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癌の誕生と遺伝子異常
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がん、癌、癌腫、肉腫、これらの意味は?
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腫瘍に関連する言葉の意味 腫瘍=新生物=自律増殖する細胞の塊 悪性腫瘍 (悪性新生物) (がん) 良性腫瘍 (良性新生物) 癌腫 (癌)
腫瘍に関連する言葉の意味 腫瘍=新生物=自律増殖する細胞の塊 悪性腫瘍 (悪性新生物) (がん) 良性腫瘍 (良性新生物) 癌腫 (癌) 上皮由来 肉腫 非上皮由来 腫瘍には、良性腫瘍と悪性腫瘍があり、悪性腫瘍が一般的な「がん」に相当する。がんの中には、上皮由来の癌腫(癌)と非上皮由来の肉腫が含まれる。
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新生物/腫瘍の定義 1.腫瘍とは細胞が自律的に過剰に増殖してできた組織の塊である。 2.原則として単一の細胞に由来する。(単クローン性)
正常細胞は、外からの刺激(増殖因子)に反応して、増殖刺激がある時のみ増殖する。
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正常細胞の新陳代謝 肌の新陳代謝 10歳代では、約20日周期、 20歳代では、約28日周期、 30歳代では、約40日周期、
40歳代では、約55日周期、 50歳代では、約75日周期、 60歳代では、なんと約100日という周期 筋肉や肝臓などでは60日周期 胃腸では5日周期 というように、新しい細胞に置き換わっていっている。 角質層にある古くなった細胞は垢となって落ちていく。代わって新しい細胞が誕生する。 新しい細胞の誕生を刺激するものは何か?
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細胞の増殖機構 正常細胞の増殖は以下のように調節される。 1.細胞外からの増殖因子の受容体 への結合 2.受容体の活性化(自己リン酸化)
への結合 2.受容体の活性化(自己リン酸化) 3.アダプター分子を介してシグナル 伝達分子の活性化 4.次のシグナル伝達分子のリン酸 化による活性化 5.増殖シグナル伝達分子の核内移 行 6.増殖関連蛋白の転写因子活性化
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自律性増殖とは何か? 正常細胞は,細胞周囲環境下の増殖制御機構(増殖シグナルと増殖停止シグナルを伝えるサイトカインなど)の制御下にあるが,腫瘍細胞は制御機構から逸脱し,自律して増殖できるようになる。 正常細胞では、死んでいく細胞を補うために、増殖因子が産生される。増殖因子がレセプターに結合すると、細胞の増殖を刺激する。
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自律的増殖とはどういう意味か? 正常細胞では、細胞外の増殖因子が受容体に結合するときだけ、増殖シグナルが核にまで伝わる。その結果、増殖因子が受容体に結合したときだけ増殖する。 がん細胞では、増殖因子が受容体に結合するところから、核までシグナルを伝えるタンパクのどれかに遺伝子変異が入って、上から伝わる活性化するシグナルがなくても活性化しているタンパクができてしまう。その結果、増殖が止まることがない。
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腫瘍の特徴は、増殖のブレーキがないことにある。
1.増殖スピードが速いわけではない。 (むしろ血球細胞などに比べると遅い) 2.不老不死ではない。 (がん細胞でも老化して死亡する細胞もある) 後でもまた話しますが、腫瘍の特徴をよく理解して欲しい。勘違いというか錯覚していることが多くあります。 3.分化する能力を失ってはいない。 (同じ胃癌でも分化型もあれば、未分化型もある)
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単クローン性の増殖とは何か?
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図37.腫瘍の単クローン性増殖の証明 母親(XX) 父親(XY) 女子(XX) XXのモザイク X X 不活化X 不活化X
モザイク状の体の中にモザイクでない細胞集団があれば、その集団は単一の細胞由来と考えられる。
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他に一個からスタートしている証拠は? 1.成人T細胞性白血病(ATL)の原因ウイルスであるHTLV-1はDNAの中に組み込まれるが、同じ人のATL細胞では同じ場所に入っている。 2.多発性骨髄腫では免疫グロブリンを作る形質細胞系の細胞ががん化しているため、免疫グロブリンを作る。同じ人の骨髄腫細胞では同じ免疫グロブリンで、結合する抗原も同じものである。
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なぜ一個からスタートすることが重要なのか?
