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公衆衛生学A1-6 人を対象にした研究のデザインⅠ 藤田 裕規 近畿大学医学部公衆衛生学
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本講義の目標 SBO 特異的行動目標 GIO 一般教育目標
記述疫学の目的、手順の概要、必要な疫学指標の定義と意味を理解し、得られた仮説を検証する分析疫学の概要を習得する SBO 特異的行動目標 記述疫学の目的と方法の概要を説明できる 発生(罹患)率と有病率の違いを説明できる 集積性とは何かを説明できる
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疫学とは 疫学の定義 「人間集団における健康状態とそれに関連する要因の分布を明らかにする学問」
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具体的な疫学の目的 人を対象として 疾患の発生頻度、自然経過、その決定要因 疾患の原因の解明 疾患を診断する検査の有効性評価
疾患の予防策や治療策の有効性評価 の研究を行う。
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疫学調査の種類(研究デザイン) 観察疫学研究 介入疫学研究 記述疫学研究 分析研究 (横断研究、コホート研究、症例対照研究)
臨床試験(個人割付介入研究) 集団割付介入研究 研究者は観察するだけで、何も手をださない 疾病の要因(曝露状況)を研究者自身の介入によって変化させ、その後の疾病発生頻度が変化するかどうかを検討する。
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人を対象にした研究の目的と方法 記述疫学 分析疫学、介入研究 分析疫学 介入研究、臨床試験 疾患の発生頻度、自然経過、その決定要因
疾患の原因の解明 疾患を診断する検査の有効性評価 疾患の予防策や治療策の有効性評価 記述疫学 分析疫学、介入研究 分析疫学 ヒトを対象にして何を研究するかで、記述疫学、分析疫学、介入研究・臨床試験に分類される。 介入研究、臨床試験
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記述疫学研究 Descriptive epidemiology
人間集団における疾患の発生や死亡の状況を正確、かつ客観的に記述 発生、時間的消長、空間的広がりなどを明らかにそれらの決定要因についての仮説を導く 観察のキーポイント 性、年齢、人種、職業など 人 空間 地域差など 時間 流行の有無、年次推移など
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分析疫学 analytical epidemiology
記述疫学調査で導かれた仮説を人間集団で検証し、仮説をより確かなものにする研究方法
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介入研究、臨床試験 intervention study、clinical trial
対策の効果を実際に人間集団において確認する一種の人体実験。ランダム化比較試験(RCT)による薬剤の効果判定などがこれにあたる。
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記述疫学の事例 1854年にロンドンのBroad Street周辺で原因不明の病気(嘔吐・下痢)が流行
流行様式に興味を持っていた医師John Snowは流行地を調査すれば、流行の原因がわかり、流行を止められるかもしれないと考え、St. James教区の流行調査に乗り出した。
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John Snowの調査 ①診断の確実な死者について、罹患数の経時的変化を日別に棒グラフに表した。 初期の死亡者89人(斜線)に注目した。
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John Snowの調査 ②流行初期の89人の死亡登録票からその患者の住所を得て、地図上にプロットし、流行の特徴を観察した。
③患者がBroad Street に集中していることを見いだし、ここに流行のキーがあると考えた。
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John Snowの調査 ④Broad Streetの中心にある共同井戸に注目した。
⑤この井戸の他の共同井戸との中点を地図上で結んでいくと、患者の多くがこの線内に入ることを見いだした。
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John Snowの調査 ⑥この線内に居住しながら発病の少ない地域や逆に線外なのに発病の多い地区の調査をし、例外の原因を調べた。
井戸の使用が原因ではないかと考えた
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John Snowの調査 Dr. Snowは市当局に問題の井戸の使用禁止を進言し、井戸は封印された。 その結果、疾病の流行は終息した。
井戸封印 Dr. Snowは市当局に問題の井戸の使用禁止を進言し、井戸は封印された。 その結果、疾病の流行は終息した。
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問題の井戸水の飲用状況と発病との関連の解析
問題の井戸の封印後、 同井戸水飲用者と非飲用者との間で、発生率を比較 飲用者に発生率が高いことを確認 発病 発病せず 合計 発生率 井戸水飲用 80 57 137 58% 井戸水非飲用 20 279 299 7%
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John Snowの調査の教訓 疾患の真の原因(コレラ菌)が不明でも、補助的要因(感染経路である井戸水)を除去することで予防しうる、という実例 。 Robert Kochのコレラ菌発見(1883年)を遡ること30年のできごと。 このJohn Snowのアプローチは記述疫学のフレームを示したものとして名高い。
