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国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保

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1 国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
これまでにわかった太陽系外惑星の世界 国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保

2 目次 はじめに:太陽系外惑星(系外惑星)の研究について これまでにわかったこと これからの系外惑星研究の展望
どんな方法で、どんな惑星が見つかったのか 今までに何がわかったのか これからの系外惑星研究の展望 若手研究者による分野間連携研究プロジェクトについて

3 太陽系の惑星たち 太陽系第3惑星:地球 私たちはこの惑星に住んでいる

4 「生命を育む惑星」は宇宙にありふれているのか?
宇宙の中の太陽系と地球 最初の系外惑星の発見まで、太陽系は人類が知る唯一の惑星系だった → ある意味標準と考えるしかなかった 系外惑星の発見は、太陽系と地球という存在を振り返るきっかけをもたらした はたして太陽系は宇宙の標準か? 「生命を育む惑星」は宇宙にありふれているのか? それとも地球は「奇跡の惑星」なのか?

5 系外惑星研究の意義 さまざまな系外惑星を知り、比較することで 太陽系と地球という存在についてより深く理解できる
系外惑星の研究を通して得られる知識は 哲学的な問いに科学的なヒントをもたらし 私たちの宇宙観を変えていくきっかけとなる

6 系外惑星探査の歴史(抜粋) 1995年 最初の「視線速度」による系外惑星の発見 1999年 最初の「トランジット」をする惑星の発見 2008年 最初の「直接撮像」による惑星の発見 2010年以降 「ケプラー計画」による多数の発見

7 恒星を惑星が公転していると、恒星も反動で少しだけ動く
どうやって発見したか? 恒星を惑星が公転していると、恒星も反動で少しだけ動く 「光のドップラー効果」を使って この速度(視線速度)を望遠鏡で測定する 恒星 ちなみに ・太陽は ~10 m/s でふらついている ・世界最高の装置は 1 m/s 以下まで測定可 ・将来は ~10 cm/s の測定を目指している 惑星

8 最初に発見された惑星のデータ ペガスス座51番星の視線速度 恒星の視線速度 (m/s) 公転周期で折りたたんだ時間(=位相)

9 どんな惑星だったか? 灼熱の巨大ガス惑星 → ホットジュピター 名前:ペガスス座51番星b 公転周期 ~ 4.2日 (水星でも88日)
公転周期 ~ 4.2日 (水星でも88日) 恒星(太陽)からの距離  = 地球と太陽の距離の20分の1 表面温度 ~ 1000度以上 惑星質量 → 太陽系の木星程度 灼熱の巨大ガス惑星 → ホットジュピター

10 視線速度で発見された奇妙な惑星 恒星の視線速度 (m/s) 位相

11 軌道が細長いだ円の惑星 → エキセントリックプラネット HD80606bの惑星の軌道と 太陽系惑星の軌道の比較 近いところは恒星のすぐそば
遠いところは地球あたり 軌道が細長いだ円の惑星 → エキセントリックプラネット

12 視線速度はさらに質量の小さな惑星へ 地球の2-10倍程度の質量を持つ惑星 → スーパーアース GJ876dの視線速度 (地球質量の約6倍)
恒星の視線速度 (m/s) 地球の2-10倍程度の質量を持つ惑星 → スーパーアース 位相 Rivera et al. (2005)

13 ホットジュピター(青)やスーパーアース(緑)は珍しくない
系外惑星の公転距離と最小質量の分布 1 10 100 0.1 0.01 軌道長半径(天文単位) 質量 (木星質量) 0.001 木星 地球 金星 ホットジュピター(青)やスーパーアース(緑)は珍しくない

14 系外惑星の軌道離心率分布 エクセントリックプラネット 木星 エキセントリックプラネットも数多くある

15 視線速度で発見された惑星 ホットジュピター エキセントリックプラネット スーパーアース 太陽系には存在しないタイプの惑星が
宇宙には普遍的に存在する

16 系外惑星のトランジット(食) 系外惑星のトランジット 太陽系での食現象 系外惑星の軌道が太陽系から見てたまたま主星の前を通過する場合
惑星の公転周期に同期して主星が暗くなる現象が観測される 皆既月食 「ひので」撮影 水星のトランジット 皆既日食 少しだけ暗くなる 系外惑星のトランジット 太陽系での食現象

17 最初の系外惑星のトランジット HD209458の明るさ 相対光度 減光中心からの時刻(日)
Charbonneau et al. (2000) 減光中心からの時刻(日)

18 トランジットの形と惑星の情報 惑星の軌道傾斜角, トランジット中心時刻 主星と惑星の 大きさの比 惑星の公転軸 主星 惑星の軌道傾斜角
観測方向 惑星

19 トランジットが観測できるとさらに惑星の詳細を調べられる
トランジット観測からわかること 惑星の公転周期 惑星の半径 惑星の軌道傾斜角 トランジット中心時刻 惑星の質量(視線速度とあわせて) 惑星の密度(視線速度とあわせて) トランジットが観測できるとさらに惑星の詳細を調べられる