免疫能を失っているマウスに人の細胞を注射すると、腫瘍を作ってきますが、一個入れて腫瘍を作ることはありません。だいたい1万個から10万個も入れます。 一個からできるとは考えにくかったため、そして腫瘍内でも分化度の違う多彩な細胞からできている腫瘍もあるため、昔はがん化が多数の細胞に怒っていると考えられていた。 一個からスタートして臨床的ながんにまで至る確率は相当低い。 つまり、臨床的がんになるまでには、途中の幾つものハードルを乗り越える必要がある。 臨床的ガンになるまでには時間がかかる?
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一個のがん細胞が誕生してからどれくらいで臨床的がんになる?
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がんはどれくらいかかって大きくなるのか?
1012 109 106 1g: 最小臨床検出可能体積 1kg: 致死体積 1個の細胞からスタートしておよそ30回以上の分裂を繰り返して、初めて検出可能となる。 10億個 検出可能となってからおよそ10回分裂すると致死的なサイズとなる。 1兆個 1cm 109 1012 106 10年 臨床検出可能体積に達するまでに10年以上の年月が要する。 最初の1個のがん細胞
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10年以上かかるという証拠は?
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−ヒトでのがん発生の時間経過を見た実例−
図32.広島原爆被爆後のがん発生経過 −ヒトでのがん発生の時間経過を見た実例− 被曝後2-3年後から白血病が増加しはじめ、固形がんは10年目頃から増加し始めた。 原爆放射線による人体への影響 ( )より引用 原子力百科事典(ATOMICA)高度情報科学技術研究機構(RIST)
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図33. 膵癌の進展モデル 浸潤性膵癌 正常粘膜 PanIN-1A PanIN-1B PanIN-2 PanIN-3 がん細胞の誕生 転移
図33. 膵癌の進展モデル 浸潤性膵癌 正常粘膜 PanIN-1A PanIN-1B PanIN-2 PanIN-3 がん細胞の誕生 転移 浸潤能 獲得 転移能 死亡 11.7年 6.8年 2.7年 原因についてどこまで明らかになったのか。小林正伸、THE GI FOREFRONT、6月号、2013年 より改変
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誕生するがん細胞のうち選ばれたエリートのみが臨床的がんにまで到達している。
(1/1000とか1/10000とかの確率か?) 1個から109個までに増える10年以上の間には、いろいろな攻撃(免疫担当細胞も含む)を乗り越えてきている。
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がん細胞ができるメカニズムは何か? がん遺伝子って何?
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図34.がんウイルスとがん遺伝子、がん原遺伝子
1911 ラウス肉腫ウイルスの発見 1914 藤浪肉腫の発見 マウス白血病ウイルスの発見 1951 白血病ウイルスから逆転写酵素の発見 1970 1976 Srcがん遺伝子が細胞由来であると証明 1982 H-ras原がん遺伝子が膀胱がんの原因 Rous 1966年ノーベル賞 Temin, Baltimore 1975年ノーベル賞 Bishop Varmous 1989年ノーベル賞 A) B) がんウイルス ウイルスゲノム 殻タンパク 正常細胞 がん細胞 がん遺伝子? がんウイルスを振り掛けると細胞ががん化する。がんウイルスにはがん化をひきおこす遺伝子があるに違いない。→がんウイルスの遺伝子から原因遺伝子がとられた。→まさにがん遺伝子
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1970年代のがん遺伝子が発見される前の時代には、マウスなどの動物のがん化は、ほとんどウイルスによって起こると考えられていた。
また自然発生するがんも内在ウイルスの活性化によると考えられていた。 ただヒトではがんウイルスが見つかっておらず、自然発生するヒトのがんの原因は、がんウイルスとは別物と考えられていた。 がんの原因に関する研究は2つの方向から進められた。一つはがんウイルスの原因遺伝子の探索、もう一つはヒトのガンの原因遺伝子の探索であった。
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がん遺伝子の発見=がんウイルスのがん化に 責任のある遺伝子の発見
責任のある遺伝子の発見 当時、細胞内には内在するウイルスが隠れているとする「内在ウイルス仮説」が信じられており、「その内在ウイルスががん遺伝子を持っているのではないか」とする仮説が信じられていた。そこで、がん遺伝子を発見したグループは、正常細胞にもがん遺伝子があるはずだと考えた。 がんウイルスにあったがん遺伝子が、全く同じではないが、正常細胞にもあったことを見つけてしまった。 がん遺伝子という言葉の発祥 正常細胞にある「がん遺伝子」様の遺伝子は内在ウイルスなのか?
