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2016年10月8日 経営行動研究学会 柏木理佳 「中国民営企業における独立取締役の監査・ 監督機能ー日中比較及び研修機関の役割の 一考察ー
社外取締役と監査役の研修制度 -英米中との比較- Training for Independent non executive director and Auditor-comparison of UK,US and China- 2016年10月8日 経営行動研究学会 柏木理佳 「中国民営企業における独立取締役の監査・ 監督機能ー日中比較及び研修機関の役割の 一考察ー
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独立取締役・監査役における監査・監督機能の実効性を高めるための研修内容には有効性はないのか?
背景 ・1990年代、米国:不祥事の多発⇒企業統治改革、独立取締役が 企業統治の改善に有益(米国調査)→独立取締役設置が世界的 普及 ・近年、日本:不祥事の多発⇒日本再興改訂(2014)に社外取締役 複数確保、2015コーポレート・ガバナンスの策定⇒企業統治、社 外取締役設置議論活発化 ・中国、WTO加盟後、国資だけでなく民営企業でも不正取引企業が 増加⇒2001年「独立取締役制度の確立に関する意見書」(独立 取締役2人設置、うち1人は会計士、専門委員会の過半数を独 立取締役が占める等) ⇒研修により独立性の高い独立取締役の人材不足を解消した英 国を参考に、独立取締役の研修・試験の義務化 ⇒しかし、不正取引企業は増加 独立取締役・監査役における監査・監督機能の実効性を高めるための研修内容には有効性はないのか?
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日本の会社法改正ーコーポレートガバナンスコード策定にともなう上場企業の整備
日本版スチュワードシップコードの進展(2014年2月 策定)受け入れ表明機関投資家は184(投信・投資顧 問会社等129、年金基金等21、生保損保21、議決権 行使助言会社等7、信託銀行等6)(2015年2月末日) 会社法改正法により、「監査等委員会設置会社」に77 社が移行表明(東証一部46社、二部11社、JASDAQ16社、名証二部4社、 外国人持ち株比率10%未満49社、20%未満9社、30%未満13社、30%以上6社、 社外取締役人数0人54社、1人20社、3人3社、2015年4月10日時点⇒取締役、社 外取締役、外国人投資家が少なく小規模会社が経費削減のため監査等委員会設 置会社に移行、指名委員会設置したくない企業が多い) 政府による女性の社外取締役人材バンク:「はばたく女 性人材バンク」が稼働( 「日本最興戦略2013」で示された女性の社外 役員を増やすため150人以上の女性社外役員候補者(半分が学者)が内閣府男 女共同参画局のHPに公開、局は日本弁護士連合会、日本公認会計士協会に女性 役員名簿作成も依頼)
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補充原則4-14②)取締役・監査役に対する研 修の方針について開示を行うべきである ⇔中国:企業内外にて30時間の研修が義務化
2015年6月施行、理由を説明、遵守すべき事項として規定、株 主総会後、6ヶ月以内に報告書提出 独立性の情報開示(主要取引先元業務執行者等、過去に上場 会社と特定の関係を有する独立役員については、独立性ありと 判断した理由の説明を求めてきたことを改め、すべての独立役 員について等しく情報開示を求める。 補充原則4-11)合理的兼任と兼任状況の開示すべきである 補充原則4-14②)取締役・監査役に対する研 修の方針について開示を行うべきである ⇔中国:企業内外にて30時間の研修が義務化 ⇔英国:研修の充実で独立取締役の人材不足を 解消
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問題意識 ・独立取締役の監査能力 ・監査役との重複 ・構造問題 ・人材研修・斡旋会社 独立取締役設置にあたり整備されていない構造基盤
問題意識 独立取締役設置にあたり整備されていない構造基盤 独立取締役の実効性に関する議論 大株主支配構造による業務執行者と監督者、所有と経営の分離 ✓独立性が高く影響力のある人材の確保⇒人材の斡旋会社 ✓内部者支配構造による不平等な報酬とインセンティブ ✓監査役との監査機能の役割の重複⇒法整備 ✓業績促進効果 ✓情報公開等の企業統治への影響⇒独立取締役の影響力、構造問題 ✓実質的権利者の支配構造による企業内の監督者の不在 ✓多忙な兼任者の情報収集の困難⇒人材研修会社 ✓独裁的経営体質による外部者の監査・監督機能の限界 ✓取締役会における機能の形骸化 企業内の政府の監督、関与の強化 ・独立取締役の監査能力 ・監査役との重複 ・構造問題 ・人材研修・斡旋会社
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独立取締役に関する先行研究 于东智(2003) 独立取締役設置による業績促進効果は限定的、制限作用がある。 袁萍等(2006)
独立取締役制度は企業の業績促進作用が明らかである。 王躍堂(2003) 独立取締役の設置は企業の情報の信頼性を高める。 彭有桂(2006) 独立取締役の割合と上場企業の情報開示の質は関連性がない。 余峰燕、郝項超(2011) 叶康涛等(2011) 宮島・斎藤(2011) Adams&Ferreria(2007) Harris&Reviv(2008) 政府系出身の独立取締役を雇用している企業は、そうでない企業に比較して、情報の質がマイナスになる。 企業が危機状態のときは、独立取締役は監督機能を発揮できるが多くの場合、独立取締役は管理者たちの行為に対して疑うことができない。 情報理解が困難な特有企業の独立取締役の比率が高い場合、形式的な設置でしかない。 エージェンシー構造問題がある企業は、独立取締役の比率が高くても意味がない。 独立取締役の監査機能の効用は、企業が情報を十分に提供した場合に限る。 ⇔業種別民営企業の監査委員会における監査機能については少数
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研究概要 監査委員会の監査機能の調査:民営上場企業91社、国資企業23社の監査委員会、日本企業65社の調査
独立取締役制度、研修の義務化 民営企業の不祥事企業増加 分野別の特徴明確化 構造問題(大株主支配、企業内の党の増加、)法律不備、創造者等の独裁的経営) 不祥事企業は増加 ①独立取締役の取締役に対する監査・監督機能の有効性はあるのか? ②その有効性を高める一つの方法として、研修内容は実効性があるのか?① 監査委員会の監査機能の調査:民営上場企業91社、国資企業23社の監査委員会、日本企業65社の調査 研修内容に関するアンケート:独立取締役(民26社、国24社、日本17社アンケート調査→独立取締役の監督機能、研修内容、行動要因の明確化 独立取締役の効用に関する客観的評価 ①企業のヒアリング評価:民営上場企業S社、B社、日本企業A社、X社、Z社のヒアリング ②不正取引企業61社、優良企業89社の独立取締役の比率などの比較 有効性を高めるための研修機関へのヒアリング:研修機関のヒアリング調査→研修実施内容、研修機関の役割
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中国不正取引企業61社と優良企業89社の調査結果 ①不正取引企業が最も少ないグループは政府の関与は中レベル、経営者の関与が大レベル ②独立取締役の監査委員会における監査機能の効用が高い:監査委員会に「政府に所属していない会計士資格保有者比率」が高い。「経営者がメンバーでない比率が高い」 ③61社の不正取引企業より89社の優良企業のほうが、「独立取締役の比率が高い」、「政府所属の取締役、監査役、独立取締役の比率が低い」しかし「会計士資格保有者の比率」は少ない。 ↓ 独立取締役・監査役が受講する研修は、機能を高める効用はないのか?
