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X線衛星あすかによる SMCサーベイ最終報告

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Presentation on theme: "X線衛星あすかによる SMCサーベイ最終報告"— Presentation transcript:

1 X線衛星あすかによる SMCサーベイ最終報告
R12b 横川淳(京大理) 今西健介・辻本匡弘・ 小山勝二・西内満美子・ 長瀬文昭・R. Corbet・鳥居研一 1 2 Abstract X線衛星「あすか」により、近傍銀河SMCのサーベイを完遂した。 検出された106個のX線ソースに対し、一つ一つ詳しい解析を加え、どういう種族の天体であるかを明らかにした。主な結果を以下に記す。 新パルサーを8個も発見した。 長期的強度変動を示すものがほとんど = HMXB(大質量星+中性子星の連星) 8個の電波SNRからX線を検出した。 うち5個は輝線を示す = 熱的SNR さらにそのうち3個はO, Ne, Mg等の輝線が強い = type-II超新星起源(     ) HMXBと熱的SNRは「色」でクッキリ分離できることを示した。 逆に「色」を用いて、HMXBや熱的SNRの候補を選出できる HMXBとSNR以外の天体は、大半がAGNのようだ 種族ごとの空間分布を調査した。 HMXBはmain bodyとwingに局在している SNRはHMXBとよく似ている = SNRの大半は若い星の死骸(type-II)だろう! 種族ごとの個数を銀河系と比較した。SMCは銀河系と全然違う。 SMCにはHMXBが極端に多い = 数千万年前に星生成率が非常に高かった SNRはそんなに多くない = もう少し最近になって、急に星生成率が落ちた? この辺の議論は面白いけどややこしいので、横川を捕まえて聞いて下さい X線天体の種族分類とは? 単なる博物学的趣味ではアリマセン SNRや中性子星など、明るいX線天体は「星の死骸」である。代表的なものの進化過程は右図参照:要するに、異なる星は異なるX線天体になるのである。したがって、X線天体の種族分類(“population study”)で過去の星生成活動 を探査することができる。 また、都合のよいことに、X線天体は種族ごとにX線放射の特徴が異なるので、観測的に種族を識別できる。具体的には、鉄などの輝線 (type-Ia SNR)、酸素などの輝線 (type-II SNR)、短周期パルス (Crab-likeパルサー)、長周期パルス (HMXB)、バースト (LMXB) などなど。識別のためには、高エネルギーX線に対する感度と、高いエネルギー分解能が必須である。 ターゲット:近傍銀河SMC 種族分類研究で最大の効果を上げるには、一つの銀河の無バイアスサーベイを行うのがよい。SMCは近距離、高銀緯、手頃な大きさの「X線サーベイ3拍子」を兼ね備えており、非常に良いターゲットである。 *青字は全て 明るいX線天体 大質量星の連星 一方が超新星爆発 HMXB(中性子星+大質量星) ガス 単独の大質量星 超新星爆発 単独中性子星(Crab-likeパルサー) LMXB(中性子星+小質量星) 小質量星と遭遇? 中性子星 数千万年 > 数億年 小質量星の連星 数十億年 白色矮星へ 質量降着 SNR(type-II) SNR(type-Ia) 逆にtype-Ia的なものは まだ見つかっていない 3 4 5 X線衛星「あすか」 「あすか」は、SMCのサーベイ、 X線天体の種族分類に必要十分な 性能を備えている。 特徴の異なる検出器が2種類ありますが、以下は「いいとこどり」の説明です。 0.5-10keVの結像(分解能~arcmin) 広い視野(直径50’) 高い時間分解能(~0.5s, 60msなど) → 中性子星の探査・識別、SNRのtype判別といった、ROSAT衛星では困難だった種族分類が容易にできる。 「あすか」観測領域 以下のようにモザイク状に観測を行い、全領域をほぼ覆った。 SMCのX線カラー画像 データ解析 位置決定精度 最新の位置補正 (Gotthelf et al. 2000) の後、ROSATカタログと照合した。