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気象学入門 14.地球温暖化の影響と対策 北海道大学・大学院環境科学院 北海道大学・理学部・地球惑星科学科 藤原正智
2017年2月7日(火)午後: 学部・学科等移行ガイダンス; 2017年2月8日(水): 学部・学科等紹介 温暖化の影響、対策、気候工学(ジオエンジニアリング)? 講義資料:
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cf. 前回の講義への質問: どうして懐疑論、反論が まだ生きているのか? 日本気象学会(学会誌「天気」)で過去にあった議論:
気温の変化が二酸化炭素の変化に先行するのはなぜ?、河宮未知生、2005 ( 反論を受け付けない気象学会は「学会」と言えるのか、槌田敦、2008 ( 「天気」誌の査読に関する所感、河宮未知生、2008 ( 日本気象学会に対する損害賠償請求訴訟について(報告)、(社)日本気象学会常任理事会、2011 ( cf. 前回の講義への質問: どうして懐疑論、反論が まだ生きているのか? [IPCC Fifth Assessment Report (AR5), Climate Change 2013, Working Group I Report "The Physical Science Basis“]
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将来予測(IPCC AR4, 2007) 全球地表気温の上昇(100年後): 2.4~6.4℃(A1F1)、 1.7~4.4℃(A1B)、1.1~2.9℃(B1)(確率66%) 海洋の熱塩循環が弱まる(グリーンランドと南極の周りでの沈み込みが弱まる) 北半球高緯度地域の冬で、雪や氷が減り、気温上昇が大きくなる 降水量は地球全体では増加(水蒸気量増加するため)。中高緯度で特に増加。熱帯太平洋はおおむね増加、ただし、熱帯の陸域ではモデルにより違いが大きい。亜熱帯では減少(ハドレー循環の強化、傾圧帯がより高緯度へシフト)。 “異常気象”(定義は、“30年に一度の現象”): 異常に暑い夏が増え、異常に寒い冬が減る 大雨・豪雨が増える(平均的には降水量が減るような地域でも) 異常な乾燥、旱魃が増える地域が出てくる 日本では: オホーツク海付近が高圧傾向となり、熱帯太平洋はエルニーニョ的となり、長梅雨・冷夏になることが多くなる(とはいえ、平均すれば昇温) 台風(ハリケーンやサイクロンも含めて)の発生数は減るが(熱帯では大気上層がより温まり安定化するため)、強いものの数は増える(水蒸気量増加するため) 海面上昇は、むこう100年で18~59 cm(過去100年で17 cm)(ただし、南極氷床の理解不十分) [江守正多、地球温暖化の予測は「正しい」か?不確かな未来に科学が挑む、化学同人]
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IPCC第2作業部会 AR4 (生態系、社会経済等への影響、適応性や脆弱性の評価)による。
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温暖化対策: なぜ地球温暖化に「対策」が必要なのだろう?
オゾン層破壊対策の経緯を振り返ってみると: 科学的理解(1974~)社会合意・国際合意対策開始(1987)効果(2000~2010頃最悪、2040~2070頃元に戻るはず) 社会の理解・合意には時間が必要; 気候システムには慣性(フロンの大気中での寿命)、不可逆性がある 本当に悪い状況になってからでは遅すぎる 科学的に不確かな点があっても、環境に重大かつ不可逆な影響を及ぼす恐れがある場合には、規制措置等の対策をとる: 「予防原則」という考え方 (ただしもちろん費用(cost)・便益(benefit)の兼ね合い。キャス・サンスティーン著・田沢訳、「最悪のシナリオ― 巨大リスクにどこまで備えるのか 」 みすず書房) 産業界の側では、フロンの代替物質開発の目処がたったという要素も大きい 地球温暖化 エネルギー消費など、現代文明・現代社会のシステムの根幹に関わる問題 昇温は「産業革命前を基準に2℃未満」などに抑えることが望ましい、としばしば言われる: 現代文明システムの維持とそのコスト(対策をした場合としない場合とでどちらがよりコストを低く抑えられるか)という観点からの合意 (日本1億3000万人:先進国、少子高齢・人口減少 世界73億人(2050年には97億人に?)の視点で考える必要あり…日本の生活レベルを目指している人々が数十億人いる。「平和」(世界の安定)の問題(ノーベル平和賞)。)
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京都議定書(1997)とパリ協定(2015) 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書: パリ協定
