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天文・宇宙分野2 松元亮治 「次世代スーパーコンピュータでせまる物質と宇宙の起源と構造」

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1 天文・宇宙分野2 松元亮治 「次世代スーパーコンピュータでせまる物質と宇宙の起源と構造」
次世代スーパーコンピュータ戦略プログラム・分野5「物質と宇宙の起源と構造」 科研費新学術領域「素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明」 合同シンポジウム 「次世代スーパーコンピュータでせまる物質と宇宙の起源と構造」 天文・宇宙分野2 課題(6) 超新星爆発の機構、ガンマ線バーストの中心源、       ブラックホールの誕生過程の解明 課題(9) 宇宙磁気流体・プラズマ現象の基礎過程の解明 千葉大の松元です。宇宙分野の課題6と9について紹介します。 松元亮治 千葉大学大学院理学研究科

2 天体の起源 物質の起源 宇宙中性化 ⑧ ⑥ 宇宙再電離 ⑥ ⑧ ⑨ ⑦ ⑨ ⑦ ビッグバン 宇宙時間 インフレーション ダークマター生成
10-44秒 天体の起源 物質の起源 インフレーション ダークマター生成 QCD相転移 陽子,中性子形成 10-4秒 軽元素合成 (水素,ヘリウム ,... ) 38万年 密度ゆらぎ 宇宙中性化 宇宙 暗黒時代 初代超新星/GRB 宇宙最初の 重元素合成 (酸素, 炭素, 窒素... ) 第一世代天体 小ブラックホール 4億年 宇宙再電離 課題6と9は超新星爆発、ガンマ線バースト、ブラックホール降着円盤とジェット形成などの激しい天体現象を扱います。 初代銀河 超新星/GRB  元素合成 (酸素, 炭素, 窒素, 金属元素, ...) 共進化 原始銀河 巨大ブラックホール 星形成 星の金属組成 (金属欠乏星) 137億年 (現在) 銀河団 惑星系 地球・太陽

3 宇宙の活動性 HINODE 2006~ 星形成 原始星 活動銀河中心 ASTRO-G 銀河 太陽 星間ガス雲 ジェット
さまざまな天体で観測される活動現象について理解することは、宇宙の構造と進化を理解することとならぶ宇宙物理学の主要なテーマです。 ASTRO-H 2013 SUZAKU 2005~ ガンマ線バースト 超新星爆発 大質量星 LIGO VIRGO LCGT MAXI 2009 Fermi 2008~ Swift 2004~ 重力波望遠鏡 2015~

4 ブラックホールや中性子星の誕生過程 =宇宙最大の爆発現象を伴う
課題6 想像図 ブラックホールや中性子星の誕生過程     =宇宙最大の爆発現象を伴う ブラックホールの誕生 ⇒ ガンマ線バースト 中性子星の誕生    ⇒ 超新星爆発 中性子星連星の合体によるブラックホール形成 ⇒ 別種のガンマ線  バースト? 高速ジェット 光学撮影 課題6ではブラックホールや中性子星の誕生過程を扱います。この過程は超新星爆発やガンマ線バーストなどの宇宙最大の爆発現象を伴います。 数値計算

5 これらは究極の物理学実験場 自然界には4つの力が存在:               重力(一般相対論)、電磁気力、    強い相互作用(原子核を作る)、    弱い相互作用(ニュートリノ放射等) 超新星爆発やγ線バーストでは、             これら全てが重要な働きをする                     ⇒ 様々な物理学の試験場、応用現場 自然界でほかには存在しない貴重な  基礎科学実験場 超新星爆発やガンマ線バーストでは自然界に存在する4つの力すべてが重要な働きをします。このため、これらの現象は自然界ではほかに存在しない基礎科がの究極の実験場となっています。