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・独立取締役の研修内容は政府管轄 下で実施される(中国) ・研修受講が義務化されていない(日 本)
<研修内容の実態解明> ・独立取締役の研修内容は政府管轄 下で実施される(中国) ・研修受講が義務化されていない(日 本) ・英米中国と比較して日本は監査・監督 に関する講義が少ない ・独立取締役の責任が不明確 「独立取締役が監査・監督機能を発揮 するための研修は、実践的ではない」
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日本:旧委員会設置会社(2003年移行会社)における監査委員会の構造問題 全社が指名委員会等設置会社に移行(2015年6月22日現在)
社名 独立/取締役 会計士(監査委員会) 一任 会計士 イオン(株) 5/9 X ○ (株)学究社 3/5 × いちおし證券(株) 4/10 (株)指月電機製作所 3/4 オリックス(株) 6/13 (株)ノジマ 7/18 コニカミノルタ(株) 4/11 ピープル(株) 4/6 スミダコーポレーション(株) 6/12 シャクリー・グ・グループ 5/7 ソニー(株) 9/12 (株)日立製作所 7/12 (株)東芝 (株)日立ハイテクノロジーズ 野村ホールディングス(株) 6/11 (株)日立メディコ 3/7 (株)パルコ 指名6/8 (株)日立国際電気 日立キャピタル(株) 指名3/6 (株)日立物流 日立金属(株) △ 日立化成(株) 6/9 日立建機(株) 3/10 HOYA(株) 6/7 三菱電機(株) 指名 5/13 (株)りそなホールディングス 6/10
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1)グループ会社の社外取締役は独立性が低い
エーザイ 7/4 ○ × 日本オラクル 6/2 エステー 5/9 昭和H 4/5 大和証グ 5 /13 TASAKI 6/13 日本精工 4/12 クックパッド 5/2 フジシールI 3/8 フェデアH 5/5 栄研化学 3/7 X シ―シエス 4/6 大京 カ―チスH 大田花き GNI G 4/7 そーせいG 4/1 LIXIL G 5/6 カブドットコム証 5/7 東京電力 マニ― 日本取引所 G 9/5 みらかH 6/9 マネックス G 6/11 いちごGH 5/8 足利 H 4/4 黒田電気 3/6 みずほフィ 6/7 ガイヤックス 日東紡績 3/5 MontaRO GMOクリック H 一八銀行 2/9 三菱ケミカル 4/9 福井銀行 三菱UFJ 3/11 日本板硝子 4/8 日立工機 2/3 笠原製作所 7/7 1)グループ会社の社外取締役は独立性が低い 2)会計士の社外取締役が少ない(23/65社) 3)社外取締役に一任している企業は少ない(29/65社) 4)一任し、会計士が構成員である企業は少ない(9/65社) =社外取締役に監査機能は求めていない・監査役会設置会社、7割、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社1割 ・会計士は全体の数%のみ (2015年6月19日現在)
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監査等委員会設置会社(2015年4月11日現在) 1)社外取締役未導入企業が多い 23/36社 2)会計士の独立取締役が少ない 12/36社
3)一任している企業はなし 0/36社 *3人以上の取締役、過半数を社外取締役 社名 独/ 取 会/監会 一任 独/取 バイテック 1/5 1 × 三浦工業 0/11 松田産業 アンリツ 3/8 2 日コ・ダイナ 1/6 明治機械 0/7 岩塚製菓 0/6 東洋電機 0/8 グランディハウス 0/9 コスモ石油 2/10 野村不動産F 2/8 ワコム ジャフコ 0/5 ケル 0/4 トリドール 1/4 サントリー食品インタ 2/8 ヨロズ 0/14 イートアンド ユニチャーム リックス 旭有機材木業 リンテック 3/12 3 コーセーRE ニチダイ 武蔵精密工業 1/7 インベスト証券 植木組 ショーワ コメ兵 明星工業 C&Gシステムズ 0/6 サンヨーH 1/9 ビーアールH 三栄コーポ 日本デコラックス 0/3 伊予銀行 0/16
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・社外取締役に監査の役割を求めていない企業が多い
監査等委員会移行会社の現状と問題点 ・監査等委員会移行企業は外国人持ち株比率が低い企業が多い。 ・業種の特徴はみられないが、監査等委員会移行企業のうち東証一部は51%、ジャスダック24%、東証二部は16%、名証二部は4%、マザーズ3%、福証1%、名証0.5% ・社外取締役を設置していない企業は67%、1人設置は25%(2005年4月11日現在、日本CGネット)。 ・監査等委員会設置会社;「3人以上の取締役、過半数は社外取締役の構成」;「社外取締役を置くことが相当でない理由の説明・開示が不要に」 ⇒旧監査役会設置会社(監査役:任期4年、独任制)から監査等委員会へ移行(監査等委員:任期2年(社外:任期1年、議決権)に ・指名委員会等設置会社は「監査委員会」だけでなく、「指名委員会」「報酬委員会」(各委員会、社外取締役は過半数)が義務付けられるため、経費削減の為に監査等委員設置会社へ移行する企業が多い。 ・監査等委員会移行会社184社(2015年5月末現在) ・指名委員会等設置会社移行会社64社(2015年6月16日現在) ・監査役との役割の重複 ・社外取締役に監査の役割を求めていない企業が多い ⇒市場別、時価総額別の法の整備が必要
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中国の監査役と独立取締役の役割の重複問題の議論
1.監査役と監査委員会の選択制 2.監査役会、監査役を廃止しアメリカ型の独立取締役による監査委員会設置へ 3.監査役が会計監査を、独立取締役による監査委員会では業務監査を 4.独立取締役の代わりに独立監査役を導入し、独立取締役は不要 ⇒日本の監査等委員会設置会社 ・監査役会の機関の設置:日本・ドイツ・中国等 ・中国は、日本の二層式モデル、従業員(労働者)代表監査役のドイツを参考