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ウイルスがん遺伝子と原がん遺伝子 A √ 細胞のがん遺伝子 B √ ウイルスのがん遺伝子 内在ウイルス内に存在するがん遺伝子 C √ 正常細胞に見つかったがん遺伝子様の遺伝子は、Aにあるように、飛び飛びに存在していた。もし、内在ウイルス中にがん遺伝子があるとすれば、Cのように存在する。
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がんウイルスとは、がん細胞に感染してがん細胞にあった遺伝子変異をウイルス遺伝子内に取り込んだウイルスであり、このウイルスの方が遺伝子変異を持っていないウイルスと比べて感染すると細胞ががん化して細胞が増加するため、ウイルスも増加しやすいという優位性があった。そのためにがんウイルスが選択されてきたと考えられる。 では、正常細胞にあったがん遺伝子と似ている遺伝子は何をしていたのか?実は、増殖因子、増殖因子受容体、シグナル伝達分子などのタンパクを作る遺伝子であった。
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ヒトの原因遺伝子の探索もがんウイルスの原因遺伝子の探索に遅れたが、6年後に発見された。
しかし、期待に反してがんウイルスに見つかっていたras遺伝子であった。 がんウイルスによるがん化も、自然発生するがん化も、正常細胞に存在する原がん遺伝子の変異による。
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原がん遺伝子の活性化 活性化のメカニズムは?
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がん遺伝子の誕生(原がん遺伝子の活性化)
正常 GAT-GTT-GCC-GCC-AGG- な遺伝子 点突然変異 GAT-GTT-GCC-TCC-AGG- 正常タンパク 異常タンパク A. 点突然変異 myc遺伝子 myc遺伝子の増幅 B. 遺伝子の増幅 myc タンパク myc タンパクの増産 C. 融合タンパク 9番染色体 22番染色体 abl bcr bcr/abl 融合遺伝子 融合タンパク
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どんな遺伝子が傷つくとがん遺伝子になるのか?
原がん遺伝子は何をしているのか? どんな遺伝子が傷つくとがん遺伝子になるのか? 「がん遺伝子」という言葉が、がんの原因遺伝子として作られ、その後正常細胞にそのもととなる遺伝子があったので、それを原がん遺伝子と呼んでいる。 むしろ、「遺伝子のうちの傷つくと含意電子としてがん化に寄与する遺伝子があった。」と考えるべきで、そうした遺伝子の変異によってがん化した細胞に感染して変異遺伝子を取込んだウイルスが「がん遺伝子」を持ったがんウイルスとなった
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表4.原がん遺伝子 機能別分類 原がん遺伝子 働き 増殖因子 sis 血小板由来増殖因子 int-2 線維芽細胞増殖因子
機能別分類 原がん遺伝子 働き 増殖因子 sis 血小板由来増殖因子 int 線維芽細胞増殖因子 受容体型チロシンキナーゼ fms MCSF受容体 her EGF受容体 met HGF受容体 非受容体型チロシンキナーゼ src シグナル伝達分子 abl セリンスレオニンキナーゼ raf シグナル伝達分子 GTP結合蛋白 ras シグナル伝達分子 核蛋白 myc 転写因子 myb
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図37.PDGFシグナル伝達経路と原がん遺伝子
PDGF (c-Sis) 2量体化 PDGFR PDGFR PLC-g P P SOS Ras PIP2 PI3K Grb2 JAK PDK-1 相互のリン酸化 RAF STAT3 {Ca++} 活性化 AKT MAPK リン酸基 P 核 核内移動 赤字で示したシグナル伝達分子として原がん遺伝子由来タンパクが働いており、変異などの機構を介してがん化を起こすがん遺伝子となりうる分子である。
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アクセルが常にオンになるメカニズムは? がんでは、常時増殖へのアクセルがオンになっている。
つまり、細胞の増殖に関与するタンパクをコードする遺伝子に変異が入ると、「常に活性化したタンパクができる」というメカニズムこそががん化メカニズム。 がんでは、常時増殖へのアクセルがオンになっている。 アクセルが常にオンになるメカニズムは?
