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環境試料中のPCB分析における精度管理のヒント
第11回PCB講演会 June 21, ‘16 愛媛大学(城北キャンパス)南加記念ホール 環境試料中のPCB分析における精度管理のヒント 環境調査研修所 主任教官 渡辺靖二
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略歴 愛媛大学連合大学院農学研究科修了 JICA専門家派遣(タイ国資源環境省 環境研究研修プロジェクト) 環境省環境調査研修所 教官
環境省環境調査研修所 教官 GC-QMS, MS-MS, LC-MS-MSを用いる告示法の指導 2005年からPOPs研修(年1回10日間)を開講
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講演のねらい PCBsの特徴 物理・化学的性質に幅をもつ理論的に209種の異性体・同族体で構成
無機環境下の分解が遅い 塩素・炭素同位体の天然存在比を基にPCB異性体の同位体比を算出可能 PCB製品以外の色素等の汚染源が存在 分析の隘路 分析前処理において全異性体・同族体を回収するのが難しい 誤同定の危険性がある イオン化(EI法)で生成する脱塩素化物が同じ質量の成分の定性・定量を干渉する 異性体・同族体毎、総濃度の検出・定量下限値の算出方法が未整理 底質に残留するPCBの分析経験を基に、ある定性・定量分析のヒントを提供したい
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底質前処理の注意事項 アルカリ分解処理による分解 44%硫酸シリカゲルカラムクロマトグラフクリーンアップによる分解 再確認
窒素吹き付け濃縮による消失 再確認
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加熱アルカリ分解処理による分解 海底質試料10gを加熱アルカリ分解(KOH 1mol/L MeOH, 1時間) +クリーンアップ(硫酸処理+44%硫酸シリカゲルカラムクロマトグラフ+スルホキシドカラムクロマトグラフ)して得られた抽出液とソックスレー抽出し同様にクリーンアップして得られた抽出液の九塩化ビフェニルのクロマトグラム(m/z=464) 206 ソックスレー抽出 250 200 150 208 100 アルカリ分解 207 209 50 Intensity Column: HT8-PCB (0.25mm, 60m, 0.25μm) GC condition Carrier gas: helium, constant flow mode: 1.3ml/min Inlet: Splitless mode (1min), 280℃ Oven temp. program: 120 (1min), 20℃/min, 180℃, 2℃/min, 260℃, 5℃/min, 300℃ (6 min) MS condition Interface temp.: 300 ℃, Ion source temp.: 230 ℃, Q-pole temp.: 150 ℃ SIM -50 209種異性体・同族体混合標準液 -100 44.00 45.00 46.00 47.00 48.00 49.00 50.00 51.00 52.00 Retention time (min) →
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ビフェニルの一方のベンゼン環の全ての炭素原子に塩素原子が置換した異性体・同族体の分解
IUPAC# # of Cl Cl substituted position 分解率(%) 116 5 2,3,4,5,6- n.d.:底質から不検出のため評価不能 142 6 2,2',3,4,5,6- 160 2,3,3',4,5,6- 166 2,3,4,4',5,6- 181 7 2,2',3,4,4',5,6- 185 2,2',3,4,5,5',6- -42 186 2,2',3,4,5,6,6'- n.d. 190 2,3,3',4,4',5,6- -27 195 8 2,2',3,3',4,4',5,6- -30 198 2,2',3,3',4,5,5',6- 200 2,2',3,3',4,5,6,6'- -9 203 2,2',3,4,4',5,5',6- 204 2,2',3,4,4',5,6,6'- 205 2,3,3',4,4',5,5',6- -24 206 9 2,2',3,3',4,4',5,5',6- -77 207 2,2',3,3',4,4',5,6,6'- -71 208 2,2',3,3',4,5,5',6,6'- -78 209 10 2,2',3,3',4,4',5,5',6,6'- -100 分解率=(ピーク面積比(アルカリ分解/ソックスレー抽出)-1)×100 底質試料から検出された異性体・同族体のうち左表以外は、加熱アルカリ分解による分解が認められなかった 処理条件〔夾雑物濃度に対するKOH濃度、KOHとPCB分子の接触頻度(処理液の撹拌の程度)〕が分解率に及ぼす影響については未検討だが、成分間の安定性の順序(分解率の大小の順序)は処理条件によらないと予想される
