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sNN = 200 GeV の原子核衝突を用いた ハドロン質量発現機構の探求
志垣 賢太 (広島大学) 2007 年 3 月 26 日 日本物理学会シンポジウム 「カイラル対称性と核物質中のハドロン質量分布の測定」 於 首都大学東京
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ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
発表概要 高エネルギー原子核衝突による QCD 探求 ハドロン質量状態変化探求の意義 パートン非束縛相の探索手段から性質探求のプローブへ RHIC 加速器 PHENIX/STAR 実験の成果と展望 パートン非束縛相探索 低質量ベクトル中間子の質量状態変化探索 まとめ 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
高エネルギー原子核衝突による QCD 探求 極初期宇宙における原子核物質 宇宙開闢 (ビッグバン) から 10-5 秒以内の物質相 パートンと強い相互作用 (i.e. QCD) の基本的性質 極限状態の QCD 高エネルギー密度 (高温) /高原子核物質密度極限 ハドロン質量の起源: カイラル対称性の自発的破れ カイラル対称性 (部分的) 回復 → ハドロン質量状態の変化? 通常原子核中のハドロン実験と相補的 格子 pQCD の適用最適領域 クォーク自由度が顕在化する物質相への転移を予言 QCD 相転移 → パートン非束縛 (QGP) 相 極初期宇宙 高エネルギー原子核衝突 パートン非束縛相 (クォーク・グルーオン・プラズマ) エネルギー密度 (温度) 臨界点 F. Karsch, Lect. Notes Phys. 583 (2002) 209 臨界温度 ~ 170 MeV 色超伝導 ハドロン気体 色 ‐ フレーバー・ロッキング 中性子星? 原子核 バリオン密度 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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高エネルギー原子核加速器 Bevalac/SIS/AGS/SPS から RHIC/LHC へ sNN 向上: QCD 相図上の高密度領域から高温領域へ 現在稼動中の高エネルギー原子核加速器 BNL-AGS (11 A GeV 197Au + 固定標的) 1986 年 28Si, 1991 年 197Au 運転開始; 単独プログラム終了 CERN-SPS (200 A GeV 208Pb + 固定標的) 1986 年 32S, 1994 年 208Pb 運転開始; 単独プログラム終了 BNL-RHIC ( A GeV 197Au + 197Au) 2000 年運転開始; 稼働中 CERN-LHC ( A TeV 208Pb + 208Pb) 2007 年運転開始; 2008 年 Pb+Pb 衝突運転開始予定 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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相対論的重イオン衝突型加速器 RHIC 非対称を含む多様なハドロン衝突が可能 197Au までの原子核 (最大 100 A GeV) (偏極) 陽子 (最大 250 GeV) p+p/d+Au/Cu+Cu/Au+Au 衝突実験実施済 “run 4” (’03 – ’04): sNN = 200 GeV Au+Au 241 mb-1 6 つの衝突点; 4 つの相補的実験 BRAHMS/PHENIX/PHOBOS/STAR 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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PHENIX 実験の物理戦略 すべての時間段階から可能な限り多種の信号を 初期衝突起源 (パートン非束縛相を通過) 高横運動量粒子 (ハドロン・ジェット, ハドロン, 光子) 重いクォーク (c, b) を含む粒子 重いクォーク対の束縛状態 (J/Y, Y’, ) パートン非束縛相起源 低質量ベクトル中間子 (f, w, r) 熱輻射 (光子, レプトン対) パートン起源の集団的運動 ハドロン相起源 パートン運動学の境界条件 S.Nagamiya (?) in preparation phase of PHENIX 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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PHENIX 実験における戦略の実装 多様な測定により多数の物理過程を測定 ハドロン, レプトン, 光子の同時測定 希事象 (e.g. 透過的プローブ) の測定に重点 高頻度データ測定・収集能力 多段階の事象選択トリガ 高精度測定 高精度の粒子識別 高分解能 4 元運動量測定 広範囲の運動学領域を網羅 2000 年夏実験開始; 現在 “run 7” 立上中 既存データの 4 – 5 倍 (1.1 nb-1) の Au+Au 衝突を計画 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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“Quark Matter ’06” における PHENIX 総合報告
The matter is strongly coupled PHENIX preliminary The matter is dense The matter may melt and/or regenerate J/y’s The matter modifies jets The matter is hot 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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高エネルギー原子核衝突で生成する相の性質
