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高輝度放電ランプ用管球材料の 熱処理および点灯による構造変化
分子科学講座の田中です。 高輝度放電ランプ用管球材料の熱処理および点灯による構造変化について報告します。 分子科学講座 田中宏志
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シリカガラス 特性 ほぼ100% SiO₂からなる非晶質材料 ・光をよく通す (真空紫外~近赤外) ・耐久性に優れている ・紫外線 ・熱
シリカガラスは他の材料では見られない様々な優れた特性を持っています。 その特性の一つは優れた光透過特性で、広い波長範囲の光を透します。 さらに、紫外線、熱、化学薬品に対する耐久性にすぐれていることがあげられます。 ・紫外線 ・熱 ・薬品
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シリカガラスの種類 ・溶融石英ガラス 製法 ・合成シリカガラス 製法 ・金属不純物の有無 ・OH基の有無 ・電気溶融法 ・プラズマ溶融法
・光学的均質性 製法 ・電気溶融法 ・プラズマ溶融法 ・酸水素火炎溶融法 ・合成シリカガラス 製法 シリカガラスの種類は、天然の石英粉を溶かすことによって作った溶融石英ガラスと液体原料から作った合成シリカガラスの2種類に大別されます。 これらはさらに製造方法によってわけられます。 それぞれ金属不純物の多い・少ない、OH基の有無、光学的均質性の違いがあり,それぞれ特徴を持っています。 それらの性質の違いに応じて、用途によって使い分けられています。 ・直接法 ・スート法 ・プラズマ法 ・ゾル-ゲル法 用途により使い分け
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OH基と仮想温度 ・OH基 ・仮想温度,TF ・Si-OH基の形でシリカガラス中に存在 ・熱処理などによりOH基が増減する。
OH基はガラス中にSiOHの形で存在します。 OH基の増減を測定することが、構造変化の一つの指標となります。 次に仮想温度についてですが、一般的に十分高い温度Tfで長時間熱処理した、安定状態にあるシリカガラスを 急冷却すると、このシリカガラスの構造が凍結されます。 この温度Tfを仮想温度といいます。 基本的には,このようにして急冷したガラスの物理量を測定することにより、ガラスの 物理量の仮想温度依存性を調べることが出来ます 本研究では,赤外吸収ピーク位置という代用特性で測定します。 ・仮想温度とはガラスの構造が凍結したと考えられる温度 ・長時間高温で加熱後、急冷したガラスを測定することにより, 構造の仮想温度依存性を求められる ← 本研究では,代用特性(赤外吸収ピーク位置)から測定
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HID (高輝度放電)ランプ 特徴 ・ランプ1灯あたりの光束が大きい ・電球やハロゲン電球に比べ発光効率に優れる 用途 プロジェクター
High Intensity Discharge Lamp 特徴 ・ランプ1灯あたりの光束が大きい ・電球やハロゲン電球に比べ発光効率に優れる 用途 プロジェクター リソグラフィー 自動車 本研究の対象は,HIDランプすなわち高輝度放電ランプの管球材料で、このランプの説明をします。 HIDランプは,電極間の放電により発光するランプの総称です。 HIDランプは、電球やハロゲン電球に比べて極めて明るく、発光効率に優れています。 用途としてこのようなものがあげられます。
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ランプ管球 f80 mm f90 mm Measured Area Hydrogen-Oxygen Flame f27 mm f34 mm
HIDランプの管球の例を示します。ランプ管球は図のように、酸水素バーナーであぶって球状に加工します。 ショートアーク水銀ランプ(リソグラフィー用)
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研究の背景 HIDランプの使用が増加 管球使用にともなう構造変化の知見がない 熱処理に伴うデータをとる
管球使用にともなう構造変化の知見がない 今述べたように,HIDランプは優れた特性を持つこと、小型化技術が発展してきたことから、 HIDランプの使用が増えてきています。 しかし、ランプ管球の使用に伴う構造変化については系統的な研究があまりされていません。 そのため、熱処理やランプの使用に伴う構造の変化を調べることが本研究の目的です。 熱処理に伴うデータをとる
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測定方法 サンプル ・厚さ約0.5mm ・幅1.5mm~3.6mm 測定器 ・日本分光製FT/IR-600Plus
測定器 ・日本分光製FT/IR-600Plus フーリエ変換赤外分光光度計 +IRT-30型赤外顕微鏡 アパーチャー30μm□ 測定項目 ・OH濃度 ・仮想温度 サンプルのランプ管球は厚さ約0.5mmの輪切りに加工し、図の線の引いてある場所を端から測定をしました。 フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、赤外吸収スペクトルを測定し、OH含有量と仮想温度を求めました。 尚,各測定領域は30μ角です。
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測定機器の写真 これが測定機器の写真です。左側がフーリエ変換赤外分光光度計で、右側が赤外顕微鏡です。
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OH濃度の測定方法 ・OH濃度の計算 A t : サンプルの厚み A : ピーク位置高さ 3400~3800cm-1付近の赤外吸収スペクトル
実際の値はこの式にしたがってもとめます。ここで,tはサンプル厚さ,Aはピーク高さです。 3400~3800cm-1付近の赤外吸収スペクトル
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仮想温度の測定方法 ・仮想温度の計算 :仮想温度 ν:ピーク位置の波数 参考文献 2220~2300cm-1付近の赤外吸収スペクトル
