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「 会計検査院と独立財政機関 」 ~国家財政健全化のために~ 山神 裕
「 会計検査院と独立財政機関 」 ~国家財政健全化のために~ 山神 裕
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※“独立財政機関”とは ここでは、“国家の財政運営に関して、財政当局から独立して設置され、国家の予算 や決算、財政状況や中長期の財政ルール等においてはその遵守を監視・監督し、勧 告等を行える権限を有する機関“と定義する。 参考までに、国際機関による定義は以下の通りである。 OECD(2012年): 公的資金によって賄われ、法律によって行政府または議会の下に 設置された独立機関であり、政党から中立を保って監視したり分析したりし、場合によっ ては財政や業績について勧告する。 OECD(2015年): 独立した公的機関であり、財政政策及び実績について、批判的な 評価を行ったり、場合によっては非党派的な助言を行ったりすることを権限としている。 欧州委員会: 組織上、加盟国の予算当局から独立している機関または機能時に自律性 を有する機関。
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◎会計検査院の検査の対象 (会計検査院ホームページより)
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◎会計検査院の使命 (会計検査院ホームページより)
・内閣に対し独立の地位を有する憲法上の機関として、次の使命を有している。 国の収入支出の決算を全て毎年検査するほか、法律に定める会計の検査を行う。 常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ、是正を図るとともに、 検査の結果により、国の収入支出の決算を確認する。 検査報告を作成し、これを内閣に送付する。この検査報告は、国の収入支出の決算と ともに国会に提出される。 ↓ 権限さえ付与されれば、独立財政機関足り得る資格は十分に有していると考えられる。
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◎社会経済の動向等と会計検査院をめぐる状況 (会計検査院ホームページより)
我が国の財政をみると、連年の公債発行により公債残高は増加の一途をたどり、29年度末には約865兆円に達すると見込まれており、29年度一般会計予算における公債依存度は約35%、公債償還等に要する国債費の一般会計歳出に占める割合は約24%となっていて、財政の健全化が課題となっている。 このような中で、政府は、32年度までに国・地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化するという財政健全化目標の達成に向けて、経済と財政の一体的な再生を目指す28年度以降5年間の「経済・財政再生計画」を定めて、次世代への責任の視点に立って、「デフレ脱却・経済再生」「歳出改革」及び「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進するとしている。 また、国会においては、国会による財政統制を充実し強化する観点から、予算の執行結果を把握して次の予算に反映させることの重要性等が議論されている。 会計検査院は、国会から内閣に対して決算の早期提出が要請されたことも踏まえて、平成15年度決算検査報告から内閣への送付を早期化しており、これにより国会における決算審査の早期化に資するとともに、検査結果の予算への一層の反映が可能となっている。さらに、国会法第105条の規定に基づく会計検査院に対する検査要請に係る検査を着実に実施してその結果を国会に報告しているところであり、また、国会における決算審査の充実に資するために、国会及び内閣に対する随時の報告を毎年行ってきている。 このように財政の健全化が課題となっており、また、予算の執行結果等の厳格な評価・検証、国民への説明責任を果たしていくことなどが重視される中で、検査報告等により、行財政に関して国民への問題提起等を行ってきている会計検査院の役割は一層重要となっており、会計検査機能に対する国民の期待も大きくなっていると考えられる。
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◎重点的な検査 (会計検査院ホームページより)
我が国の社会経済の動向や財政の現状を十分踏まえて、主として次に掲げる施策の分野に重点を置いて検査を行う。 ・社会保障 ・教育及び科学技術 ・公共事業 ・防衛 ・農林水産業 ・環境及びエネルギー ・経済協力 ・中小企業 ・情報通信(IT) また、複数の府省等により横断的に実施されている施策又は複数の府省等に共通若しくは関連する事項に対して横断的な検査の充実を図るとともに、国民の関心の高い事項等については必要に応じて機動的・弾力的な検査を行うなど適時適切に対応する。 さらに、東日本大震災からの復興に向けた各種の施策については、一定期間に多額の国費が投入されていることなどを踏まえて、各事業等の進捗状況等に応じて適時適切に検査を行う。
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◎国家財政の状況 ・公債残高の累積 (財務省「日本の財政関係資料」より) 普通国債残高 865兆円 (平成29年度末)
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◎国及び地方の長期債務残高 (財務省「日本の財政関係資料」より)
一般政府債務残高: 1,296兆円 (平成27年度末実績) 対GDP比率: 248%
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◎純債務残高 対GDP比率: 248% (平成27年度末実績)(財務省「日本の財政関係資料」より)