1997年、京都、第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3) 温室効果ガスについて、先進国における削減率を1990年を基準として各国別に定め、共同で約束期間内に目標値を達成する 京都メカニズム(排出権取引、共同実施)や、吸収源活動が盛り込まれている 発効の条件: 55か国以上の国が締結 締結した附属書I国(先進国、積極的に参加した諸国)の合計の二酸化炭素の1990年の排出量が、全附属書I国の合計の排出量の55%以上 2005年2月16日に発効 (2004年にロシア批准により発効。米国は批准していない。ただし米国200以上の都市が独自に批准している。締約当時に開発途上国と見なされた中国・インドなどには義務はない。) パリ協定 2015年、パリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択された協定(合意) 産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑える。さらに、平均気温上昇「1.5度未満」を目指す 気候変動枠組条約に加盟する全196カ国全てが参加する枠組みとしては世界初 2016年11月4日に発効(米国、中国、インドも署名している) [Wikipedia: 京都議定書、パリ協定、Paris Agreement]
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温暖化に対する「適応策」と「緩和策」の例(AR4)
適応策(気候の変化に対して現代社会の様々なシステムを変化させ、適応する) 水: 雨水収集の拡大、水貯蔵と節水の技術、等々 農業: 作付け時期と品種の調整、作地の移動、等々 インフラ・居住地: 居住地の移動、護岸堤や高潮バリアの設置、等々 健康: 暑さ対策の行動計画、緊急医療サービス、等々 ツーリズム: アトラクションや収入の多様化、スキーゲレンデの高緯度地域や氷河への移動、等々 運輸: 輸送網の再編成・再配置、等々 エネルギー: 高架送電や配電インフラの強化、地下ケーブルの設置、省エネルギー、再生可能エネルギーの利用、単一エネルギー源依存の低減 緩和策(温室効果ガス削減について大きな可能性のある技術) エネルギー供給: エネルギーの供給・流通効率の改善、石炭からガスへの燃料転換、原子力発電、再生可能なエネルギー(水力、太陽光、風力、地熱、バイオエネルギーなど)、二酸化炭素の回収・貯留(Carbon dioxide Capture and Storage, CCS)、等々 運輸: 低燃費の車、ハイブリッド車、等々 建築: 省エネタイプの照明・太陽光の取り入れ、省エネタイプの電気器具及び冷暖房設備、等々 産業: 省エネタイプの電気器具、廃熱・未利用電力の回収、等々 農業: 土壌の炭素貯留量の増加に向けた耕作地及び放牧地の管理方法の改善、等々 林業/森林: 新規(再)植林、森林管理、森林破壊の抑制、等々 廃棄物: 廃棄物埋立地から発生するメタンガスの回収、廃棄物焼却に伴うエネルギー回収、等々
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二酸化炭素の回収・貯留(CCS) Carbon dioxide Capture and Storage
工場から排出されるガスからCO2を分離し、高純度CO2(濃度99%以上)として回収。 アミン溶液(アンモニアNH3のHを炭化水素基で置換)などを利用(工業的には確立された技術。日本では国産天然ガスの生産工程で長期にわたり利用されている。) CO2専用パイラインやタンクローリーで輸送し、圧縮機で貯留層(深度1~3 km)へ圧入(気体・液体の混在状態として) 貯留層: 既に生産を終了した油田・ガス田や、塩水を多く含む帯水層で、活断層などが近くに存在しない層。砂岩であり、すきまに塩水。 長い年月を経過したCO2は、塩水に溶解したり、岩石のすき間で凝固し鉱物になると考えられている 「今までの貯留層賦存量調査では、日本におけるCO2貯留可能量は約1,400億トンであると言われています。これは日本の年間CO2排出量の約100年分に相当します。」 [日本CCS調査会社: (2008年、地球温暖化対策としてのCCSを推進するという国の方針に呼応する形で、電力、石油精製、石油開発、プラントエンジニアリング等、CCS各分野の専門技術を有する大手民間会社が集まり設立した会社。)
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[日本CCS調査会社: http://www.japanccs.com/]
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気候工学(ジオエンジニアリング)? 現在、国際社会の温室効果ガス削減に関する協議はうまく進んでいるとはいえない。
