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数理科学特別講義 バイオインフォマティクスにおける 確率モデル
数理科学特別講義 バイオインフォマティクスにおける 確率モデル 阿久津 達也 京都大学 化学研究所 バイオインフォマティクスセンター
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講義内容 I (基礎編) 分子生物学の基本事項 バイオインフォマティクスに必要な確率統計の基礎 配列アラインメントとスコア関数
隠れマルコフモデル EMアルゴリズム
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講義内容 II(応用編) 確率文脈自由文法とRNA二次構造予測 進化系統樹構成法 タンパク質立体構造予測 遺伝子ネットワーク推定 実習
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実習内容 配列検索プログラム マルチプルアラインメント PSI-BLASTによる検索 立体構造予測
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ゲノム研究と情報科学 ゲノム解析計画の急速な進展 情報解析の必要性 DNA配列:A,C,G,Tの4文字からなる文字列
既に数十種の微生物の全塩基配列が決定 線虫(1000細胞)、しょうじょうばえも決定 ヒトも概要配列が公開済み 情報解析の必要性 DNA配列⇔プログラムのオブジェクトコード 意味の解析が必要 DNA配列:A,C,G,Tの4文字からなる文字列 様々な情報技術が利用可能
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遺伝子と蛋白質 遺伝情報の流れ 遺伝子 ゲノム タンパク質 DNA⇒RNA⇒タンパク DNA配列中で直接的に 機能する部分
染色体全体(半数体) 遺伝情報の総体 タンパク質 アミノ酸(20種類)の鎖
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DNAとアミノ酸 DNAはA,C,G,Tの4文字の並び DNAは二重ラセン構造⇒相補鎖 塩基:DNA1文字、 残基:アミノ酸1文字
(アミノ酸は20種類)
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アミノ酸と蛋白質 アミノ酸:20種類 蛋白質:アミノ酸の鎖(短いものはペプチドと呼ばれる)
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側鎖の例
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アミノ酸コード表 Ala A アラニン Leu L ロイシン Arg R アルギニン Lys K リシン Asn N アスパラギン Met
メチオニン Asp D アスパラギン酸 Phe F フェニルアラニン Cys C システイン Pro P プロリン Gln Q グルタミン Ser S セリン Glu E グルタミン酸 Thr T トレオニン Gly G グリシン Trp W トリプトファン His H ヒスチジン Tyr Y チロシン Ile I イソロイシン Val V バリン
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バイオインフォマティクスにおける確率統計
重要なのはデータからのモデル(もしくはパラメータ)の推定 最尤法 ベイズ推定 最大事後確率推定(MAP)
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最尤推定 P(D|θ) (尤度) 最尤法 例 モデルパラメータ θ のもとでのデータ D の出現確率 P(D|θ) を最大化する θ を選ぶ
コインを5回投げて、表が3回出た後、裏が2回出た p(表)=a, p(裏)=1-a とするとP(D|θ)=a3(1-a)2 a=3/5の時、 P(D|θ) は最大 一般に表が出る頻度を f とすると a=f で尤度は最大
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ベイズ推定とMAP推定 ベイズ推定:尤度とモデル(パラメータ)の事前確率から、ベイズの定理により、事後確率を推定 最大事後確率(MAP)推定
P(D|θ)P(θ)を最大化するθを計算 P(θ)が一様分布なら最尤推定と同じ
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不正サイコロのベイズ推定 公正サイコロと不正サイコロ 6が3回続けて出た場合の事後確率 公正:P(i|公正)=1/6
不正:P(6|不正)=1/2,P(i|不正)=1/10 for i≠6 P(公正)=0.99, P(不正)=0.01 6が3回続けて出た場合の事後確率
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アラインメント バイオインフォマティクスの最重要技術 2個もしくは3個以上の配列の類似性の判定に利用
文字間の最適な対応関係を求める(最適化問題) 2個の配列長を同じにするように、ギャップ記号(挿入、欠失に対応)を挿入
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スコア行列(置換行列) 残基間(アミノ酸文字間)の類似性を表す行列 PAM250, BLOSUM45 など
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ギャップ無しアラインメントのスコア スコア:P(x,y|M)とP(x,y|R)の対数オッズ比
P(x,y|R): ランダムモデルRにおいて、配列x,yが独立に生起する確率 qa:文字aのRにおける出現確率 P(x,y|M): 一致モデルMにおいて、配列x,yが生起する確率 pab :文字ペアa,bのMにおける出現確率