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独立取締役による経営者への不正取引に対する抑制効果 <日中の不正取引企業の特徴>
中国 日本 米国と同様に個人の不正取 引行為が多い。61社のうち 1人(単独)の不正取引によ る処分は18社(30%) 中国:23%が資産の横領、 24%が汚職、経費の不正 21% 再発防止対策として独立取 締役導入する企業は少ない。 「会計士資格保有者1人を設 置しなければならない」規定 を、不正企業の9分の1社が 順守していない。 組織ぐるみの不正取引 行為が多い 日本:69%が資産の流用、 22%が不正な財務報告 再発防止対策に独立取 締役設置企業も増えてい る
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①61社のうち独立取締役の処分は11社、数年で増加
独立取締役が処分された不正取引内容 ①61社のうち独立取締役の処分は11社、数年で増加 ー独立取締役の処分内容は「公表のみ」がほとんど(証券取引所HPにて) ー証券監督管理委員会管轄下の罰金の支払い命じた例は稀(2005年、5万元、2014年、3万元) ー研修未受講で就任した独立取締役の処分が1人 ②アンケート結果では「社外取締役は処分を受けない」という意識→研修中の交流もなく周知されていない 企業名 不正取引規模 (万元) 処分内容 独立取締役 会長 (副) 取締役 監査役 会計士、 財務 秘書(兼) 長春高新技術産業 2,900 私的流用、情報未公開 3 1 5 (1) 広東万家楽 1.7億 不正取引、情報未公開 4 6 紫光古汉 8,000 虚偽記載 新疆中基实业 1億 9 浙江宏磊銅業 5億 資金流 長沙通程 2,000万 情報公開 四川浩物机电 約2億 不正取引 7 東方鉄路 冠福家用 不正取引、情報開示 浩物股 1000万 振東製薬 3000万 2
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深せん上場企業(民営)における61社の不正取引企業の業種別比率
数 % 絶対的な支配地位を保持すべき業種 2社 0.03% 非国有資本の参入可能な業種 支配を一層強化すべき業種 19社 31% 撤退すべき業種 8社 13% 参入撤退が自由な業種 31社 51% 香港市 場42社 数 % 1社 0.023% 7社 0.16% 5社 0.12% 11社 26% 15社 36% 優良企業の多い香港市場では、監査機能が高い業種が不正取引は少ない 同族の弊害が多い業種が不正取引企業が多い
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1-4)独立取締役による経営者の不正取引に対する抑制効果
不正取引企業(61社) 優良企業(89社) 独立取締役の比率/取締役 58% 75% 会計士の比率/独立取締役 30% 27% 独立取締役の比率が高いと抑制効果がある。 会計士の比率は関連性なし 不正金額 処分人数 処分回数 独立取締役比率/取締役 関連性なし 会計士比率/独立取締役 取締役の政府所属比率 独立取締役の政府所属比率 不正取引企業 32% 42% 優良企業 32% 33% ・不正企業は時価総額も小さく英語版の年報、財務諸表なし、中国語年版には報監査委員会の情報公開なし ・政府所属の独立取締役の比率が高い42%(優良は33%)
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★独立取締役の有効性を高めるための研修内容、研修機関の実態解明:独立取締役へのアンケートと確認事項 ★研修時、独立取締役の監査・監督機能の役割説明
ー上海市の独立取締役(民営企業26社、国資24社)、 を対象に2013年1月から2013年5月末まで45問のアン ケートを実施後、電話・メールでのヒアリング。 ー独立取締役、就任決定後の会社研修説明会につい て17問、会社研修説明時の独立取締役の監査・監督 機能等についての役割説明等について11問、独立取 締役だけの会や出欠等について10問、取締役会での 資料配布時期や反対意見発表等について7問、合計 45項目。
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2-1 研修の為に最初に会社を訪問した日は? 3-1 独立取締役の役割説明の割合は? 2-2 研修時における合計研修時間は? 3-2 独立取締役の主な役割の説明は? 2-3 企業側の主な担当説明者は? 3-3 独立取締役の役割説明に満足? 2-4 研修中に最も長く説明した内容は? 3-4 役割に監査・監督機能説明は? 2-5 会社概要について最も長い説明内容は? 3-5 再任の説明は? 2-6 最も多くの時間を使って紹介された人は? 3-6 他の社外取締役の説明は? 2-7 最初の企業訪問で誰を紹介されたか? 3-7 研修内容の追加希望内容は? 2-8 経営者の役割説明は充分か? 3-8 政府系のセミナーに自主的に参加? 2-9a)b) CEO・CFO、創業者の役割の説明は? 3-9 独立取締役について自主的には何で学んだ? 2-10 創業者の役割の説明は? 3-10 独立取締役の役割説明で印象に残っているのは? 2-11 企業内の政府関係者の紹介は? 4-1 出席しなければならない会議は? 2-12 企業研修の場所は? 4-2 テレビ電話による出席の許可は? 2-13 場所について満足しているか? 4-3 取締役会の出席率は? 2-14 研修時間はどう感じたか? 4-4 低出席率で解雇された独立取締役は? 2-15 研修について満足していますか? 4-5 取締役会の出席義務は年間何回? 2-16 研修で説明不足と感じた項目は? 4-6 全会議の出席義務は年間何回? 2-17 研修時間の合計は? 4-7 独立取締役だけの食事会の出席回数は? 5-1 取締役会の資料の配布時期は? 4-8 会社までの通勤時間はどれくらい? 5-2 取締役会の資料の受け取り方法は? 4-9 通勤時間についてどう感じるか? 5-3 欠席の場合、意見の伝え方は? 4-10 会議ではどれくらい発言するか? 5-4 取締役会の開催回数は? 5-6 取締役会でのアドバイスは反映されているか? 5-5 専門委員会での発言回数は? 5-7 反対意見を述べたい場合でも発言しているか?