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44%硫酸シリカゲルカラムクロマトグラフによる分解
回収率(%) = ×100 ヘキサン200mL溶離液に回収されたPCB異性体・同族体の質量 44%硫酸シリカゲル(3g)に負荷したPCB異性体・同族体の質量 分解 市販の44%硫酸シリカゲル3gをヘキサン(約20mL)に分散させて、クロマトグラフ管(内径1cm)に湿式充填 209種当量混合標準液(各?ng/mL)1mLを付加 ヘキサン200mLを1滴/秒で流して、PCBを回収、溶出液を1mLに濃縮して、GC/MS(SIM)分析
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濃縮操作におけるロス 窒素吹きつけ操作条件 ロータリーエバポレータ操作条件 装置:自作(写真) 試料
ヘキサン5mLに209種混合標準液(各200ng/ml)をマイクロシリンジを使って100μl添加した 装置:IWAKI REN-1(圧力制御機能なし) ウォーターバス温度:40℃ 循環冷却水設定温度:4℃ 設定回転数:ダイアル5(かなり早く回転している感じ) 真空度:タイアフラムポンプ全開 試料 ナシ型フラスコの中に入れたヘキサン300mlに209種混合標準液(各200ng/ml)をマイクロシリンジを使って100μl添加した 操作 ナシ型フラスコにトラップ管を取付け、加温しながら乾固直前まで濃縮した 濃縮液を濃縮管に移し、少量のヘキサンでナシ型フラスコをリンスし、リンス液を濃縮管に加えた 窒素吹き付け装置を使って、1mLに定容した 操作 濃縮中の室温約26度 試料液の中心が1~2mm程度陥没するように窒素ガスを吹きつけた 乾固した後約10分間窒素吹き付けを継続した後、少量のヘキサンを加えて攪拌して再溶解した後、ヘキサンで1mLに定容した
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濃縮試料のTIC(SIM) 窒素吹き付け濃縮(乾固およそ10分間) ロータリーエバポレータ濃縮乾固寸前)
底質中のPCBs測定方法 濃縮試料のTIC(SIM) 窒素吹き付け濃縮(乾固およそ10分間) ロータリーエバポレータ濃縮乾固寸前) ロータリーエバポレータ操作条件 ウォーターバス設定温度:40℃ 循環冷却水設定温度:4℃ 設定回転数:ダイアル5(かなり早く回転している感じ) 真空度:タイアフラムポンプ全開 窒素吹きつけ操作条件 窒素吹き付け装置(自作):ON/OFFバルブ+流量調整用ニードルバルブ+ニードル(内径1.0mm)から目盛付濃縮管(GLサイエンス社製6ml)に入れた試料液の中心が1~2mm程度陥没するように窒素ガスを吹きつけた。温度は、約26℃。 試料 ロータリーポンプ濃縮試料:梨型フラスコの中に入れたヘキサン300mlに209種混合標準液(各200ng/ml)をマイクロシリンジを使って100μl添加し、ロータリーエバポレータを使って乾固寸前まで濃縮した。濃縮液を目盛付試験管に完全に移し、窒素吹き付けにより1mlに定容した。 アセトン300mlに同様にして標準溶液を添加・濃縮した。濃縮液をさらに乾固するまで窒素吹き付け濃縮した後、ヘキサンで1mlに定容した。 209種混合標準(各20ng/ml) 時間--> 15.00 20.00 25.00 30.00 35.00 40.00 45.00 50.00 55.00
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底質中のPCBs測定方法 濃縮操作におけるPCB同族体の回収率
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分析精度管理におけるPCB異性体・同族体の指標性
アルカリ分解:十塩化ビフェニル 硫酸処理:一塩化ビフェニル 窒素吹き付け濃縮:一塩化ビフェニル シリカゲル、フロリジルカラムクロマトグラフ溶出開始:十塩化ビフェニル、溶出終了:一塩化ビフェニル スルホキシド固相溶出開始:十塩化ビフェニル、溶出終了:四塩化ビフェニル(#77)、5塩化ビフェニル(#126)、六塩化ビフェニル(#169) 船越ら、第19回環境化学討論会要旨集pp406(名古屋、2010)
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総PCB濃度の装置(分析法)検出・定量下限値の定義
