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SEM/EDXによる 大気エアロゾルの性状分析

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Presentation on theme: "SEM/EDXによる 大気エアロゾルの性状分析"— Presentation transcript:

1 SEM/EDXによる 大気エアロゾルの性状分析
交通電子機械工学課程        根津 拓史        吉田 健一郎

2 発表内容 1 研究の背景と動機 2 大気エアロゾルについて 3 電子顕微鏡用のエアロゾルサンプルの捕集 4 観察と元素分析について
1 研究の背景と動機 2 大気エアロゾルについて 3 電子顕微鏡用のエアロゾルサンプルの捕集 4 観察と元素分析について 5 結果と考察 6 まとめ 7 謝辞

3 1 研究の背景と動機 ・現在、都市化、工業化の地球規模への拡大に伴い、人工起源の大気エアロゾル(浮遊微粒子)が大量に排出されている。
1 研究の背景と動機 ・現在、都市化、工業化の地球規模への拡大に伴い、人工起源の大気エアロゾル(浮遊微粒子)が大量に排出されている。 ・加えて、砂漠地帯の拡大などの自然環境の変化に伴い、黄砂のような自然起源の大気エアロゾルにも強い関心が集められている。 ・大気エアロゾルは、大気の放射収支や気象に影響を与えるといわれており、それらの変動を予測するには、大気エアロゾルの影響を知る必要があり、その化学的、光学的特性を知る必要がある。 ・大気エアロゾルに含まれている元素の成分、形状、性質を分析することは、エアロゾルの特性を知る基礎となる。  現在、都市生活、工業活動の全地球規模への拡大により、人工起源の大気エアロゾルが大量に排出されています。さらに近年では、砂漠地帯の拡大などの自然環境の著しい変化に伴い、自然起源であるエアロゾルにも強い関心が集められてます。  大気エアロゾルは大気の組成や放射収支に影響を与えるといわれています。 そのため、これらの変動を予測するには、大気エアロゾルがどのように、またどの程度の影響を与えるのかを知る必要があり、そのためにエアロゾルの化学的、光学的特性を知る必要があります。したがって、大気エアロゾルの形状、性質、その元素成分を調べることで、大気エアロゾルの特性を知る基礎となります。 本研究では、走査型電子顕微鏡を用いて大気エアロゾルの観察および元素分析を行いました。

4 2 大気エアロゾルについて 粒径 自然起源 人工起源 質量濃度 0.1 1.0 10 ・エアロゾルの大きさは数nmから10μmとされている。
2 大気エアロゾルについて 粒径  自然起源 人工起源 質量濃度 0.1 1.0 10 ・エアロゾルの大きさは数nmから10μmとされている。 この図は大気エアロゾルの粒径を質量濃度で表したものです。横軸が粒径の大きさ、縦軸が質量濃度をあらわしています。質量濃度とは大気エアロゾルの全質量のうち、その大きさの粒子が占める割合を示したものです。尚この図は傾向を表したもので縦軸のスケールは示していません。粒径を質量濃度でみると、約1.0μmを境に2つのピークをもちます。このとき小さいほうがおよそ人工起源、大きいほうが自然起源のエアロゾルに相当します。 自然起源の粒子には土壌粒子や海塩粒子などがあり、人工起源の粒子には、排ガスなどに含まれている硫酸粒子や硝酸塩粒子などがあげられます。 実際にはそれぞれ単物質ではなく、さまざまな物質が混合しています。 ・自然起源の粒子 ⇒ 土壌粒子、海塩粒子など  人工起源の粒子 ⇒ 排ガスに含まれている硫酸(塩)粒子                 や硝酸塩粒子  

5 ・自然起源の粒子 [アルミニウム、シリコン、鉄、カリウム、 カルシウム、マグネシウム]などで構成。 [ナトリウム、塩素]などで構成
   土壌粒子・・・・・・土壌から発生した鉱物性の粒子。      [アルミニウム、シリコン、鉄、カリウム、         カルシウム、マグネシウム]などで構成。    海塩粒子・・・・・・海面から発生した粒子。      [ナトリウム、塩素]などで構成 自然起源である土壌粒子は土壌から発生した鉱物性の粒子で、代表的なものが黄砂です。含まれている基本元素はアルミニウム、シリコン、鉄、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどで構成されています。 海塩粒子は海面から発生した粒子で、塩化ナトリウムであるナトリウムと塩素で構成されています。