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図38.増殖シグナルが常にスイッチオンになるメカニズム
正常細胞 がん細胞 PDGF (sis) 変異PDGF受容体 正常PDGF受容体 Ras Ras Ras RAF RAF RAF 常時活性化 PDGF受容体 活性化 PDGF受容体 MAPK MAPK MAPK がん細胞では増殖因子の刺激が無くても、変異PDGF受容体は活性化して常にスイッチオンになる。その結果、常時増殖シグナルが核内に伝わる。 正常細胞では、PDGFが受容体に結合すると立体構造が変化して活性化し、下流のシグナル経路が活性化して、増殖シグナルが核内に伝わる。
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がん化はがん遺伝子の誕生がアクセルとなる
ほかにがん化のメカニズムはあるのか?
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がん抑制遺伝子の可能性 ? (A) がん細胞と正常細胞の融合 + (B) がん抑制遺伝子の不活化によるがん化 欠損 2つともに欠損 正解は
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がん細胞と正常細胞を癒合すると、がん細胞側のがん遺伝子が働いて、がん細胞になると考えられていた。
しかし結果は、意外にも正常細胞になってしまった。 正常細胞にはがん化にブレーキをかけて、アクセルを踏んでもがん化しないタンパクがあるに違いないと考えられた。 (B)はクヌードソンのtwo hit theory
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1986年に最初のがん抑制遺伝子Rbが見つかった。その後p53もがん抑制遺伝子であることが分かった。P53遺伝子の変異・欠失は約半分のがんに認められることが分かった。
がん抑制遺伝子の本来の働きは?
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図40.P53の働き 遺伝子修復可能な場合細胞周期停止 細胞質 p53 P53 核 標的遺伝子 遺伝子修復不可能な場合アポトーシス
ストレス DNA損傷 低酸素 p21 GADD45 14-3-3 Cdk2 Cdc2 S期 M期 遺伝子修復可能な場合細胞周期停止 細胞質 p53 P53 標的遺伝子 核 Bax Apaf1 遺伝子修復不可能な場合アポトーシス CytC caspase9
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表5.がん抑制遺伝子 癌抑制遺伝子 遺伝性癌 非遺伝性癌 機能 Rb 家族性網膜芽細胞種 骨肉種,肺癌など 転写制御
癌抑制遺伝子 遺伝性癌 非遺伝性癌 機能 Rb 家族性網膜芽細胞種 骨肉種,肺癌など 転写制御 P53 Li-Ffraumeni症候群 大腸癌,肺癌など 転写制御 P16 家族性悪性黒色腫 食道癌など 細胞周期制御 APC 家族性大腸ポリポーシス 大腸癌,胃癌など タンパク分解vHL von Hippel lindau病 腎臓癌 ユビキチン化 BRACA1 家族性乳癌 乳癌 DNA修復 BRACA2 家族性乳癌 乳癌 DNA修復
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図41.P53の異常がもたらすがん細胞の変化 細胞周期停止 と遺伝子修復 or アポトーシス p53 細胞周期は停止せず、
正常細胞 P53 標的タンパク DNA損傷 細胞周期停止 と遺伝子修復 or アポトーシス 娘細胞 細胞分裂 p21 Bax p53 がん細胞 DNA損傷 細胞周期は停止せず、 分裂した細胞にDNA損傷は蓄積する。 DNA損傷
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図42.がん遺伝子の協同作用 myc myc +ras ras
フォーカス:がん細胞に転換すると、接触阻止がおこらずに盛り上がるように増殖が継続し、最終的には細胞の塊を形成する。細胞の塊の部分は周囲の1列の細胞シートに比べて黒く見えるため、数を数えることができる。この塊をフォーカスと呼んでいる。 42
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表6.ヒト正常細胞のがん化に必要かつ十分な遺伝子とは?
経路 Ras pRb p53 テロメア PP2A 経路の制御機構を解除するのに用いられた遺伝子/物質 ras CDK4+D1 SV40 LT HPV E7 DN p53 HPV E6 hTERT myc+SV40 LT SV40 st 時には Myc Akt/PKB+Rac1 PI3K B56 shRNA 正常ヒト細胞のがん化は、ヒト正常細胞にクローン化した遺伝子を組み合わせて導入することで成し遂げられてきた。その結果、上記の5つの経路の調節を解除するとがん化することがわかった。すなわち、(1)ras分裂促進性シグナル伝達経路、(2)pRbを介した細胞周期制御、(3)p53、 (4)テロメアの維持、(5)タンパク脱リン酸酵素(PP2A)である。
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