標準液繰り返し分析(添加回収試験):下限値∝試験濃度→試験液の濃度に要求される条件:S/N=5〜15 PCB製品標準を使って条件を満足するには、数段階の濃度を用意し繰り返し分析する必要がある 個別異性体・同族体混合標準を使って条件を満足させることは比較的容易 総濃度としての下限値:繰り返し分析して求めた総濃度の標準偏差を基に算出 PCB製品組成は、底質に残留する組成に疑似 底質のPCB異性体・同族体標準は、底質に残留する組成を再現することが難しい。さらに、算出した下限値から総濃度の下限値を算出する方法が定義されていない
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熊大資料③絶縁油中PCB簡易定量法分析精度管理
自動ピーク同定結果(四塩化ビフェニルの事例) 熊大資料③絶縁油中PCB簡易定量法分析精度管理 絶対保持時間による評価 6ピークの誤同定を検出不能 相対保持時間による評価 2/6ピークの誤同定を検出 この試料では、4塩素化ビフェニルが溶出し終わるまでに22本のPCBピークが検出され、自動同定ではこのうち6本で同定ミスをしていた。GC/MS分析において、試料の保持時間が標準の保持時間からズレているかどうかを、試料の保持時間が標準の保持時間の±5%以内にあること、又は試料の相対保持時間が標準の相対保持時間の±2%以内にあることで判定する方法が一般的に採用されている。図は、この試料をこれらの方法で判定するチャートを示す。 絶対保持時間に基づく方法では、同定の誤りを1本も検出できなかった。相対保持時間に基づく方法では、2つの誤り検出したが、4つの誤りを検出できなかった。これらの判定基準は、この試料に関して同定の誤りを検出する役割を果たしているとはいえない。 異性体・同族体#
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熊大資料③絶縁油中PCB簡易定量法分析精度管理
保持時間幅を使ったピーク同定の管理例 絶対保持時間のズレ=(底質試料から検出されたピークの保持時間)-(KC−300, 400, 500, 600等量混合標準液をマニュアルで同定したピークの保持時間の平均保持時間)≦KC-Mixの保持時間幅←表計算ソフトを利用 この図は、自動積分とマニュアルで積分して得られた保持時間と標準の保持時間との差をプロットしたものである。 この図を使えば、自動積分に問題がありそうなピークを見つけ出しやすい。こうした処理は、前の2つの方法に比べてピーク同定の精度管理に有効といえる。 このように、ラボ毎に分析法に応じた精度管理指標を設定することが有効と推察される。 ベースライン分離しなかったピークを定量精度を上げるために1ピークとして積分したところ、双山ピークの大小がSTDとサンプルで違っていた BZ#
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KC製品の異性体組成(例)三塩化ビフェニル
CB% 18 三塩化ビフェニルのCB0%合量 55% 31 20&33 KC-300 28 16 17 22 32 26 37 19 27 34 29 30 24 23 25 21 36 39 38 35 保持時間(min) KC-400 17% 2.0% KC-500 KC製品中の三塩化ビフェニルの組成は、マニュアル表1.2.3を基に作成した。 全PCB化合物に占める三塩化ビフェニルのCB0%の合計の割合は、KC-300が55%、KC-400が17%、KC-500が2.0%、KC-600 が1.2%の違いがあるものの、4種の製品の間で三塩化ビフェニルの組成が良く似ている。このことから、絶縁油中のPCBを測定して得られる三塩化ビフェニルの組成は、汚染源のPCB製品の種類にかかわらずこのスライドのように三塩化ビフェニルに関して原則:三塩化ビフェニル異性体の存在比は、#38&28)>18>20&33≧#16≧#22≒17>#32>#37>#19が成立する。 この原則に基づいて、前クロマトグラムのピーク同定結果を検証すると、次のようになる。 試料①については、同定結果が原則に適合しないので、明らかな同定ミスといえる。ただし、ピーク強度自体が小さいので誤同定が定量値に及ぼす影響は少ないかもしれない。 試料②は、原則に適合しており、適正である。 分析者は、その種のPCB組成に関して成立する原則を理解した上でピーク同定を行えば、誤同定を回避できると推察される。そこで、SOPsに以下を規定することを勧める。 1. ピーク同定を行う者は、クロマトグラム組成の原則を理解していること(分析者の技術研修に本件に関わる科目を設ける)。 2. さらに、10検体に1検体の割合で別の分析者がピーク同定し、定性結果が一致することを確認する。一致しない場合は、2名でクロマトグラムの同定を行うことで、ラボの分析技術アップに役立つと思われる。 KC-600 1.2%
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海底質・生物(鳥類)中の異性体組成 有機顔料副生成物 ?