6 3 電子顕微鏡用の エアロゾルサンプルの捕集 メッシュについて 0.127mm 3㎜ 電子顕微鏡像 コロジオン膜200メッシュ
3 電子顕微鏡用の エアロゾルサンプルの捕集 メッシュについて 0.127mm 3㎜  本研究ではエアロゾル粒子の捕集のため、コロジオン膜200メッシュというフィルターを使用しました。左図がメッシュの実物で右図が実際捕集した微粒子を電子顕微鏡で観察したときの映像です。  銅のメッシュの上に薄いコロジオン膜という吸着性のある膜が貼られており、粒子はこの膜に捕集されます。  メッシュの直径は3mmと非常に小さく、200メッシュという意味は、1インチ25.4ミリの1/200の大きさが穴の中心の間隔ということで、その大きさは0.127mmです。 コロジオン膜200メッシュ 電子顕微鏡像

7 インパクター捕集装置について 空気の流れ ここにメッシュを設置 ここで粒子は一気に加速する
実際の捕集は、インパクター捕集機器にメッシュを設置して捕集をおこないました。 右図の写真がインパクターの現物で、粒子を大きさごとに分別できる仕組みになってます。 インパクター内部に進入した粒子は気流に乗り、図の赤線のような軌道を通って進行します。 インパクター内部の穴が絞られてくるにしたがって粒子は加速され、微小な粒子は気流に乗り進行方向を変えメッシュをよけることができますが、慣性の大きい巨大な粒子は気流から逸脱してメッシュに吸着されます。 実際の捕集は重力の影響があるため、インパクターは水平に設置しました。  本研究では赤丸がついているステージナンバー4という2μm以上の粒子が捕集できるステージで捕集されたサンプルを顕微鏡で観察、分析しました。 ここで粒子は一気に加速する ここにメッシュを設置

8 捕集日時と大気の状況 捕集場所 東京海洋大学 新2号館屋上
  捕集場所  東京海洋大学   新2号館屋上   2000年から2001年3月までの計4回、一回の捕集は、流量約1.0L/minで手動で5分間行われた。 本学の新2号館屋上で、2000年から2001年3月までに、黄砂時、海風時について計4回捕集しました。 (1回の捕集は、空気の流量は毎分1Lで手動で5分間のため必ずしも一定ではありません。) その4回の捕集が行われた日は、夏、海風が吹き(本学の立地条件から)海塩粒子が多いと予測されたときや、他の光学観測装置等で、顕著な黄砂現象が観測されたときです。 捕集日時と大気状況

9 4 観察と元素分析につい 走査型電子顕微鏡(SEM)について 透過型電子顕微鏡 走査型電子顕微鏡 電子源 電子ビーム 電子レンズ
4 観察と元素分析につい 走査型電子顕微鏡(SEM)について 電子源 電子ビーム 電子レンズ (コンデンサ) 走査コイル 偏向走査コイル 試料 対物レンズ (走査) 2次電子検出器 試料 投射レンズ 電子顕微鏡には透過型電子顕微鏡、TEMと呼ばれるものと、走査型電子顕微鏡、SEMという代表的な二つの顕微鏡があります。TEMとの大きな違いは、SEMは電子源から発射した電子ビームを走査して試料にあて、試料から生じた2次電子情報を検出し、画面に映し出すのに対して、TEMは試料を透過してそのままスクリーンに像を結びます。 本研究では右図のSEMを使用しました。  SEMの観測原理は、真空中でフィラメントを熱することにより電子ビームを発生させます。発生した電子ビームを電子レンズで細く絞ったのち、偏向走査コイルで試料上を走査します。電子ビームが当たると、試料表面から2次電子が発生します。  発生した2次電子は、電子顕微鏡に内蔵された2次電子検出器で捕らえられ、(光に変換され、)光電子増倍管で増幅されディスプレイ上に表示されます。 ブラウン管 蛍光スクリーン ブラウン管 CRTスクリーン 透過型電子顕微鏡 Transmission Electron Microscope 走査型電子顕微鏡 Scanning Electron Microscope

