発性内分泌腺腫 (multiple endocrine neoplasia) - 遺伝子MEN  types 1, 2a, 2bによる種々の内分泌腺の腫瘍 p53遺伝子の変異により発症するLi-Fraumeni症候群 (Li-Fraumeni   syndrome) (骨肉腫、乳がん、軟組織肉腫、脳腫瘍など種々の腫  瘍を起す) 若年期に大腸がんを発症する、APC遺伝子の変異が遺伝した家  族性大腸腺腫症 (Familial adenomatous polyposis)

23 BRCA1遺伝子の生殖細胞系列変異陽性の 遺伝性乳癌卵巣癌の家系図
40 乳癌(35) 38    74 前立腺癌(70) D. 50 卵巣癌 D. 68 乳癌 67 70 発見のきっかけは40歳の乳癌患者であるが、父親が前立腺癌であり、父方のおばが2人卵巣癌と乳癌で亡くなっていた。このように単一遺伝子以上であっても発生する腫瘍は単一ではなく、原因遺伝子が父方由来である場合には近親者に乳癌患者がいない場合もある。

24 自然に生じるDNA複製エラー これらの変異が、がんという病気をもたらすと考えられているが、
C G A T センス鎖 アンチセンス鎖 DNA DNA複製 DNAポリメラーゼ ヒトDNAポリメラーゼは、10億回に1回ミスをする。1個の細胞の持つDNAは31億塩基対あり、1回の分裂毎に3箇所にミスが入ることを示唆する。 これらの変異が、がんという病気をもたらすと考えられているが、 一方生殖細胞におこれば生物の進化の原動力でもある。

25 癌の要因の癌死亡への寄与率(推定値) 要因 寄与割合 (%) 喫煙 (Tobacco) 30
要因 寄与割合 (%) 喫煙 (Tobacco) 成人期の食事・肥満 (Adult diet/obesity) 生活様式 (Sedentary lifestyle) 職業要因 (Occupational factors) がんの家族歴 (Family history of cancer) ウイルス・他の生物因子 (Viruses/other biologic agents) 5 周産期要因・成長 (Perinatal factors/growth) 5 生殖要因 (Reproductive factors) 飲酒 (Alcohol) 社会経済的状況 (Socioeconomic status) 環境汚染 (Environmental pollution) 電離放射線・紫外線 (Ionizing/ultraviolet radiation) 2 医薬品・医療行為 (Prescription drug/medical procedures) 1 塩蔵品・他の食品添加物・汚染物 (Salt/other food additives/contaminants) 1 Harvard Center for Cancer Prevention: Harvard Report on Cancer Prevention, Volume 1: Causes of Human Cancer, Cancer Causes Control 1996 ;7:S3-S59.より改変

26 食物・栄養要因とがん発生との関連についての科学的証拠に基づく評価
関連の強さ リスクを下げるもの リスクをあげるもの 確実 身体活動(結腸癌) 過体重と肥満(食道腺癌、結腸癌、直腸癌、 乳癌(閉経後)、子宮体部、腎癌) 飲酒(口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、 肝臓癌、乳癌) アフラトキシン(肝癌) 中国式塩蔵魚(鼻咽頭癌) 可能性大 野菜・果物(口腔癌、食道癌、胃癌、 貯蔵肉(結腸癌、直腸癌) 結腸癌、直腸癌) 塩蔵品および食塩(胃癌) 身体活動(乳房) 熱い飲食物(口腔癌、咽頭癌、食道癌) 可能性あり 食物繊維、大豆、魚、N-3系脂肪酸、 動物性脂肪、ヘテロサイクリックアミン、 /データ不十分 カロテノイド、ビタミンB2, B6, 葉酸、 多環芳香族炭化水素、ニトロソ化合物 B12, C, D, E、カルシウム、亜鉛、 セレン、非栄養性植物機能成分 WHO technical report series 916. Diet, nutrition and the prevention of chronic diseases. WHO, Geneva, (2003) より改変

27 野菜・果物の摂取量と発癌危険度の関係 2005年の厚生労働省研究班の4万人を対象にした調査では、野菜や果物を週に1回未満の場合には胃がんの発症危険度が高かった。しかし、週1回以上食べている場合には多くても差はなかった。大腸がんと食物繊維でも同じことが言えた。食物繊維が10g以上であればそれ以上に多くても意味はなかった。

28 「発癌機構、癌の予防と食品」に潜む危険な罠
「すれば癌にならない。」 「すると癌になる。」は本当か? 「乳製品を多く摂取する男性は前立腺癌になりやすい。」という研究成果                    本当か? 可能性1.乳製品を多く摂取する地域に地域特有の事情がある? 可能性2.乳製品を多く摂取する人は、親類に癌が多いので予       防するために乳製品を多くとっているかも知れない?       摂取したことによって摂取しない時に比較すると癌は       減っている可能性もある。 以上のようなことを交絡因子と呼ぶ.前立腺がんの発症(A)の真の原因をB、乳製品をC として、実際はBAなのだが、BとCが見かけ上連動していて、Bがわからない場合、CAのように見える.