底質試料のピーク同定ミスは、KC-mixの異性体組成を参考にすることで、回避可能。一方、高次生物試料の異性体組成は、PCB製品と異なる。有機顔料副生成物のPCB異性体・同族体(二塩化ビフェニール:#11, 三塩化ビフェニール:#35, 四塩化ビフェニール:#52, #77)及び十塩化ビフェニールの同定には要注意
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高塩化ビフェニルの脱塩素化物の同定干渉 KC等量混合物中の3塩化ビフェニルのSRMクロマトグラム(上)とSIMクロマトグラム(下)の比較
2017/11/22 高塩化ビフェニルの脱塩素化物の同定干渉 m/z=256→186 31 18 28 12C12H735Cl1 20,33 12C1113C1H635Cl3 12C12H535Cl237Cl1 22 17 32 16 12C1113C1H635Cl1 26 37 12C12H537Cl1 19 27 25 - 35Cl2 m/z=256 MRMでは、高塩素化同族体の1塩素原子脱離フラグメントイオンおよび2塩素原子脱離フラグメントイオンの影響を受けにくい。 例として、KC等量混合標準中の3塩素化異性体のMRM(256→186)クロマトクラムとSIM(256)クロマトグラムを図示する。 SIMで測定して得られたマスクロマトクラム(256)では、3塩素化異性体の他に4塩素化PCB同族体のうちビフェニールの1個の炭素原子が13Cで塩素原子が1個脱離して生成したイオンが検出される。加えて、5塩素化同族体で2個の塩素原子が脱離して生成するフラグメントイオン(3個の塩素原子のうち1個が37Cl)が検出される。 4塩素化同族体の1Cl脱離イオンは、コリージョンセルにおいてさらに2Cl脱離を起こして12C1213C1H635Cl1になるが、その生成率は、3塩素化異性体(12C12H735Cl3 (256))が同様に2Cl離を起こして生成する12C12H735Cl1(186)の生成率に比べて小さい。5塩素化同族体の2Cl脱離イオンに関しては、3塩素化異性体(12C12H735Cl3 )から2塩素化脱離する時の塩素原子の組み合わせは共に35Clの組み合わせしかないが、12C12H535Cl237Cl1から2Cl脱離する時の塩素原子の組み合わせは共に35Cl、35Clと37Clが各1個の組み合わせがあるので、12C12H537Cl1(186)が生成する確率は、12C12H735Cl3 から12C12H735Cl1(186)が生成する確率の1/3しかない。 このようにMRM法を用いれば、シングルMS法によるPCB異性体、同族体の定性、定量で問題になる高塩素成分の脱Clイオンによる妨害を軽減することができる。 12C12H735Cl3 12C1113C1H635Cl3 12C12H535Cl237Cl1 102,93,98,95 67,75,48,47 64,72 52,69 43,49 44 42 71 40 13.00 14.00 15.00 16.00 17.00 18.00 19.00 20.00 21.00 22.00 23.00 24.00 KC等量混合物中の3塩化ビフェニルのSRMクロマトグラム(上)とSIMクロマトグラム(下)の比較
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同位体イオン比とSRMトランジション生成プロダクトイオンの同位体イオンの強度比の推定
(35Cl天然存在比+37Cl天然存在比)置換塩素数十塩化ビフェニルの場合( )10 列の合計は100% 置換塩素原子の中から35Clを2個、35Clを1個と37Clを1個、 37Clを2個取り出組み合わせ数/置換塩素原子の中から2個取り出組み合わせ数 各行の合計は100% Precursor (m/z) Probable abundance (%) Cl composition Possibility (%) dechlorinated isotopes (-2Cl) Product ion (m/z) Probable abundance x Possibility/100 A: 35Cl B: 37Cl A/A A/B B/B 10Cl 494 6.2 10 100.0 0.0 424 422 420 496 19.9 9 1 