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ギャップペナルティ 線形スコア アファインギャップスコア ギャップの確率的解釈 γ(g)=-gd (gはギャップの長さ、 dは定数)
dは定数) アファインギャップスコア γ(g)=-d-e(g-1) (d:ギャップ開始ペナルティ, e:ギャップ伸長ペナルティ) ギャップの確率的解釈 P(gap)=f(g)Πqxi γ(g)=log(f(g)) ギャップ長の確率の対数
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ペアワイズ・アラインメント 配列が2個の場合でも可能なアラインメントの個数は指数オーダー
しかし、スコア最大となるアラインメント(最適アラインメント)は動的計画法により、O(mn)時間で計算可能(m,n:入力配列の長さ)
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動的計画法による最適アラインメント 最長経路計算による最適アライメント DP (動的計画法)による 最長経路の計算 行列からの経路の復元は、
F(m,n)からmaxで=となっている F(i,j)を逆にたどることに行う (トレースバック)
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局所アラインメント 配列の一部のみに共通部分があることが多い ⇒共通部分のみのアラインメント (スコア:ギャップ-1、 置換-1、一致1)
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配列検索の実用プログラム(1) O(mn):mは数百だが、nは数GBにもなる ⇒実用的アルゴリズムの開発
⇒実用的アルゴリズムの開発 FASTA:短い配列(アミノ酸の場合、1,2文字、DNAの場合、4-6文字)の完全一致をもとに対角線を検索し、さらにそれを両側に伸長し、最後にDPを利用 BLAST:固定長(アミノ酸では3, DNAでは11)の全ての類似単語のリストを生成し、ある閾値以上の単語ペアを探し、それをもとに両側に伸長させる。ギャップは入らない。
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配列検索の実用プログラム(2) SSEARCH: 局所アラインメント(Smith-Watermanアルゴリズム)をそのまま実行
PSI-BLAST: ギャップを扱えるように拡張したBLASTを繰り返し実行。「BLASTで見つかった配列からプロファイルを作り、それをもとに検索」という作業を繰り返す。
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スコアのベイズ論的解釈 P(M|x,y)をベイズの定理に基づき導出 P(M):2個の配列に関連性がある事前確率
P(R)=1-P(M):ランダムモデルの事前確率 以下の式より尤度比にオッズ比を掛け合わせたものを0と比較すべきであることがわかる
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スコア行列の導出 基本的には頻度の比の対数をスコアとする BLOSUM行列
既存のスコア行列を用いて多くの配列のアラインメントを求め、ギャップ無しの領域(ブロック)を集める 残基がL%以上一致しているものを同一クラスタに集める 同じクラスタ内で残基aが残基bにアラインされる頻度Aabを計算 qa=∑b Aab / ∑cd Acd, pab=Aab / ∑cd Acd を求め、 s(a,b)=log(pab/qaqb) としたのち、スケーリングし近傍の整数値に丸める
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マルチプルアラインメント S(mi) = -∑cia log pia (cia= i列におけるaの出現回数,
3本以上の配列が与えられた時、長さが同じで、かつ、スコアが最適となるように各配列にギャップを挿入したもの スコアづけ (全体スコアは基本的に各列のスコアの和:∑S(mi)) 最小エントロピースコア S(mi) = -∑cia log pia (cia= i列におけるaの出現回数, pia = i列におけるaの生起確率) SPスコア(Sum-of-Pairs) S(mi)=∑k<l s(mik,mil) (mik = i列, k行目の文字)
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多次元DPによる マルチプルアラインメント
N個の配列に対するマルチプルアラインメント N次元DPによりO(2NnN)時間(各配列の長さはO(n)を仮定) 例:N=3
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実用的マルチプルアラインメント法 ヒューリスティックアルゴリズムの開発 プログレッシブアラインメント 逐次改善法
N次元DPは(N=4ですら) 非実用的 一般にはNP困難 プログレッシブアラインメント 近隣結合法などを用いて 案内木を作る 類似度が高い節点から低い節点へという順番で、配列対配列、配列対プロファイル、プロファイル対プロファイルのアラインメントを順次計算 逐次改善法 「配列を一本取り除いては、アラインメントしなおす」を繰り返す
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マルチプルアラインメントの 近似アルゴリズム(1)
スコアに三角不等式を仮定し、最小化問題として定義 アルゴリズム ∑k≠iS(xk,xi)が最小となるxkを求める S(xk,xi)をもとにギャップを適切に挿入し、マルチプルアラインメントA を構成
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マルチプルアラインメントの 近似アルゴリズム(2)
定理 A のSPスコア ≦ (2-2/N)・最適解の SPスコア 証明 N・Starのスコア ≦ 2・最適解のスコア (図1でNスターにより、各辺を2回ずつカバー) A のスコア ≦ (N-1)・Starのスコア (図2でx1に接続しない辺のスコアの合計はスター(N-2)個分以下)
