Presentation is loading. Please wait.

Presentation is loading. Please wait.

NMR(核磁気共鳴分光法)を利用した有機化合物の構造決定と定量

Similar presentations


Presentation on theme: "NMR(核磁気共鳴分光法)を利用した有機化合物の構造決定と定量"— Presentation transcript:

1 NMR(核磁気共鳴分光法)を利用した有機化合物の構造決定と定量
群馬工業高等専門学校 物質工学科 准教授 中島 敏 mailto :

2 核磁気共鳴画像法(医療用のMRI) 水(H2O)の中の水素原子の信号から画像化する。
画像出典:ウィキペディア「核磁気共鳴画像法」, URI

3 核磁気共鳴分光法(NMR) 分子の構造や運動状態などの性質を調べる。   溶液系   固体系   高分子(タンパク質、DNA)

4 講演内容 歴史・原理 装置の紹介 試料の調製 測定の手順 測定から得られる情報 まとめ

5 歴史 1938年 最初の核磁気共鳴(NMR)信号の検出(塩化リチウムの分子線。イシドール・ラビ、1944年ノーベル物理学賞)
1945年 固体と液体の試料(凝縮系)で初の核磁気共鳴が観測される。(パラフィン、硝酸鉄(III)水溶液。エドワード・バーセル、フェリックス・ブロッホ、1952年ノーベル物理学賞) 1950年代 構造の研究の手段としての化学シフトおよびスピン結合の発展 核Overhauser効果の予測と確認、構造研究への応用 マジック角回転法の提唱、高分解能固体NMR 1960年代 パルスFT法の応用によるS/N比の向上(リヒャルト・R・エルンスト 、1991年ノーベル化学賞) 1970年代 超伝導磁石の導入と機器のコンピュータ制御化 MRIの原理の発表(ポール・ラウターバー、ピーター・マンスフィールド 、2003年ノーベル生理学・医学賞) 1980年代 多重パルスおよび2次元NMR法と高分子の高分解能測定法の発展(クルト・ヴュートリッヒ 、2002年ノーベル化学賞受賞) 1990年代 複合分析法(LC・NMRなど)の発展 シグナル選択におけるパルス磁場勾配の応用

6 原子核の「核スピン」 正に帯電した原子核が自転しながら、歳差運動している。 環状に電荷が動く = コイルに電流を流して 生じる電磁石と同じ。
 正に帯電した原子核が自転しながら、歳差運動している。  環状に電荷が動く =  コイルに電流を流して  生じる電磁石と同じ。

7 核磁気共鳴吸収 核スピン(小さな磁石)は、近くに 強い磁石があると整列する。
 核スピン(小さな磁石)は、近くに  強い磁石があると整列する。  小さな磁石の向きを反転させるために必要な エネルギーに対応した吸収がみられる。  → 原子の種類ごとに異なる。  → 外部磁場の大きさに比例する。

8 1H と同じ感度にするためには100倍以上の濃度が必要
有機分子を構成する元素 原子核 天然存在比 スピン I 1H 99.98 % 1/2 最も頻繁に測定される 2D 0.01 % 1 12C 98.90 % NMRで測定できない 13C 1.10 % 1H と同じ感度にするためには100倍以上の濃度が必要 14N 99.63 % 15N 0.37 % 16O 99.96 % 17O 0.04 % 5/2 この表以外にも、ほとんどの元素はNMRで測定可能な同位体を持つ。

9 ピークの位置 = 化学シフト 外部からの磁場を 遮蔽してしまうと、 磁場中の原子核は、 外部磁場を小さく感じる。
→ 共鳴吸収エネルギーの大きさが変化する。 分子の骨格に付随した原子や結合中の電子は、水素原子の感じる外部磁場の大きさを、百万分の1~10程度、遮蔽する効果を持つ。 炭素原子の場合は、0から200 ppm程度

