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第 10 章 海外事業戦略管理会計の 基礎と発達史
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第1節 海外事業戦略管理会計の戦略的意義 1 海外事業戦略管理会計の意義
第1節 海外事業戦略管理会計の戦略的意義 1 海外事業戦略管理会計の意義 グローバル経営においては、 価格の差別化、 製品の差別化およびその他の差別化を、単一の国単位で考察するのではなくグローバルな結びつきを対象とした 「面」 での管理を行うことが不可欠となる。 販売および製造といった機能を中心に海外進出がなされた後、 さらに研究開発および物流などを組み込んで、対象とする市場に適合しようとする海外事業戦略が採られていくことになる。 こうした海外事業戦略を援助するための管理会計システムが海外事業戦略管理会計である。
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2 日米企業における海外事業戦略の進展 (1)日米企業における海外直接投資の推移 アメリカ 第1期:1973年までの緩やかな成長期 第2期:1981年までの急速な拡大期 第3期:1985年までの調整期 第4期:1986年以後 日本 1973年に34億ドルでピークをつけた後、緩やかな成長を遂げているが1979年を頂点として、その後1985年頃までは一進一退を続けている。その後は急拡大を続けていたが、バブル崩壊の影響で1990年以降は調整期に入った。
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(2)日本製造業における国際活動の量的展開(製造業の海外直接投資)
1973年:最初のピーク 1978年から1982年まで:比較的高い水準で安定 1985年から1989年まで:いわゆるバブル最盛期には急拡大し、 その後低落傾向 1993年:投資件数および投資金額とも底を脱している。
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(3)日本製造業における海外事業の質的展開
単に国外市場を求め、製品の一部を仕様変更することなく国外に販売する段階 海外販売が進み、より一層の市場浸透と売上高を狙う段階に入ると、次に販売子会社を設立するようになる(販売子会社段階) 重要な部品は国内で生産し、海外工場は組み立てのみを担当(組立子会社段階) 現地の需要に適応できるように、海外で一貫生産(一貫生産子会社段階) 本社および製造子会社を一体化させ、さらに、競争企業までも含めて新たなネットワークを形成し、その中で効率的な資源配分と調整を志向する段階(ネットワーク段階)
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第2節 海外事業戦略管理会計の発展 1 海外事業戦略管理会計研究の萌芽期 (1)海外事業管理会計研究萌芽期のアメリカにおける業績評価の研究 Hawkins[1965] - 国外業務で使用されるコントロール・システムは、国内業務に対して 使用されているものと同様 ・ 理由は国外における業務についての経験不足 - 海外に適用された国内システムは効果的でないと指摘 Zenoff[1967] - アメリカの多国籍企業30社にインタビュー、結果報告 - 海外子会社の役割 ・ 本社への送金および税金の最少化 ・ 海外投資の安全性を保持するキャッシュ・フローに関連 ・ 長期的利益は二の次 Mauriel[1969] - 海外事業が国内事業と同様に評価されるべきではなく、売上利益率 がより重要である場合があることを指摘
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Mclnness[1971] - 業績評価で使用されている指標は ROI,予算実績比較、実績の傾向分析であることが調査結果に出た Financial Executives Research Foundation Study [1971] - 利益の予算実際比較が最も重視される業績評価の尺度であることを 報告 - 海外事業とその管理者の評価を別個にすべきであることが提唱された (2)海外事業管理会計研究萌芽期のアメリカにおける 国際振替価格の研究 ・ この時期の国際振替価格の研究は進展してない ・ 初期の国際振替価格は、主として名国の関税等を最小化することがその最も重視されるべき決定要因であった
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2 海外事業戦略管理会計研究の成長期 (1)海外事業管理会計研究進展期のアメリカにおける業績評価の研究 Robbins と Stobaugh[1973] - 予算実績比較が ROI にとって代わるべきであり、 特に戦略目標に関連する個々の予算を使用すべきであることを指摘 - 主として海外事業の評価の目的は管理者の評価にあることも併せて示す AAAの国際委員会[1973] - 国内における事業と多国籍企業における海外事業が全く異なっていることを指摘 - 多国籍企業においては新たな財務統制システムを構築すべきことを示唆 - 予算実績比較をもって業績評価の主たる尺度とすべきであることを推奨 Morsicato[1980] - 海外子会社の業績を報告する際、現地通貨ベースあるいはドルベースのいずれが適切であるかについての報告 - 海外子会社の予算編成について現地の管理者に大きな権限を与え、十分に現地の経済環境などを組み込んだ予算を編成することが必要であると指摘
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(2)海外事業管理会計研究進展期のアメリカにおける国際振替価格の研究
Choi と Mueller[1978] - 在外子会社の業績評価基準は、 多国籍企業の中で果たしている特定の役割を評価するのに適した基準であることが望ましく、 特定の目標および環境に合致する業績評価基準を採用すべきであることを示唆 Cowen と Phillips - 国際振替価格の設定目的をあげている ・ 子会社目標と全会社的目標の一致 ・ 子会社の経営管理者に対する全社的目標への整合的意思決定への誘因 ・ 全社的目標のための企業資源の効率的配分 ・ 企業内での円滑な意思伝達 Tang[1979] - 多国籍企業が使用している国際振替価格の決定要因を調査 ・ 国際振替価格を通じて算定される利益概念で業績評価を行うことは困難となっていることがうかがえる。 OECD[1979] - 国際振替価格の設定方法について包括的な報告書を発行
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