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上山あゆみ(九州大学) ayumi.ueyama@kyudai.jp 生成文法と意味理解 上山あゆみ(九州大学) ayumi.ueyama@kyudai.jp.

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1 上山あゆみ(九州大学) ayumi.ueyama@kyudai.jp
生成文法と意味理解 上山あゆみ(九州大学)

2 Numeration (いくつかの単語の集合)
生成文法のモデル Numeration (いくつかの単語の集合) Computational System PF(Phonological Form: 単語を構造化した、音関連の表示) LF (Logical Form: 単語を構造化 した、意味関連の表示) 2

3 autonomous syntax (自律的統語論)
生成文法の基本的な考え方 構造が、「音」についても「意味」についても、その基盤となっているということ → つまり、構造が決まると意味が決まるということ ある文の構造を提案する、ということは、その文の意味がどう決まるかを提案する、ということにほかならない。 意味論と統語論は並列の関係ではない。文の意味とは、Lexiconにおける意味の指定に関わる部分以外は、むしろ、構築された構造に基づいて派生するものであり、「意味論」の少なくとも半分は「統語論」であると言うことすらできる。

4 ここで提案する意味表示の方針 真理条件的意味論ではなく、Information Databaseの更新という形で「知識」をとらえる。
ただし、DRT・メンタルスペース・談話管理理論等よりもsyntaxとの対応関係が計算しやすくなるように、Information Databaseの構成を工夫する。 (∀や∃などの)operator を用いない。 operatorとは、集合に対する「操作」であるため、定義上、指示的(referential)になりえない。しかし、量化的な働きをしているとみなされてきた表現も指示的と考えざるをえない場合がある。 「意味解釈」とはどういう認知的行為なのか、明示的に特徴づけたい。 4

5 「指示的」な「量化表現」の例 Few senators admire Kennedy. They are junior.
Every student brought his camera. They are diligent. 3人の男の子が(それぞれ)2人の女の子をパーティに誘った。その男の子たちは、みんな喜んでいた。 3人の男の子が(それぞれ)2人の女の子をパーティに誘った。その(6人の)女の子たちは、みんな喜んでいた。 5

6 (perceived) phonetic strings
input/output influence (dynamic) database process system reference Working Space Computational System Information Database (perceived) phonetic strings Concepts Lexicon LF SR (formal) features frequent patterns Numeration Phonology PF (generated) phonetic strings Inference rules Extractor 6

7 (Semantic Representation)
 文法と世界知識の接点 Computational System LF Numeration PF Lexicon Working Space SR (Semantic Representation) Information Database Inference rules 7

8 Information Database Information Database(特定的な情報のリスト)
1つ1つの(特定の)オブジェクトが、指標番号で区別され、その特性の記述とともに記憶されている。 オブジェクトの下位タイプ: モノ(Xn)、コト(En)、場所?、時?、コトバ?、数? 各特性は、項目名(attribute)とその値(value)のペアとして記述される。 それぞれの情報 (Specific Information)の記載方式 Xn [attribute1:value1 ; attribute2:value2 ; attribute3:value3; ...] En [attribute1:value1 ; attribute2:value2 ; attribute3:value3; ...] 8

9 Specific Information X19 [名称 :ジョン ; 類 :大学生 ; 年齢 20 ; ... ]
E82 [類 :批判した ; 対象 :X53 ; 行為者 :X19 ; ... ] X153[類 :批判文 ; 対象 :X53 ; 行為者 :X19 ; ... ] E812[類 :落下 ; 対象 :X3 ; 行為者 :X159 ; ... ] X225[縦 :40cm ; 横 :50cm ; 高さ :15cm ; 重さ :650g ; ... ] E65[名称 :北京オリンピック ; 開催年: 2008年 ; ] E923[名称 :○○海岸OL殺人事件; 犯人:X45 ; 被害者 :X225 ; ..] いわゆる意味役割も、attribute である。 attribute ... 概念(Concepts の中の要素)≒言語表現 value ... 言語表現、数値、(特定の)オブジェクト、および、五感によって知覚できること 9

10 語彙のタイプ 語彙範疇には、value に対応するもの(V表現)と、attribute に対応するもの(A表現)とがある。 V表現 A表現
 語彙のタイプ 語彙範疇には、value に対応するもの(V表現)と、attribute に対応するもの(A表現)とがある。 V表現 田中一郎、山田くん、陽子ちゃん、... 学生、教師、弁護士、落下、隠蔽、出版、... 落ちた、落とした、勉強している、... 穏やか、短い、大きい、すごい、... 4人、52kg、5cm、10歳、... A表現 年齢、長さ、サイズ、人数、値段、... 作者、監督、実行犯、被害者、... 名称、色、職業、規模、出身地、場所、... 10 10

11 意味解釈とはどのような行為なのか 生成文法の考え方における「意味」の3つのsource
各語彙に指定されている「意味」 Lexiconにおける指定 1.を材料として、構造が構築されたことによって得られる「意味」 (=linguistic SR) LFを意味表示に変換したもの 2.と自分の「知識」を統合して(推論等によって)得られる「意味」 関連性や一貫性を求める推論操作 つまり、linguistic SRは、Information Database と比較対照可能な形式でなければならない。 11

12 提案 語彙によって、どの型式のSR式に変換されるかがLexiconで指定されている。 linguistic SR
 提案 語彙によって、どの型式のSR式に変換されるかがLexiconで指定されている。 V表現が指示機能を持つ場合 Objectn [attribute :value] o型   (→2章) V表現が記述機能を持つ場合 [attribute(Object)=value]n p型  (→3章) A表現の場合(value を指示する) valuen=attribute(Object) v型   (→5章) linguistic SR =語彙ごとの Lexicon における指定 + 何と Merge したか等、構造構築による変容 + 機能範疇の働きによる変容 ←構造構築による影響は反映するが、全体で1つの表示にする必要はない。 12 12