20 惑星のサイズや密度がわかるので、惑星の内部構造がわかる
巨大コア 膨らみすぎ Charbonneau et al. (2006) 惑星のサイズや密度がわかるので、惑星の内部構造がわかる

21 トランジット惑星の大気の観測 トランジットを利用した透過光分光・測光観測 トランジット中は主星の光が惑星の大気を一部透過するため、
惑星および外層大気 主星の光 主星元素の吸収線 惑星大気による追加吸収 トランジット中は主星の光が惑星の大気を一部透過するため、 惑星の大気を観測することができる

22 これまでに報告された大気成分 水蒸気 メタン その他、ナトリウム、カリウムやCO2やCOなど
HD209458b: Barman (2007) HD189733b: Tinetti et al. (2007) メタン HD189733b: Swain et al. (2008) その他、ナトリウム、カリウムやCO2やCOなど ▲:観測点 赤:メタン+水蒸気 青:水蒸気のみ Swain et al. (2008)

23 トランジット観測からわかったこと 惑星の質量・半径・密度の分布 太陽系の惑星とは異なる内部構造の惑星の存在 惑星の大気組成など

24 系外惑星探査の歴史(抜粋) 1995年 最初の「視線速度」による系外惑星の発見 1999年 最初の「トランジット」をする惑星の発見 2008年 最初の「直接撮像」による惑星の発見 2010年以降 「ケプラー計画」による多数の発見

25 直接撮像はなぜ難しいか 暗いもののそばに明るいものがあると 何も見えなくなってしまう

26 主星の光を低減する「コロナグラフ」 すばる望遠鏡CIAOの仕組みより

27 Bが本物で、Cは背景の無関係の恒星であることがわかった
すばる望遠鏡での惑星発見例 Thalmann et al. (2009) Bが本物で、Cは背景の無関係の恒星であることがわかった

28 ケプラー計画 太陽-地球のような惑星系の発見が目標 白鳥座付近の10万個以上の恒星を3.5年以上にわたってモニターし続ける
95cm望遠鏡とCCD 42枚によるトランジット惑星探し 2009年3月6日に打ち上げ Kepler 打ち上げの様子

29 ケプラーの観測領域

30 ケプラーが打ちあがる前に知られていた惑星
HAT-P-11 (Kepler-3) HAT-P-7 (Kepler-2) TrES-2 (Kepler-1)

31 Keplerが最初の4か月で発見した惑星候補
地球サイズ <1.25 RE スーパーアース 海王星サイズ 木星サイズ 1235個の惑星候補の発見

32 2011年12月に発表された候補 2326個の惑星候補の発見

33 約50個の惑星で 液体の水が存在できる (うち地球型惑星は5個)

34 生命居住可能領域の惑星Kepler-22b

35 地球とほぼ同じサイズの惑星Kepler-20f
地球サイズの惑星の発見 地球とほぼ同じサイズの惑星Kepler-20f 火星とほぼ同じサイズの惑星KOI

36 その他の面白い発見 2つの太陽を持つ惑星Kepler-16b → タトゥイーン型惑星(SFが現実に!)

37 これまでの系外惑星探査でわかったこと 宇宙には本当にさまざまな惑星がある ・ホットジュピター ・エキセントリックプラネット ・スーパーアース
・2つの太陽を持つ惑星 ・生命居住可能領域にある惑星など 太陽系は宇宙の標準的な惑星系ではなさそう また、生命居住可能領域の惑星は普遍的に存在する

38 目次 はじめに:太陽系外惑星(系外惑星)の研究について これまでにわかったこと これからの系外惑星研究の展望
どんな方法で、どんな惑星が見つかったのか 今までに何がわかったのか これからの系外惑星研究の展望 若手研究者による分野間連携研究プロジェクトについて

39 ケプラーの弱点 ケプラーは生命居住可能惑星を発見しつつあるが、 太陽系から遠く離れた暗い惑星系が多い
高いSNを必要とする研究(惑星大気の観測など)には、 もっと太陽系に近い明るいターゲットが必要 今後はもっと太陽系に近い恒星の 惑星探しが計画されている

40 今後の惑星探し計画 MEarth:地上望遠鏡による低温度星に特化したトランジットサーベイ(現在は北天のみだが南天でも開始予定)
M2K:地上望遠鏡による低温度星の視線速度・トランジットサーベイを開始(ハワイ大グループ) 我々のグループ:ハワイ大グループと協力して、岡山天体物理観測所188cm望遠鏡で低温度星のトランジットサーベイを開始 TESS:宇宙望遠鏡による明るい恒星に特化したほぼ全天トランジットサーベイ(2016年以降)(成田がCo-Iで参加)

41 低温度星とは 宇宙で最も多く存在する恒星 主星の質量が太陽の0.1-0.5倍程度で、温度は2000-3800K (太陽は約5800K)
恒星の約7-8割 太陽系近傍にも数多く存在している 主星の質量が太陽の 倍程度で、温度は K (太陽は約5800K) 可視光では暗く、近赤外で明るい 恒星のスペクトルは概ね黒体輻射 さらに低温度星は恒星自身の分子吸収で可視光が弱い