→GIS検出器の内側直径40’の領域で精度~40”だと分かった。  従来は内側直径20’しか調べられていなかったので、大きな進歩と言える。 Timing解析(パルサー、LMXBの探査) 周期性を検出するため、ライトカーブにFFTを施した(パルサー探査)。 →17天体から周期を検出、うち8個は新発見。 ほぼ全てのパルサーは長期変動、光学対応天体を持つ(アーカイブ、文献調査より)。 →これらはHMXBだ(Crab-likeパルサーではない) 一方、LMXBに特有のバースト現象はどの天体からも検出されなかった。 →SMCにLMXBはない(あるとは言えない) スペクトル解析(SNRのtype判別など) 8個の電波SNRからX線を検出した。統計の よい5個は輝線を示していたので、熱的SNR に分類した。そのうち3個はO, Ne, Mg等が overabundantなので、type-II超新星起源 だと結論した(右図)。 その他の天体も、種族に応じたモデルで スペクトルパラメータを求め、カタログ にまとめた。 ちなみに、「いかにもブラックホール」「いかにもLMXB」のような スペクトルを示すものは見つからなかった。 青: 2-7keV 赤: 0.7-2keV 多くの青い天体と、 少数の赤い天体がある。 全部で106個(S/N>5) 稼働中のあすか(想像図) これは結構スゴイことです! SMCのパルサー発見の歴史 ☆:本研究で発見したもの ○:本研究で位置を正確に決めたもの 全天でも80個程度しかないのに、 SMCで短期間に大量に発見されている! (ちなみにLMCにもまだ8個しかない) 「パルサーラッシュ」と呼んでいます。 検出の例(~172s) SMCの可視光像 SNR (Hayashi et al. 1994) Ne O Mg Si ○:1回の観測視野 積分時間はたいてい40ks (80ksや180ksの部分も少数あり) 6 8 Discussion (1) – 種族推定の方法 ここまでの解析で、「あすか」で検出した天体を主にHMXBパルサーと熱的SNRに分類した。また、位置相関からAGNや手前の星も選別できる。しかしまだ約7割の天体は未分類である。何とかしてこれらの種族を推定したい。 よく見ると、X線カラー画像上ではHMXBパルサーはみな青く、熱的SNRはみな赤い。これは「X線カラー」による種族分類の可能性を示唆する。そこでhardness ratio (HR) という簡単な量を定義し、種族ごとにその値を調べた。 HR = (H-S)/(H+S); H, Sはそれぞれ2-7keV, 0.7-2keVのphotonカウント数 HRとLobs(吸収を補正していないluminosity)の関係を左下のグラフに示す。明らかにHMXBパルサー、熱的SNR、AGN・手前の星が異なるHRを示している(特にHMXBパルサーと熱的SNRはクッキリ分かれている)。この上に素性の不明な天体を重ね(右下図)、HMXBパルサーや熱的SNRの帯に入ったものを、その候補天体に認定した。 中間のHRを持つ正体不明天体は33個あるが、このHR領域に入る天体はAGN・手前の星以外にも、LMXB、BH、Crab-likeパルサーなどがある。しかしAGNのlogN-logS関係から、33個のうち大部分はAGNだと結論した。 Discussion (3) – X線天体の個数比較 可能な限り文献を調査し、「あすか」以外の結果(ROSAT等)も加味し、各種X線天体の個数を銀河間で比較する。SMCと銀河系の他、若干調査不足ではあるがLMCも対象とする。以下のように銀河の質量比(銀:L:S = 100:10:1)で規格化するのが、最も単純な比較方法であろう。枠で囲った部分について議論する。 HMXBの個数がSMCに極端に多い。 HMXBは数千万年前に生まれた星の死骸 → 数千万年前にSMCだけ星生成率が極めて高かったのだろう LMXBの個数はどの銀河も大差ない(SMCで特別少ないとは言えない)。 LMXBは数億年前に生まれた星の死骸 → 数億年前の星生成率は3銀河とも同じぐらいだったのだろう HMXBとSNRの比率がSMCだけ逆転している。 