13 目次 [全体像] 生成文法の言語観に基づく意味論 [o型] V表現とオブジェクトの指示 [p型] V表現と特性の記述
[全体像] 生成文法の言語観に基づく意味論 [o型] V表現とオブジェクトの指示 [p型] V表現と特性の記述 [項] 意味的な項と統語的な項 [v型] A表現と value の指示 [o ⇔ v] o型と v型の交替~全体と部分の関係 [VV表現] いわゆる量化表現について 13

14 第2章:V表現とオブジェクトの指示 14

15 モノを指示するV表現 John1 (あの)OL3 (その)4人11
Numerationの要素には、「仮番号」の指標がつく John1 (あの)OL3 (その)4人11 SR式 SR式 SR式 x1 [名称 :John] x3 [類 :OL] x11 [人数 :4] 知識内の検索 知識内の検索 知識内の検索 x1 = X19 x3 = X22 x11 = X105 X19 [ 名称 :John ; 類 :大学生 ; 年齢 :20 ; ... ] X22 [ 名称 :Mary ; 類 :OL ; 年齢 :24 ; ... ] X105 [ 名称 :ビートルズ ; 人数 :4 ; ... ] 15

16 コトを指示するV表現 北京五輪2 落ちた1(Theme) E65 [名称 :北京五輪 ; 開催年 :2008年 ; ...]
argument structure も lexical item の一部 北京五輪2 落ちた1(Theme) 落とした38(Theme, Agent) SR式 SR式 SR式 e2 [名称 :北京五輪] e1 [類 :落ちた ; Theme :_] e38 [類 :落とした ; Theme :_ ; Agent :_] 知識内の検索 知識内の検索 知識内の検索 e2 = E65 e1 = E22 e38 = ?? E65 [名称 :北京五輪 ; 開催年 :2008年 ; ...] E22 [類 :落ちた ; Theme X24 ; ... ] E8825 [類 :落とした ; Theme :_ ; Agent :_ ; ... ] 16

17 o型のSR式 o型のSR式 たいていのV表現は、o型のSR式に対応できる。 (できないものについては、後述)
表現 αn SR式 on [_ :α] oが x か e かは、語彙的に決められている。 attribute も通常、語彙的に決められている。 固有名詞ならば、「名称」 いわゆる普通名詞ならば、「類」 たいていのV表現は、o型のSR式に対応できる。 (できないものについては、後述) o型のSR式は、オブジェクトを指示する機能を持つ。 表現 αn(θ1, θ2) SR式 on [_ :α ; θ1 :_ ;θ2 :_] 17

18 指示(reference) では、この考え方において「指示(reference)」とは何か。
各言語表現は、Numerationにおいて、「仮番号」としての指標を与えられる。 その「仮番号」のまま、SR式が派生する。(この段階では、まだ何も「指示」していない。) そのSR式にもとづいてInformation Database内を検索し、同定して初めて、「指示」が成立することになる。 同定 ... SR式におけるオブジェクト(小文字で、仮番号の付いているもの)とInformation Databaseにおけるオブジェクト(大文字で、固有番号の付いているもの)とを等号で結ぶことであり、これそのものは言語のシステムの外の操作。 18 18

19 固有名詞 であるが、表現によっては、即時の同定を要求するものがある。 情報量の問題ではない。 A: ジョンがメアリを推薦したんだって。
B1: (その事実を知らない)へえ、そう。 B2: (そのジョンを知らない)え、ジョンって? 情報量の問題ではない。 A1: ジョンっていうやつがメアリを推薦したんだって。 A2: 誰かがメアリを推薦したんだって。 B:へえ、そう。 19 19

20 [+D] 固有名詞は、o型のSR式になる場合、[+D]をもつ。
a.  Working Spaceにおいて[+D]が残っている間は、別のSR式の処理に進むことができない。 b. 要素が同定されると、その要素の[+D]が消える。 20 20

21 [+D] John1[+D] X19 [ 名称 :John ; 類 :大学生 ; 年齢 :20 ; ... ]
言語表現 John1[+D] Working Space linguistic SR x1[+D] [名称 :John] x1 [名称 :John] x1 = X19 X19 [ 名称 :John ; 類 :大学生 ; 年齢 :20 ; ... ] X22 [ 名称 :Mary ; 類 :OL ; 年齢 :24 ; ... ] X105 [ 名称 :ビートルズ ; 人数 :4 ; ... ] 21 21

22 ア系列指示詞 ア系列指示詞は、[+D]を持つ。
A: 僕はあの先生のおかげで勉強が好きになったんだ。 B: え、あの先生って? ただし、発話者がア系列指示詞を用いるためには、それが、その人が直接体験によって知っているモノによって同定されていなければならない。 刑事1:今さっき警官があの封筒を届けると言って持っていきましたよ。 (刑事2は、それが誰なのか見当がつかないが、あわてて。) a. 刑事2:*あいつはどこだ! b.  刑事2:そいつはどこだ! 22 22

23 ア系列指示詞 仮に、太郎に花子という娘がいたとしよう。もし、{ok花子が/*あの娘が}結婚することになったら、...
A:ぼくは大阪にいるとき山田という先生に習ったんだが、君もあの先生につくといいよ。 B:{その先生/*あの先生}は、今、どちらにお勤めなのですか。 B:あ、山田先生ですか。僕も、あの先生に教えていただいたことがあるんです。 23 23

24 ソ系列指示詞 モノを指示するソ系列指示詞は(直示でない限り)必ず言語的な先行詞が存在していなければならない。
→ Numerationにおいて、その談話ですでに使われた番号の指標をになわなければならない。(「同定」の問題ではない。) (状況:一人の刑事が犯人を追って、あるアパートの部屋の前に来る。タイミングを見て、一気に踏み込むが、そこには犯人は見当たらず、単に男達がマージャンをしている。刑事は、この男達が犯人をかくまっているに違いないと思って叫ぶ。) a. 刑事:*そいつはどこだ!? b. 刑事:あいつはどこだ!? 24 24

25 ソ系列指示詞 (状況:昨日、陽子は正男に手作りのケーキをあげた。陽子は、正男の反応が気になるので、電話をかけて、開口一番に聞く。)
a. 陽子:*ねえねえ、それ、食べた? b. 陽子:ねえねえ、あれ、食べた? (状況:昨日面会に来た学生の名前が思い出せない教授が秘書に内線電話をかけ尋ねる。) a. 教授:*昨日来たその学生、名前 何だった? b. 教授:昨日来たあの学生、名前 何だった? 25 25