6 鉄 ? ? 超新星爆発40年来のなぞ 重い恒星は 進化の最後に たまねぎ構造 中心は鉄。 鉄核は 重力崩壊 を起こす 最初は広がる。
NS 超新星爆発のメカニズムを明らかにすることは40年来の課題でした。重い恒星は中心の鉄核が重力崩壊をおこして収縮し、中性子星やブラックホールを形成します。この際に発生した衝撃波によって外層部を吹き飛ばすと考えられましたが計算してみると衝撃波が途中で停滞してしまい、超新星爆発に至らず、大きな謎となっていました。 最初は広がる。 しかし途中で停滞。 エンジンは何だ? 中性子星付近で 衝撃波が発生。 やがて中心に 中性子星が誕生

7 40年来の謎を解く いったいどのように爆発するのか? ⇒ 複雑な物理過程全てを考慮する必要あり。 衝撃波の内側で、ニュートリノ輻射圧か
  いったいどのように爆発するのか? ⇒ 複雑な物理過程全てを考慮する必要あり。   衝撃波の内側で、ニュートリノ輻射圧か   磁気圧が重要な役割を果たしている ⇒ 超大規模シミュレーションが唯一の解決法   輻射流体計算と磁気流体計算を進める  4-6次元輻射流体計算(諏訪、固武、住吉、、、) メモリ数TB、総演算量約0.5PF年の計算が最低必要  磁気流体計算(三上、花輪、松本、、、)でも同様           いずれも世界最高級の計算 いったいどのように爆発するのか、この謎を解くためには複雑な物理過程全てを考慮する必要があります。衝撃波の内側でニュートリノ輻射圧か磁気圧が重要な役割を果たしていると考えられ、輻射流体、磁気流体計算による超大規模シミュレーションが唯一の解決方法です。4-6次元の輻射流体計算、3次元高解像度の磁気流体計算コードが作成されつつあり、0.5PF年の計算が必要で、いずれも世界最高級の計算になります。

8 3次元磁気流体シミュレーション この図は簡略化した状態方程式を用いた3次元磁気流体シミュレーション結果の例で、青が磁力線、回転軸方向のジェット形成されています。 中心核の重力崩壊後の衝撃波伝播とジェット形成の3次元磁気流体シミュレーション結果 (Mikami, Hanawa and Matsumoto 2010)

9 ガンマ線バーストの発生仮説 大質量星の重力崩壊 2重中性子星の合体 ブラックホールと円盤、が誕生し大爆発が起こる、 とされているが未解明。
宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バーストは大質量星の重力崩壊、あるいは中性子星の合体によってブラックホールが形成される際に発生すると考えられていますが、そのメカニズムは未解明です。特に連星合体に焦点を絞った計算をします。 ブラックホールと円盤、が誕生し大爆発が起こる、 とされているが未解明。     特に、連星の合体に焦点を絞る

10 多数の基礎式と考慮すべき物理・要請 必要なメモリ約10TB、総演算量約0.3PF年 - 計算物理学のグランドチャレンジ
アインシュタイン方程式 流体力学/磁気流体方程式 バリオン数、電子数変化の方程式 ニュートリノ放射、ニュートリノ圧 原子核理論に基づく状態方程式 中性子星/ブラックホールを解像する高解像度 これにはアインシュタイン方程式、磁気流体、バリオン数の方程式など多数の方程式を考慮する必要があり、計算物理学のグランドチャレンジです。物理そ過程を精緻化した数値相対論計算を世界で初めて実行します。 - 計算物理学のグランドチャレンジ - 数値相対論を、物理素過程を精緻化して   初めて実行 (関口、木内、久徳、柴田) 必要なメモリ約10TB、総演算量約0.3PF年