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変化 曝露(exposure) 井戸水を使わない メカニズム 変化 疾病発生(outcome) 疾病発生が低下
特定の井戸水を使うことがコレラの危険因子である。 変化 曝露(exposure) 井戸水を使わない 疾患発生を低下させる方向に曝露を変化させることを「予防」 メカニズム 変化 疾病発生(outcome) 疾病発生が低下
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記述疫学研究の目的 Descriptive epidemiology
人間集団における疾患の発生や死亡の状況を正確、かつ客観的に記述 発生、時間的消長、空間的広がりなどを明らかにし、 それらの決定要因についての仮説を導く
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記述疫学の方法 John Snowの調査 調査目的の設定 コレラの流行阻止 母集団の把握 St. James教区住民 標本抽出
調査の実施 指標化 指標の多面的検討 仮説の樹立 介入研究 分析疫学 コレラの流行阻止 St. James教区住民 初期の死亡例89人 住所、発症日入手 棒グラフ、地図にプロット 空間的集積性 井戸が媒介している 問題の井戸の使用禁止措置 井戸水飲用と発病との関連解析 発生や死亡の状況を確認 空間的広がり 仮説
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母集団の把握 我々は真実を知りたい 真実とは母集団の状況 母集団全体を調査するのが全数調査 我々が知りたい対象者全体
誰の状況を知りたいかの「だれ」 ただし、集団の定義ができるもの 母集団全体を調査するのが全数調査
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標本抽出 「医学的研究のデザイン」より参照 実際に調査できる人々(標本)から得られた結果は、真実とは限らない。(詳しくは講義A1-9・10)
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標本抽出 全数調査 標本調査 抽出(標本)誤差 なし あり 非抽出(非標本)誤差 大 小 調査員数 多数 小数 調査員の熟練度 低下
全数調査 標本調査 抽出(標本)誤差 なし あり 非抽出(非標本)誤差 大 小 調査員数 多数 小数 調査員の熟練度 低下 維持可能 費用 機動性 時間 長 短 労力 【標本数の意味】 大きいほど 抽出誤差は 小 非抽出誤差は 大 精度は低くなる 非抽出(非標本)誤差:名簿の不完全さ、調査もれ,調査対象者の誤解、故意による過大あるいは過小申告、調査あるいは回答の拒否、集計整表の際の誤り
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調査の実施 ①収集すべき情報 ②情報を収集する方法 現症 自覚症状、他覚的所見、検査データ、体位・体格、など
現症 自覚症状、他覚的所見、検査データ、体位・体格、など 病歴 現病歴、既往歴、家族歴、など 仮説要因 社会的・経済的状況、生活環境、労働内容と強度 生活習慣、食習慣、喫煙歴、飲酒歴、など ②情報を収集する方法 既存資料 カルテ、手術記録、レントゲン照射録、病理組織標本 各種衛生統計データ 人口、患者調査、国民生活基礎調査、国民栄養健康調査、など 健康診断 医師の検診 検診項目の統一、検診手技の標準化、 診断基準の統一、記載内容の標準化 検査結果 正確性、再現性 アンケート調査と問診
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得られた結果の指標化 異常 死亡 死亡率 罹患率・有病率 疾病 前駆変化 特殊検診指標 生理・生化学指標 生理的変化
Performance測定 体力測定 単なる負荷状態 ホメオスタシスの維持 正常
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比、割合、率 比:A/B 互いに異なった二つの量を比較 例 男児61.9万人、女児58.6万人の出生性比は? 男女比 オッズ比
例 男児61.9万人、女児58.6万人の出生性比は? 61.9万人/58.6万人=1.056 男女比 オッズ比
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比、割合、率 割合: A/(A+B) 全体の中で特定の特徴をもつ者が占める部分の大きさ。分母の中に分子が含まれている特殊な比の形
例 男児出生割合は? 61.9/( )=0.513 有病率 累積罹患率
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比、割合、率 率・・・ 比の特殊な形で、分母が時間になったもの。したがって、事象が発生する速さを示す指標である。 例 発生率、死亡率、罹患率
率=A/(A+B)′ Aは事象の発生数、 (A+B)′は観察時間の合計である。 例 発生率、死亡率、罹患率
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発生率と有病率 Incidence rate・Prevalence rate
発生率(死亡率・罹患率) 一定期間内における対象事象の発生数 その期間の平均人口 分母はpopulation at risk 要因曝露集団 例 死亡率(mortality rate) 罹患率(morbidity rate) 有病率(割合) ある一時点における対象疾患の患者数 その時点の人口
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有病率 単純にある一時点における病気を持つ人の割合。 循環器疾患基礎調査で男性2305人のうち高血圧者が1191人いた。 高血圧の有病率は、