26 第3章:V表現と特性の記述  26

27 オブジェクトの特性を記述する機能 x1 [類 :バイト] e2 [類 :募集 ; ...] x2 [類 :大学生 ; 類 :バイト]
a. バイト1の募集2 b. バイト1の大学生2 a. には2つのオブジェクトが関わっている x1 [類 :バイト] e2 [類 :募集 ; ...] b. には1つのオブジェクトしか関わっていない x2 [類 :大学生 ; 類 :バイト] このように、V表現は、オブジェクトを指示することなく、オブジェクトの特性を記述するだけの場合もある。 27 27

28 attribute(object)=value
p型のSR式 X19 [名称 :John ; 類 :大学生 ; 年齢 :20 ; ... ] X22 [名称 :Mary ; 類 :OL ; 年齢 :24 ; ... ] E614 [類 :kissed ; Patient :X22 ; Agent :X19 ; ...] E614 [ Patient X22 E614 Patient X22 p型のSR式 attribute(object)=value Patient(E614)= X22 名称(X19)=John 類(X19)=大学生 年齢(X19)=20 他の式で言及できるように、便宜的に式に番号をふっておく [attribute(object)=value]n 28 28

29 記述機能と構造 p型のSR式は、特性を記述する機能を持つ。 その特性がどのオブジェクトについてのものかは、構造で指定される。
Merge : 2つの要素を1つにする操作。主要部につながる branch を太線で表すことにする。 α1 β2 29

30 modification の構造 以下の構造で、αがp型である場合、主要部のβが指示するオブジェクトについての特性を記述することになる。
バイト1の大学生2 Lexicon での指定のままならば。。。 [類( )=バイト]1 x2 [類 : 大学生] Mergeの結果。。。 [類(x2)=バイト]1 x2 [類 :大学生] α1 β2 ⇒ x2 [類 :大学生 ; 類 :バイト] 30

31 p型にしかなれない名詞 フロリダ産1のオレンジ2 x2 [類 :オレンジ ; 産(地) :フロリダ] 木製1の椅子2
「~産」や「~製」のように、morphology で決定される場合もある。 特大1の皿2  x2 [類 :皿 ; (サイズ) :特大] 突然1の大雨2  e2 [類 :大雨 ; _ :突然] attribute は語彙的に決められている場合もあるが、文脈的に補完されることも多い。 31

32 形容詞類 形容詞類は、原則的にp型にしかなれない(=指示機能を持たない)。 黄色い1手帳2 x2 [類 :手帳 ; (色) :黄色い]
すごい1先生2 x2 [類 :先生 ; _ :すごい] 素早く1決断した2 e2 [類 :決断した ; _ :素早く ; ...] 32

33 modification の構造 以下の構造で、αがp型である場合、主要部のβが指示するオブジェクトについての特性を記述することになる。
逆に、αがo型で、βがp型だと、解釈できなくなる。 *出来事の突然 *楽器の木製 *出来の上々 *鍋の日本製 → つまり、p型は主要部になれない。 (民部 2012:九大卒論) α1 β2 33

34 predication の構造 特性記述の表現があらわれる、もう1つの場合はpredication。
[α かわいい] [β メアリ] [β メアリは] [α かわいい] p型がその記述対象のオブジェクトの主要部になれないとするならば、predicationの場合も、αが主要部となって投射することはできないはず。 そこで、predication 関係を形成する機能範疇が別にあると考える。 34

35 predicationを形成する機能範疇
Numeration 最初のslotに、最初にMergeした相手のindexが入り、次のslotに、次にMergeした相手のindexが入る。 φ( , ) LF     ↑ Subject β1 α2 φ3(2, 1)  ↑ Predicate この構造で、α2が p型の場合、β1が指示するオブジェクトについての特性を記述することになる。 (「ふざけた野郎」「とんでる女の子」のように述語になれない表現は、このφの項になれない、と言えばよい。) 35 35

36 第4章:意味的な項と統語的な項 36

37 o型同士の修飾関係とアブダクション linguistic SR x1 [名称 :ジョン] x2 [類 :パソコン]|x1 パソコン2
ジョン1の パソコン2 ジョン1とパソコン2の関係については、言語的にはわからない。単に、「ジョン1が何らかの意味でパソコン2と関係がある」ということしか表されていない。 「αとβの間に何らかの関係がある」という状態を「α ... |β」という記法で表すこととし、この関係を、次ページのように(証明論的に)推論規則によって定義する。 言語が表す意味は、このlinguistic SRのみであり、その「|」がどのような推論の結果、成り立ったものであるかは、言語使用者がアブダクションで「解決」しなければならない。(しばしば、このアブダクションが成功することを「理解」と呼ぶ。) 37 37

38 「|」という関係を定義する推論規則 αi とβj の間に以下の左辺の関係が成り立つならば、右辺の「|」の関係が deduce 可能である、とする。 αi [.... Attribute βj ...]  ⇒ αi | βj ok [....Attribute αi ; ... ; Attribute βj ...]⇒ αi | βj αi=βj ⇒  αi | βj [Symmetry] βj|αi   ⇒  αi|βj [Transitivity] αi|γk かつ γk|βj   ⇒ αi|βj 38 38

39 o型による modification linguistic SR e1 [類 :落ちた ; Theme :_] x2 [類 :おもり]|e1
おもり2 e1 [類 :落ちた ; Theme :x2] という仮定が可能ならば、 x2|e1  が導出される。 (つまり、x2の SR式の「|」関係がこの仮定によって「解決」する。) 39 39

40 o型による modification e1 [類 :落ちた ; Theme :_] x2 [類 :おもり]|e1 linguistic SR
おもり2 e3 [... 原因 :x2 ; 結果 :e1 ; ...]  と仮定すると、 (=たとえば、その「おもり」が何かの「落下」を引き起こしたような場合を仮定すると) x2 |e1  が導出される。 (つまり、x2の SR式の「|」関係がこの仮定によって、「解決」する。) 40 40