80.0 20.0 426 15.9 4.0 498 28.7 8 2 62.2 35.6 2.2 428 17.9 10.2 0.6 500 24.5 7 3 46.7 6.7 430 11.4 1.6 502 13.7 6 4 33.3 53.3 13.3 432 4.6 7.3 1.8 504 5.3 5 22.2 55.6 434 1.2 2.9 506 1.4 436 0.2 0.7 0.5 508 0.3 438 0.1 510 440 512 442 514 444 SIM測定の確認/定量イオン強度比 SRM測定の確認/定量トランジションで生成するプロダクトイオン強度比
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確認/定量イオン強度比、確認/定量トランジションのプロダクトイオン強度比による+2塩素化同族体による干渉ピークの定性
二~八塩化ビフェニルの確認/定量イオンの強度比は、それぞれの+2Cl同族体由来の-2Clフラグメントイオンの強度比と40%以上の違いがあると見積もることができた 九塩化ビフェニル及び十塩化ビフェニルのM+イオンを妨害する可能性がある2Cl脱離フラグメントイオンを生成する同族体は存在しない 高塩化同族体ピークと対象成分ピークが分離していない場合は、この比を使って定性できない +1Cl同族体の-1Clイオンのプロダクトイオンのm/zは奇数になり、測定トランジションを妨害しない 四~八塩素化ビフェニルについてM+イオンから確認用トランジションで生成するプロダクトイオンと定量用トランジションで生成するプロダクトイオンの強度比は、それぞれの+2塩素化ビフェニールの2Cl脱離フラグメントイオンから同じトランジションで生成するプロダクトイオンの強度比と40%以上の違いがあると見積もることができた 高塩化同族体ピークと対象成分ピークが分離していない場合は、この指標を使用できない
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四塩化ビフェニル異性体のマススペクトル(NISTデータ)
炭素同位体+1同族体の-1Clイオンの干渉 電子イオン化における1Cl脱離の起きやすさと塩素原子置換位置との関係 ビフェニールの両ベンゼン環のオルト位に塩素原子が置換していると比較的1Cl脱離が起きやすい しかし、4カ所のオルト位すべてに塩素原子が置換すると1Cl脱離が起き難くなる どちらか一方のベンゼン環のオルト位に塩素原子が置換していないと、1Cl脱離は起きにくい 12C12HnCl10-n から2Cl脱離するトランジションに対する13C112C11Hn-1Cl11-n(+1Cl高塩素化同族体)が1Cl脱離して生成するフラグメントイオンから2塩素脱離するトランジションの妨害の程度は、PCB各成分によって異なる 12C12HnCl10-n から2Cl脱離する確認/定量トランジションのプロダクトイオンの強度比と13C112C11Hn-1Cl11-nが1Cl脱離して生成するフラグメントイオン由来の確認/定量トランジションのプロダクトイオンの強度比は等しい 13C112C11HnCl10-n/12C12HnCl10-n = 13% 四塩化ビフェニル異性体のマススペクトル(NISTデータ)
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定量分析の問題点と対処法 標準の選択(個別異性体・同族体等量混合、カネクロール(KC)混合標準)
2塩化同族体の2塩素原子脱離フラグメント及び+1塩化12C1113C1HnCl(10-n)同族体の1塩素原子脱離フラグメントイオンの干渉→各標準のメリット・デメリット理解して選択 PCB製品を標準に用いる場合に標準に含まれない異性体・同族体の定量→異性体の(R)RFを使用 検出・定量下限算出方法が未規定→算出方法の提案
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209種異性体・同族体等量混合標準液中各成分の相対ピーク面積(RF)
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標準PCB異性体の平均RFを用いる定量法の問題点