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局所マルチプルアラインメント (Local Multiple Alignment)
複数配列と長さLが与えられた時、スコア最大となるように各配列から長さLの部分列を抽出 モチーフ(共通の性質を持つ遺伝子などに共通の部分パターン)抽出などに有用
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相対エントロピースコアのもとでの 局所マルチプルアラインメント
相対エントロピースコアの定義 fj(a): (モチーフ領域の)j列目におけるaの出現頻度 p(a): aの出現頻度(事前確率) L: モチーフ領域の長さ 実用的アルゴリズム Gibbsサンプリング, EM NP困難
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Gibbs サンプリング 各配列xjからランダムに部分配列tjを選ぶ 1個の配列xiをランダムに選ぶ
xiの部分列ti’を に比例する確率で選ぶ ti をti’ でおきかえる ステップ2-4を十分な回数だけ繰り返す ( ti[j]: 部分列ti のj列目の文字 )
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隠れマルコフモデル(HMM) ek(b) HMM=有限オートマトン+確率 定義 出力記号集合Σ 状態集合 S={1,2,…n}
akl 出力確率 ek(b) (開始状態= 終了状態= 0)
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HMMにおける基本アルゴリズム Viterbiアルゴリズム Baum-Welchアルゴリズム (EMアルゴリズム)
出力記号列から状態列を推定 Parsing(構文解析) Baum-Welchアルゴリズム (EMアルゴリズム) 出力記号列からパラメータを推定 Learning(学習)
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時々いかさまをするカジノ サイコロの出目だけが観測可能、どちらのサイコロを振っているかは観測不可能
サイコロの出目から、どちらのサイコロを振っているかを推定 6,2,6,6,3,6,6,6, 4,6,5,3,6,6,1,2 →不正サイコロ 6,1,5,3,2,4,6,3, 2,2,5,4,1,6,3,4 →公正サイコロ 6,6,3,6,5,6,6,1, 5,4,2,3,6,1,5,2 →途中で公正サイ コロに交換
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Viterbi アルゴリズム(1) 観測列(出力配列データ) x=x1…xLと状態列π=π1…πLが与えられた時、その同時確率は
P(x,π)=a0 π1Πeπi (xi)aπiπi 但し、πL+1=0 xが与えられた時の、最も尤もらしい状態列は π*=argmaxπ P(x,π) 例:どちらのサイコロがいつ使われたかを推定
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Viterbiアルゴリズム(2) xから、π*=argmaxπ P(x,π) を計算
そのためにはx1…xiを出力し状態kに至る確率最大の状態列の確率 vk(i) を計算 vk(i)は以下の式に基づき動的計画法で計算
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Viterbiアルゴリズム(3)
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EM(Expectation Maximization) アルゴリズム
「欠けているデータ」のある場合の最尤推定のための一般的アルゴリズム 最大化は困難であるので、反復により尤度を単調増加させる(θtよりθt+1を計算) HMMの場合、「欠けているデータ」は状態列
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EMアルゴリズムの導出
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EMアルゴリズムの一般形 初期パラメータ Θ0 を決定。t=0とする。
Q(θ|θt)=∑P(y|x, θt) log P(x,y|θ) を計算。 Q(θ|θt)を最大化するθ*を計算し、 θt+1 = θ* とする。t=t+1とする。 Qが増大しなくなるまで、2,3を繰り返す。
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前向きアルゴリズム 配列xの生成確率 P(x)=∑P(x,π) を計算 Viterbiアルゴリズムと類似
fk(i)=P(x1…xi,πi=k) をDPにより計算
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後向きアルゴリズム bk(i)= P(xi+1…xL|πi=k) をDPにより計算 P(πi=k|x) = fk(i)bk(i)/P(x)
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HMMに対するEMアルゴリズム (Baum-Welchアルゴリズム)
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Baum-WelchのEMによる解釈
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プロファイルHMM(1) 配列をアラインメントするためのHMM 一致状態(M)、欠失状態(D)、挿入状態(I)を持つ
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プロファイルHMM(2) マルチプル アラインメント プロファイル HMM
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