41 p型と o型の違い このように、非主要部が(指示機能を持つ)o型の場合には、主要部との関係が非常に自由であるが、非主要部がp型の場合には、解釈の自由度がない。 黄色いおもり ≠ 「黄色い花瓶が落ちたおもり」 41

42 predication と「|」 [○1|○2]3 LF α1 β2 φ3(2, 1) linguistic SR
○1 [ ... α ... ] ○2 [ ... β ... ] [○1|○2]3 ←関係性を述べるSR式なので、r型と呼んでおく。    ↑ Subject Predicate 42 42

43 項構造を持つ名詞に対する modification
linguistic SR: x1 [名称 :ジョン] x2 [名称 :メアリ] e3 [類 :誘惑 ; Theme :_ ; Agent :_] | x2, | x1 アブダクション1 e3 [類 :誘惑 ; Theme :x2 ; Agent :x1] アブダクション2 e3 [類 :誘惑 ; Theme :x1 ; Agent :x2] どちらの仮定でも「解決」しうる。 43

44 では、....? ガやヲの格助詞がついている場合には、linguistic SRを上のように仮定するわけにはいかない。
x1 [名称 :ジョン] x2 [名称 :メアリ] e3 [類 :誘った ; Theme :_ ; Agent :_] | x2, |x1 アブダクション1 e3 [類 :誘った ; Theme :x2 ; Agent :x1] アブダクション2 e3 [類 :誘った ; Theme :x1 ; Agent :x2] ガやヲの格助詞がついている場合には、linguistic SRを上のように仮定するわけにはいかない。 間違い! 44

45 項関係を形成する Merge linguistic SR ジョン1が が メアリ2を を 誘った3(Theme2, Agent1)
linguistic SR x1 [名称 :ジョン] x2 [名称 :メアリ] e3 [類 :誘った ; Theme :x2 ; Agent :x1] ← これ以上のアブダクションは不必要。 45

46 「発音しない項」は存在するのか? 「出て行った。」は、(i)でいいのか、 それとも(ii)でなければならないのか?
(i) 出て行った2(ガ/Agent) (ii) [+ガ] → (ii) でなければならない。 46 46

47 「発音しない項」とソ系列指示詞 (状況:一人の刑事が犯人を追って、あるアパートの部屋の前に来る。中に踏み込むと人質だけが残されていた。)
人質:30分ほど前に、 出ていきました。 e3 [類 :出ていった ; Agent :x2] 刑事:そいつ は何か言ってましたか? 人質:30分ほど前から、私一人です。 刑事:*そいつは何か言ってましたか? 刑事:あいつは何か言ってましたか? φ2 2 47

48 「発音しない項」とソ系列指示詞 (状況:今日、陽子は正男に手作りのケーキをあげた。その晩、正男が陽子に電話をかける。)
正男: 実はうっかりバイト先に忘れてきちゃってさあ。 e4 [類 :忘れてきちゃった ; Theme :x2 ; Agent :x3] 陽子: え、先輩に見つかる前に、それ取りにいかないと。 正男: 実はうっかりバイトから何も持たずに帰ってきちゃってさあ。 陽子: *え、先輩に見つかる前にそれ取りにいかないと。 陽子: え、先輩に見つかる前にあれ取りにいかないと。) 48

49 動詞 vs. 名詞 A: またジョンに抗議されたらしいよ。 B: {その人/あの人}も大変だよね。
49

50 付加詞を作る格助詞(p型の機能範疇) a. 東京への帰還 b. 東京からの帰還
e1 [類 :帰還 ; Goal :x2 ] e1 [類 :帰還 ; Source :x2] x2 [名称 :東京] x2 [名称 :東京] 「へ」 ... 項構造を持っている機能範疇 argument をとる Merge をするが、SR式は p型 Lexicon  へ (Goal) syntax   へn(Goalm) ... m=Mergeの相手のindex SR式   [Goal( )=om]n 「から」 Lexicon  から (Source) syntax   からn(Sourcem) ... m=Mergeの相手のindex SR式   [Source( )=om]n 50 50

51 付加詞を作る格助詞(p型の機能範疇) linguistic SR →つまり、 太郎4が 急いだ3(Agent ) 4 東京1
へ2(Goal ) 1 linguistic SR x1 [名称 :東京] [Goal(e3)=x1]2 e3 [類 :急いだ ; Agent :x4] x4 [名称 :太郎] →つまり、 e3 [類 :急いだ ; Agent :x4 ; Goal :x1] 51 51

52 第5章:A表現と value の指示 52

53 A表現は value を指示する 「この欄に年齢を書いてください。」 =欄に「25」と書く 「この欄に名前を書いてください。」
=欄に「陽子」と書く 「犯人を連れてきてください。」 =その事件の犯人である人物を連れてくる 53 53

54 v型のSR式 vn=attribute (object)
v型のSR式: valueの指示 X19 [名称 :John ; 類 :大学生 ; 年齢 :20 ; ... ] X22 [名称 :Mary ; 類 :OL ; 年齢 :24 ; ... ] E614 [類 :kissed ; Patient :X22 ; Agent :X19 ; ... ] E614 [ Patient X22 E614 Patient X22 X22 = Patient(E614) v型のSR式 vn=attribute (object) John =名称(X19) 20 = 年齢(X19) 54 54

55 A表現はオブジェクトを指示しない 手下1 なのか 手下1(2) なのか? v1=手下( ) v1=手下(x2)
手下    なのか 手下1(2)    なのか? v1=手下( )       v1=手下(x2) (状況:AとBは、ある謎の人物 Mr.Xを調査するために盗聴をしている。ようやく誰かが訪ねてきた。) A: どうやら、古参の手下のようですね。 B: 本当か? あいつの依頼人ということはないのか? B: 本当か? *そいつの依頼人ということはないのか? A: どうやら、Mr. Xの古参の手下のようですね。 B: 本当か? そいつの依頼人ということはないのか? →A表現は、value を指示するが、それと同時にオブジェクトを指示することはない。 55 55