(相当な削減率達成が必要;新興国に排出削減義務がない京都議定書は有効でない;温暖化に関する外交交渉は国益を背負った経済競争;パリ協定の具体策は?;等々) いったん大気中に排出されたCO2は海洋プロセスも絡んで数1000年のスケールで大気中に残存し放射強制力を与え続ける。また、海洋の熱慣性により温暖化分は簡単には消えない(cf. オゾン層破壊問題) そもそも地球の気候システムは非線形であり、どの程度安定なのか本当のところはわからない。 気候が激変を始めるポイント(tipping point、臨界点)というものがこのシステムには内在していて、もしかしたらすでにそれを超えてしまっているかもしれない もしも、今後温暖化がより急激に進み始め、懸念されているような異常気象の増加、海氷や氷河の消失、海洋深層循環の弱化などといった問題が顕在化し、従来議論されてきたような「緩和策」や「適応策」では社会経済システムつまり現代文明を維持することが難しくなる可能性がないとはいえない。 積極的な気候の制御法・地球の冷却法について、緊急措置・時間稼ぎの手段として、「実施」はともかく「検討・研究」だけでも進めておくべきではないか? ジオエンジニアリングという考え方が、Science Fiction(SF)の世界からサイエンスの表舞台に出てきつつある (特に、2006年のPaul Crutzenによる成層圏に硫酸エアロゾルを撒く“Pinatubo Option”に関する論文を契機として) Crutzen, P. J. (2006). "Albedo Enhancement by Stratospheric Sulfur Injections: A Contribution to Resolve a Policy Dilemma?". Climatic Change 77 (3–4): 211–220. doi: /s y.
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気候工学(Climate Geoengineering)
左図は、やや昔(2001年)の気候工学的手法のまとめ図である。最近では、大きく2種類の手法群として整理されている。 (1)太陽放射管理 (Solar Radiation Management, SRM) ・成層圏エアロゾル注入 ・低層雲の反射率増加 ・(cf. 大気汚染) (2)CO2除去 (Carbon Dioxide Removal, CDR) ・鉄散布による海洋肥沃化 ・CO2直接空気回収 [ Shapiro et al BAMS “An Earth-System Prediction Initiative for the Twenty-First Century”] 参考文献: 杉山昌広、「気候工学入門 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング」、日刊工業新聞社, 160 pp.、2011年5月 杉山昌広、西岡純、藤原正智、「気候工学(ジオエンジニアリング)」、天気, 2011(7月号) E. Kintisch, 「Hack the Planet」, John Wiley & Sons, 279 pp., 2010 (藤原による粗い抄訳あります。) ジェイムズ・ロジャー・フレミング(鬼澤忍訳)、「気象を操作したいと願った人間の歴史」、紀伊國屋書店、2012 水谷広、「気候を人工的に操作する: 地球温暖化に挑むジオエンジニアリング」、化学同人、248 pp.、2016
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太陽放射管理:成層圏エアロゾル注入 大規模火山噴火により成層圏内の硫酸エアロ ゾル粒子が増大すると、太陽光を反射するため、
数ヶ月~一年程度、全球平均気温が低下する とされる。 同様の効果を期待して、硫酸エアロゾル粒子、 スス、ダスト、アルミ酸化物等の微粒子を成層圏 に航空機・ロケット・気球その他の方法により、 連続的・断続的に注入する。 どのような粒径・物質を注入するか太陽光反射 効率、滞留時間(寿命)、つまり効果を左右する。 考えられる副作用 ・効果が全球一様には出ない(温室効果は全球 一様だが、太陽放射量には緯度分布、季節 分布があるため) ・地表への太陽入射量が減ると、地表からの 潜熱(水蒸気)フラックスが減る。従って、 全球の水循環を弱める。特に、陸域で降水 量が大きく減る可能性が示唆されている。 ・オゾン層破壊が促進される。 ・やめられなくなる。(いずれにせよ温室効果 ガスの削減は進める必要がある。) 他の物質は? 酸化チタンのパウダー(反射率がより高い物質。ただし、細かくするほどコストかかる。必要量まかなうためには専用の産業をおこすことが必要。)、鏡を宇宙空間に浮かせる、などなど。(以下につづく。) コストの件(杉山昌広氏によると):S、SO2、H2SO4、どれで計算するかで、投入必要量(つまり輸送量、必要航空機数、コスト)はファクターで変わってくる。どの高度に入れるかで使用航空機変わってくる(e.g., 13 kmならB を改造して使える。しかし27 kmならF-15しかない。Global Hawk, WB-57, U-2/ER-2はせいぜい22 kmか。今後こうした偵察機は開発・製造されるのか。衛星で十分か)。利用可能数、輸送可能量まったく変わってくる。B ならたくさん利用可能で輸送量もかなりかせげるが。(以下につづく。) 一方で、熱帯下部成層圏からBrewer-Dobson循環に乗せると考えると最低20 km、Tropical Pipe/Surf Zone(あるいは、Boenisch et al., ACP, 2011, Birner and Boenisch ACP, 2011のshallow vs. deep BDC)を考えると22-25 kmに入れないと、投入分のかなりの割合がすぐに(数ヶ月で)中緯度下部成層圏に流れ、総観規模波動で対流圏へ落ちてしまう可能性が高い。 杉山昌広、気候工学入門 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング、2011