:仮想温度 ν:ピーク位置の波数 仮想温度の測定は、ここに示す2200カイザー付近のピーク位置から、この式に従って 計算できることが知られています。 仮想温度はピーク位置に対して大きく変わるので、この図のように2220~2300カイザー付近のピークを中心として、50~80カイザー程度の幅の範囲を2次曲線でフィッティングし、ピーク位置を求めました。 参考文献 A. Agarwal, K. M. Davis, and M. Tomozawa, J. Non-Cryst. Solids, 185, 191 (1985)
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実験の種類 1. HIDランプ用管球の熱処理 2. HIDランプの点灯による 構造変化 3. HIDランプに封入したシリカ ガラスの構造変化
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1. HIDランプ用管球の熱処理 サンプル 熱処理条件 A 未処理 ・熱処理条件 B 900℃,5h C 1050℃,5h
サンプル 熱処理条件 A 未処理 B 900℃,5h C 1050℃,5h D 1050℃,10h E 1150℃,5h F 1200℃,10h G 合成,未処理 まず最初の実験は、HIDランプ用管球を電気炉で熱処理した前後での構造変化の測定です。 これは加工によって入ったOHの除去を目的とした熱処理で、熱処理条件については以下のようになっています。
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1.OH濃度の測定結果 位置 ㎛ A B C D E F G 900 1050 1150 1200 合成, 5 5 10 5 15 760
(単位:ppm) 位置 ㎛ A B C D E F G 処理温度(℃) 未処理 900 1050 1150 1200 合成, 処理時間(h) 5 5 10 5 15 760 176 592 578 203 192 1187 25 980 248 412 no 253 261 887 45 740 nd 327 100 この実験のOH濃度について示します。 この表に示したとおり、熱処理をすると表面付近のOH基が抜けていきました。しかし、この表にしめすように熱処理条件を変えていっても180ppm程度にとどまっています。したがって、OH除去量に限界があることがわかります。 nd:測定限界以下 no:測定なし
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1.仮想温度の測定結果 次に仮想温度について示します。
熱処理温度1150℃で仮想温度が熱処理温度に近くなり、1200℃で熱処理温度とほぼ一致しました。コレは1150℃以上で構造変化がしやすくなっていることによるものです。
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2.HIDランプの点灯 1 2 2000時間 使用サンプル 10分 点灯時間の違うHIDランプ (小型1cm) 点灯時間
点灯時間 1 2 10分 2000時間 つぎの実験は、小型のHIDランプを異なる時間点灯して,点灯後サンプルを切り出して測定しました。 この実験は点灯後の構造変化を調べる目的です。 管球材料は無水溶融石英ガラスでできています。
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2.OH濃度の測定結果 この実験のOH濃度について示します。
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2.仮想温度の測定結果 次に仮想温度について示します。 点灯10分間は1450K程度、点灯2000時間は1250K程度になりました。
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3 .HIDランプに封入したシリカガラス ・使用したランプ管球 ・サンプル ショートアーク水銀ランプ(10cm) 試料名 材質 製造方法
材質 製造方法 OH量(ppm) ED-A 合成石英ガラス スート法 80 N 有水溶融石英ガラス 火炎溶融 100~200 HR 無水溶融石英ガラス 電気溶融 ES 合成シリカガラス 直接法 700~1500 3つ目の実験も、点灯後の構造変化を調べる目的ですが、実験で使用するED-A、N、HR、ESで作られたHIDランプ用管球がないため、ランプ管球内に封入することで、代用することにしました。使用したランプはショートアーク水銀ランプで10cm程度の大きさです。 ここで用いているサンプル名は、商品名で性質については以下のとおりになっています。 片面を酸水素火炎処理
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3.OH濃度の測定結果 この実験のOH濃度について示します。
もともとOH濃度の少ないED-A ,HRはバーナーであぶった面のOH濃度が高くなっています。後、Nはほぼ一定、ESについては両表面でOH濃度が低くなっています。
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3.仮想温度の測定結果 次に仮想温度について示します。
HRとNは1350~1450K程度、ED-Aは1300~1400K程度、ESは1200~1300K程度となっています。
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まとめ 今後の課題 ・HIDランプの熱処理による構造変化 ・HIDランプの点灯による構造変化 ・OH基の除去には限界がある
・シリカガラスの種類によって構造変化の様子が違う HIDランプの熱処理による構造変化とHIDランプの点灯による構造変化について実験をした結果、OH基の除去には限界があること、長い間点灯するとOH基が内側に入り込むこと、シリカガラスの種類によって構造変化の様子が違うということがわかりました。 今後の課題として、構造変化に対する点灯時間依存性の把握があげられます。 今後の課題 ・構造変化に対する点灯時間依存性の把握
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