56 A表現そのものは記述機能を持たない → お手頃な値段の商品 *値段の商品 → 世界最大の規模の大会 *規模の大会 → ちょうどいい大きさの靴
*大きさの靴 *性格の太郎 *作り方のプラモデル *長所のジョン *成績のメアリ *名前の男の子 *味の料理 *動機の通り魔事件 *順位の決勝レース *犯人の連続殺人事件 *日程の文化祭 *点数の合格者 →  お手頃な値段の商品 →  世界最大の規模の大会 →  ちょうどいい大きさの靴 → 穏やかな性格の太郎 → 複雑な作り方のプラモデル → 人懐っこさが長所のジョン → ずば抜けた成績のメアリ → 珍しい名前の男の子 → 独特な味の料理 → 理不尽な動機の通り魔事件 → 過去最高の順位の決勝レース → 残忍な犯人の連続殺人事件 → 例年通りの日程の文化祭 → 最高の点数の合格者 民部(2012:九大卒論) 56

57 A表現そのものは記述機能を持たない * お手頃1な 値段2の 商品3 ok 商品3 [値段(x3)=お手頃]2 x3 [類 :商品]
[_( )=お手頃]1 v2=値段( ) |1 x3 [類 :商品 ; 値段 :お手頃] [値段( )=お手頃]2 ←2つを融合すると、必然的にp型になる。 民部(2012:九大卒論) 57

58 A表現による modification もちろん、指示機能を持った A表現の modificationは、何の問題もない。 値段の乱高下
規模の調査 大きさの好み 性格の不一致 作り方の説明 民部(2012:九大卒論) 58

59 v型が関わる modification 1 linguistic SR v1=値段( ) e2 [類 :乱高下;Theme :_]|v1
値段1の 乱高下2 v1=値段( ) e2 [類 :乱高下;Theme :_]|v1 e2 [類 :乱高下 ; Theme :v1] と仮定すると、 e2 |v1 が導出されるので、「|」関係が解決する。 59

60 v型が関わる modification 2 linguistic SR x1 [名称 :ジョン] v2=子供( )|x1 ジョン1の 子供2
60 60

61 v型が関わる modification 3 linguistic SR
つかまえた1 人数2 e1 [類 :つかまえた ; Theme :_ ; Agent :_] v2=人数( )|e1 e1 [類 :つかまえた ; Theme :xi ; Agent :__ ]と仮定すると、 xi|e1   が導出される。さらに、 v2=人数(xi) と仮定すると、 v2|xi   が導出される。 この2つに対して、transitivity を適用すると、 v2|e1 が導出され、解決する。 61 61

62 英語の関係節の構造 問題: 修飾関係というものに、このような自由があるならば、どうして英語では、このような修飾ができないのか?
問題: 修飾関係というものに、このような自由があるならば、どうして英語では、このような修飾ができないのか? → 英語の場合、関係節構造になっている点が大きいのではないか。 英語の関係節の主要部は、次のような r型のSR式に相当しているのである。 英語の関係節のComp φn(m, r) ... mはCP-specに移動した要素の指標 ... r は、このCompの係り先の要素の指標 SR式  [xm=xr]n 62 62

63 英語の関係節の構造 NP linguistic SR x1 [類 :boy] x2 [類 :person] [x2=x1]3
e4 [類 :saw; Theme :x5 ; Agent :x2] x5 [名称 :Mary] a boy1 CP who2 IP φ3(2, 1) t2 saw4(Theme5, Agent2) Mary5 63 63

64 第6章:o型とv型の交替~全体と部分の関係
64 64

65 ここまでの まとめ 分類 略号 型式 x型 e型 p型 v型 機能範疇 F r型 <V表現> value に対応する表現
VRx x型 コト(e) VRe e型 [記述(D)機能] (構造で指定された)指示物の特性を記述する VD p型 <A表現> attribute に対応する表現 [指示(R)機能] value を指示する value がオブジェクト ARx v型 ARe value がオブジェクト以外 コトバ ARl 数字 ARn 度合い ARd 機能範疇 [記述(D)機能] =や|で2つの要素の関係を記述する F r型 65

66 v型から o型へ  本来、A表現のものでも、その value がオブジェクトに相当する場合、それと同定されるオブジェクトから見ると、o型のSR式が派生される場合がある。 犯人1 … A表現 v1=犯人(E85) … 原則的には v型のSR式になる。 v1=x19 x19 [_ :犯人(E85)] … 派生された o型の SR式 この場合には、実質的にV表現としてみなされているようなものなので、記述機能も持ちうる。 犯人1の男2 [類=犯人(E85)]1 x2 [類 :男] |1 x2 [類 :男 ; _ :犯人(E85)] 66 66

67 o型から v型へ 次のようなオブジェクトがあるとする。 すると、次のような新しいオブジェクトも想定できる。
x1 [類 :大学生] x2 [類 :会社員] x3 [類 :国会議員] すると、次のような新しいオブジェクトも想定できる。 x4={x1, x2, x3} このx4から見ると、類のvalueを表す表現が、今度はattributeを表す表現としてもみなせることになる。 x4 [大学生 :x1 ; 会社員 :x2 ; 国会議員 :x3] このように、語彙範疇は原則的にV表現とA表現に分かれているものの、特にvalueがオブジェクトに対応する場合には、V表現とA表現の相互乗り入れが可能となり、同じ「意味」が異なる表示に対応する場合が出てきてしまう。 67 67

68 attributeと「全体と部分の関係」
このセーターは、色が素敵だ。 このセーターは、袖が素敵だ。 このオーケストラは、金管がうまい。 attributeの value を述べることが、オブジェクトの特性記述になるのと同じように、部分の特性を述べることは全体の特性を述べることにつながる。 68 68

69 オブジェクトの構造の重層性 [ジョン1は[右目2は視力3が悪い4]5]6 ジョン1は φ6(5, 1) 右目2は φ5(4, 2) 視力3が
x1 [名称 :ジョン] v2=右目( ) [視力( )=_]3 [_( )=悪い]4 [v2|4]5 [x1|5]6 [視力( )=悪い]4 [視力(v2)=悪い]4 v2=右目(x1) 69 69 69