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太陽放射管理:低層雲の反射率増加 もともと、亜熱帯太平洋東部・大西洋東部上空に 広がる層積雲は、太陽放射を反射して地球を
暖まらないようにしている。この効果を強める。 雲凝結核として働く海塩粒子を特殊船で巻きあげる。 問題点: 成層圏エアロゾル注入に比べて、地域によりはるかに 非均一な影響が出ると考えられている。また、雲の 数値モデリングは不確かさが依然として大きいため、評価がより難しい。(cf. 気象制御・人工降雨) 杉山昌広、気候工学入門 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング、 2011
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CO2除去:鉄散布による海洋肥沃化 海洋学の謎(1980年代): 南極海、北部北太平洋、東部太平洋赤道
域は、窒素・リン・ケイ素等の主要な栄養塩 が十分存在しているのに、なぜ植物プラン クトンの増殖が低レベルにあるのか? 海洋は鉄不足であり、そのためではない か。さらに、過去の気候(大気CO2量)を 制御していたのも、ダストによる南極海へ の鉄供給量ではないか: 「鉄仮説」 (植物プランクトンが増殖し、光合成を活発 化し、さらにプランクトンの死がいが(微生 物に分解されずに)海底に沈むことで、 CO2が大気から除去される: 「生物ポンプ」) 「海洋生態系にとって鉄は本当に重要なの か」という純粋な科学的興味により、13回 の国際的な海洋鉄散布実験が実施された。 しかし、後半からは「炭素固定量の増加を 観測で直接とらえられるか」という動機が 強くなってきて、「気候工学の予備実験」の 様相を呈してきた。その結果、環境保護団 体が活発な妨害活動を行うようになり、 また、国際条約においても、事実上(純粋 な科学実験であっても)鉄散布実験はでき ないように規制が設けられた(2010年)。 プロセスの詳細: 大気中のCO2、海水に溶けているCO2、植物プランクトンのうち炭酸カルシウムCaCO3の殻を持つ種、死骸となってマリンスノーとして海底へ、最終的には堆積岩となって本当に「固定」される 石炭・石油: 過去の植物・動物(有機物光合成により太陽光エネルギーとH2OとCO2から生成)が地中に固定されたもの)。 海に鉄をまく、というと、廃棄物を捨てるような印象があるが、海に肥料をまくのだという言い方をすれば、、、畑に肥料をまくことについてはいまや誰も倫理的問題を感じない。環境破壊とは認識されない。 結局効果は?13回の実験の結果、当初想定されたほどのCO2固定量はなさそうという結論となっている。 杉山昌広、気候工学入門 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング、2011
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CO2除去: CO2直接空気回収 CO2を直接空気から回収する技術も開発されている。
工学プラントで(例えばアルカリ性のNaOH溶液で吸収して)空気から直接回収し、濃縮した後に、 発電所などで想定されているCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)と同様に地下の 帯水層などに貯留する。 欧米では大学・研究所等で研究開発が進められており、ベンチャー企業もいくつか立ちあがっている。 発電所の排ガスに比べて大気中のCO2濃度はずっと低いので、効率が極めて悪い可能性がある。 杉山昌広、気候工学入門 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング、2011