29 その2.わかりやすい例 黄色い指の人は肺癌になりやすい.10数倍のリスクがある.
黄色い指の人に対して指を切り落とすよう勧告がなされた.多くの人が従った. 長期間経って観察データーがまとまった.指を切断した人の肺癌発生率は低下していた. 指が黄色くなることが肺癌の発生要因である.        (この結論は正しいのか?) 喫煙者では、指が黄色くなっていた.肺癌の原因は喫煙であり、指を切断した人(介入試験)は、煙草が吸えなくなったので禁煙をし、肺癌発症が減った.         こういう研究が多い!!!

30 癌における染色体異常 染色体異常の記載方法 慢性骨髄性白血病のPh1染色体 記載 意味 -1 1番染色体の欠失 +7 7番染色体の1本増加
記載      意味 -1 1番染色体の欠失 +7 7番染色体の1本増加 2q- 2番染色体の長腕の一部欠失 4p+ 4番染色体の短腕付加 t(9;22)(q34;q11) 9番染色体と22番染色体の間  で相互転座があり、切断点は9番   染色体のq34と22番染色体の    q11である。 Inv(16)(p13q22) 16番染色体のp13とq22の間で    一部に逆位がある。 慢性骨髄性白血病のPh1染色体

31 世界における慢性感染に起因するがん 感染源 部位 年間罹患数 割合
感染源 部位 年間罹患数 割合 ヘリコバクター・ピロリ菌 (H. pylori) 胃 490, ヒト・パピローマ・ウイルス (HPV) 子宮頚部・他 550, 肝炎ウイルス(B、C型)(HBV, HCV) 肝臓 90, EBウイルス (EBV) リンパ腫、鼻咽頭 99, ヒト・ヘルペス・ウイルス8型 (HHV-8) カポジ肉腫 54, ビルハルツ住血吸虫 (Schistosoma haematobium) 膀胱 9, ヒトT細胞性白血病リンパ腫ウイルス (HTLV-1) 白血病・リンパ腫 2, 肝吸虫 (Liver flukes) 胆管細胞がん 800     感染関連がん総数 1,600,   がん総数(1995年) 9,000,

32 子宮頸癌とパピローマウイルス感染 HPVは性交渉により感染するウイルスであり、性交経験のある女性では誰でも感染しうる。ほとんどの女性は感染履歴を有すると考えられる。HPVに感染しても多くの場合は、免疫力によってHPVが体内から排除される。 HPV感染の大半は2年以内に自然消失するが、約10%の人では感染が長期化(持続感染化)する。HPVが持続感染化するとその一部で子宮頸部の細胞に異常(異形成)を生じ、さらに平均で10年以上の歳月の後、ごく一部(感染者の1%以下)が異形成から子宮頸癌に進行する。 多数あるHPVウイルスのうちハイリスク型とされるHPVの持続感染が頚癌と深く関わっており、頚癌の95%以上にHPVが検出される。

33 成人T細胞性白血病 1.Human T-lymphotropic virus type-I (HTLV-1)感染によっておこる白血病。
2.日本が世界一の多発地帯で、特に九州・沖縄などに集中する。 3.末梢血に異常リンパ球(ATL細胞)が出現。血清LDH高値、カルシウム高値。 4.血清中に抗HTLV-1抗体、ATL細胞にHTLV-1プロウイルスが認められる。 5.急性型、慢性型、くすぶり型、急性転化型、リンパ腫型などの多種類の病型がある。 6.ATL細胞はCD4陽性の末梢型ヘルパーT細胞由来である。 7.HTLV-1感染は母から子、男から女、輸血の3経路があり、生きたリンパ球が運ぶ。 典型的なATL細胞で、核がくびれてクローバー様になっている

34 がんの特徴 1.がんはどのようにしてできるのか? 2.がん細胞の特徴は? 3.がんはどのような結末を迎えるのか?

