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日本カーリット株式会社 危険性評価試験所 課長 鈴木 康弘

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1 日本カーリット株式会社 危険性評価試験所 課長 鈴木 康弘
2017/11/16 火災爆発災害防止の基礎 日本カーリット株式会社 危険性評価試験所 課長  鈴木 康弘

2 2017/11/16 火災とは? 火による災害のこと。一般的には火事(かじ)ともいう。また、小規模な火災のうちに消し止められたものは小火(ぼや)、焼失面積が大きく被害が甚大なものは大火(たいか)ともいう。 消防白書では33,000平方メートル(約1万坪)を超える焼失面積を生じたものを「大火」としている。 この他に被害程度によって「半焼」(はんしょう)や「全焼」(ぜんしょう)と区別される。

3 火災の定義 人の意思に反して発生(放火も含む) 消火の必要がある燃焼現象である 消火施設の利用を必要とする
2017/11/16 火災の定義 消防庁「火災報告取扱要領」では、次の3つの要素を満たすものを火災としている。 人の意思に反して発生(放火も含む) 消火の必要がある燃焼現象である 消火施設の利用を必要とする 但し、爆発現象(人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象をいう)の場合は2及び3の有無にかかわらず火災とする。

4 爆発とは? 急激な圧力の発生または解放によって爆発音を伴ってガスが膨張する現象のこと 現象の種類 反応機構・伝播速度による分類
2017/11/16 爆発とは? 急激な圧力の発生または解放によって爆発音を伴ってガスが膨張する現象のこと 現象の種類 物理的爆発:ゴム風船やペットボトルの爆発など圧力解放による物理変化によるもの 化学的爆発:プロパンと空気の混合気や火薬類が爆発した時など化学変化によるもの 反応機構・伝播速度による分類 爆轟:伝播速度は音速を超え衝撃波を形成する 爆燃:伝播速度は音速より遅く衝撃波を伴わない

5 火災の種類 A火災(普通火災):木材、紙などの一般可燃物で、普通住宅やビルなどの内部火災。
2017/11/16 火災の種類 A火災(普通火災):木材、紙などの一般可燃物で、普通住宅やビルなどの内部火災。 B火災(油火災):ガソリンなどの石油類、食用油、可燃性液体、樹脂類などの火災。 C火災(電気火災):電気室や発電機からの出火で、感電の危険性がある火災。 D火災(金属火災):マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどで引き起こされる火災。 ガス火災:都市ガス、プロパンガスなどの可燃性ガスでの火災。

6 燃焼の原理と消火の原理 3つ揃わないと燃焼を継続しない 「可燃物」「酸素」「熱」:燃焼の3要素 一つを制御:火災予防
2017/11/16 燃焼の原理と消火の原理 燃焼=可燃物が酸素と反応して熱を発生 「可燃物」「酸素」「熱」:燃焼の3要素 3つ揃わないと燃焼を継続しない 一つを除去:消火 燃焼 窒息消火 酸素 冷却消火 消火 可燃物 除去消火 一つを制御:火災予防

7 危険物とは(消防法での定義) 「火災の発生危険につながる性状を持つ特定の物質及び物品」 (1) 火災発生の危険性が大きい
2017/11/16 危険物とは(消防法での定義) 「火災の発生危険につながる性状を持つ特定の物質及び物品」 (1) 火災発生の危険性が大きい (2) 火災拡大の危険性が大きい (3) 火災の際の消火が困難

8 消防法による危険物の分類 第1類:酸化性固体 第2類:可燃性固体,引火性固体 第3類:自然発火性物質,禁水性物質 第4類:引火性液体
2017/11/16 消防法による危険物の分類 第1類:酸化性固体 第2類:可燃性固体,引火性固体 第3類:自然発火性物質,禁水性物質 第4類:引火性液体       特殊引火物,第1~4石油類       アルコール類,動植物油類 第5類:自己反応性物質 第6類:酸化性液体

9 【重要】自己反応性物質の性質 例:2,4-ジニトロトルエン 例:1H-テトラゾール 【重要】酸素は必要不可欠ではない!!!
2017/11/16 【重要】自己反応性物質の性質 例:2,4-ジニトロトルエン 例:1H-テトラゾール CH3 NO2 分子中に酸素と可燃物を既に持っている NO2 H N 窒素・水素・炭素からなる化合物 【重要】酸素は必要不可欠ではない!!!