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気候工学に対する慎重論・反論 現状の科学的知見では、効果や副作用などの多くが未解明であり不確かさが大きすぎる。「研究」は支持するが「実施」は支持しない。 コンピュータを用いた研究はよいが、自然環境内における大規模実験は小規模「実施」と同等であり、上記の懸念があてはまる。 気候工学の考え方が広まると緩和策への動機が薄れる(モラル・ハザード) 大規模プログラム(ここでは気候工学研究)は、既得権益となり、自己目的化して継続してしまう性質がある 歴史的には失敗に終わった気象改変プロジェクトは多数ある。(気候工学も同種である。) 先進国が研究を主導することで気候を制御する権利を実質的に得れば、作用・副作用等を大きく被りうる途上国との間に公平性の問題が生じる 地域により異なる「最適な気候」を誰がどのようにして決めるのか 人間が神のように意図的に気候改変を行うことは倫理的に許されるのか 実施の費用が安いとされる技術もあり、一部の国家や資産家が国際的合意なしに実施できてしまうおそれがある 現代文明は(あるいは人類は)、常に問題を「技術的に」解決しようとしてきた。 前に進むしかないのであれば、研究と実施のガバナンス(統治。市民・民間機関・国家・国際機関など多様な主体の意見を政策形成の過程で取り入れる仕組み)を積極的に構築し、国際的合意・民主的合意(専門家だけでなく市民による合意)のもとに進める体制を整えるべきであろう。 GeoMIP (Geoengineering Model Intercomparison Project) 哲学的な問いの立て方もありうる? ・この「世界」はこれまでの自然科学で本当に記述・把握・理解しきることができるのか。人類が築き上げてきた世界認識の方法は本当に完全なのか。 ・人間の認識、意識がとりこぼしている「世界」があるのではないか。 ・人間とそれをとりまく環境との関係性はそもそもどうなっているのか、どうあるべきなのか。 ・そもそも、そのような世界の把握の仕方は本当に正しいのか。人間と環境という二分法は正しいのか。 ・「自然」とは何か。「自然」は本当に存在するのか(現代社会において存在するのか;根源的に存在しうるのか)。 <以下は、藤原によるメモ> 人間は、産業革命以降、意図せずに気候を改変してきてしまった。それならば、今度は意図的に気候を改変することを考えてみよう。農業、林業、漁業(特に養殖)、酪農、など、これまでも人間は地球環境を自分たちにとって便利になるように改変してきた。衣服は人間ひとりひとりのごく近傍の「気候」をコントロールすることだと言える。20世紀以降はエアコンにより室内の「気候」をコントロールできるようになってきた(ただし、エネルギーをかなり消費しながら)。次は、、、全球の気候のコントロールか。。。おそらくその前のステップとして、都市空間の気候のコントロールを目指す、というのが現実的だろうか(たとえばドバイで実験中??)。ヒートアイランド現象の改善というのは非常に現実的なテーマである(温暖化に伴う熱中症の増加の軽減にもかなり有効だと思われる)。なお大規模商業施設やドーム型競技場の中の「気候」もコントロールできている。。。このようによくよく振り返ってみると、人間はすでに小さいスケールの「気候」はコントロールしようとしていてある程度は成功しているといえる。。。他方、「人工降雨(気象調節)」という世界があり、近代科学に沿ったものとなってからでも100年近い歴史がある。しかしいまだに人工降雨は科学的に評価できるレベルに達しているとは言えない、というのが多くの気象研究者の見解か。
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ジオエンジニアリングに関する IPCC AR5 WG 1(2013)の見解 (気象庁暫定訳より)
政策決定者向け要約(SPM)の概要(速報版)より: ジオエンジニアリングと呼ばれる気候変動に対抗する方法が提案されている。証拠が限られているため、ジオエンジニアリングの手法及びそれが気候システムに与える影響について、総合的かつ定量的な評価は不可能である。(新見解) 政策決定者向け要約より: ジオエンジニアリングと呼ばれる、気候変動に対抗するため意図的に気候システムを変えることを目指した方法が提案されている。証拠が限られているため、太陽放射管理(SRM)と二酸化炭素除去(CDR)の両方について、またそれらの気候システムへの影響について、総合的かつ定量的な評価は不可能である。 CDR法は、地球規模ではその潜在的利用可能性に生物地球化学的・技術的な限界がある。百年規模の時間スケールにおいて、CDR法によりどの程度二酸化炭素排出量を部分的に相殺することができるか定量化するには十分な知見がない。 モデル結果によれば、いくつかのSRM法は、もし実現可能であれば、世界全体の気温上昇をかなりの程度相殺する可能性があることを示しているが、それらは一方で世界全体の水循環を変化させ、また海洋酸性化は抑制できないだろう。もしSRM法が何らかの理由で終了してしまった場合には、世界平均地上気温が温室効果ガスによる強制力と整合的な値にまで非常に急速に上昇するだろうということの確信度は高い。 CDR法およびSRM法は世界規模で副作用や長期的な影響をもたらす。{6.5、7.7} (気象庁サイト:
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気象学入門: 講義内容 イントロダクション(10月3日) [10月17日:カナダ出張のため休講] 日本の四季(10月24日)