35 腫瘍細胞の生物学的特徴とは何か? 1.自律性増殖能の獲得 1)増殖シグナルの自己充足 2)増殖停止シグナルへの不応答 2.単クローン性の増殖
 1)増殖シグナルの自己充足  2)増殖停止シグナルへの不応答 2.単クローン性の増殖 3.細胞の分化異常 4.アポトーシスの異常 5.浸潤・転移能の獲得 6.持続的な血管新生

36 細胞の分化異常とは何か? 正常な組織では,様々のサイトカインや増殖因子の経時的な作用によって,幹細胞や未分化細胞の整合性ある分化が引き起こされて,正常な組織構造をとっている。腫瘍細胞はこれらの分化制御機構から逸脱しており,分化過程の異常な状態にあると考えられている。胃癌などでも,未分化癌もあれば分化癌もあるが,その整合性がない為に組織としては正常ではない。

37 造血細胞の分化と白血病における分化の異常
全ての血液細胞は、造血幹細胞の増殖と分化によってできあがる。1個の多能性造血幹細胞は、血小板、赤血球、全ての白血球への分化能力を持っており、増殖しながら一部が分化して必要な成熟血球を補給している。成熟血球はいずれアポトーシスにて死滅する。 正常骨髄 一方白血病細胞は、分化形態を示さず(分化の停止)、成熟しないためにアポトーシスしにくく、数が増加する。

38 アポトーシスの異常とは何か? アポトーシスとは細胞死の一つのタイプで,不要となったときに自殺するように死んでいく Programmed Cell Death (PCD) とも呼ばれる。正常組織では,最終分化した細胞が老化によって死んでいき,一方幹細胞が増殖して補充することで組織構造が保持されている。腫瘍では,このアポトーシス機構に異常があり,死なないために細胞が蓄積して腫瘤を形成すると考えられている。

39 細胞の死は壊死とアポトーシスとにわけられる。
壊死(Necrosis) アポトーシス(Apoptosis) 細胞死 受動的(傷害等の外因) 能動的(遺伝子のプログラムによる) 非生理的     生理的細胞死 炎症   あり   なし 核、DNA   著変なし DNA の規則的断片化(DNAラダー) ミトコンドリア 腫脹 変化なし 細胞質 膨張 縮小 断片化(アポトーシス小体) アポトーシスの形態変化 アポトーシスの誘導 マクロファージによる貪食 アポトーシス小体の形成 細胞核の断片化 クロマチンの凝集

40 アポトーシスの複雑なシグナル伝達経路 アポトーシスの主な経路 1.アポトーシス受容体 2.増殖因子、栄養などの 欠乏 3.放射線、抗癌剤
放射線・抗癌剤 アポトーシスの主な経路 1.アポトーシス受容体 2.増殖因子、栄養などの  欠乏 3.放射線、抗癌剤

41 ヒトの癌と関係するアポトーシス関連遺伝子
遺伝子 がんにおける役割 p53 ヒトのがんで最も頻繁に変異がみられる Rb 種々のがんで変異がある。Rbが機能しないとp53依存的および 非依存的にアポトーシスが誘導される PTEN がんで変異があるか発現が減少している Akt活性を抑制するが、 発現がないとAktが常時活性化されてアポトーシスを阻害する Bak がんで変異があるか発現が減少している Bax がんで変異があるか発現が減少している Fas リンパ腫と固形腫瘍で遺伝子変異があるか発現が減少している Bcl-2 がんでしばしば発現量が増加している IAP がんでしばしば発現量が増加している Akt 固形がんでしばしば発現量が増加している これらの遺伝子はすべてアポトーシスシグナルに関係している。

42 転移能はがん特異的? 一般に局所に限局した腫瘍は良性腫瘍の境界とされ、やがて局所を越えて浸潤していく。局所を越えて広がり、遠隔臓器に転移巣を形成した腫瘍は、悪性化の末期像といえる。

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45 腫瘍の進展と不均一性 正常細胞 最初の形質転換細胞 2度目の形質転換がおこった 新しい細胞クローン 3度目の形質転換がおこった アポトーシスした細胞 2番目のクローン 3番目のクローン 上の図で示したように3回の変異がはいることで、少なくとも3種類のクローンからなる細胞集団でがん組織が構成されることになる。実際のがんでは、より多くの変異がはいっていると考えられ、より多くのクローンからなる不均一な細胞集団からなっている。転移能を持つ細胞集団もがん組織を構成する細胞のほんの一部分である。

46 血管新生 腫瘍がとても小さいときは、周辺組織から栄養を吸収するが、腫瘍が1~2mmの大きさに成長するとより多くの酸素、栄養が必要となるため血管を新しく作らなければならない。 そのために腫瘍は血管新生を誘導する物質を分泌する。その物質が血管の受容体に結合すると、皮内細胞は腫瘍へと血管を形成し始める。このようなプロセスで血管を獲得した腫瘍は最終的に血管から栄養を得て、更に成長することができるようになる。

47 血管新生を標的とした薬剤の開発 血管新生の流れを、どこかの部分で断ち切ってしまえば、がんは血管を得ることができず、したがって栄養が得られず、死んでしまうはずです。たとえば命令を受ける「受容体」に先回りしてそれをブロックしてしまえば、増殖因子がいくらがんばっても新しい血管はできない。こうした発想の薬を「血管新生阻害剤」と呼び、すでに1種類が承認されている。


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