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コアB-1 個体の構成と機能(5)生体物質の代謝

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1 コアB-1 個体の構成と機能(5)生体物質の代謝
分子生体防御学講座 糖鎖工学講座 伊東 健

2 講義を受けるに当たっての約束事 予習を少しでもいいから必ずする(教科書である一般 医化学の当該部分を30分以上かけて読む). 講義中でも積極的に質問すること.ただし,私語は慎む こと. 3. 机につっぷして眠らないこと. コーヒーを飲むなりしてして,目をさましてから授業に 臨むこと.

3 生化学とはどういう学問か? 巨視的な現象------目でみえる自然界で普通に観察できる現象.筋肉の収縮など.
微視的な現象------特殊な装置を通さずには,観察できない.または,現在の装置では観察できない現象.化学反応など. 基本的にすべての巨視的な現象は化学反応などの微視的な現象によっておきている. すなわち,すべての生物現象は化学反応である. 生化学は,生物現象を化学の言葉で語ることである.本講義の究極的な目的は, 生物現象を化学の言葉で語れる術を身につけることである. 生化学を理解せずに,生物学を学んでも,まずい水を使っていれたコーヒーといっしょである. 生化学を理解することは,よき医師になるための第一歩である.

4 2. アミノ酸同士は,アミノ基とカルボキシル基の 間のペプチド結合により結合する.
R1 R2 脱水縮合 NH2 + C COOH NH2 C COOH H H R1 O H R2 NH2 C C N C COOH H H H 1. タンパク質はアミノ酸   の重合体 2. アミノ酸同士は,アミノ基とカルボキシル基の 間のペプチド結合により結合する.

5 20種類のアミノ酸:略号と性質 Asp D Ala A Glu E Gly G Arg R Val V Lys K Leu L His H
アスパラギン酸 負電荷を持つ アラニン 非極性 グルタミン酸 Glu E 負電荷を持つ グリシン Gly G 非極性 アルギニン Arg R 正電荷を持つ バリン Val V 非極性 リジン Lys K 正電荷を持つ ロイシン Leu L 非極性 ヒスチジン His H 正電荷を持つ イソロイシン Ile I 非極性 アスパラギン Asn N 電荷を持たず極性 プロリン Pro P 非極性 グルタミン Gln Q 電荷を持たず極性 フェニルアラニン Phe F 非極性 セリン Ser S 電荷を持たず極性 メチオニン Met M 非極性 トレオニン Thr T 電荷を持たず極性 トリプトファン Trp W 非極性 チロシン Tyr Y 電荷を持たず極性 システイン Cys C 非極性 極性アミノ酸 非極性アミノ酸 原子間結合の電荷分布が不均等の場合,結合は分極する.このような分極した結合を持つ 官能基を極性基と呼ぶ. 特に,O-H, N-H, C=Oなどの結合は分極が大きい.

6 水は極性を持った分子である H2O CH4 CO2 Biochemistry, Cambell, 3rd

7 Electronegativity = 電気陰性度
Biochemistry, Cambell, 3rd

8 Biochemistry, Cambell, 3rd

9 ヴォート生化学

10 極性アミノ酸 非極性アミノ酸 疎水性のコアには非極性アミノ酸が含まれる 極性のアミノ酸は分子の外表面に並び、水素結合をつくれる

11 タンパク質の高次構造を支える比較的弱い結合
イオン結合 > 水素結合 > ファンデルワールス力

12 Biochemistry, Cambell, 3rd

13 Biochemistry, Cambell, 3rd

14 タンパク質の変成 高温または変性剤 を加える もとの条件にもどす 本来のコンフォメーション 正常なタンパク質 変性したタンパク質
非可逆的変性 凝集

15 タンパク質の表し方

16 タンパク質のサブユニット構造 2量体 4量体

17 アイソザイムとは H-H-H-H LD1 H-H-H-M LD2 LD3 H-H-M-M LD4 H-M-M-M M-M-M-M LD5
同一個体中にあり,化学的には異なるタンパク質分子が同じ化学反応を触媒する時,この酵素群をアイソザイムという. 乳酸デヒドロゲナーゼ LD1 H-H-H-H 心筋,赤血球 H-H-H-M 心筋,赤血球 LD2 LD3 H-H-M-M 肺組織 LD4 H-M-M-M 肝臓,骨格筋 LD5 M-M-M-M 肝臓,骨格筋 おのおのの酵素は,基質に対する反応性,阻害剤に対する感受性が異なり,組織に応じた反応を行っていると思われている.

