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TES型マイクロカロリメータの X線γ線に対する応答特性の研究
宇宙物理実験 山川 善之
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目次 研究背景と目的 TESカロリメータの動作原理 吸収体の決定と貼り付け SII-115素子の測定結果 SII-155素子の測定結果
修士論文発表会 目次 研究背景と目的 TESカロリメータの動作原理 吸収体の決定と貼り付け SII-115素子の測定結果 SII-155素子の測定結果 まとめ 話の流れですが、まず始めに研究背景と目的について 説明した後に、我々が研究しているTESカロリメータの動作原理について簡単に 説明します。次に吸収体の決定とカロリメータへの貼り付け工程に ついて説明した後で、評価した2つの素子の結果について発表します。
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1. 研究背景と目的 次世代X線天文衛星 気球実験 地上実験 DIOS 銀河間物質(Missing baryon)の大規模構造を探る
修士論文発表会 次世代X線天文衛星 DIOS 銀河間物質(Missing baryon)の大規模構造を探る 面積の広いX線吸収体が必要 気球実験 超新星残骸の44Tiからのγ線(68/78 keV, T1/2=49 yr)の観測 従来の半導体検出器 ΔE~数100 eV 地上実験 KEK ~100 keVのエネルギー帯域で ΔE~数10 eVが必要 では、研究背景と目的ですが、 我々は次世代X線天文衛星への搭載を目標にX線検出器TES型マイクロカロリメータの開発を 行っています。DIOSでは、銀河間物質の大規模構造を調べることを目標としており、 宇宙からのX線を効率よく検出するためには、面積の広いX線吸収体が必要となります。 また、この吸収体を工夫することで数100 keVのエネルギー帯域での 利用も可能となり、超新星残骸のTi44からのγ線が68 keV , 78 keV の検出を目標に気球実験も計画しています。 地上実験では、KEKで超高圧下においた資料のX線結晶回折実験 に利用することもできます。 これらのことから私は、吸収体付きカロリメータの応答と γ線カロリメータの可能性を調べるために スズ吸収体を接着した素子の製作を性能評価が 行いました。右の写真は、今回製作した素子の写真です。 0.7 mm 吸収体付きカロリメータの応答 γ線カロリメータの可能性 スズ吸収体を接着した素子の製作と性能評価
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2. TESカロリメータの動作原理 α ΔE ∝ kBT 2C /α X線マイクロカロリメータ
修士論文発表会 X線マイクロカロリメータ TES温度計 (Transition Edge Sensor) X線光子のエネルギーを 素子の温度上昇として検出 超伝導転移端を温度計として利用 温度計の感度 α = d log R d log T X線、γ線 RT カーブ α 吸収体 Ca logR 発熱減少 熱伝導度 Ga X線入射 温度計 T 、熱容量Ct 動作点 熱伝導度 G 低温熱浴 Ts logT エネルギー分解能 ΔE ∝ kBT 2C /α
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吸収体の選択 熱容量の条件 Emax:入射光子の最大エネルギー ΔT:遷移端の幅 C > Emax / ΔT
修士論文発表会 吸収体の選択 スズ(Z=50)を吸収体として選択 超伝導体で熱容量が小さい LLNLで実績あり 52 keV サイズ 0.79 mm×0.87 mm×0.3 mm厚 熱容量 Ca=11.2 mK 熱容量の条件 Emax:入射光子の最大エネルギー ΔT:遷移端の幅 C > Emax / ΔT ~ 60keV / 2mK ~ 5 pJ/K SII-115 logT logR ΔR~R ΔT TESのみ スズ(0.3 mm厚) TESカロリメータでは微小なエネルギーを測定するので吸収体の熱容量は小さいほうが良いのですが、 TESでは遷移端を越えてはいけないという条件から、 入射X線の最大エネルギーE maxに比例し、遷移端の幅ΔTに逆比例する下限値があります。 熱容量をより小さくするには、遷移端の幅ΔTを大きくすれば良いことになります。 しかし、ΔTと温度計感度αは近似的にこのような関係を持ち、ΔTを大きくするということは結局αを 小さくすることになってしまいます。遷移端の幅が2mKの場合、60keVのX線を検出するためには吸収体の熱容量は、 5pJ/Kが必要になります。このような条件で、検出効率の良いものとして超伝導体であるスズを吸収体として選択しました。 吸収体の大きさは 0.87mm 0.79mm 0.3mm 厚で動作温度150mKでの熱容量は11.2pJ/Kと見積もることができる。 右の図はTESのみの場合の吸収効率と0.3mm厚のスズ吸収体の吸収効率を比較したものです。60keVでのスズ 吸収体の検出効率は75%になります。