70 全体と部分の関係 つまり、 Information Database では、こう↓なっていることになる。
X19 [名称 :太郎 ; 身長 :170cm ; 右目 :X247 ; 指 :長い] X247 [色 :黒 ; 形 :切れ長 ; 視力 :悪い] さらに、こう↓なっている可能性もある。 X158 [類 :弦楽カルテット ; 第1ヴァイオリン :X19 ; 第2ヴァイオリン :X45 ; ヴィオラ :X904 ; チェロ :X177] 私たちは、自由に上位オブジェクト・下位オブジェクトを構成していくことができるのであり、言語構造はそれを反映している可能性がある。 70

71 「スコープ解釈」 [3人1の男の子]2が[2人3の女の子]4をパーティ5に誘った6 男の子が総勢3人、女の子が総勢2人 <グループ読み>
男の子が総勢3人、女の子が総勢2人 <グループ読み> 男の子が総勢3人、女の子が総勢6人 <分配読み> 71 71 71

72 グループ読みの場合 3人1の男の子2が2人3の女の子4をパーティ5に誘った6 [人数( )=3]1 x2 [類 :男の子]
3人1 の 男の子2 が 2人3の 女の子4 を パーティ5 に 誘った6 (G5,T4,A2) [人数( )=3]1 x2 [類 :男の子] [人数( )=2]3 x4 [類 :女の子]   x5 [類 :パーティ] e6 [類 :誘った ; Goal :x5 ; Theme :x4 ; Agent :x2] →  x2 [類 :男の子 ; 人数 :3] →  x4 [類 :女の子 ; 人数 :2] 72 72 72

73 分配読み [3人1の男の子]2が[2人3の女の子]4をパーティ5に誘った6
男の子が総勢3人、女の子が総勢2人 <グループ読み> 男の子が総勢3人、女の子が総勢6人 <分配読み> 分配読みの場合、「2人の女の子をパーティに誘った」という部分が「3人の男の子」で指しているグループのそれぞれのメンバーについての情報を表している。 73 73 73

74 メンバーについての情報 xn2 xn0 xn1 xn0 [attribute:value] グループ全体についての情報
74 74

75 分配読みを出すためには? この黄色の部分を「x2のメンバーについての情報」にする操作があれば、分配読みが出る。 提案
3人1 の 男の子2 が 2人3の 女の子4 を パーティ5 に 誘った6 (G5,T4,A2) この黄色の部分を「x2のメンバーについての情報」にする操作があれば、分配読みが出る。 提案 Partitioning=指定された領域に含まれるすべての要素の上付き数字を+1にする操作 Partitioningの適用条件:predication の Predicate であること 75

76 predicationを形成する素性 Pn
3 LF Predicate ..... α1 α1,P3 β2 linguistic SR ○1 [ ... α ...] ○2 [ ... β ...] [○1|○2]3 76 76 76

77 分配読み 77 77 7 3人1 の 男の子2 , P7が 男の子2 が 2人3の 女の子4 を パーティ5 に
誘った6 (G5,T4,A2) 77 77 77

78 分配読み Partitioning [人数( )=3人]1 x2 [類 :男の子] → x2 [類 :男の子 ; 人数 :3人]
7 Partitioning 3人1 の 男の子2 が 2人3の 1 女の子4 を 1 パーティ5 に 1 誘った6 (G5,T4,A2) 1 1 1 1 [人数( )=3人]1 x2 [類 :男の子] [人数( )=2人]31 x41 [類 :女の子]  x51 [類 :パーティ] e61 [類 :誘った ; Goal :x51 ; Theme :x41 ; Agent :x21] [x2|e61]7 →  x2 [類 :男の子 ; 人数 :3人] →  x41 [類 :女の子 ; 人数 :2人] 78 78 78

79 SRでは、x40全体については直接述べられていない
e61 [類 :誘った ; Goal :x51 ; Theme :x41 ; Agent :x21] [x2|e61]7 e61は、x21とx41との間に成り立つ関係である。 e61がx20というグループ全体に関わっているということから、メンバーの持つ性質がグループ全体の性質とみなせるということになる。 すると、1つのx21とx41との間に成り立った関係e61は、x20全体に関わるということになり、x20とx40は、メンバーの数が同じ(=3)だろうと推測される。 x41は「人数=2人」という性質を持っているので、x40全体の人数としては、2人×3=6人だろうという推測が導かれる。 ← x21|e61 「onm+1|X」が成り立ち、onm+1がonmの均質なメンバーであるならば(つまり、言及されている特性を共有する)ならば、「onm|X」も成り立つ、とする。 79 79 79

80 分配読みとソ系列指示詞 [3人の男の子]2が[2人の女の子]4をパーティに誘った。 [その女の子たち]4は、みんな喜んでいた。
[3人の男の子]2が[2人の女の子]4をパーティに誘った。 [その女の子たち]4は、みんな喜んでいた。 Numerationの段階では上付き数字は原則的に「0」でしかないと仮定すれば、このanaphoric relationには、何も特別な説明は要らない。 80 80

81 第7章:いわゆる量化表現について 81

82 VV表現  「大多数の/過半数の/ごく一部の/半分の/55%の」などの表現は、従来、しばしばquantificational expressionと呼ばれてきた。 しかし、あらためて考えてみると、これらの表現は、「「母集団となるオブジェクト」の「メンバー」の「数量」のvalueに対応した表現である。 つまり、value の value に相当しているので、VV表現と呼ぶことにする。 82 82

83 VV表現の解釈 むしろ、このv2を定義づけているのは、e3のAgentであるという特性である。 クラス1の過半数2が賛成した3
x1 [類 :クラス] v2 [人数 :過半数( )]|x1 e3 [類 :賛成した ; Agent :v2] この「|」の1つの解決: x1 [類 :クラス ; _ :v2] むしろ、このv2を定義づけているのは、e3のAgentであるという特性である。 x1 [類 :クラス ; Agent(e3) :v2] v2 [人数 :過半数( )] つまり、「クラス」の中の「賛成した」メンバーをよりだす効果を持つのが、VV表現である。 ←このattribute は何か? 83 83