11 ブラックホール降着円盤とジェット 課題9 宇宙磁気流体・プラズマ現象の基礎過程の解明 電波銀河M87中心核から噴出するジェット
課題9 宇宙磁気流体・プラズマ現象の基礎過程の解明 ブラックホール降着円盤とジェット M87 VLA+ HALCA 電波銀河M87中心核から噴出するジェット  次に課題9、宇宙磁気流体・プラズマグループの課題について紹介します。第一の課題はブラックホールのまわりに形成される降着円盤の進化と相対論的ジェットの形成機構を輻射を考慮した磁気流体計算によって明らかにすることです。この図は降着円盤の模式図と活動銀河中心の巨大ブラックホール近傍から噴出していると考えられているジェットの観測例です。ジェットは銀河、銀河団の進化にも影響を及ぼし、その形成機構を明らかにすることは宇宙物理学の大きな課題になっています。 VLBA 43GHz Walker et al. 2007 活動銀河中心核(AGN) ジェット 300rs=0.078pc ブラックホール近傍

12 降着円盤シミュレーションの発展 回転物質の降着を可能にする角運動量輸送機構を 明らかにすることが最大の課題だった
Balbus and Hawley 1991, Hawley and Balbus 1991 降着円盤で磁気回転不安定性が成長することを指摘 Hawley et al. 1995, Matsumoto et al …. 磁気乱流が生成・維持されることを円盤の一部を取り出した局所3次元磁気流体計算で示す Matsumoto 1999, Hawley et al …. 円盤全体を含めた大局的な3次元磁気流体計算により、 十分な角運動量輸送率が得られることを示す。 De Villiers et al. 2003, McKinney et al … 一般相対論的磁気流体コードを用いた3次元数値実験が実施される。輻射によるエネルギー損失は無視。 降着円盤については、回転物質の落下を可能にする角運動量輸送機構を解明することが大きな課題でした。1991年に磁気回転不安定性の重要性が指摘されて以来、3次元磁気流体シミュレーションが実施され、十分な角運動量輸送ができることがわかってきました。

13 ブラックホール降着円盤の大局的 3次元磁気流体(MHD)シミュレーション
この図は私たちのグループによる3次元磁気流体計算結果です。初期に方位角方向の弱い磁場に貫かれた円盤で磁気回転不安定性が発生して角運動量が効率的に輸送され、降着円盤が形成されます。この図は計算結果をもとにブラックホールがどのように見えるかをレイトレーシングによって計算したものです。サブミリ波干渉計によって10年以内にこれを観測することが可能になります。円盤で強められた磁場は浮上し、ねじられ、ジェットを噴出します。 しかし、この計算では輻射による円盤冷却の効果が考慮されていませんでした。 画像提供:町田真美, M. Bursa氏 円筒座標系3次元250×64×384格子点 画像提供:加藤成晃氏

14 明るい円盤では輻射と物質の相互作用が重要
降着率 小さい  降着 高温、ガス圧優勢 ハードステート 光学的に薄い これまで行われてきたシミュレーション 冷却 暗い 磁気圧優勢 L ~ 0.1LEdd ソフトステートへの状態遷移。 輻射と物質の 相互作用を含めた計算が必要 円盤密度が上昇し、円盤が明るくなると輻射冷却および輻射と物質の相互作用が重要になってきます。 明るい jet 光学的に厚い円盤 大きい 輻射圧優勢 松元・廣瀬らが担当

15 磁気流体から輻射磁気流体へ I 流体 演算量∝N3×Nstep 磁気流体 B 輻射流体 輻射磁気流体 磁気流体 N6×Nstep
計算領域を格子に分割して差分化 流体 3次元 ρ(t,x,y,z), v(t,x,y,z), P(t,x,y,z) 演算量∝N3×Nstep 磁気流体 輻射流束制限拡散(FLD)近似 +B(t,x,y,z) 輻射輸送方程式を解く このため、輻射輸送と磁気流体を同時に解く輻射磁気流体計算が必要になります。第一段階では、拡散近似を用いて輻射輸送を簡略化したFlux Limited Diffusion法を用いたシミュレーションを実施します。その後、輻射輸送方程式を6次元空間で解くシミュレーションを行う予定です。 輻射流体 輻射磁気流体 磁気流体 + I (t,x,y,z,n,q,f) N6×Nstep 総計算量: 0.5PF・年