同族体 計算に用いたピーク数 M+イオンの平均ピーク面積*/異性体 ピーク面積/異性体の最大値/最小値 平均ピーク面積/異性体の変動係数(%) 一塩化ビフェニル 3 77387 1.1 7.3 二塩化ビフェニル 8 75272 1.3 7.8 三塩化ビフェニル 15 75442 1.5 12.7 四塩化ビフェニル 29 51273 1.7 13.6 五塩化ビフェニル 23 33520 1.9 13.8 六塩化ビフェニル 34 35028 2.0 20.4 七塩化ビフェニル 20 33153 2.1 22.4 八塩化ビフェニル 29201 20.3 九塩化ビフェニル 21000 1.4 18.7 十塩化ビフェニル 1 * +1及び+2高塩素化同族体と保持時間が近い(1塩素化脱離または2塩素化脱離イオンと分離しなかったピークは計算から除外した レスポンスが異性体によって異なることは、それらのマススペクトルパターンが異なることからも指示される 定量用標準品として用いた場合の定量結果の精確度:リテンションウィンドウ異性体の平均RF>PCB製品中のメジャー異性体ごとの平均RF>KC製品のB0%(製品間で違いがない場合)?
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13Cを1個含有する+1塩化ビフェニルの-Cl脱離イオンの定量干渉
C#114=CSTD114×23851/781842=CSTD114×0.0305 #146の12C1113C1H4Cl5-1Clフラグメントイオン(m/z=326)ピーク面積/ 12C12H4Cl6イオン面積比が#165と同じと仮定すると 標準液A326#146=517909×33427/511766=33828 海底質試料A326#146=155705 ×33427/511766=10170 となる #146の-1Clフラグメントイオンが#114のレスポンスに占める割合を考慮した#146濃度 C’#114=CSTD114× ( )/( )=CSTD114×0.0183 定量結果の違い (0.0305/ )×100=67(%) この種の干渉は、異性体組成の議論では問題になるが、総PCB濃度に対しては重要ではないと推察される 図に、m/z=326(5塩素化体)の標準溶液(209種等量混合)と海底質試料のマスクロマトグラムを示す。図中ピーク②には、B/Z#114の分子イオン(C12H535Cl437Cl1+1)とB/Z#146のフラグメントイオン(12C1113C1H535Cl437Cl1+1)がオーバーラップしている。 試料中の同族体#114の濃度を正確に計算するには、標準試料と海底質試料の双方のピーク②の面積から同族体#146のフラグメントイオンの寄与分を差し引いた面積を用いる必要がある。ピーク②の面積(A114/326)に対する同族体#146の寄与は、5塩素体と共溶出していない6塩化体を使ってある程度推定することができる。すなわち、図中ピーク①のピーク面積の比(A165/326/A165/360)を用いると、ピーク②の同族体#114由来分は、(A114/326)-(A146/360×A165/326/A165/360)となる。図示した海底質試料中の同族体#114の濃度は、42%の過大評価になっていると見積もられた。 この誤差の推定方法を用いて、同じ海底質試料に残留する全同族体の算出濃度の誤差を推定した結果を以下にまとめて示す。 HT-8PCBカラム(0.25mm×60m、0.25μm)を使って209種の異性体・同族体を測定すると、この種の妨害が発生する可能性のある組み合わせは、1、8、9、10塩素化同族体を除く同族体で38組あった。 このうち試料から測定対象同族体が検出されず、定量誤差を無視できる組み合わせが9組あった。 測定対象同族体/妨害同族体の存在比が標準試料<実試料のために濃度が過小評価される組み合わせが、23組存在し、過小評価の程度は、1~30%であった。 反対にこの比が標準溶液>試料のために過大評価になる組み合わせが6組存在し、過大評価の程度は、40~700%であった。 この比が標準試料溶液≒試料であれば、誤差が無視できることから、標準として209種混合よりもKC-300,400,500,600等量混合を使用することで誤差を少なくすることができる。 この種の定量誤差は、PCB組成について議論する場合に重要になると予想される。 五塩化成分#114 (m/z=326)と共溶出する六塩化同族体#146(m/z=360)のフラグメントイオンクロマトグラム