84 V表現としての「3人」とVV表現としての「3人」
 3人1が来た2 V表現の場合(いわゆるcardinalの読み): x1 [人数 :3] e2 [類 :来た ; Agent :x1] VV表現の場合(いわゆるpartitiveの読み): a. v1 [人数 :3] e2 [類 :来た ; Agent :v1] b. x1G [類 :人 ; Agent(e2) :v1] x1G|e2 VV表現の場合のx1Gとは、v1がメンバーとなる母集団として想定されたグループであり、(b)はlinguistic SRには含まれない。linguistic SRには含まれないものの、VV表現である限り、その存在が前提となるものであり、文全体がこのx1Gについての叙述であるという含意を持つ。 84 84

85 VV表現だけでは母集団を指示しない それにひきかえ、この学校では、たった2%の学生しか応募しなかった。あの子たちは、まだ一年生で、チャレンジさえすれば可能性があったかもしれないのに、惜しいことをした。 それにひきかえ、この学校では、たった2%の学生しか応募しなかった。その子たちは、まだ一年生で、チャレンジさえすれば可能性があったかもしれないのに、惜しいことをした。 cf. この学校の学生たちは、初めからあきらめており、たった2%の学生しか応募しなかった。その子たちは十分に能力があるので、チャレンジさえすれば可能性があったかもしれないのに、惜しいことをした。 割合を示す表現も、意味計算のためには母集団の情報が必要だということが指摘されてきた。しかし、それが統語的に表されているかどうかということは別問題である。 85 85 85

86 v型の機能範疇「か」 「か」 a. [誰が本を買ったか] ジョンが 知りたがっています。
b. ジョンは [誰が本を買ったと] 思っていますか。 a.*[ジョンが本を買ったか] 誰が 知りたがっています。 b. *誰が [ジョンが本を買ったか] 知りたがっています。 「か」 不定語「誰/何/どの~」等は、格助詞が直接後続している場合、その指標をQに付与しなければならないとする。 Lexicon か(Q) syntax かn(Qm) ...mはc-command領域内の要素の指標 SR式 vn=om ただし、このままでは、v型のSR式の型式に合わないので、vn=attribute (object) という形に変換しなければならない。 86

87 v型のSR式を派生させる ジョン1が 知っている6(Theme , Agent ) 5 1 か5(Q ) 2 誰2が 本3を
x1 [名称 :ジョン] x2 [類 :人] x3 [類 :本] e4 [類 :買った ; Theme :x3 ; Agent :x2] x2=Agent(e4) v5=Agent(e4) e6 [類 :知っている ; Theme :v5 ; Agent :x1] v5=x2 87 87

88 英語の[+wh] Comp John1 knows6(Theme , Agent ) 5 1 φ5(Q ) 2 who2 t2
bought4(Theme , Agent ) books3 3 2 x1 [名称 :John] x2 [類 :person] x3 [類 :books] e4 [類 :bought ; Theme :x3 ; Agent :x2] x2=Agent(e4) v5=Agent(e4) e6 [類 :knows ; Theme :v5 ; Agent :x1] 88 88 88

89 V表現から v型のSR式へ 「か」の場合と同様に、V表現から派生的に v型のSR式が生まれることがありうる。
[勝った1人]2を当てます3 (≒誰が勝ったか当てます) straight SR: x2 [類 :人 ]|e1 e1 [類 :勝った ; Agent :_] e3 [類 :当てます ; Theme :x2 ; Agent :_] derived SR: x2G [類 :人] v2=Agent(e1) e3 [類 :当てます ; Theme :v2 ; Agent :_] v2をその一部分とする母集団オブジェクト 89 89

90 連動読みはどのように表されるのか a. Every student loves his mother.
b. *His mother loves every student. a.  Who loves his mother? b.  *Who does his mother love? a. かなりの数の自動車会社が [そこの子会社]を 推薦した b. *[そこの子会社]が かなりの数の自動車会社を 推薦した 90

91 もともと同じ指標を持っているのか? [Every1 student2 [loves31(Th41, Ag21) his21 mother41]]5 v2 [類 :student ; _=every] e31 [類 :love ; Theme :v41 ; Agent :v21] v41=mother(v21) [v2|e31]5 一応、このSRで、v2というグループの任意のメンバー(v21)について v21 loves v21's mother という関係が成り立っていることは表せている。 しかし、→ 91

92 同じ指標を持っているとする分析の問題点 省略構文における sloppy reading でも同じ関係が関わっていることが明らかになっている。
John [VP washed his car]. I want Bill to [VP φ ], too. この場合、第1文のLF表示との同一性が必要であるにもかかわらず、第2文では his car を Bill's car と解釈することができる。 したがって、やはり、依存語は、Numerationの段階から指標を持っているのではなく、構造の中で定められると考えるべきである。 92

93 依存語の分析 依存語は、その指標にβという素性が伴ってくるとする。 素性βに関わる解釈規則:
β付きの指標を持つ要素αは、v型のSR式になり、その要素αを含むPredicate の Subject を先行詞とする。 つまり素性βを持つ要素αが e21 に含まれる場合、次のような関係が成り立っていれば、そのαの先行詞は x11 となるが、 x11|e21 v型のSR式にならなければならないため、6章で見たのと同様の操作が行われる。 93

94 SRの派生 (ここまで捨象してきたが)ガ格が認可されるためには、VPの中にとどまっていてはならない。(高井 2009:九大博論)
φ7(6, ) 2 かなりの数1の 自動車会社2, P3が そこ4βの 子会社5を 推薦した6(Th5,Ag2) (ここまで捨象してきたが)ガ格が認可されるためには、VPの中にとどまっていてはならない。(高井 2009:九大博論) 94 94