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国資上場企業の独立取締役の回答 分野 業界 2-1 2-2 2-3 2-4 2-5 2-6 2-7 2-8 2-9a 2-9b 2-10
民 合 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 計 平均 分野 材料 スーパー 食品 百貨店 設備製造 不動産 ビール 製造 加工 IT 食料 オーディオ製造 ソフト 業界 2-1 50 1.9 2-2 49 2-3 73 2.8 2-4 30 1.2 2-5 38 1.5 2-6 36 1.4 2-7 56 2.2 2-8 2-9a 0.0 2-9b 64 2.5 2-10 55 2.1 2-11 80 3.1 2-12 76 2.9 2-13 2-14 68 2.6 2-15 51 2.0 2-16 79 3.0 2-17 70 2.7 3-1 81 3-2 39 3-3 58 3-4 52 3-5 3-6 53 3-7 3-8 3-9 54 3-10 60 2.3 3-11 63 2.4 4-1 44 1.7 4-2 4-3 131 5.0 4-4 108 4.2 4-5 96 3.7 4-6 78 4-7 4-8 77 4-9 4-10 5-1 75 5-2 5-3 86 3.3 5-4 109 5-5 46 1.8 5-6 43 5-7 115 4.4
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主な質問と回答(相違点) 民営上場企業 国資上場企業 研修時期「直前直後」 0% 21% 研修時の担当者「取締役」 42% 25%
主な質問と回答(相違点) 民営上場企業 国資上場企業 2-1 研修時期「直前直後」 0% 21% 2-3 研修時の担当者「取締役」 42% 25% 2-6 研修時の重要人物紹介者「取締役」 77% 58% 2-9 経営陣の業務内容の説明「非常に」 8% 13% 2-11 企業内の党(政府)組織の紹介「半数」 88% 0% 2-16 研修時の追加希望内容「政府の影響」 27% 3-2 独立取締役の役割「監査・監督機能」 50% 3-4 監査・監督の役割説明「比較的十分」 100% 71% 3-5 再任の説明「全くなし」 4% 3-11 自主的習得方法「政府セミナー」 38% 4-7 独立取締役だけの食事会「1度も出席なし」 35% 5-1 取締役会資料配布時期「1週間前」 38% 5-7 取締役会反対意見の発言「全くしない」 42%
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3ヶ月前:就任企業について事前に調査する十分な時間があるが、直前・直後の実施は形式的とも考えられる
独立取締役のアンケート質問項目と結果 2-1「初めての企業研修(説明会)はいつ?」 民営:「3ヶ月前」27%、「1~2ヶ月前」54%。国資:「3ヶ月前」29%、「1~ 2ヶ月前」25%、「直前・直後」21%。 。 2‐3「研修時において説明担当者は誰か?」 民営:「取締役」42%、「創業者」27%、「株主」15%「CEO・CFO」15%。 国資:「CEO・CFO」50%、「取締役(国資委)」25%「株主」が25%。 2‐11「研修時に企業内の党組織を紹介されたか?」 民営:「企業内の政府関係者の半数を紹介された」88%。国資:「数人、 紹介された」29%、「全員」4%、「1人も紹介されていない」67%。 3ヶ月前:就任企業について事前に調査する十分な時間があるが、直前・直後の実施は形式的とも考えられる 国資の独立取締役は直接政府から指導 工会(労働組合)等の企業内の党組織者は国資委のほうが影響力が大きい
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2‐16「研修時に追加で説明して欲しい内容は」
民営:「独立取締役の権限」35%、「重要内容の決定者」35%、「政府の 影響」27%。国資:「独立取締役の権限」50%、「重要内容の決定者」 50% 3‐11「独立取締役の役割について自主的な習得方法は」 国資:「経験者、本」96%、民営:「政府系のセミナー」38% 3‐2「独立取締役の主な役割についての説明は」 民営:「専門知識の提供」58%、と回答、「経営戦略」35%、「取締役・ CEO・CFOの監査・監督機能」8%。国資: 「取締役・CEO・CFOの監 査・監督機能」50% 3‐4「独立取締役の役割として監査・監督機能の説明は十分受けたと思 うか」 民営:「比較的十分」100%、国資:「比較的十分」71%。 民営企業の独立取締役は自ら政府との人脈関係を築きたい 民営の独立取締役は経営アドバイザーとして求められている 監査・監督の説明ある
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4‐7「独立取締役だけの食事会に参加しているか」
民営:「参加したことがない」35%、国資:「1年に1回参加」46%、「こ れまでに1回だけ参加」54% 5‐1「取締役会での資料配布時期はいつか」 国資:「1週間前」50%「2週間前」50% 民営:「1週間前」38%、「数日前」38% 5‐6「専門委員会での発言はどれくらいか」 民営・国資:「比較的多い」100% 5‐7「取締役会における反対意見があった場合の発言は」 民営:「全くしない」42%、「少ない」58%、国資:「全くしない」50%、 「少ない」50% 民営企業は独立取締役が団結して影響を与えにくい環境 数日前に配布する民営企業は、独立取締役に監査・監督機能を期待していない 民営・国資ともに構造問題により影響を与えにくい
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★民営上場企業の独立取締役の研修時に関するアンケート結果
1)民営上場企業は独立取締役の企業内研修に おいて、独立取締役の監査・監督機能の役割の 説明は行われているが、ヒアリング結果からは実 践的ではない。 2)民営上場企業は独立取締役に対して、経営ア ドバイザーとしての役割を求めている。 3)民営上場企業の構造問題により独立取締役の 監査・監督機能の弊害になっている。 4)政府との関係強化したいと思っている独立取 締役も存在
