Aomori Infection Control Network

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1 Aomori Infection Control Network
　AICON事務局の齋藤です．だんだん涼しくなってまいりました．みなさん体調に気を付けてお仕事がんばりましょう．今月も堅苦しくない感染症または感染対策の読み物として読んで頂ければ幸いです． 「愛CONニュース」201６年10月号 Aomori Infection Control Network 多剤耐性菌が発生する原因にはまだ謎が多い！ 　抗菌薬の効かない多剤耐性菌が生まれる原因は「抗菌薬の乱用と不適切使用」が真っ先にあげられますが，実は医療だけの責任とは言えません．世界で使用されている全抗菌薬量の2/3は動物に使用されています．実は，耐性菌の発生には家畜飼料への抗菌薬の大量投与が大きく関わっていると報告されています（食肉製品の安全性とは全く別次元のお話ですのでご心配なく）．日本では1996年まで，バンコマイシンに似た性質を持つアボパルシンという抗菌薬が、飼料の品質維持や家畜の成長促進の目的で使用されていました．実はそれは全世界的に長年に渡って家畜飼料に添加されてきた抗菌薬（かつ家畜の発育促進剤）なのです．そのため家畜も人間と同様，長期間の抗菌薬を摂取することにより、その体内に常在していた腸球菌が「バンコマイシン耐性腸球菌（VRE）」という大変な耐性菌に変異していったと考えられています．耐性菌は家畜同士や飼育業者等を介して，接触した動物や人に保菌され、その保菌者が病院に行ったり易感染性宿主と接触したりしてVREが広がっていったのです．そのような背景から日本では97年に，世界的には2000年代前半に「家畜飼料にアボパルシンを添加することは禁止」されました．VREのもととなる腸球菌は誰もが腸内に持っている（常在）腸内細菌の１つでもあるので，実際に悪さをする（それが原因で感染症を発症する）ことはそれほど多くありません．それだけに自分がVREの保菌者であることに気づきにくいわけです．家畜や生肉からはVRE以外の耐性菌の存在も多数報告されています．確かに「飼料添加物」という言葉の中に実は抗菌薬が含まれている場合が多く，食用家畜はかなりの率で抗菌薬を長期的に摂取しています．しかしだからと言って関係者に対しそのことを責めるのは軽率です．なぜならば，現在使われている家畜用抗菌薬の使用と家畜から出た耐性菌発生との関連には，科学的証拠が見いだせない点が多々あるのです．どういうことかというと，ヒトおよび動物で増加している「ESBL産生菌」という耐性菌があります．ESBL産生菌は病院で最も多く使用される「セフェム系抗菌薬」に耐性をもつ菌です．そして，その菌は食肉用の鶏から検出されることが多いのです．しかし，畜産業の方が現在食用鶏に与えているのはセフェム系とは異なる抗菌薬なのです．すなわち，抗菌薬の使用とは全く関係ない理由で耐性菌が増えている可能性も十分考えられるのです．東邦大学微生物・感染症学講座の石井良和先生は，「健康な学生70名の便のうち4名からESBL産生菌が検出されたが，いずれの学生も3ヶ月以内の抗菌薬の投与歴はなかった」と報告しています．耐性菌の問題にはまだ謎の部分がたくさんあるのです． 麻疹（はしか）の集団発生が各地で発生！ 　報道で御存知の方も多いと思いますが，先月，国際感染症センターより８月14日に千葉市幕張メッセでのコンサートに訪れた男性が麻疹と診断され、今後患者数が増加する恐れがあると注意喚起されました． 報道発表：2016年8月23日（西宮市） 症例：19歳男性　麻疹の届け出あり 西宮市は千葉県・千葉市・神奈川県・東京都中央区に連絡 医師会等で注意喚起されている情報： 8月9日　39.1℃の発熱 8月13日から全身に発疹 8月13日～15日　東京・神奈川訪問あり 8月14日　幕張メッセで開催されたコンサート（ジャスティン・ビーバー）に参加 8月19日　麻疹と診断 　その後、大阪府では，関西空港において誘導や受付などを担った事業所の職員ら33人（9/13現在）が麻疹に感染したと発表しています．厚生労働省によると、コンサートに参加した男性も関空を利用おり，感染が確認された関空で働く社員の一部とこの男性のウイルスは同じ型で、いずれも関空内で感染したとみています．また兵庫県尼崎市では、市内の保育所で園児ら６人の集団感染が確認されたほか、9/６に女子中学生の感染も確認されています．これについては関西空港での集団感染との関連は発表されていません． 　いずれにせよ，空気感染する麻疹はやはり１人の感染者から集団発生が生じやすいことを思い知らされます．麻疹の特徴を復習しておきましょう． 【麻疹について】 ・抗体を持っていない（抗体価の低い）人はかなりの確率で感染する． ・海外渡航歴（特にアジア）のある人は要注意． ・発症までの潜伏期間：１０-１４日 ・周囲に感染する期間：接触後５日～発疹出現後５日 ・疑い患者が出た段階で病院ICTへ連絡を！ あとがき ジャスティン・ビーバーで誰？ カナダの若いシンガーだそうです．．． ★本稿に開示すべき利益相反はありません． ★ご意見・感想・質問はお気軽に下記へご連絡ください． ●ICT川柳 「家畜にも　過剰な投与で　耐性菌」