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PCB標準品の選択と定量精度 HT-8PCBカラム(0.25mm×60m、0.25μm)を使って209種の異性体・同族体を測定すると、高塩化同族体の定量干渉が発生する可能性のある組み合わせは、1、8、9、10塩素化同族体を除く同族体で38組あった このうち試料から測定対象同族体が検出されず、定量誤差を無視できる組み合わせが9組あった 209種異性体・同族体を標準として用いた場合には、測定対象同族体/妨害同族体の存在比が標準試料<実試料のために濃度が過小評価される組み合わせが、23組存在し、各成分の過小評価の程度は、SIM法で1~30%と見積もられた 反対に存在比が標準溶液>試料になるために過大評価になる組み合わせが6組存在し、過大評価の程度は、SIM法で40~700%であった 存在比が標準試料溶液≒試料であれば、誤差を無視できることから、KC-300,400,500,600等量混合を標準として用いた場合には、上記の誤差を少なくすることができると推測される SRM法による定量では、対象の異性体に対して+2Cl同族体の定量干渉が小さいので、高塩化同族体の定量干渉による誤差が小さくなる ピーク同定を間違えた場合の定量値の誤差は、KC混合標準液を使用したときのほうが個別異性体・同族体の等量標準液を使用したときに比べて大きい
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PCB製品が含有しない異性体・同族体の定量方法
二塩化ビフェニル#11(#13/12)の濃度推定例 Peak area CB0% RRF* p-Terphenyl-d14 2.01E+04 #4 2.89E+02 5.33E-01 2.96E+02 #9 4.76E+01 3.50E-02 1.18E+02 #6 1.82E+02 1.77E-01 1.56E+02 #8/5 1.47E+03 1.36E+00 1.48E+02 #15 5.14E+02 3.66E-01 1.14E+02 Acverage 1.67E+02 #8/5 #15 #4 #9 #6 #11 * RRF=800*CB0%/100/(Peak area/IS) 2塩化ビフェニルの6本のピークに付いて算出したレスポンスファクターには2倍以上の違いあった。2Cl-1#4で高かった原因不明 このために、平均のレスポンスファクターを用いる濃度の推定結果には2倍程度の誤差があるかもしれない #11(#13/12)濃度(ng/mL)= #11 (#13/12)ピーク面積/t-Terphenyl-d14ピーク面積×RRF平均値 十塩化ビフェニルの定量には、十塩化ビフェニルの標準品が必要である #13/12
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209種異性体・同族体等量標準液の繰り返し分析結果に基づいて算出した定量下限値
高塩素化成分でMQLの値が大きく且つ変動したのは、低塩素化成分に比べて感度が悪いためと考えられる。 装置定量下限値(ng/ml) =標準偏差 (3.6ng/ml STDを5回分析)×10 仮の分析法定量下限値 (ng/g) =装置定量下限値(ng/mL)×最終検液体積0.5(ml) / 供試試料重量10(g)
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試料検液(61種の異性体・同族体で構成される総濃度62ng/mL)の希釈濃度と希釈したときに定量下限値以上の異性体・同族体の積算濃度の関係
総濃度の1.1倍の濃度 総濃度の0.7倍の濃度 東京湾底質試料(トータルPCB濃度62ng/g)を分析して得られる試料検液を順次希釈していくと、やがてマイナーな同族体から、濃度がMQL以下になり、それら同族体の濃度がトータル濃度に反映されなくなる。 理論上の濃度(Ct:試料濃度(62ng/g)×希釈率)と希釈してMQL以下になる同族体を除いて合計したトータル濃度(C’)の関係を図に示す。 全体的に見れば、CtとC’は1:1の直線関係にあった。MQL以上の濃度を示す同族体数は、トータル濃度に対して直線的には変化せず、トータル濃度が10ng/g以下では急激に減少した。 提案①定量下限値以上の異性体・同族体の濃度の総和と理論値(真値)の違いが30%以上になる濃度→総濃度の定量下限値