10 ピークの形状 = スピン結合 結合を通した原子核同士の相互作用により、ゼーマン準位の分裂が起こり、共鳴吸収によるピークが多重線として観測される。これを、スピン-スピン結合といい、分裂線の間隔をスピン-スピン結合定数(J値)という。シグナルの分裂は相互作用する核の数によるので、分子の構造に関する情報を与える。

11 何がわかるのか? ・ ピークの位置と強度 → 同じ環境の水素が何種 類あるか、どれだけあるかが判る。従って分子 の構造が決まっているものの混合物では、その 物質の相対的な濃度が判る。 ・ ピークの形、結合を介した相互作用→ 結合の順 序がわかれば分子の構造式が決まる。 ・ 空間を通した相互作用(核Overhauser効果, NOE)の測定 → 特定の原子間の距離の情報よ り、分子が空間内でどのような形なのかが判る。

12 装置模式図 磁石 磁石 強い磁石の間においた試料管にラジオ波をあて、試料管にまきつけたコイル(アンテナ)を使ってラジオ波の吸収を検出する。
発振器 検出器 強い磁石の間においた試料管にラジオ波をあて、試料管にまきつけたコイル(アンテナ)を使ってラジオ波の吸収を検出する。

13 超伝導磁石 7 T(テスラ)の磁場強度 =1Hの共鳴周波数が300 MHz
下写真は、冷媒(液体ヘリウム)の供給中。-269℃の低温により、供給口付近は白く霜がついている。

14 超伝導(超電導) 超伝導物質でコイルを作って電流を流すと、 抵抗がゼロである(超伝導)ために、電力消 費なしに電流が流れっぱなしで電磁石になる。 一般的には低温でのみ観測され、液体窒素 の沸点(-196℃)より高温でも超伝導現象を 起こすものは高温超伝導物質と呼ばれる。 NMR装置では、液体ヘリウム(-269℃)を用 いて冷却している。(年間費用、約50万円)

15 磁石の強さ(磁束密度) 1 T(テスラ)= 10000 G(ガウス) 面積あたりの磁石の強さ 地磁気 : 約 0.00005 T
 φ30mm×5mm厚 のネオジム磁石(0.31 T)の吸着力 12 kg 医療用のMRI 装置 :   , ~ 3 T  最新の研究段階では 7 T のものも。 群馬高専のNMR装置  7 T =1Hの共鳴周波数が300 MHz  最新のNMR装置 21.6 T (1Hの共鳴周波数 920 MHz)* *) 日本電子(株) 

16 冷媒用の窒素液化機 空気から分離した窒素 ガスを冷やして、1日あ たり約15Lの液体窒素 を製造する。
超伝導磁石は、魔法瓶に入れた液体ヘリウム(-269℃)で冷やしている。 液体窒素(-196℃)は、その魔法瓶の外側を冷やすのに使う。 空気から分離した窒素 ガスを冷やして、1日あ たり約15Lの液体窒素 を製造する。 週2回、自動でNMR装 置への充填を行う。余っ た分は、他の装置や研 究などに使用できる。

17 測定用コンピュータ

18 測定

19 重水素化された特殊な溶媒が必要 CDCl3 などが よく用いられる。

20 試料管 (左は少量用特殊管)

21 試料溶液 この部分

22 専用のホルダに嵌めて、

23 超伝導磁石の上に置く

24 磁石上部の拡大 下から送られている空気圧で試料管が浮いている。 測定時は中へ

25 コンピュータ画面から操作で、

26 パラメータ設定後、 自動で測定が始まる。

27 そして待つこと数分… (試料の濃度が薄い場合は、 数時間から数日かけて測定することも)

28 スペクトルが得られる

29 ピークごとの面積=水素の数  3H 2H+2H 1H+1H  3H

30 化学シフト ピークの位置 分子の特徴的な構造に対応 基準位置となるTMS 水酸基 エーテル エステル アルデヒド カルボン酸 芳香環
ピークの位置 分子の特徴的な構造に対応 基準位置となるTMS 水酸基 エーテル エステル アルデヒド カルボン酸 芳香環 アルケン アルキル