10 蒸着・・・・・カーボン棒を、溶解蒸発することに よって、薄い膜でメッシュを覆うこと。 理由・・・・・捕集された粒子を固定するため。
 蒸着について 蒸着・・・・・カーボン棒を、溶解蒸発することに        よって、薄い膜でメッシュを覆うこと。 理由・・・・・捕集された粒子を固定するため。        電子顕微鏡(SEM)で観察する際に電       子が試料に集まりすぎることによって       負の電荷を帯びてしまい、電子が反       発しないようにメッシュに導電性をも       たせるため。 蒸着とはカーボン棒を溶解蒸発することによって、薄い膜でメッシュを覆うことです。 理由は捕集された粒子を固定するためと、電子顕微鏡(SEM)で観察する際に電子が試料に集まりすぎることによって負の電荷を帯びてしまい、電子が反発しないようにメッシュに導電性をもたせるためです。 (電子が反発して、電子ビームが試料に当たらないと、2次電子が発生しないので、測定ができなくなる)

11 エネルギー分散型X線分光法(EDX)について
    EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy    ・波長分散型X線分光法     WDX:Wavelength Dispersive X-ray spectroscopy 元素から放出されるX線は、それぞれ固有のエネルギーをもっている。   試料から発生するX線を検出することによって、含有元素を特定する。 元素分析のため、X線分光法を用いました。 X線分光法は試料から発生するX線を検出することによって、含有元素を特定する方法です。 元素から放出されるX線は、それぞれ固有のエネルギーをもっています。 X線分光法には、二つの方法がエネルギー分散型X線分光法と波長分散型X線分光法があります。 EDXは発生したX線のエネルギーから、 WDXは波長から元素の同定を行うものです。 本研究では、EDXを使用しました。

12 電子ビームを照射することによって生じる 2次電子と特性X線
入射電子 特性X線 2次電子  入射電子が試料原子の軌道電子にあたると、そこにあった電子が2次電子として飛び出し、空位が生じます。生じた空位をより高いエネルギー準位の電子に補われたときに、両軌道のエネルギー差の大きさのX線が発生します。このとき、各元素は固有のエネルギーのX線を発生します。このX線を特性X線と呼びます。したがってこのX線のエネルギーを知ることで元素を知ることができます。  (K殻にできた空位に、隣のL殻から補われたとき発生するスペクトラムはKα線、M殻からの場合はKβ線などといいます。)   電子ビームを照射することによって生じる      2次電子と特性X線

13 EDXによる定性分析例 (カウント数)/(測定時間) エネルギー(KeV)
横軸が元素に対応した、特性X線のエネルギーを示しており、縦軸が特性X線を感知したカウント数です。本研究では分析時間85秒から95秒間で分析を行いました。 単純に、含まれる元素が多ければ、特性X線の発生も多くなることが予想され、カウント数も多くなると考えられますが、この状態では定性的な分析のみで、定量的なことは言い切れません。 この図ではカルシウムのKα線、Kβ線、シリコンのKα線、鉄のKα線、アルミニウムのKα線が検出されていて、 基本的な鉱物性成分を含んでおり、土壌粒子であると推測できます。 エネルギー(KeV)        EDXによる定性分析例

14 実際の測定、分析の流れ 粒子を捕集 カーボン蒸着 SEMによる形状の観察、撮影 EDXによる元素成分の分析
 実際の測定、分析の流れ 粒子を捕集 カーボン蒸着 SEMによる形状の観察、撮影 EDXによる元素成分の分析 ・各サンプルに対してフィルター上の粒子の中から無作為に20 から30個の粒子を選択した。 ・メッシュが銅製のため、元素分析で検出された元素のうち銅は除外した。 実際の本研究での測定、分析の流れを示します。 捕集された各サンプルをカーボン蒸着し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)で粒子の形状を観察、撮影した後、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)によって、元素成分の分析を行いました。 各サンプルに対してフィルター上の粒子の中から無作為に20から30個の粒子を選択しました。 また、メッシュが銅製のため、元素分析で検出された元素のうち銅は除外しました。

15 5 結果と考察 ・EDXによって検出された、粒子の元素成分 ・黄砂粒子が大陸から輸送されてくる際に起こる変質や海塩粒子との内部的な混合状態
5 結果と考察 ・EDXによって検出された、粒子の元素成分 ・黄砂粒子が大陸から輸送されてくる際に起こる変質や海塩粒子との内部的な混合状態 ・海塩粒子の変質と土壌粒子との内部的な混合状態 ・観察された粒子の形状とライダー・データによって示される非球形性との比較 ・・・・ということに注目し、以下それぞれ示していきます。  (などという)