10 危険物の決め方 消防法危険物の確認試験 各類別に定められた試験を行い、その結果によって第1類~第6類危険物に該当するか否かを評価する。
2017/11/16 危険物の決め方 消防法危険物の確認試験 (危険物判定のための試験の方法) 各類別に定められた試験を行い、その結果によって第1類~第6類危険物に該当するか否かを評価する。 法別表に記載されている物品が対象 記載されていなければ危険物にならない

11 事故事例:ヒドロキシルアミンの爆発 平成12年6月10日、群馬県内の化学工場が突然大爆発(再蒸留工程での濃縮中)
2017/11/16 事故事例:ヒドロキシルアミンの爆発 平成12年6月10日、群馬県内の化学工場が突然大爆発(再蒸留工程での濃縮中) 被害:当該プラントは跡形もなく全壊 工場・倉庫など9棟全壊、敷地内の建物4棟全焼 工場周辺2km以内で全半壊9棟、部分壊248棟 役場の地震計が震度2を記録 50km先まで爆音が到達 死者4名、負傷者7名、付近住民56名負傷 停電249世帯、電話不通47世帯 爆発の危険性は示唆されていたが、当時は法別表に記載がないため非危険物であった(平成13年に第5類危険物として法別表に追加)

12 粉塵爆発(ミスト爆発)とは? 空気中の粉塵が次々と瞬間的に燃焼する現象(一般的に粒径500μm以下) 粉塵爆発は危険物ではない物質でも起こる
2017/11/16 粉塵爆発(ミスト爆発)とは? 空気中の粉塵が次々と瞬間的に燃焼する現象(一般的に粒径500μm以下) 粉塵爆発は危険物ではない物質でも起こる (可燃物は全て粉塵爆発を起こす可能性がある) 粉塵爆発の危険性評価項目: ・爆発下限界濃度(LEL) ・最小着火エネルギー(MIE) ・爆発圧力特性(爆発指数:Kst)

13 物質のサイズと表面積 64L 同じ容積でもサイズが小さくなると表面積は増加する(反応し易い) 表面積:40×40×6 =9600cm2
2017/11/16 物質のサイズと表面積 10cm 10cm 10cm 10cm 40cm 20cm 20cm 40cm 40cm 64L 表面積:40×40×6 =9600cm2 表面積:20×20×6 ×8=19200cm2 表面積:10×10×6 ×64=38400cm2 同じ容積でもサイズが小さくなると表面積は増加する(反応し易い)

14 容器サイズ(容積)と表面積 1L 8L 27L 4倍! 9倍! 容積の増加に対し表面積はそれほど増加しない(冷却効率が悪い)
2017/11/16 容器サイズ(容積)と表面積 20cm 30cm 10cm 10cm 20cm 30cm 10cm 1L 20cm 8L 30cm 表面積:10×10×6 =600cm2 27L 表面積:20×20×6 =2400cm2 4倍! 9倍! 表面積:30×30×6 =5400cm2 容積の増加に対し表面積はそれほど増加しない(冷却効率が悪い)

15 蓄熱発火(熱暴走)の概念 発熱速度が放熱速度を上回ると内部温度上昇→発火に至る 発熱 放熱 蓄熱 発熱 放熱 蓄熱 蓄熱 発熱 放熱 蓄熱
2017/11/16 蓄熱発火(熱暴走)の概念 発熱 放熱 蓄熱 発熱 放熱 蓄熱 蓄熱 発熱 放熱 蓄熱 発熱速度が放熱速度を上回ると内部温度上昇→発火に至る

16 堆積物の自然発火について 通常は着火源が存在しなければ燃焼しない 酸化発熱 可燃物 の蓄積 発火 酸素
2017/11/16 堆積物の自然発火について 酸化発熱 の蓄積 発火 可燃物 酸素 通常は着火源が存在しなければ燃焼しない 空気中の酸素によって可燃物が徐々に酸化する (自己反応性物質は熱により徐々に発熱分解)

17 熱収支の基礎理論 熱の蓄積はQ1>Q2の場合に発生する ここで、ρ:かさ密度、ΔH:発熱量、A:頻度因子、E:活性化エネルギー
2017/11/16 熱収支の基礎理論 容積Vの粉体において、熱の発生速度をQ1とし、反応がアレニウス型に従うとすると、  ここで、ρ:かさ密度、ΔH:発熱量、A:頻度因子、E:活性化エネルギー 放熱はニュートンの冷却則に従うとすると、  ここで、α:熱伝導率、S:伝熱面積、T0:雰囲気温度(粉体の表面温度) 熱の蓄積はQ1>Q2の場合に発生する