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ベースとしたTESカロリメータ SII-115 SII-155 300 µm 300 µm 500 µm 500 µm TES Ti/Au
修士論文発表会 ベースとしたTESカロリメータ SII-115 SII-155 300 µm 300 µm 500 µm 500 µm TES Ti/Au 厚さ 40/70 nm X線吸収体 Au 厚さ 500 nm メンブレン ブリッジタイプ 転移温度 151 mK TES Ti/Au 厚さ /120 nm X線吸収体 Au 厚さ 500 nm メンブレン 全面タイプ 転移温度 151 mK ΔE = keV
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吸収体の貼り付け スズ箔吸収体をはさみで切り出し エポキシ系接着剤で固定。 断面図 a a b b a a b b メンブレン(SiN)との
修士論文発表会 吸収体の貼り付け スズ箔吸収体をはさみで切り出し エポキシ系接着剤で固定。 メンブレン(SiN)との 接触防止用のスペーサー 接着剤 Sn箔吸収体 a b SiNメンブレン Si TES Nb配線 断面図 a a b b a a b b
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実験装置 希釈冷凍機(OXFORD社製) 241Am線源 ~150mK カロリメータ 5 cm 125 cm
修士論文発表会 希釈冷凍機(OXFORD社製) 241Am線源 カロリメータ ~150mK 5 cm 125 cm
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エネルギースペクトル SII-115+Sn 積分時間: 703 s Am 積分カウント: 2040 カウント Np-L Sn escape
修士論文発表会 積分時間: 703 s 積分カウント: 2040 カウント Am Np-L Sn escape Am ΔEベースライン=81 eV ベースラインゆらぎ: パルス入力がない時の ノイズで決まるゆらぎ 続いて、今回の実験で得られたエネルギースペクトルです。60keV、26keVのAmの輝線の他にSnのエスケープ、 NpのL殻の輝線が検出できました。エネルギー分解能は60keVの輝線に対して151eVで素子の分解力は約400です。 また、ベースラインの揺らぎのよる寄与は88eVです。ベースラインの揺らぎとはパルス入力がない状態のノイズで決まる揺らぎのことです。 ΔEFWHM=
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線形性 SII-115+Sn 直線からのずれ1.2 %@60 keV 動作点 60keV 300 keV R – T 特性
修士論文発表会 直線からのずれ1.2 keV 動作点 60keV 300 keV R – T 特性 エネルギー決定精度~10eV 300keVまで遷移端を越えない
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エネルギー分解能 熱容量Caを小さく 熱伝導度Gaを大きく スズ箔吸収体の形状の最適化 熱浴の温度揺らぎ ∝ E ΔEばらつき
修士論文発表会 エネルギー分解能 熱浴の温度揺らぎ ∝ E ΔEばらつき ~121 eV 波高値のX線入射位置依存性 ΔEFWHM ~138 eV Johnson noise Phonon noise TES - 熱浴間 吸収体 - TES間 ΔEベースライン ~81 eV ΔEintrinsic~58 eV ΔEreadout~66 eV SQUID noise 外乱 noise 熱容量Caを小さく 熱伝導度Gaを大きく スズ箔吸収体の形状の最適化
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SII-155での改良点 メンブレン構造: ブリッジタイプ → 全面タイプ (強度アップ) 吸収体のサイズを最適化
修士論文発表会 メンブレン構造: ブリッジタイプ → 全面タイプ (強度アップ) 吸収体のサイズを最適化 Spice シミュレーションの結果、Ca~6 pJ/Kあれば線形性OK 0.63 mm×0.67 mm×0.3 mm厚、Ca=6.85 mK 接着剤を最小限に 接着剤の熱容量~1/2 TES-吸収体間の熱伝導度~2倍 吸収体を3 µm粒のアルミナで研磨 表面形状のσ~ 2.5 µm σ~ 0.6 µm スズ箔切断面 研磨前 研磨後