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20 さまざまなタンパク質 N r f 2 A R E / E p R E 酵素 構造タンパク 輸送タンパク モータータンパク 貯蔵タンパク
シグナルタンパク 遺伝子調節タンパク 受容体タンパク N r f 2 s m a l l M a f R T G A C N A R E / E p R E

21 触媒(しょくばい、catalyst)とは、特定の化学反応を促進する物質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう
1823年にデーべライナーは白金のかけらに水素を吹き付けると点火することに気が ついた。白金は消耗せず、その存在によって水素と空気中の酸素とを反応させることを明確にした。 後に反応によって消費されても、反応の完了と同時に再生し、変化していないように見えるものも触媒とされた. k+1 k+2 E + S ES E + P k-1 白金ランプ

22 DG < DG > E + S ES E + P 遷移状態説(Henry Eyring) 遷移状態 活性化エネルギー 反応すすむ
触媒は、自発的に起こり得る反応の反応速度を増加させる。本来、自発的に起こり得ない反応は、触媒を用いても進行するわけではない。たとえば、水素と酸素を混合して水が生成する反応は、触媒を用いて効率を上げることができる。これは、水が安定な物質で生成しやすいからである。しかし、水を触媒によって水素と酸素に分解することは、より不安定な物質を作り出すことになるので、触媒反応によって達成できない。つまり、触媒は化学平衡そのものには影響を与えない。このような反応を実現するには、電気や光などのエネルギーを与える必要がある。また反応に必要なエネルギーを与えたとしても有意な速度で反応が進行するとは限らず、その場合にも触媒が必要とされる 遷移状態説(Henry Eyring) 遷移状態 DG < 活性化エネルギー 反応すすむ DG > E + S 反応すすみにくい または、反応がすすむためにエネルギーを必要とする。 E + P E + S ES E + P ヴォート生化学

23 eDDG #cat/RT 速度促進度(触媒反応と非触媒反応 の速度の比) したがって,反応速度を10倍に するにはDDG #catがたった
5.71kJ・mol-1減ればよい.この値は 普通の水素結合の半分でしかない. 同様に反応速度を百万倍に するにはDDG #catが34kJ・mol-1で よい.この値は共有結合の エネルギーの数分の一でしかない. ヴォート生化学

24 一般医化学

25 A I P

26 基質が特異的に結合し,触媒作用を受ける部位.
活性中心とは? 活性中心 = 基質結合部位 + 触媒部位 基質が特異的に結合し,触媒作用を受ける部位. 活性中心は,酵素タンパク質の分子表面に存在することが多く,必要に応じて補酵素や補欠分子族あるいは金属などを含んでいる. 現代の生化学第2版

27 酵素反応の機構 1. 酸塩基触媒 2. 共有結合触媒 3. 金属イオン触媒 4. 静電気触媒 5. 近接効果と配向効果
6. 遷移状態優先配合 ヴォート生化学

28 酸性アミノ酸 塩基性アミノ酸 グルタミン酸 アスパラギン酸 リシン アルギニン ヒスチジン COO- CH2 COO- CH2 CH2
H3N+ C COO- H3N+ C COO- H H グルタミン酸 アスパラギン酸 塩基性アミノ酸 NH3 NH C NH2 CH2 CH2 N+ H2 CH N CH CH2 CH2 C N H CH2 CH2 CH2 H3N+ C COO- H3N+ C COO- H3N+ C COO- H H H リシン アルギニン ヒスチジン

29 一般酸触媒の作用機構(ケトエノールの異性化機構を題材に)
(a)触媒なし (b)一般酸触媒 ヴォート生化学

30 一般塩基触媒の作用機構(ケトエノールの異性化機構を題材に)
(a)触媒なし (c)一般塩基触媒 ヴォート生化学

31 カルボニックアンヒドラーゼの活性中心の構造
CO2 + H2O HCO3- + H+ ヴォート生化学

32 カルボニックアンヒドラーゼの触媒機構 Im O . . Im Zn2+ O- + C O Im H Im O Im Zn2+ O C O-
赤色の部分が第4のHis(His64) の塩基触媒作用でイオン化する (ヴオート第3版には詳しい機構 が記載しています)。 . . Im Zn2+ O- + C O Im H Im そこで、Zn2+に結合したOH-イオン が酵素に結合して近くにあるCO2 を 求核攻撃してHCO3-にする。 O Im Zn2+ O C O- Im H Zn2+に結合した生成物HCO3-は H2Oと交換する。 H2O Im O H C O- Zn2+ O- + H+ + Im Im H

33 勉強の指針 酵素の授業の初回にお渡ししたプリントに1回目から3回目の講義までの達成目標を書いています。そのうちで、今回の授業でマスターすべきことは、 1)触媒作用とは何か? 2)活性中心とは何か? 3)酵素がタンパク質であることに帰因する性質は何か? 4)サブユニット構造の意味は何か? 5)アイソザイムとは何か? です。触媒作用の分子メカニズムを理解するというのは、課題には入って いませんが、酵素を勉強する上で最も面白い部分の1つです。是非、勉強して みて下さい。(試験に出るとこだけを勉強するのが、生化学ではありませんよ!)


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