18 SADTと安全(品質)管理温度 事故の発生 (爆発) (火災) SADT 品質異常 品質劣化 貯蔵温度 緊急温度 管理温度 貯蔵領域
2017/11/16 ※Self Accelerating Decomposition Temperature SADTと安全(品質)管理温度 事故の発生   (爆発)   (火災) SADT (1週間以内に自己加速分解を起こす最低温度) 品質異常 品質劣化 緊急温度 (SADT-5~-10℃) 管理温度 (SADT-10~-20℃) 品質保証領域 貯蔵温度 貯蔵領域

19 化学工場の事故・災害 予兆→発生 突発的発生 プロセス破綻型 プロセス内の化学変化に起因する現象(爆発、燃焼、過圧) 非プロセス型
2017/11/16 化学工場の事故・災害 対応策: 多重防護層 予兆→発生 突発的発生 プロセス破綻型 プロセス内の化学変化に起因する現象(爆発、燃焼、過圧) 非プロセス型 操作ミスや設備の疲労破壊による設備の誤動作(確率論) 対応策(保全): 設備の定期点検 対応策(教育): 手順書の遵守 これがきっかけとなる場合もある

20 事故の発生と事故の抑制 多重防護壁 防災限界内 事故・災害の発生 予防安全限界内 運転限界内 失敗事象発生 生産最適条件内
2017/11/16 事故の発生と事故の抑制 【原因】 ヒューマンエラー、設備故障、設計ミス、外部の影響 事故原因分析→失敗学 事故・災害の発生 発生確率 多重防護壁 失敗 被害程度 失敗事象発生 防災限界内 予防安全限界内 運転限界内 生産最適条件内 意図しない状況・事例発生 制御 成功 物質危険性+失敗事象 成功理由分析→成功学 (ヒヤリハット)

21 安全性評価を確実に行うためには、その前段階としての危険性評価が極めて重要
2017/11/16 危険性評価と安全性評価 危険性評価:物質やプロセスの持つ危険性を発現させる「場」を設定する。 安全性評価:物質やプロセスの持つ危険性を封じ込める「場」を設定する。 安全性評価を確実に行うためには、その前段階としての危険性評価が極めて重要

22 各段階での危険情報の把握 研究開発:危険性の把握、危険の程度 →どのような危険性があるか? 【危険性評価】 試運転:危険条件の定量化
2017/11/16 各段階での危険情報の把握 研究開発:危険性の把握、危険の程度  →どのような危険性があるか? 【危険性評価】 試運転:危険条件の定量化  →どのような状態が危険か?  →その為の安全対策は? 法的な取扱い 本格製造:異常時の危険条件把握  →危険な状態になるためには?  →安全対策の有効性は? 【安全性評価】 廃棄:産業廃棄物となったものの危険性?

23 評価結果の取扱【重要】 即ち、評価は試験条件によって異なり、閾値によって危険物となったり非危険物になったりする。
2017/11/16 評価結果の取扱【重要】 危険性・安全性評価によって得られた結果はその物質の持つ「物性」ではなく「特性」である。 即ち、評価は試験条件によって異なり、閾値によって危険物となったり非危険物になったりする。 従って、物質が保有する潜在的な危険性そのものが変わる事はない。実際のプロセスでどのように取扱われるかによって、危険な現象が発現したり発現しなかったりします。

24 非危険物は安全と言えるか? 危険性:大 危険性評価 危険物 非危険物 危険性:小 火災発生の危険性 火災拡大の危険性 消火が困難 閾値
2017/11/16 非危険物は安全と言えるか? 火災発生の危険性 火災拡大の危険性 消火が困難 危険性:大 危険性評価 危険物 法規制(要対策) 閾値 非危険物 火災は発生しない? 火災は拡大しない? 消火は容易? 本当に安全? 危険性:小 規制なし(無対策?)

25 これって危険な物と思いますか? CAS No. 7732-18-5 分子式:H2O、モル質量:18.01528 g/mol
2017/11/16 これって危険な物と思いますか? CAS No 分子式:H2O、モル質量: g/mol 融点:0℃(273.15K) 沸点:100℃(373.15K) 通常の状態(20℃液体)では安定である。 爆発範囲:なし 引火点:なし、発火点:なし 腐食性・刺激性:なし

26 2017/11/16

27 2017/11/16 ご安全に! 御静聴有難う御座いました。


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