気象学入門: 講義内容 イントロダクション(10月3日) [10月17日:カナダ出張のため休講] 日本の四季(10月24日) 身近な気象現象(10月31日) 日本付近の地上天気図<演習> (11月7日) 熱帯・極域の気象現象(11月14日) 気象観測ネットワーク(11月21日) 天気予報のしくみ(11月28日) 気象と歴史(12月5日) [12月12日:米国出張のため休講] オゾン層破壊の科学(12月19日) 海洋学事始(12月26日) 東日本大震災と気象学(1月16日) 気候変動(1月23日) 地球温暖化の科学(1月30日) 地球温暖化の影響と対策(2月6日) 10/17(月): カナダVictoria出張のため休講 12/12(月): 米国San Francisco出張のため休講
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講義全体に関するアンケート ミニレポート、今日の分 最終レポート、今日が提出の締め切りです
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年平均気温の偏差の経年変化(世界、日本)
2016年の世界と日本の年平均気温が高くなった主な要因としては、地球温暖化の影響に加え、2014年夏から2016年春まで続いたエルニーニョ現象の影響が考えられます。 世界の年平均気温の偏差の経年変化 (1891〜2016年) 2016年の世界の年平均気温(陸域における地表付近の気温と海面水温の平均)の1981〜2010年平均基準における偏差は+0.45℃(20世紀平均基準における偏差は+0.81℃)で、1891年の統計開始以降、最も高い値となりました。世界の年平均気温は、長期的には100年あたり約0.72℃の割合で上昇しており、特に1990年代半ば以降、高温となる年が多くなっています。 日本の年平均気温の偏差の経年変化 (1898〜2016年) 2016年の日本の年平均気温の1981〜2010年平均基準における偏差は+0.88℃(20世紀平均基準における偏差は+1.48℃)で、1898年の統計開始以降、最も高い値となりました。日本の年平均気温は、長期的には100年あたり約1.19℃の割合で上昇しており、特に1990年代以降、高温となる年が頻出しています。
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0.83℃ 0.56℃ -0.56℃ Looking back on Earth’s global temperature over the past three years : record warm—wow! 2015: record warm—wow!! 2016: record warm—holy cow!!! In 2016, the annual global temperature reached a record high for the third year in a row, a remarkable occurrence rarely seen in the 137-year NOAA record and one not seen since the streak of record warmth (at the time) of 1939, 1940, and 1941.
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Defining ‘pre-industrial’
Figure 1: Historical changes in different climate forcings. Top left: sunspot number as a proxy for solar activity. Top right: estimated volcanic activity from ice core data. Bottom: carbon dioxide and methane concentrations. The grey regions indicatie the selected period to represent ‘pre-industrial’.
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人工降雨 NHKニュース 人工降雨装置 都が試験稼働 2013年8月21日 18時52分
K _ _ mp4 東京都は、雨が少ない影響でダムの貯水率が平年を大きく下回っていることから、多摩川の上流にあるダムの周辺で人工的に雨を降らせる装置を21日、試験的に動かしました。 東京都は、利根川水系で取水制限が行われているため、多摩川水系からの取水量を増やして対応していますが、雨が少ない状態が続き、多摩川の上流にある小河内ダムの貯水率が69%と、平年を大きく下回る厳しい状態が続いています。 このため、都は、小河内ダムの周辺に設けた人工的に雨を降らせる装置を平成13年以来、12年ぶりに動かす方向で検討に入り、21日、試験的な運転を行いました。 この装置は、水蒸気と結びつきやすい性質を持つ「ヨウ化銀」を入れた溶液を燃やして気体にし、煙突から雲に向けて放出して人工的に水滴を作り出す仕組みです。 