稠密: クォークのエネルギー損失 ジェット (高横運動量粒子) 収量抑制 ジェット形状変化 パートン由来: 色価遮蔽, クォーク自由度顕在化 J/Y 収量抑制 構成クォーク数スケーリング則 強結合: 完全流体 流体力学で記述される集団運動 高エネルギー密度: 高温熱輻射 (!?) 熱輻射 (仮想) 光子 (!?) 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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ジェット抑制: 期待された発見 (の一例) Au+Au at sNN = 200 GeV PHENIX d+Auh+X at sNN = 200 GeV PHENIX Au+Au 衝突で中心度に従いジェット抑制 d+Au 衝突, 直接生成光子: 初期状態起源の抑制否定 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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クォーク完全流体: 予期しない発見 (の一例)
バリオンと中間子の異なった振舞 生成比の横運動量依存性 (バリオン “異常” 生成) パートン破砕関数では説明不能 RHIC エネルギーで初めて発現 集団的運動 (楕円流) の横運動量依存性 ハドロン流体模型では説明不能 質量依存性ではない f (陽子とほぼ等質量) も p, K と同様の振舞 バリオンと中間子の差異 = 構成クォーク数に依存 バリオン (反)陽子/ 中間子比 中間子 Au+Au at sNN = 200 GeV PHENIX PRL 91, (2003); PHENIX PRC 69, (2004) 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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クォーク流体/再結合模型 高横運動量ハドロン生成機構 真空中のクォーク破砕 (既知) パートン媒質中のクォーク再結合 (新規) バリオン/中間子生成比の横運動量依存性を説明 集団的運動 (“楕円流”) の横運動量依存性を説明 R. J. Fries et al., nucl-th/ V. Greco, C. M. Ko, P. Levai, nucl-th/ 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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高エネルギー原子核衝突物理学の現状 強く相互作用する高温高密度パートン相の生成確認 パートンのエネルギー損失 (ジェット収量抑制) 重いクォーク対束縛状態収量抑制 構成クォーク数スケーリング則 完全流体で記述される集団運動 新たな物質状態の定量的知見と完全な理解へ 低質量ベクトル中間子の質量状態変化 PHENIX 検出器増強 (2007 年より順次) の重点課題 熱輻射光子 LHC 加速器 ALICE 実験 (2007 年開始) の重点課題 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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ハドロン質量状態変化探求の意義 歴史的意義: パートン非束縛相探索手段 ↓ 高エネルギー原子核衝突物理学の進展 パートン非束縛相の存在 (他の手段により) 確立 パートン非束縛相に対する定量的知見と完全な理解へ 現代的意義: パートン物質の性質探求 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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STAR による低質量ベクトル中間子測定 ハドロン崩壊過程による測定 p+p/d+Au/Au+Au f K+K- p+p/Au+Au r p+p- 最新結果: パートン流体 + 再結合模型に合致 nucl-ex/ , submitted to Phys. Rev. Lett. partonic flow and f meson production in Au+Au collisions at sNN = 200 GeV r0 質量変化? Phys. Rev. Lett. 92, (2004) r0 production and possible modification in Au+Au and p+p collisions at sNN = 200 GeV 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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PHENIX による低質量ベクトル中間子測定
複数の衝突系/崩壊過程を用いた系統的測定 p+p/d+Au/Au+Au f e+e- p+p/d+Au/Au+Au f K+K- p+p/d+Au/Au+Au w e+e- cf. 来島孝太郎 25aSC5 p+p/d+Au/Au+Au w p0g cf. 大内田美沙紀 25aSC4 p+p/d+Au w p0p+p- 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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PHENIX による低質量ベクトル中間子測定
f/w e+e- e+e- K+K- e+e- 0 0+- BR = (2.97 0.04)×10-4 BR = (4.92 0.07)×10-1 BR = (7.18 0.12)×10-5 BR = (8.90 0.25)×10-2 BR = (8.91 0.07)×10-1 e+ , w e- 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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PHENIX による低質量ベクトル中間子測定