SNRにはtype-Ia(数億年前に生まれた星の死骸)とtype-II(数千万年前に生まれた星の死骸)の2種あるので、時代ごとの星生成活動を論じる前にtype分けせねばならない。 SMCのSNRはすべてtype-IIと仮定できる(空間分布の議論より:Discussion (2) 参照) LMCと銀河系のはよく分からないが、単純に半分がtype-IIだと仮定してみる (LMCの若いSNRは実際に半々になっている。銀河系についても、SNRの多くが銀河面に集中していることから、まあ妥当な仮定だろう) これらのtype分けの仮定から、[HMXB]/[type-II SNR]の比率を求めると、 SMCで3.4, LMCで0.7, 銀河系で0.5 となり、SMCだけで[HMXB]/[type-II SNR]比が高いことがわかる。 HMXBもtype-II SNRも、星が生まれて数千万年後に残る死骸であるが、X線天体として輝く時間がかなり違う(HMXBは 万年、SNRは高々10万年)。つまり、[HMXB]/[type-II SNR]比は、直近1000万年ぐらいの星生成率の変化を表しているのではないか?SMCでこの比が高いということは、1000万年ぐらい前に星生成率がグッと落ちたと推測できる。   以上をまとめると、銀河系やLMCに対する   SMCの相対的な星生成率は右のようになる   と考えられる。 HMXB SNR LMXB SMC 71 21 LMC 18 50 1 銀河系 83 330 130 HMXB SNR LMXB SMC 71 21 L/10 1.8 5.0 0.1 銀/100 0.83 3.3 1.3 規格化 素性の不明な天体も 一緒にプロット ☆: HMXBパルサー ○: 熱的SNR ◇: AGN・手前の星 □: 正体不明天体 △: HMXB(パルスなし) ○: SNR(熱的かどうか不明) ○: パルサー(素性不明) 7 Discussion (2) – 種族ごとの空間分布 HMXB、SNR、AGNの3種族の空間分布を調査した。Discussion (1) で選出した候補天体や、ROSAT等で認定されたHMXB候補などを広く収集し、統計を上げた。以下では、それぞれの特徴について議論する。 時間 SMCの相対的星生成率 現在 一千万年前 数千万年前 数億年前 銀河系と 同レベル ? (あくまで銀河系やLMCに対する相対値) HMXB (背景は可視光画像) SNR AGN HMXBはmain bodyとwingに局在している。 HMXBは数千万年前に生まれた星の死骸 → 数千万年前の星生成活動がこの領域に偏在していたのだろう (実際Maragoudaki et al. 2001等により、若い星はmain bodyとwingに局在していることが示されている) SNRはHMXBとよく似た分布を示している。 SNRもまた数千万年前に生まれた星の死骸だろう → つまりSNRの大半はtype-IIだろう AGNはかなり一様に分布している。 AGNはSMCと無関係なので当たり前? 実は上図の小さい◇は、中間のHRを持つ33個の天体であって、logN-logSのおおざっぱな見積もりでAGN候補になっているだけ(Discussion (1) 参照)。この空間分布により、より濃厚なAGN候補になったと言える。 最後に雑感  「マゼラン雲では星生成が活発に起きており・・・」「マゼラン雲の金属量は低く・・・」など、SMCとLMCはよく一緒に扱われますね。確かに共通する部分は多いのですが、本ポスターで示したように、SMCだけ極端に違う部分もあるようです。SMCはLMCよりかなり小さいので、進化過程における外的擾乱の影響が最もよく現れているのかもしれませんね?  そんなわけで、マゼラン雲(+ 銀河系のsystem)を理解するには、LMCと同じくらい熱心にSMCも研究しないと大きな見落としをする可能性があると思うんです。LMCの研究の延長としてではなく、全く新しい研究対象としてSMCを捉えることが大切なんじゃないかなと思っています。 2002年3月24日 横川淳 記す  p.s. 横川は業界からは出ますが、SMCに関してはなるべくがんばってアフターサービスするつもりです。何かありましたらご連絡下さい。


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