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日本の社外取締役ヒアリング概要 2012年12月25日から2014年5月30日まで所在地が東 京にある監査役会設置会社、委員会設置会社(東証一 部上場企業12社とジャスダック上場企業5社、不祥事 企業は大企業と中堅企業の2社の17社)に就任してい る社外取締役を対象 社外取締役に会計士、弁護士は存在せず、現職、前職 は、コーポレート・ガバナンス、経営戦略を専門とした大 学教授、大手企業、新興企業の経営者や元経営者、 元外資系企業の経営者 社外取締役に就任したのが1社目というのは1人だけで ある。残り18人は社外取締役として2年から12年の経験 者 社外取締役としての兼任数は、2社から6社、年齢は55 歳から69歳
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日中の社外(独立)取締役のヒアリング結果の比較
日本、監査役・委員会設置会社 中国、民営上場企業 ・研修時は独立取締役に監 査・監督機能の説明あり ・民営企業の期待は、経営 アドバイザー ・経営者の紹介 ・企業から監査機能を求め られていると思うこともある が、構造問題もあり、独立 的意見を発言できないこと が多い。⇒政治性・家族性 エージェント ・研修では、社外取締役の 役割に監査・監督機能の 説明なし、経営者の役割の 説明なし ・企業の期待は経営アドバ イザー、外部、第三者の目 ・第三者機関の紹介、株主 からの紹介も1割 ・企業から監査機能を求め られていることはない (監査委員会設置企業の 一部以外)
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ヒアリング結果からみる民営企業の独立取締役の行動要因
・「国資企業の独立取締役は、国資委に任命された株式代表の 職務怠慢、国資株式持株の利益損失懸念⇒管理職の給料、 利潤分配、投資計画の合理性まで注意⇔民営企業の独立取 締役は、経営者や株主、情報開示、信頼性、関連企業、取引 先との関係だけに注意すればいい⇒構造問題は国資のほう が複雑 ・「中国の独立取締役の報酬は、取締役の最大70分の1と低く、 責任を問われることは少ない」⇒日本の社外取締役の場合 は、責任限定制度があるが、中国にはない⇒責任に対する意識 が違う 中国の「会社法」は、取締役の義務について最低限の原則的な規定しか置いておらず(59条~63条)、制裁については規定していない。 民事賠償責任に関しては、規定がほとんどなく、司法解釈さえないため、上場会社が違法責任を問われるケースは稀。
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研修時の独立取締役の監査・監督機能の説明
「独立取締役は企業の違法行為を知った時点で証 監会、国資委に訴えることができる。また、取締 役会で拒否権を行使すれば、独立取締役の責任 は追及されない。独立取締役は、取締役会で一 部の議案について議決権があり、議案に問題が あれば拒否権を行使でき、棄権も可能である」 「実際に独立取締役が拒否権を使行すれば、経営 陣に圧力をかけることになり、拒否権や棄権など を行使しようと試みた独立取締役は辞任に追い 込まれた例もある」 政府、同族の圧力が監査・監督機能の弊害に
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中国:S社とB社の独立取締役の監査・監督機能効用の評価
社外取締役の資格・経験 兼任数・委員会 L氏(会計士) 6社(監査役)・監査 T氏(企業の所属協会の技術者) 2社・なし K氏(貿易会社経営者) なし・なし 社外取締役の資格・経験 兼任数・委員会 T氏(会計士) 2社・監査・報酬・経営戦略 Z氏(経営経験) 1社・報酬・経営戦略 B氏(ライバル社の技術者) なし・報酬・経営戦略 C氏(法律大学教授) 2社・なし コメント:会長に決定権あり、監査役の意見が独立取締役会計士より重要視 分散型構造、米国企業が株主になったことで、政府・取締役・監査役の影響力が減少した 監査委員会 ・政府からの監査役4人 ・会長 ・独立取締役の会計士L氏 監査委員会 ・独立取締役の会計士Tと独立取締役の Z、Y氏のみ 構造問題なし 構造問題あり・経営アドバイザー
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日本:A社、X社、Z社の社外取締役の評価
社外取締役の資格 兼任数・監査委員会 A氏(米国企業代表) 1社・外国人 B氏(会計士) 3社(監査役)・監査委員会 C氏(弁護士) 6社・監査委員会(長) D氏(法律教授) 1社・委員会なし D氏(弁護士) 5社(監査役) F氏(企業統治教授) G氏(大企業経営者) 1社(役員) H氏(経営者) 2社 社外取締役の資格 兼任数、監査委員会 A氏(弁護士) 1社 B社経営者 C社外国政府機関 D社(弁護士) 1社・監査委員会 E社(経営戦略教授) F社(会計士) 2社(監査役)・監査委員 社外取締役の資格・経験 監査委員会設置なし・兼任数 A氏(企業統治促進企業) 3社 B氏(企業経営者) 1社(監査役)・ C氏(財務) 1社 監査役会設置会社は監査役に監査機能を求めている 会計士には監査としての役割は多少なりとも期待はある 会計士に監査も求めているが経営者の意見が強い
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中国の監査役の学歴構成 短大以下 短大 学士 修士 博士 23 47 58 13 1 16.2 33.1 40.85 9.14 0.7 特徴