試験運転は、上空に雨を降らせやすい雲があることや、雲に向かう風があるかなどを確認したうえで、午後2時から2か所の施設で行われました。 東京都によりますと、これまでの経験から、装置を稼働させてから2時間か3時間たつと一定の雨が降るケースが多いということです。 現地では試験運転が終わってから雨が降り始め、ダムの上流に東京都が設置した2か所の雨量計で午後6時までの1時間に10ミリから11ミリの雨量を観測したということです。 東京都水道局の伊東克郎浄水課長は「雨が少なくても東京は首都機能を維持しなければならず、12年ぶりにわらにもすがる思いで装置を動かした。装置を動かしても極端に降るとは限らず、ダムの貯水率が劇的に回復することはないので、都民には節水の取り組みをしばらく続けてほしい」と話しています。 東京都は今後、利根川水系の取水制限が続くかなどの状況を見ながら、装置の本格的な運転を始めることにしています。
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人工降雨 NHKニュース 人工降雨装置 都が試験稼働 2013年8月21日 18時52分 (つづき)
K _ _ mp4 人工降雨装置とは 人工的に雨を降らせようとする装置は、多摩川水系上流の都内と山梨県内の合わせて4か所に設置されています。 このような装置を都道府県で現在動かしているのは東京都だけだということです。 この装置は、水蒸気と結びつきやすい性質を持つ「ヨウ化銀」を入れた溶液を燃やし、細かい粒子を含んだ気体にします。 そのうえで、大型の扇風機で風を起こして装置の煙突から空気中に放出します。 気体が上昇気流に乗り雲に到達した場合には、ヨウ化銀が雲の中の水蒸気と結びつき、地上に落ちてくると雨が降る可能性があるということです。 この装置は昭和30年代にたびたび起きた渇水の経験を踏まえて東京都が47年前の昭和41年に設置し、雨が少ない状態が続くと頻繁に使われてきました。 東京都が昭和52年までの10年間にこの装置を動かした日と動かさなかった日の降雨量を調べたところ、装置を動かした際には降雨量が5%増えていたということです。 装置はその後、東京の水源になる利根川水系や荒川水系のダムの整備が進むなか、使われる機会は減っていきました。 この装置が最近使われたのは、ダムの貯水量が大きく減った12年前の平成13年の8月でした。 装置を稼働させた10日間で、観測された雨量はダムの上流で50ミリで、貯水率を大幅に引き上げるには至りませんでした。 専門家「信頼性に乏しい方法」 東京都の人工降雨装置について、人工降雨の研究を行っている防衛大学校の遠峰菊郎教授は、「ヨウ化銀は、マイナス5度からマイナス10度くらいになると水蒸気を凍らせ、雨を降らせるが、そのためには今の時期なら高度5000メートルほどの高さまで到達させなくてはならない。東京都の装置で発生させたヨウ化銀が自然の上昇気流に乗ってその高さまで確実に上がっていくかどうかに疑問があり、信頼性に乏しい方法だ」と指摘しました。 そのうえで、「現在、人工降雨の主流は、航空機を雲の中に飛ばしドライアイスなどを直接まく方法なので、東京都もより信頼できる方法に見直したほうがいいと思う」と話していました。 また、化学物質の影響については、「安全性が確認された範囲の分量でヨウ化銀を使っているとは思うが、人体に影響を及ぼす重金属だから使わないに越したことはない。人工降雨に使える薬剤はヨウ化銀だけでないので、検討し直したほうがいいように思う」と話していました。
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今日の天気図 “polar low”
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Wikipedia: 極低気圧(きょくていきあつ、英語:polar low、ポーラーロウ)は、両極地方・極前線帯で発生した低気圧のことである。
気温が非常に低い寒気団の中で発生し、爆弾低気圧と異なり南東側に暖気移流を持たない。寒冷低気圧の小型版との見方もある。 また、前線を全く持たず、雪雲自体が纏った小さな渦を巻いていることが特徴的で寒冷な極気団(北極大陸性気団、北極海洋性気団、南極大陸性気団のいずれか)が海上を通過するときに発生する。傾圧不安定、条件付不安定、順圧不安定などが発生のメカニズムと考えられている。 温帯低気圧などのほかの低気圧に比べて規模はかなり小さいものの、時として大雪や風雪(まれに突発・局地的な豪雪や暴風雪の場合もある)、果ては雷をもたらすことも少なくない。主に南極大陸全域と南極海、北極海とその周辺部、北大西洋北部、ベーリング海、オホーツク海、日本海北部の秋田沖周辺部などで主に冬から春にかけて発生するが、夏や秋に発生する場合も稀にある。 また、極低気圧(ポーラーロウ)と似たものにポーラーサイクロン(polar cyclone。こちらも極低気圧と呼ばれることがある)があるが、こちらは低気圧の直径が1,000kmを超える大規模なもの(メソスケール)で、一年中発生する。
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