31 分子の形が 見えてくる エーテル 芳香環 アルケン アルキル

32 スピン結合による分裂 同じ CH3 なのに、ピークの形が異なる

33 水素原子が感じる磁場の大きさ B-3b B-2b B-b B-b 外部磁場 大きさ B B B+b B+b B+2b B+3b 隣の水素が
1つの場合 隣の水素が 2つの場合 隣の水素が 3つの場合  b 隣接原子上の水素(小さな磁石)が結合を通して与える影響

34 スピン結合による分裂の例 エタノール

35 隣の炭素に 水素がひとつ 2本線に分裂 隣は酸素で 水素を持たない 1本線のまま

36 H 隣の炭素に 水素 1+3 2×4本線 芳香環 アルケン 隣の炭素に 水素がひとつ 2本線に分裂

37 アセチルアセトン ケト - エノール互変異性化により、 2つの構造をとっていることが知られている 3 ppm 付近 5 ppm 付近

38 アセチルアセトンの 各種溶媒中での1H-NMR
ケト体 エノール体 ベンゼン中 アセトニトリル中 水中

39 溶媒の極性が低い方が、エノール型の割合が多い。
 → 溶媒和による安定化の小さな非極性溶媒中では、エノール型の分子内水素結合による効果が大きくなる。

40 13C-NMR 1Hと同様に、化学的に等価な核は同じ化学シフトを持つ。 化学シフトの順は1Hと同じ傾向で、0~200 ppm程度。
13C の天然存在比は12C の1.1%と低く、感度が低い。 COM法では、1Hとのスピン結合は、デカップルにより消している。そのため1重線でピークを与える。 13C-13Cが隣り合う確率も低いため、13C核同士のスピン結合は通常観測されない。 ピーク強度は炭素数に比例しない。 デカップルしない場合はスピン結合による分裂が見られる。 隣接プロトン数の情報は、通常、DEPT法により得る。 DEPT90°はCHシグナルのみを、DEPT135°はCH2シグナルが下向き、CH、CH3を上向きに与える。 COMと併せて、ピークがメチル、メチレン、メチン、4級と区別できることになる。 炭化水素、置換ベンゼンなどにおいては置換基の効果の加成性が認められており、計算によって化学シフトを予測することができる。

41 2D-NMR HH-COSY 縦横軸とも1Hの化学シフトである二次元スペクトル。ピーク間にスピン結合がある時、クロスピークを与える。
HMQC, HSQC  横軸が1H、縦軸が13Cの化学シフトである二次元スペクトル。直接結合するプロトンとカーボンを検出する。 HMBC 横軸が1H、縦軸が13Cの化学シフトである二次元スペクトル。二本、または三本の結合を介するプロトンとカーボンを検出する。 NOESY  両軸が化学シフトでピーク間にNOE結合や化学交換があるときクロスピークが生じる。NOEによるクロスピーク強度から原子間の距離が推定できる。 HOHAHA, TOCSY  間接的にスピン結合している水素原子核同士の相関が観測できる。 その他、いろいろな測定法が提唱されている。

42 HH-COSY の例 スピン結合のある水素原子同士のところにクロスピークが見られる。

43 まとめ 本校の装置では、溶液試料を用いる測定法が可能。 試料は少量でよい。測定によって分解しないので回 収も可能である。
有機化合物の分子の構造がわかる。分子の空間的 な形がわかる測定法もある。高分解能装置は、タン パク質などの3次構造などを解析するのにも用いら れる。 構造既知の分子の相対的な存在量がわかる。 以上のような理由から、有機化学、生化学の分野に とって必要不可欠な測定装置のひとつである。


Download ppt "NMR(核磁気共鳴分光法)を利用した有機化合物の構造決定と定量"

Similar presentations


Ads by Google