人数 23 47 58 13 1 割合 16.2 33.1 40.85 9.14 0.7 124条2項 株主代表の監査役は株主総会で選任・解任される。 126条 監査役会は会社の財務の監査、取締役、支配人の業務執行の監査 126条1項2号 監査役会の権限は取締役、支配人による業務執行における法律、法規、定款違反に対する監督 124条3項 監査役の資格の制限なし。取締役、支配人、財務責任者及び国家公務員との兼任禁止のみ規定。子会社の兼任は可能。 54条3項 監査役(会)は、取締役及び高級管理職の行為が会社の利益を損なうとき取締役、高級管理職に是正を求めることができる。 54条2項 監査役(会)は、法律・行政法規・会社定款または株主総会の決議に違反する取締役・高級管理職の解任を提案できる。 54条1項 監査役は取締役会に出席し、決議事項に対する質問・提案を行うことができる(出席権、提案権だけ監査役個人の公使が認められる) 54条4項 監査役(会)は臨時株主総会の招集提案、取締役が法に定めた株主総会招集及び職責を行使しない場合は、株主総会を収集することができる 152条 取締役、管理職が業務遂行で法律、行政法規、定款に違反し、損害賠償を負う場合、株主は監査役(会)に提訴できる。その場合、監査役は会社を代表して取締役などを提訴できる。 出所:方新「中国における監査役制度と運用状況」『監査役』No52,163ページを元に筆者作成
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ドイツ、中国、日本における監査役(会)の職責・権限
ドイツ 中国 日本 基本的任務 業務執行の監督 業務執行、経営者の監督、法律への監督 取締役の職務執行の監査 人事権 取締役の選解任、取締役の報酬額の決定時の妥当性に関する配慮 取締役などの行為の適正法 監査役会は、取締役会にて監査役の 選任議案について同意権、監査役の 選任議案の提案権 業務に関する基本的権限 取締役会報告の請求・受領、取締役会業務規定の制定、帳簿・書類などの調査、閲覧、取締役会の行為における監査役会の同意を要する者の指定 財務の検査、取締役会、取締役などの経営者の業務執行の監督、開示会計報告、募集資金の投資、重大資産の売却 取締役会・使用人に対する営業報告の請求、当該会社、子会社の業務・財産の状況調査 株主総会との関係 招集権(取締役会が招集すべきにかかわらず招集しない場合のみ)、取締役会と共同で議案提出、監査役と決算検査上の選任議案提出、年次決算書の監査報告書の提出 臨時株主総会等の招集の提案、株主総会の決議に違反する経営者への罷免の提案 総会提出議案や書類の不正の報告、監査役の選任・辞任に関する意見陳述権、会計監査人解任の事実と理由の報告、株主の求める事項についての説明義務、定時株主総会前の招集通知時、会計監査と業務監査に関する監査役の監査報告の提供 取締役(会)との関係 取締役の報告行為などの同意、取締役の行為の禁止権・作為請求権 法律、行政法規、定款、会社の利益に損害を与える取締役などに対する是正の提案、取締役などに対する訴訟の提起 取締役の不正・不法行為の報告、取締役会への招集請求権・招集権、取締役会への出席・意見陳述・議事録署名、取締役の違法行為禁止請求権 会計監査人との関係 選任議案の総会提出、決算検査報告書についての監査役見解の総会報告 なし 選任議案の同意、提出請求、会計監査の解任、仮会計監査人の選任、監査報告書の受領、取締役の不正・不法の報告受領 年次決算 決算書の受領、年次決算の確定、監査報告書の策定・総会への提出 会計監査の監督(会計報告の作成修正権、職務執行権なし) 計算書類などの受領、監査、監査報告書の作成、取締役会への提出 資本関係など 認可資本に関する同意見 新株発行無効の訴え、減資・合併・会社設立無効の訴え 責任 損害賠償責任 損害賠償責任、取締役との連帯責任、会計監査人との連帯責任 訴訟上の会社代表 裁判上、会社と取締役間の行為における会社代表 取締役との訴訟における会社代表
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中国、ドイツ、日本の監査役(会)の資格・選任方法など
ドイツ 中国 日本(大会社) 独立性、条件 独立性が十分確保できる者。監査の専門知識、経験を有する者 支配人、財務責任者、国家公務員との兼任禁止、法人の監査役に就任禁止。 就任前に会社またはその子会社の取締役、会計参与、執行役、使用人でなかった者 選任 株主総会の通常決議 任期 4年 3年 解任 株主総会の特別決議(4分の3) 株主総会の特別決議(過半数) 株主総会の特別決議(3分の2) 兼任制限 10社(子会社5社) 5社まで 制限なし 常勤監査役 規定なし 1人以上 社外監査役 取締役等との兼任禁止内容 当該会社、子会社の取締役、支配人、支配代理人 なし 当該会社、子会社の取締役、支配人、その他の使用人 出所:各国の法律を参考に作成。
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・中国の監査役は、ドイツ、日本と異なり、監査役は単独で行使できず多数決で決議する。偶数にならないように最初から奇数に設定している企業が多い。 ・中国では公務員が監査役を兼任することが禁じられているが、実際には3割ほど政府所属者がいる。 ・中国の監査役は独立取締役よりも学歴が低く、監査機能が可能の人材が少ない。 ・日本の監査役の権限は強化されているが、会計監査と業務監査(適法性監査) ・兼任社数はドイツは10社までと日本と同様に多く、中国の5社までを上回る。
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監査委員会で独立取締役が会計監査⇒監査役会調査⇒違法の有無
中国の独立取締役と監査役の役割 監査委員会(独立取締役) 監査役(会) 会計監査の監督、会計事務所の任免提案 会計監査、財務の検査 会計情報、公開審査、独自に外部監査機関依頼 異常察知後、外部監査機関依頼 内部統制制度監督、取締役・高級管理職の選任・解雇、報酬、株主、関連企業との取引の措置、独立意見の発表 法律・定款に違反する取締役の罷免の提案、取締役役員に対する監督、損害を与える取締役の是正の要求 臨時株主総会開催提案 株主総会前投票権収集 取締役・経営者への提訴 監査委員会で独立取締役が会計監査⇒監査役会調査⇒違法の有無
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★研修機関(第三者機関)における研修内容:主要国の研修の規定