16 SEM画像 例1 (2000年7月24日 海塩粒子) これは、SEMによる電子顕微鏡画像です。
粒子はメッシュに均一に捕らえられるのではなく、数ケ所に、集中して存在しています。

17 SEM画像 例2 (2000年4月9日 黄砂粒子) 50μm 2~3μm これも、分析中に撮影した、SEM画像例です。
これは黄砂粒子ので、このように2~3μmほどの非常に小さな粒子について分析を行いました。 (左上にあるものはその大きさや形状からゴミかなにかでしたが、これに比べ分析を行った粒子がどれだけ小さいものだったか、ということをとてもよく表しています。) エアロゾル粒子は上限は、(沈降速度の関係から)10μmと言われており、左上にあるようなものは、その大きさや形状からゴミかなにかであると判断しました。 50μm

18 黄砂時の粒子の元素構成 黄砂時ーⅠ(2000年4月9日) 黄砂時ーⅡ(2001年3月6日) 黄砂粒子ーⅡ(2001年3月6日)
“EDXの定性分析によってわかった黄砂時の粒子の元素構成”です。 左の表が“黄砂時-Ⅰ”の粒子の元素構成で、右の表が“黄砂時-Ⅱ”の粒子の元素構成です。 右の“黄砂時ーⅡ”では、NaやClも含んだ粒子が多く、NaやClを含むのは、海塩粒子と混合していることも考えられることから、水色に色分けしてみました。 黄砂時ーⅡ(2001年3月6日)

19 黄砂時ーⅠと黄砂時ーⅡの元素の検出頻度 10個/12個 このグラフは、“黄砂時の元素構成”の表を元に、黄砂時の粒子における“元素の検出された頻度”を表しています。 黄色(の棒グラフ)が“黄砂時ーⅠ”、オレンジ色(の棒グラフが)“黄砂時ーⅡ”です。 “元素の検出された頻度”とはつまり、 各元素において、分析した全粒子数中、その元素を含んでいた粒子数としました。 (例えば、Si(シリコン)について。 黄砂時-Ⅰは、全部で12個の粒子のうち、10個 Si(シリコン)を含む粒子があったので、10/12より83%というように表されます。) *簡単に含まれている元素を示す。(Al,Fe,Ca,Mgなど、土壌成分が多く、開園成分は少ないなど)

20 海風時ーⅠの元素構成 2000年7月24日 (13:18~13:23) (“EDXの定性分析によってわかった海塩時の粒子の元素構成”です。)
この表は、海風時-Ⅰの粒子の元素構成です。 海塩粒子の主成分であるNa(ナトリウム)とCl(塩素)が検出された粒子は水色で示されています。 この海風時-Ⅰの粒子はほとんどが、 NaとClを含んでいることがよく分かります。 2000年7月24日 (13:18~13:23)

21 海風時ーⅡの元素構成 2000年7月24日 (13:35~13:40) この表は、海風時ーⅡの粒子の元素構成です。
海風時 ーⅠと同様に、海塩粒子の主成分であるNa(ナトリウム)とCl(塩素)が検出された粒子は水色にしました。 海風時ーⅡ -Ⅱは、海風時ーⅠよりも、 NaとClが含まれている粒子が少なく、半分ほどでした。 (海塩粒子のⅠとⅡの元素構成を表したこの2つの表を元に、海塩粒子において検出された元素の頻度もグラフにしてみました。) 2000年7月24日 (13:35~13:40)

22 海風時ーⅠと海風時ーⅡの元素の検出頻度 “海風時のⅠとⅡの元素構成”から、海風時の粒子における“元素の検出された頻度”をグラフ化したものです。 水色の棒グラフが“海風時ーⅠ”、青い棒グラフが“海風時ーⅡ”です。 このグラフより、今回分析を行った海風時の粒子は、海塩粒子の主成分であるNa(ナトリウム)やCl(塩素)の他、 Si(シリコン)やCa(カルシウム)をよく含んでいますが、 反対にAl(アルミニウム)とFe(鉄)は非常に少ないことがよく分かります.