16 相対論的プラズマ粒子シミュレーション 星野らが担当 相対論的宇宙プラズマ パルサーウィンド (g ~ 106-7)
超新星 ガンマ線バースト パルサー LHC AGN 宇宙から降り注ぐ高エネルギー粒子の生成機構を解明することも大きな課題です。地上の加速器で生成可能なエネルギーをはるかに超える高エネルギー粒子は超新星やパルサー、ガンマ線バースト、活動銀河などで加速されていると考えられています。 10TeV 星野らが担当 宇宙から降り注ぐ粒子(宇宙線)

17 相対論的磁気リコネクション (Particle-in-Cell simulation)
衝撃波や磁気リコネクションによる高エネルギー粒子生成過程を輻射損失を考慮した粒子シミュレーションによって明らかにしていきます。この図は磁気リコネクションによる非熱的粒子生成シミュレーションの例です。 非熱的粒子の加速 Radiative Loss を含めたシミュレーションを実施  0.1PF・年

18 6次元宇宙物理学によるブレークスルー 光 計算量:0.5PF・year 原子 (磁気流体計算) 6次元輻射磁気流体力学 6次元ブラソフ方程式
 6次元宇宙物理学によるブレークスルー  原子 (磁気流体計算) 6次元輻射磁気流体力学 6次元ブラソフ方程式 降着円盤の形成と進化 ジェット形成 無衝突衝撃波における粒子加速 非熱的粒子の生成 草野ら 廣瀬、松元ら 多波長スペクトル の直接計算 非熱的粒子生成と 非熱的放射の計算 (輻射輸送計算) プラズマ粒子 (PIC,ブラソフ) ブラソフ方程式を解く6次元計算も行う予定です。 降着円盤 相対論的ジェット 多波長・高分解能観測 との直接比較 計算量:0.5PF・year

19 太陽ダイナモシミュレーション 草野、柴田一成、横山らが担当
黒点数 最後に紹介するテーマは様々な天体における磁気的活動のプロトタイプとなる太陽ダイナモの解明です。太陽黒点が11年周期で増減していることが知られていますが、その原因についてはまだわかっていません。また、黒点が現れない時期があったことが知られていますが、その理由についてもわかっていませんん。太陽活動を理解することは地球環境の将来を考える上でも重要な課題であり、高解像度の磁気流体計算によって太陽ダイナモに迫りたいと思います。 草野、柴田一成、横山らが担当 天体活動のプロトタイプとしての太陽活動を4000^3格子点の対流層全球シミュレーションによって再現する。0.5PF・year

20 次世代宇宙シミュレーションの目標・計算規模
暗黒物質(ダークマター)  現在の1000倍の分解能(太陽質量 程度)で分布を明らかにする 初代星形成・銀河形成   初代星形成、電離宇宙での   銀河形成過程を明らかにする            天の川銀河の形成と進化   星形成領域が分解できる質量   分解能を達成   超新星爆発  ニュートリノ輸送、現実的な状態方程式、磁場等を考慮して重力崩壊過程を追う ガンマ線バースト:連星の合体   中性子星と中性子星/ブラックホールの合体による高エネルギー現象解明 ブラックホール降着流   ブラックホール候補天体の時間変動とジェット形成機構を解明する 太陽活動   太陽ダイナモの解明 粒子法 0.5PF・yr 6次元輻射流体 0.5PF・yr 粒子法+SPH 0.5PF・yr 4―6D輻射流体/3D磁気流体、0.5PF・yr 以上の宇宙分野の課題をまとめてみました。いずれも0.5PF年程度の計算量を必要とする大規模計算になりますが、これらの計算を通して世界をリードする研究を進めていきたいと思います。 数値相対論+流体+ニュートリノ輻射、0.3PF・yr 輻射磁気流体 0.5PF・yr (3D+輻射) 磁気流体 0.5PF・yr

21 END


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