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◎財政赤字拡大・累積の要因 (財務省「日本の財政関係資料」より)
◎財政赤字拡大・累積の要因 (財務省「日本の財政関係資料」より) ・赤字国債の発行から一旦脱却した平成2年度以降、歳出額は約30兆円増加したが、 うち約20兆円を社会保障関係費が占める。 税収不足による新規の国債発行と債務残高増加に伴う国債比の増加とともに財政赤字 拡大の主因とされる。
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◎基礎的財政収支 対GDP比 (財務省「これからの日本のために 財政を考える」より)
・消費税の8%から10%への引き上げが2度にわたって延期された上、財政再建への本格的な取り組みは先送りされ続けている。 その達成が疑問視されていた平成32年のプライマリーバランス黒字化の目標も、案の定先送りされた。平成30年度当初予算では赤字幅が依然として10兆円を超えており、黒字化への道は非常に厳しいままである。直近の見通しでは、その目標達成時期は2027年まで先送りされる見込みとされている。
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◎日本で財政健全化が進まない制度的要因 ・“財政ルールを遵守させるためのコミットメントが弱いこと” ・“その弱いコミットメントを高めるための予算制度上の仕組みが欠如していること”等 ↓ ・対処方法としては、 所謂財政責任法を制定し、法的拘束力の財政規律のルールや目標を策定すること、 中期財政フレームを導入し、補正予算を含めた複数年度の歳出総額 への上限設定 などが考えられる。 財政ルールが適用されても元来、政治家や政党そして官僚にはそれを守るインセンテ ィブがない。寧ろ、特に選挙前において、自らの利益を優先させるためにそれを破るバ イアス、即ち、将来の経済見通しが楽観的となり、歳出を拡大させ、財政赤字を生み出 すバイアスがかかり易い。この課題を克服するには、第三者的中立の立場から財政規 律を監視・監督する独立財政機関の設置が不可欠であると考える。
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◎独立財政機関について ・独立財政機関は、政党や財政当局から独立した機関である必要がある。 その分析や監視に政治的な意図があってはならず、客観的で高い専門性を有している ことが望ましい。 ・担う役割は国によって違いはあるが、主に、 ①経済予測 (政府予算案の前提となる客観的なマクロ経済予測の提供)、 ②政策コストの見積もり (様々な政府政策のコストの見積もり)、 ③財政の事前評価 (財政が中期的な目標に合っているかの事前評価)、 ④財政の事後評価 (財政が目標に合っているかの事後評価)、 ⑤長期持続可能性 (財政の長期的な持続可能性の分析)、 ⑥財政に関する勧告 (財政に関する規範的な勧告)
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◎独立財政機関としての会計検査院 ・会計検査院が、前述のすべての業務に対応するには相当の組織の拡充や再編が必 要になるだろうが、最も重要であると考えられる財政に関する勧告、即ち財政規律の ルールや目標の遵守状況並びに財政健全化の進捗状況のモニタリングは今すぐにで も 対応できるのではなかろうか。 平成28年度も実施された国の財政健全化への取組みに関する検査をもってすれば 十分だと考えられる。
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◎各国の独立財政機関 (田中秀明「財政規律と予算制度改革」と宮本善仁「財政健全化に向けての独立財政機関の役割」より抜粋、筆者が作成) 日本の“財政制度等審議会とは、財務相の諮問機関。2001年の中央省庁再編に伴い、旧大蔵省にあった5つの審議会を統合。予算編成はじめ、国の財政のあり方を検討する。
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◎平成28年度の国の財政健全化への取組みへの検査
・標記報告において、 “補正予算の編成が常態化。当初予算は予算の全体像を表すものではない”、 “国の財政が財政健全化の方向に向かっているかどかの判断が困難”、との指摘がされ、 平成27年度の補正予算の執行状況に関する検査においては、 “当初予算よりも補正後予算の方が公債依存度が上昇する年度が多い”、 “補正予算における財源の46.8%が公債金によって確保されている中、補正予算に計 上された予算の翌年度繰越率が高い傾向である”、 “補正予算に計上された予算の適切かつ効率的、効果的な執行に努める必要がある”、 と報告された。 補正予算の存在が財政の実態把握の上でも、財政健全化を進める上でも問題を抱えていることが示唆されている。
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◎まとめとして 国家財政が危機的状況にまで悪化している中、会計検査院においては、まずは与えられた役割と権限の範囲内で、僅かでも財政の健全化並びに再建が進捗するよう貢献されたい。 前述の通り、国家の財政規律を真に強めるためには、法的拘束力のある厳格な財政ルールの策定も必要となるが、国家の財政運営すなわち予算と決算の事前・事後の検証、結果に対する説明責任の追及、そして後年度の予算に関する勧告等の権限を付与された機関、すなわち独立財政機関が不可欠である。 より透明性の高い制度設計とするためには、新規の機関創設が望ましいと考えられる。 しかしながら、事態は急を要していることから、会計検査院が現行の機能を活かしつつ、 独立財政機関としての権限を付与されることによって、その役割を担うことができれば、事態は前進し、財政健全化に向けた確かな一歩になるに違いない。
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