95 SRの派生 φ7(6, 2) そこ4βの 子会社5を 95 3 かなりの数1の 推薦した6(Th5,Ag2) 自動車会社2が
自動車会社2, P3が φ7(6, 2) 95 95

96 SRの派生 Partitioning [数( )=かなり]1 v2 [類 :自動車会社]|1
3 Partitioning かなりの数1 の 自動車会社2 が φ7(6, 2 ) 1 1 1 そこ4βの 1 推薦した6 (Th5,Ag2) 1 1 1 子会社5 を 1 [数( )=かなり]1 v2 [類 :自動車会社]|1 v4β1 v51=子会社( )|4β1  e61 [類 :推薦した ; Theme :v51 ; Agent :v21] [v21|e61]71 [v2|r71]3 →  v2 [類 :自動車会社 ; 数 :かなり] →  v51=子会社(v4β1) 96 96

97 SRの派生 Partitioning v2 [類 :自動車会社 ; 数 :かなり] v51=子会社 (v4β1)
かなりの数1 の 自動車会社2 が 1 1 1 φ7(6, 2 ) そこ4βの 1 子会社5 を 1 推薦した6 (Th5,Ag2) 1 1 1 v2 [類 :自動車会社 ; 数 :かなり] v51=子会社 (v4β1) e61 [類 :推薦した ; Theme :v51 ; Agent :v21] [v21|e61]71 [v2|r71]3 (Agent(e61)) v4β1を含むPredicateのSubjectで単数のものは、v21 ∴ v4β1=v21=Agent(e61) 97 97

98 Local Disjointness Effects
Reinhart 1983, Higginbotham 1983, Hoji 1997, 1998 等で、この依存関係が coargument (=同じ動詞の項同士) の間で成り立ってはいけない、ということが示されてきた。 ※ いわゆる束縛原理Bの名の下に記述されてきた現象のことかと思うかもしれないが、厳密には、それでは適切ではない。詳しくは、Hoji, Hajime (1998) "Formal Dependency, Organization of Grammar, and Japanese Demonstratives," Japanese/Korean Linguistics, vol.7, pp を参照のこと。 ただし、ここでは便宜上、「*John recommended him.」で例示する。 98

99 βがcoargument に依存した場合 John1 recommended2(Th3β, Ag1) him3β linguistic SR
x1 [名称 :John] e2 [類 :recommended ; Theme :x3β ; Agent :x1] x1|e2 β素性の解決 x3β=x1=Agent(e2) これを上の式に代入すると: e2 [類 :recommended ; Theme :Agent(e2) ; Agent :x1] となり、自ら(e2)の特性記述の中で、自分(e2)に言及することになる。Principle Bとは、このような自己言及の事態を禁じるものなのではないだろうか。 99

100 coindexation vs. linking
Principle B を指標の分布の制限と仮定してしまうと、直接には依存関係のない coargument 同士の指標も制約を受けることになりかねないが、この分析ならば、その問題もない。(cf. Higginbotham 1983、Heim 1998、Hoji 2003 等) 次のような構文で QP1 ... [ ... NP2β ... NP3β ... V4] ... V5 NP2βとNP3βの両方がQP1と連動している場合でも、V4のSR式は、たとえば次のようになるだけであり、 e4 [類 :V ; Theme :Agent(e5) ; Agent :Agent(e5)] 自己言及は起きないからである。

101 ま と め 101

102 言語表現のタイプ 分類 略号 型式 x型 e型 p型 vx型 v型 機能範疇 F r型 〈V表現〉 value に対応する表現
VRx x型 コト(e) VRe e型 [記述(D)機能] (構造で指定された)指示物の特性を記述する VD p型 〈VV表現〉 [指示(R)機能] オブジェクトのvalue(=オブジェクトのメンバー)を「指示」する VVR vx型 〈A表現〉 attribute に対応する表現 [指示(R)機能] value を指示する value がオブジェクト ARx v型 ARe value がオブジェクト以外 コトバ ARl 数字 ARn 度合い ARd 機能範疇 [記述(D)機能] =や|で2つの要素の関係を記述する F r型

103 構造的意味関係 Computational Systemにおける構造構築によって形成される構造的意味関係 Chomsky : ここでの提案:
(i) modification (ii) predicate-argument (iii) operator-variable ここでの提案: (i) modification, (ii) predicate-argument, (iii) predication ... これまでの QR, c-command condition で説明してきた現象、および、focus 等に関わる「shadow sentences」の生成の基盤となる関係 103

104 Merge による predication 形成
メアリ1は φ4(3, 1) φ1 うどん2を 食べた3(Th2, Ag1) linguistic SR x1 [ 名称 :メアリ] x2 [ 類 :うどん] e3 [ 類 :食べた ; Theme :x2 ; Agent :x1] [x1|e3]4 ←この場合、すでに aboutness 関係が成立しているので、これ以上のアブダクションは必要ない。 104 104

105 機能範疇と Move による predication形成
メアリ1は φ4(3, 1) t1 うどん2を 食べた3(Th2, Ag1) linguistic SR x1 [ 名称 :メアリ] x2 [ 類 :うどん] e3 [ 類 :食べた ; Theme :x2 ; Agent :x1] [x1|e3]4 ただし、argumentは、すでに argument structure の中に「Merge の痕跡」を残しているので、少なくとも解釈の面からは、trace を残す必要はない。 105 105

106 素性 Pn によるpredication形成
3 LF ..... α1 α1,P3 β2 linguistic SR ○1 [ ... α ...] ○2 [ ... β ...] [○1|○2]3 106 106

107 英語における predication形成 日本語:Mergeの段階から2つの項をとるものと、Mergeの段階には1つの項をとり移動によって2つ目の項を得るものと、両方がある。 英語:Mergeの段階では、1つの項しかとることができず、移動を伴わなければ predication が形成できない。 107 107

108 複数のSR式で表す意味表示 これまで「量化表現」とみなされていたものも、指示表現とみなす。
これまでquantifierの活用によって行ってきた効果が別の方法で達成されさえすればよい。 quantifier を仮定する場合は、そのスコープを表示するために文の意味表示が単一の式である必要があったが、quantifier を仮定しないのならば、その必要もない。 その結果、それぞれのterminal nodeごとに、どのようなオブジェクトがどのように関わっているか、ということを読み取ることができるようになった。 108 108


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