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KC製品中のPCB異性体・同族体数と積算濃度の関係
90% 95% 99% KC-mix 60 76 102 KC-600 34 47 79 KC-500 40 56 86 KC-400 33 44 72 KC-300 26 52 CB0%が大きい順に積算 総PCB定量値の精確度∝定量した成分のCB0%の積算値 環境試料中PCBの一般的な同族体組成と測定対象同族対数の目安 大気中PCB同族体組成≒KC-300 → 50成分 水中PCB同族体組成≒KC-300~KC-400 → 70成分 底質中PCB同族体組成≒KC-400~500(船底塗料汚染等特殊な汚染影響を受けた場所を除く) → 90成分 魚中PCB同族体組成≒KC-400~500 → 90成分
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CB0%の積算値を確保するという観点から定量する必要がある各異性体
IUPAC# CB0% 一塩化ビフェニル - 二塩化ビフェニル 8 1.350 4 0.533 三塩化ビフェニル 37 0.782 26 0.527 20 0.197 四塩化ビフェニル 60 0.763 41 0.473 46 0.323 五塩化ビフェニル 84 0.792 82 0.453 90 0.297 六塩化ビフェニル 141 0.814 146 0.463 164 0.233 七塩化ビフェニル 183 0.803 179 0.640 172 0.194 八塩化ビフェニル 194 203 0.560 196 0.300 九塩化ビフェニル 十塩化ビフェニル 提案②リストアップした異性体のピーク対ピークS/N≧10になる総PCB濃度=定量下限値
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試料測定時の定量下限値(PQL: Practice Quantification Limit)
実測データに基づくノイズ幅算出結果 レスポンスの標準偏差 (SD) 18.6 ノイズ幅(N) = 2×SD 37.1 実測データを使ったノイズ幅の推定結果 最小レスポンス 108 最大レスポンス 186 ノイズ幅 (N) = (最大―最小)×2/5 31.2 10N相当ピークの濃度推定結果 ベースラインの中央値(M) 146 10N相当ピーク 推定高さ(M+10N) 458 推定面積* 1950 PQL (ng/mL) 2.04 #136/148 面積:14000 高さ:2239 ベースライン:10×W1/2 半値幅W1/2=0.1min * 底質に残留する#136/148ピークを基に3N相当ピークの面積を推定 14000×(31.2×10)/2239=1950 KC-等量混合標準液(総濃度4000ng/mL)中のCB0%=0.689、この標準液を測定して得られたピーク面積を基に濃度を算出 4000×0.689/100*1950/26288=2.04
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総PCB濃度の装置(分析法)検出・定量下限値の定義
標準液繰り返し分析(添加回収試験):下限値∝試験濃度→試験液の濃度に要求される条件:S/N=5〜15 PCB製品標準を使って条件を満足するには、数段階の濃度を用意し繰り返し分析する必要がある 個別異性体・同族体混合標準を使って条件を満足させることは比較的容易 総濃度としての下限値:繰り返し分析して求めた総濃度の標準偏差を基に算出 PCB製品組成は、底質に残留する組成に疑似 底質のPCB異性体・同族体標準は、底質に残留する組成を再現することが難しい。さらに、算出した下限値から総濃度の下限値を算出する方法が定義されていない
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講演内容は、環境省の意見ではありません ご静聴ありがとうございました
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