f K+K- e+e- K+K- e+e- 0 0+- BR = (2.97 0.04)×10-4 BR = (4.92 0.07)×10-1 BR = (7.18 0.12)×10-5 BR = (8.90 0.25)×10-2 BR = (8.91 0.07)×10-1 K+ f K- 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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PHENIX による低質量ベクトル中間子測定
w p0g e+e- K+K- e+e- 0 0+- BR = (2.97 0.04)×10-4 BR = (4.92 0.07)×10-1 BR = (7.18 0.12)×10-5 BR = (8.90 0.25)×10-2 BR = (8.91 0.07)×10-1 0 w 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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PHENIX による低質量ベクトル中間子測定
w p0p+p- e+e- K+K- e+e- 0 0+- BR = (2.97 0.04)×10-4 BR = (4.92 0.07)×10-1 BR = (7.18 0.12)×10-5 BR = (8.90 0.25)×10-2 BR = (8.91 0.07)×10-1 0 w + - 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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f 検出/同定/信号抽出 d+Au f K+K- Au+Au f K+K- ハドロン崩壊 f f Au+Au f e+e- d+Au f e+e- 電子対崩壊 f f 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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w 検出/同定/信号抽出 p+p 0+- p+p 0 Au+Au 0 w w w ハドロン崩壊 h d+Au w e+e- Au+Au w e+e- w w 電子対崩壊 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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最新成果 (1): Au+Au w/f e+e-
技術的挑戦: 信号/背景比 電子同定法と背景雑音見積の最適化 cf. 来島孝太郎 25aSC5 (より興味深い) 低横運動量領域のスペクトル測定 ● Au+Au w e+e- ● Au+Au w p0g ● p+p w p0p+p- ● p+p w p0g PHENIX Preliminary 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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最新成果 (2): Au+Au w p0g 技術的挑戦: 信号/背景比 横運動量 4 – 5 GeV/c 以上での測定実現性を検証
崩壊光子に対する運動学的選択の最適化 無相関・部分相関光子による背景雑音の系統的見積 横運動量 4 – 5 GeV/c 以上での測定実現性を検証 cf. 大内田美沙紀 25aSC4 複数の崩壊過程を用いた広範囲の系統的測定 背景差引前 背景雑音見積 背景差引後 生成断面積からの予想 w に対する最適化後の p0g 不変質量分布 (横運動量 8.5 – 9.5 GeV/c) 既存統計で期待される w 検出有意性 (最適化前/最適化後) 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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低質量ベクトル中間子の質量状態変化探索 質量状態変化未検出 最も興味深い衝突系/崩壊過程からの結果が間近に e.g. Au+Au f/w e+e-/p0g QCD 相図上の他領域との整合性の議論 必須条件: 系統的測定/解析 (進展中) d+Au f K+K- PHENIX preliminary Au+Au f K+K- PHENIX, Phys. Rev. C72, (2005) p+p/Au+Au r p+p- STAR, Phys. Rev. Lett. 92, (2004) d+Au 0+- PHENIX, nucl-ex/ submitted to Phys. Rev. C 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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現状 + 近未来の展望 “run 4” (2003–2004) データ解析は最終段階 ハドロン/電子対/放射 (光子) 崩壊過程の系統的解析 解析技術手法と系統的理解の双方に着実な進展 多くの崩壊過程について “必要最低限” の統計量 “run 7” 高統計 Au+Au 衝突実験準備中 2007 年 3 月 21 日衝突開始 “run 4” の 4 – 5 倍の積分輝度を計画 PHENIX “ハドロン不感” 検出器導入済 cf. 小沢恭一郎 26pSD7 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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まとめ 高エネルギー密度 (高温) 極限における QCD 探求 通常原子核中のハドロン実験と相補的 格子 QCD 計算と密接な共同歩調可能な領域 パートン非束縛相の生成確認 パートン相に対する定量的知見と完全な理解の追求 低質量ベクトル中間子の系統的測定: 重点課題 質量状態変化未検出 より興味深い衝突系/崩壊過程からの結果に期待 2007 年 4 月より高統計 sNN = 200 GeV Au+Au 衝突 PHENIX 検出器増強完了 2007 年 3 月 26 日 ハドロン質量発現機構の探求 / 志垣賢太 / 日本物理学会シンポジウム
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