1191/2305=0.517 「高血圧の有病率は51.7%」あるいは「高血圧者の人口千人対517人」 (特性) 慢性の経過をたどる病気については有病率が高くなる もし、病気に罹ること自体はまれな病気であっても、一度罹るととても長引くという場合には、ある一時点で病気を持っている人が多いといえるので、有病率は高くなっていく。
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罹患と有病の関係 罹患率が同じ値でも、有病率は慢性疾病では高く、急性疾病では低い値を示す
死亡・回復 死亡・回復 死亡・回復 A B C 罹患率が同じ場合、死亡率や回復率が異なると有病率は変化する。 有病率 A<B<C P=I×D P:有病率、I:罹患率、D:平均罹病期間 罹患率が同じ値でも、有病率は慢性疾病では高く、急性疾病では低い値を示す
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【発展】発生率の分母 この時の分母は Population at risk(要因曝露集団) その疾患にかかる可能性(リスク)を有する人の集団
分母に既に病気を持っている人を含めない 子宮頸がんの罹患率を計算する場合 男性除外 population Population at risk 子宮頸がん発生 子宮頸がん切除術を受けた女性除外
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【発展】研究における罹患率とは 罹患は「病気に罹る」こと。罹患「率」は、一定期間内(観察期間)にどれだけの人が病気にかかったかを表す。
10000人の人を1年間観察し、その中の100人が新たに病気にかかった場合、罹患率は10000人-年に対して100人ということになる。 罹患率を計算するには、ある程度の観察期間が必要である。
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人年とは 人数×年数という意味で,どの程度の発病規模であるかなどの指標となる。
死亡率や罹患率は、単位人年当たりの死亡数や罹患者数を用いて表すことがある。 この方法は、小集団で観察期間中に転入や転出が多く、分母の把握が困難な場合によく用いられる。
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9500人を1年間完全に観察した場合 9500人×1年=9500人年 4250人を2年間観察した場合 4250人×2年=9500人年 同じ観察人年 950人を10年観察した場合 950人×10年=9500人年
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罹患率の式 観察期間中の新たな罹患人数(人) 一人一人の観察期間の総和である人年(人-年)
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観察期間中の新たな罹患人数 2人 従業員1 4.5人年 従業員2 4人年 観察期間の総和 20人年 従業員3 5人年
「STEP公衆衛生」より参照 観察期間中の新たな罹患人数 2人 従業員1 4.5人年 従業員2 4人年 観察期間の総和 20人年 従業員3 5人年 罹患率 2/20=0.1/年 従業員4 2.5人年 従業員5 4人年
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二つの発生率(罹患率・死亡率) 観察期間中の新たな罹患人数(人) 一人一人の観察期間の総和である人年(人-年)
観察期間中の新たな罹患人数(人) 一人一人の観察期間の総和である人年(人-年) 一定期間内における対象事象の発生数 その期間の平均人口 観察対象者一人ひとりが目的とする疾病にかかりうる期間を正確に測定することは困難!! 観察開始時と観察終了時の2時点における対象者人口の平均値と観察期間の積を分母の推定値とすることが多い. 通常は,観察期間が1年の年間罹患率を計算することが多く,その場合,危険人口をそのまま分母として用いて,「人口10万対の罹患率」という表現を用いる習慣になっている.
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指標の多面的検討 集積性を見出す! (どのような人に多いか) (いつ多かったか、どのような時に増えるか) (どこに多いか) 人の要因
人の要因 生物学的要因 先天的要因:性、年齢、人種、両親の年齢、出生順位など 後天的要因:栄養、発育、免疫、既往歴、食習慣、睡眠、 自覚症状、他覚的所見、検査成績、など 社会経済的要因 職業、収入、居住環境、家族環境、配偶関係、教育水準、など 時間の要因 時間、日、週、月、年単位の傾向、集中発生、周期的変化、等 場所の要因 大陸、国、都道府県、市町村、保健所管区といった行政区域 都市部、農村部といった生活環境の違いによる区分け (どのような人に多いか) (いつ多かったか、どのような時に増えるか) (どこに多いか) 集積性が発見された場合、そこに疾患の原因のキーがあることが多い。
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疫学の三要因 「公衆衛生がみえる」から引用
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形成評価試験 解答 × ○ 〇 記述疫学の目的は発生要因に関する仮説の検証である。 全数調査の精度は標本調査のそれより高い。
形成評価試験 解答 × ○ 〇 記述疫学の目的は発生要因に関する仮説の検証である。 全数調査の精度は標本調査のそれより高い。 無作為標本抽出法がもっともよく母集団の特性を反映する。 罹患率が同じでも、死亡率や回復率が異なると有病率は変化する。 有病率は一定期間内に発生した新規患者の平均人口に対する割合である。 罹患率の分母はpopulation at riskでなければならない。 集積性が発見された場合、そこに疾患の原因のキーがあることが多い。
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