★研修機関(第三者機関)における研修内容:主要国の研修の規定 国 企業内研修の規定 対象:独立取締役 中国 上海証券取引所、独立取締役研修指針セクション3 新任、継続者 米国 NYSE、ナスダックCGなど 英国 キャドベリー報告書 豪州 会社法、CG原則 日本 東証、コーポレートガバナンスコード策定(2015)、「研修の方針について開示」のみ 取締役、監査役 ・中国、米国、英国など:独立取締役は就任前に企業内研修の受講、再任時に研修の受講が義務化。 ・中国では、企業外研修、試験まで義務化。 ー研修内容に監査・監督の講義はあるか ー研修時に監査・監督の説明は明確にされているか
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中国:第4章16条の2)から8)における研修内容に関する規定
。 中国:第4章16条の2)から8)における研修内容に関する規定 第4条16条2 毎年、年初めに、研修の年間計画書を作成し、証監会に提出しなければならない。 第4条16条3 証監会へ提出する内容は、研修実施の方法及び研修科目の内容など具体的に詳細を明記しなければならない。 第4条16条4 各講義における講師陣を決定した上で、その詳細を明記し、提出なければならない。 第4条16条5 研修後は、受講生の研修講義内容に対する理解を図るため筆記試験を実施する。試験結果は明確に合否をつけなければならない。 第4条16条6 証券取引所などは、研修後、受講生からの評価、感想をまとめ、証監会の上場企業監管部に報告すること。 第4条16条7 主催者は、受講生が参加した研修時間、内容、試験結果などについて明確にデーター化し、提出すること。 第4条16条8 研修後、15日以内に、上場企業高級管理人登録者用データのため合格者の詳細を証監会に提出しなければならない。 第4章16条の2)から8)における研修機関に関する規定 出所:証監会「上市公司高級管理人員培訓工作指引」第4条を元に作成
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★中国の独立取締役の研修内容に関する規定
ー「高級管理人は、持続的教育訓練として就任後、2年以内に再度、研修を受けなければならない」高級管理人とは、上場企業の董事长(会長)、董事(取締役)、独立董事(独立取締役)、监事(監事)、总经理(社長)、财务总监(財務最高責任者)、董事会秘书(取締役会秘書)を指すと示している。(2005年証監会「上市公司高級管理人員培訓工作指引」の第1章) ー「研修の責任者は、証監会、上海・深圳証券取引所であり、研修を実施する際には証監会の指導に従い、その詳細について証監会に事前に提出し、受講者は公募しなければならない」第4章15条、16条の2)から8) ー「費用は高く設定せず、企業に負担させず個人が支払うようにしなければならない」(第17条) 細部に渡り政府の関与が規定されている
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★中国の企業内外研修実施機関 1 上海証券取引所、深せん証券取引(企業外研修) 2 政府指定の大学(企業内研修と位置づけ)
・指定のホテルなどの会場 ・ 30時間、4日間 ・参加者約200人 ・約1500元 ・合格者のみ修了証明書が授与され、名簿に登録 ・受講せずに独立取締役に就任不可。発覚者は、公表、罰則 2 政府指定の大学(企業内研修と位置づけ) ・研修内容、講師陣の選任においては、事前に政府に承諾を得る ・独立取締役、取締役を対象 ・1週間ほど日中講義受講、収賄、人脈作りに関する規定強化 3 中国取締役学会(CHINA INSTITITE OF DIRECTOR) ・日本、英米の取締役協会とは異なる ・日本、英米等にある民営の人材育成、研修実施する第三者機関は存在せず
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1 上海証券取引所、深せん証券取引(企業外研修)
1 上海証券取引所、深せん証券取引(企業外研修) ●研修時の説明(独立取締役へのヒアリング結果) 1)企業統治システム 2)独立取締役制度に関する法律、規定 3)企業統治に関する法律、規定 4)財務監査の事例分析 5)経営者のインセンティブ、報酬 6)独立取締役の役割 ー経営者の監査、監視、監督機能の説明 ー取締役会、専門委員会の運営 ー財務報告書の基本的理解 ●試験内容 「独立取締役の経験者は、すでに周知している研修内容は法律関連が中心、 試験範囲は事前に教えられ、不合格者はいない。不合格の場合は再試験を受 けられる」⇒形式的 責任に対する具体的な説明はなく、原則的。 独立取締役に対する違反への罰則説明が多い
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2 政府指定の大学(企業内研修と位置づけ) ●取締役を対象:中欧国際工商学院(経営管理者を対象に初め て設置)、広州の中山大学、北京の北京大学汇丰商学院、清華 大学などの都市部の有名な大学のみ。 ●独立取締役限定:北京国家会計学院:中国証監会が管轄下で 中国証券業協会と清華大学が共同主催者。受託側である国家会 計学院にて講義は開催され、研修参加者は公開募集する。 ●大学側が、年初に講義内容、講師陣を選任、証監会に提出、 承諾を得なければならない。 ●講師陣の多くは政府関係者 ●政府発行の修了証明書が授与される。 ●独立取締役は就任前、さらに2年以内に公的研修を受けなけ ればならない。 ●企業内研修と位置づけ、受講料は証券取引所主催の研修より 10倍以上と高額 ●独立取締役の監査・監督の説明は証券取引所より多い。 研修時の人脈作り、収賄が問題視、2015年1月から規定が強化
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大学(企業内研修と位置づけ)での研修内容
1)企業の管理方法 2)独立取締役制度、会社法、法規 3)株主訴訟問題の分析 4)財務の監査方法 5)上場会社の高級管理職者の賃金及び賞与システム 6)取締役会の役割 7)管理職の監督 8)取締役会下の専門委員会の運営方法 9)財務諸表の分析 10)独立取締役の役割 監督=取締役会の役割、管理職の監督、専門委員会の運営方法、監査=財務諸表の分析 企業の取締役の要望で研修内容を決め、政府が承諾⇒取締役=政府所属者であることも多く、自らを監査・監督するような内容にはしない
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3 中国取締役学会(CHINA INSTITUTE OF DIRECTOR)