42 低温度星の生命居住可能領域 恒星のまわりで液体の水が存在する位置は 恒星の温度によって変わる

43 同じ生命居住可能惑星でも地球とは大きく異なった環境
低温度星の生命居住可能惑星の特徴 主星の温度が低いので生命居住可能領域が近い 軌道長半径が0.01~0.1天文単位 公転周期が数日~数十日 可視光が弱く、近赤外の光の方が強い 潮汐固定によって惑星が常に同じ面を主星に向けている 月が常に地球に同じ面を向けているのと同じ現象 同じ生命居住可能惑星でも地球とは大きく異なった環境

44 この答えを出すには分野の枠を超えた研究者の連携が必要
生命科学からの理論的研究の必要性 どんな生物がいる可能性があるのか? 何を生命の痕跡として探せばよいのか? その痕跡は科学的にありうるのか? 実際に観測可能なのか? この答えを出すには分野の枠を超えた研究者の連携が必要

45 低温度星まわりの生命居住可能な地球型惑星の 植物特性の考察とその観測に向けて
平成24年度 若手研究者による分野間連携研究プロジェクト 低温度星まわりの生命居住可能な地球型惑星の 植物特性の考察とその観測に向けて 国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保

46 本プロジェクトの背景 太陽系外惑星探査は近年急速に進展している 生命居住可能領域にある惑星も発見された 地球や火星サイズの惑星も発見された
SFではなく、宇宙に生命の痕跡を探す時代になりつつある

47 地上超大型望遠鏡の計画 ハワイに建設が予定されているTMT(30m望遠鏡) 太陽系近傍の低温度星を公転する生命居住可能惑星を観測可能
2021年以降  太陽系近傍の低温度星を公転する生命居住可能惑星を観測可能

48 低温度星まわりの生命居住可能惑星における植物特性の考察とその観測に向けて
平成23年度 若手研究者による分野間連携研究プロジェクト 低温度星まわりの生命居住可能惑星における植物特性の考察とその観測に向けて 国立天文台:成田 憲保、田村 元秀、基礎生物学研究所:滝澤 謙二、皆川 純 連携研究機関(京都大学、北海道大学、宇宙科学研究所、東京工業大学、ハワイ大学) 背景:天文学では近い将来に低温度星を公転する生命居住可能惑星の観測が行われる見込み 課題:低温度星まわりの生命居住可能惑星にはどんな「植物」(光合成生物)が存在しうるのか? そのような生命居住可能惑星をどうやって発見し、どのように生命の痕跡を探せばよいのか? 低温度星 3,000K ~3,800K 観測対象の探索 スペクトルに現れる 生命存在の兆候 ハワイに建設される 30m望遠鏡(TMT) 生命居住可能惑星 (水の存在) 生命痕跡についての 理論的研究 新たな装置開発 本プロジェクトの目的:天文学・生物学・惑星科学・工学の若手研究者の分野間連携によって これらの課題に取り組み、近い将来に行われる宇宙の生命痕跡探しの共同研究体制を確立する <平成23年度の主な成果> 地球植物が持つred edgeという特性が植物形態や細胞構造によらないことを実験で確認 低温度星まわりの生命居住可能惑星で実現しうる植物の光合成の仕組みを理論的に考察 太陽系近傍の低温度星を公転する地球型惑星の探索に向けた観測・データ解析体制の確立 TMTで低温度星を公転する地球型惑星を直接撮像する観測装置の性能実証機を開発

49 3つの連携研究テーマ テーマA: 低温度星まわりの生命居住可能惑星での植物特性の考察
滝澤謙二(基生研)、皆川純(基生研)、竹澤大輔(埼玉大学)、Martin Hohmann-Marriot(ノルウェー科学技術大学) テーマB: トランジット地球型惑星の探索と既知の惑星大気の調査 成田憲保(国立天文台)、福井暁彦(国立天文台)、田村元秀(国立天文台)、生駒大洋(東大)、Eric Gaidos(ハワイ大) テーマC: 地球型惑星の直接観測のための新しい観測手法の実証 小谷隆行(国立天文台)、大屋真(国立天文台)、松尾太郎(京都大学)、村上尚史(北大)

50 各グループの役割と連携関係 各テーマで個々に目的を達成しつつ、お互いの連携体制を作る
ワークショップやミーティングを通して情報交換や共同研究を行う

51 まとめ 天文学の観測で太陽系外惑星について多くのことがわかり、今後は宇宙に生命の痕跡を探す研究の時代になりつつある
しかし天文学の知識だけでは、全く異なる環境の惑星に何を生命の痕跡として探せばよいのかが(科学的に)不明 生命科学の皆さんとの共同研究を広げていきたい 興味を持たれた方は基礎生物学研究所の滝澤さんまで


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