23 黄砂時と海風時の元素の検出頻度 このグラフより、Si(シリコン)やCa(カルシウム)などは、黄砂時の粒子・海風時の粒子、共によく含まれていたことが分かります。 しかし、Al(アルミニウム)やFe(鉄)は、黄砂時の粒子には多く含まれているのに対し、海風時の粒子にはほとんど含まれていなかったことがわかります。

24 元素の個数割合(土壌系成分と海塩系成分の混合)
そこで、土壌系の成分と海塩系の成分がどれだけ混合しているのかを一目で見れるように、このようなグラフにしてみました。 土壌系の元素は[Si・Al・Fe]、海塩系の元素は「NaとCl」で組み合わされる、“元素の組合せ”を考えてみました。 まず、①[黄色]は、[Si・Al・Fe]の元素を含むが、ClやNaは含まない粒子を表し、 ②[オレンジ]は、[Si・Al・Fe]の元素に加え、Clも含むが、Naは含まない粒子を表し、 ③[緑]は [オレンジ]とは逆に、[Si・Al・Fe]の元素に加え、Naも含むが、Clは含まない粒子を表しています。 そして、④[Si・Al・Fe]の元素に加え、NaもClも含んでいた粒子を[アクアグリーン]にしました。 ⑤海塩粒子の主成分のNaとClだけで構成される粒子は[水色]に、 ⑥Na・Clに加え、他にも元素を含む粒子は[青]くしました。 また、以上の組合せの、どの組合せにも当てはまらない元素構成を持つ粒子は、ただ「only others」として、[ピンク]にしました。 すると“黄砂時の粒子ーⅠ”は、ClもNaも含まずに[Si・Al・Fe]を含む粒子が非常に多かった(というより80%以上だから、ほとんど)ということがよくわかります。 また“黄砂時の粒子-Ⅱ”は、①と②の土壌系の成分から構成される粒子と、海塩系の成分から構成される粒子(③)とがほぼ半々だったのが大きな特徴でした。 海風時の粒子についてですが、“海風時の粒子ーⅠ”は、ほとんどが土壌系成分だった“黄砂時の粒子ーⅠ”とはまったく正反対に、ほとんどが海塩系の成分を持つ粒子でした。海塩系の成分の組合せ⑤と⑥に、④も加えて考えると、海塩系成分を含む粒子は80%いじょうになることが分かります。 (“海風時の粒子ーⅡ”は、⑦番の「only others」という色を[ピンク]で示した、共通性を持たないような元素の組合せからなる粒子が40%と非常に多くなってしまったが、この⑦番を抜かせば、やはり海塩系成分を持つ粒子が大きな割合を占めることが分かります。)

25 2000年4月9日(黄砂時ーⅠ)のライダー観測データ(532nm)
サンプリングと同時に、“ライダーという観測機器”によって得られていた2000年4月9日(黄砂時ーⅠを捕集した日)の観測データです。 ライダーとは、(大気中にレーザー光を照射し、大気中に微小粒子に後方散乱されて戻ってきた光を受光して信号を得ることによって大気中に存在する粒子の鉛直情報と、性質などを知ることができる「観測機器」です。) 左の図は、微小粒子による後方散乱(の減衰?)を示しています。 これから、高度2km以下に大量の微粒子が浮遊していることがわかり、 つまり、この日は“黄砂が飛来してきたときの典型的な大気の状況であった”といえます。 一方、右の図は、偏光解消度というものを表しています。 偏光解消度とは「粒子の非球形性を示す尺度になる値」のことをいい、 つまり「偏光解消度」が高ければ、「粒子が非球形(球の形をしていない)だった」ことになります。 ここでは、サンプリング(捕集)を行っていた時間をみてみると、 (色が)「緑」~「青」ぐらいで、(下の目盛りから、) つまり、この日の偏光解消度は「20%弱ぐらい」でした。 黄砂の一般的な偏光解消度は「10~30%」なので、この観測データからは、この日の粒子は 非球形な黄砂粒子(まん丸くはない黄砂粒子)だったと考えられます。 そこで、今回の研究で得られたSEM画像(写真データ)を見て、実際に捕集された粒子が非球形であるのかどうか(まん丸くはないのかどうか)、考察してみます。 サンプリング 顕著な黄砂時---非球形な鉱物粒子高い偏光解消度を生ずる

26 黄砂時ーⅠのSEM画像 こちらが実際に観察した(捕集された)黄砂時-Ⅰの電子顕微鏡写真です。 UPしてみると・・・!!!(⇒次のページ)