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SII-155への吸収体の貼り付け 修士論文発表会 貼り付け前 貼り付け後 630 µm 670 µm
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パルス波形 理論値 τfall ~ 0.5 ms モデルで再現できる 60 keV データ モデル τfall ~0.52 ms
修士論文発表会 理論値 τfall ~ 0.5 ms モデルで再現できる 60 keV データ モデル τfall ~0.52 ms
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エネルギースペクトル 積分時間 : 5367 s 積分カウント : 20580 カウント Np-Lβ Np-Lα Am Am
修士論文発表会 積分時間 : 5367 s 積分カウント : カウント Np-Lβ Np-Lα Am Am Sn-escape Np-Lγ Np-L Sn-escape Am
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エネルギー分解能 60 keV ノイズ 核γ線(60, 26 keV)→ベースラインに一致 その他のライン→自然幅、etc.が原因
修士論文発表会 ΔEFWHM=38.4±0.9 eV 60 keV ΔEベースライン=37.9±0.7 eV ノイズ 核γ線(60, 26 keV)→ベースラインに一致 その他のライン→自然幅、etc.が原因
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線形性 直線からのずれ2.1%@60 keV 150 keV 60 keV 動作点 E ~150 keV まで線形性を保っている
修士論文発表会 keV 150 keV 60 keV 動作点 E ~150 keV まで線形性を保っている
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エネルギー分解能 熱浴の温度揺らぎ ∝ E ΔEばらつき < 8 eV 波高値のX線入射位置依存性 ΔEFWHM ~38 eV
修士論文発表会 熱浴の温度揺らぎ ∝ E ΔEばらつき < 8 eV 波高値のX線入射位置依存性 ΔEFWHM ~38 eV Johnson noise Phonon noise TES - 熱浴間 吸収体 - TES間 ΔEベースライン ~ 37 eV ΔEintrinsic~ 35 eV ΔEreadout~ 10 eV SQUID noise 外乱 noise 熱容量を小さく抑えたことでノイズ揺らぎが大幅に改善。 パルスのばらつきがほぼ無視できるようになった。
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まとめ 今後の予定 断熱消磁冷凍機で動作試験 超高圧結晶のX線回折実験 @ KEK (3月に予定)
修士論文発表会 スズ吸収体を貼り付けてγ線カロリメータを試作 エネルギー分解能 ΔE = 38.2 ± 0.9 keV ノイズ揺らぎ ΔEベースライン = 37.9 ± 0.7 eV を達成。世界最高レベル。 パルス波形をモデルで再現できることを確認 60 keVで~2%の線形性、エネルギー決定精度~ 10 eV 今後の予定 断熱消磁冷凍機で動作試験 KEK (3月に予定)
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SII-115の構造と RT 特性 300 µm 500 µm TES Ti/Au 厚さ 40/70 nm X線吸収体 Au
修士論文発表会 SII-115の構造と RT 特性 300 µm 500 µm TES Ti/Au 厚さ 40/70 nm X線吸収体 Au 厚さ 500 nm C = mK メンブレン ブリッジタイプ 転移温度 151 mK ノーマル抵抗 125 mΩ
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SII-155の構造と RT 特性 300 µm 500 µm TES Ti/Au 厚さ 40/120 nm X線吸収体 Au
修士論文発表会 SII-155の構造と RT 特性 300 µm 500 µm TES Ti/Au 厚さ /120 nm X線吸収体 Au 厚さ 500 nm メンブレン 全面タイプ C = mK ΔE = keV 転移温度 151 mK ノーマル抵抗 61 mΩ
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