●出版物 ●自主的セミナー、研修 1)持続的な教育研修、2)専門能力の評価、3)取締役の人材の斡 旋・紹介、4)学術研究成果のシェアなどの情報提供、5)取締役に 対してビジネス、社会的責任について意見交換の場の提供を実施 ⇔規定により交流会等が禁止 ●中国には日本、英米の取締役協会などの第三者機関、民営の 独立取締役の育成、研修、人材斡旋機関は存在しない⇔法律上、 情報提供、情報交換不可能 ●証監会下の機関が実施する研修内容では、政府の承諾を得て、 政府の講師による講義 ⇒独立取締役が、政府所属者が多い経営者を監視、監査、監督 する実効性のある研修は困難
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★日本の社外取締役の研修内容 ●社外取締役を対象に研修を実施しているのは、主に取締役協会、プロネッド、日本CGネットワーク、商事法務。
●社外取締役の自主的な参加のため参加者は全体の2割程度。8割は研修を受講しておらず、社外取締役の役割への意識には差があることが予想される。 ●社外取締役の研修受講は法律で義務化されておらず、「研修方針の情報開示」のみコーポレートガバナンスコード(2015)で策定 ●社外取締役の監査機能の内容は、中国と同様に財務等の講義はあるが、両国とも、英米の研修機関実施する内容ほど充実していない。 ●研修が義務化されている中国、英米とは異なり、日本は修了証明書は発行しない。 ●商事法務以外は人材斡旋、アドバイス、交流会も実施。 ●独立取締役の役割に「監査・監督機能がある」ことを明確に説明している講義は商事法務に多い
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日中の研修機関の役割 ・中国では日本、英米のような第三者機関がなく、政府の関与が強い⇒NPO、民営主体の第三者機関設置が必要 中国 日本
研修機関による人材推薦 政府により準備中 ○ 会社法・証券法より研修の義務化 ◎ × 独立取締役役割に監査・監督の説明 △ 情報交換、意見交換の場の設置 相談、アドバイスの提供 CG 財務諸表の分析 ・英国の育成機関(ProNED)では研修の充実により人材不足を解消 ・中国では日本、英米のような第三者機関がなく、政府の関与が強い⇒NPO、民営主体の第三者機関設置が必要
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中国の研修内容の実態解明 「独立取締役が監査・監督機能を発揮するための研修は、実践的ではない」 ⇒企業内研修内容は監査・監督機能の役割説明はあるが、責任問題について不明確 ⇒企業外研修では、監査・監督機能の講義があるが、講師が政府関係者である。 ⇒日本、英米の研修機関と異なり情報提供、情報交換、アドバイスに対する規制がある。
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中国民営上場企業の問題点の整理 1)法律の強化・整備
-監査委員会の構成員(会長は独立取締役に。独立取締役のみで構成。非政府所属の会計士の独立取締役の設置、非政府所属者の独立取締役のみ)の規定の明確化 -独立取締役の監査・監督に対する権限、責任、処罰、不正発覚時の証券取引所との連携、通報手順等の明確化 -監査役との役割の重複の整理 -順守していない企業への罰則強化 ⇒証券監督管理委員会、証券取引所の不正取引企業への調査に対する権限の強化 2015年1月「党政幹部の企業における兼任問題に対する意見」証券取引所に新調査部門が設置。証券法、証券投資基金法、期貨交易管理条例などの法律に従って、不正企業に対して強制的な銀行口座の閉鎖、凍結など行政処分が可能⇒不正取引企業に対して直接、罰する権限が強化。重大な事件に関しては、証監会が直接、不正取引企業を調査し処分する ⇒企業側への情報公開の規定の強化、限定責任保険(D&O)制度の設置
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2)研修機関(第三者機関)の研修内容の充実、人材育成
-独立取締役、取締役の不正に対する意識の向上 -監査・監督機能強化のための実践的な講義の増加 - 3)研修機関(第三者機関)のサービス・システムの構築 -グローバル経験及び外国人の独立取締役の人材の確保 -民営の研修機関(第三者機関)の設置 -独立性の高い人材紹介斡旋 -報酬は経営者ではなく第三者機関を通した支払いシステムに(独立取締役のインセンティブ、評価を明確化することで不正抑制効果、監査・監督機能のモチベーション効果へ) 4)企業の構造問題 -民営上場企業による大株主(究極の所有者)の権限の弱化、個人株主による反対助言の強化
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日本企業の問題点の整理 1)法律の強化・整備 ー社外取締役設置の義務化、研修受講の義務化において市場別または時価総額別の規定が必要
ー社外取締役の権限の強化、独立性の強化 ー監査役との役割の重複 2)研修機関(第三者機関)の研修内容の充実 ー独立取締役における監査・監督機能の役割の周知 ー独立性の高い人材の確保 3)人材斡旋が1割程度、英米より低く独立性が低い
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今後の研究課題 ●研修受講者である独立取締役と企業に対して、定 期的(直後、数ヵ月後、1年後等)、また、長期的に、 独立(社外)取締役の監査・監督機能への影響に ついて、ヒアリングの追加。 ●日本では研修受講者が1割程度であり、積極的な 社外取締役の現状しか把握できない。研修に対す る法の整備、ガバナンス強化により研修受講者の サンプル数の増加とともに継続的な調査の追加。 (東証一部・東証・日本取締役協会調査2014年8月現在)
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主な参考文献 梶田幸雄(2011)「中国における従業員監査役制度の現状と課題」麗澤大学紀要巻第93
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