27 黄砂時ーⅠのSEM画像(UP) 黄砂粒子ーⅠのSEM画像(電子顕微鏡でとった画像)です。
ということが、よりわかりやすく示された画像です。

28 2000年7月24日のライダー観測データ(532nm) (海風時ーⅠ&海風時 ーⅡ)
これも“黄砂時のライダーのよる大気の観測データ”と同じように、“海風時ーⅠとⅡを捕集した日に関するライダーによる観測データ”を示しています。 (そして、これも同じように偏光解消度が高かったことを示しており、それより非球形であることも同じように予想さ れるので、海塩粒子のSEM画像と比較してみます。) サンプリング 夏、海風の卓越するとき偏光解消度の高くなる原因は海塩or土壌粒子?

29 海風時ーⅠのSEM画像 これは、海塩粒子について撮ったSEM画像でも少しひいて撮った画像です。
ピントが余りあっていませんが、不規則な形をした粒子が捕らえられています。

30 海風時ーⅡのSEM画像 この電子顕微鏡写真はUPです。 大きさが、黄砂粒子よりもさらに小さいために、やや不鮮明ではありますが、
この画像からも、海塩粒子が非球形であったことが示されました。 砕けたような粒子や、何か溶け出したような粒子があります。 (水溶性の粒子の、水分が蒸発し、含まれていた粒子が、中心の核となる大きな粒子の周辺に残った?) 特に、この粒子は、EDXによって検出された元素は、Na(ナトリウム)とCl(塩素)だけでした。 つまりこの画像は、特に海塩粒子の形状についてよく表している画像だといえます。

31 6 まとめ 黄砂時の粒子 黄砂時ーⅠ・・・比較的、混じり気のない土 壌粒子ばかりだった。
6 まとめ 黄砂時の粒子   黄砂時ーⅠ・・・比較的、混じり気のない土         壌粒子ばかりだった。   黄砂時ーⅡ・・・海塩性成分との混合がよく         見られた。 したがって、黄砂粒子は大陸からの輸送環境によって、海塩粒子などとの混合条件が左右されるのではないだろうか。 どんな輸送条件だと混合が起こるのか? 黄砂粒子は、大きさから雲の凝結核として作用する。 海塩粒子は、水溶性が強く(比較的低い湿度でも)やはり、凝結核となりやすい。 雲の中で、

32 海風時の粒子・・・海塩粒子と混合している粒 子がほとんどだった。
海風時の粒子・・・海塩粒子と混合している粒            子がほとんどだった。 ただし、海風時-Ⅱでは・・・ 海塩粒子と混合している粒子の他に、「海塩成分をまったく含まない土壌成分だけの粒子」がいくらか見られたが、これら以外の粒子は     「土壌成分と海塩成分が混合されていた粒子」 と     「土壌成分を含まなかった粒子」   大きく分かれ、その比は海風時-Ⅰ・海風時-Ⅱともにほぼ1:1で、特に違いは見られなかった。 「海塩成分をまったく含まない土壌成分だけの粒子」とは、「別の発生源から、一時的に飛来してきて捕集されてしまった土壌粒子」だったのではないか。 海塩を見るとほとんどの粒子が海塩粒子と混合しています。(土壌成分だけの粒子が少ない) 捕集地の立地条件的に 海塩粒子が多く流入しているために、 通常、観測地点上空で浮遊している土壌粒子のほとんどは海塩粒子と混合していると考えられます。 実際、土壌成分と海塩成分が混合されている粒子と海塩粒子との比は、ⅠとⅡともにおよそ1:1で等しいです。 Ⅱにおいて、土壌成分の混合されていない粒子があるが、 ライダーデータは地表表面近くの低高度で短時間で粒子が通過したような結果を示していたことも考えると、一時的にそのような粒子を含む小さな空気塊が通過したものだと考えられます。

33 実際に観察された粒子の形状は、ライダー・データから考えられる非球形性について、よく一致した形状であった。
実際に観察された粒子の形状は、ライダー・データから導かれる偏光解消度によって示される非球形性と一致

34 7 謝辞   最後に本研究にあたり、海洋電子機械工学科の村山利幸助教授に終始ご指導をいただき、深く感謝しております。    また同学科の元田慎一助教授、海事交通共同研究センターの酒井直道博士に実験装置を貸していただき、円滑に研究を進めることができ、深く感謝しております。本当にありがとうございました。       

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