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いろいろな人工衛星による積雲対流活動の観測例 全球降水観測計画(GPM)主衛星打ち上げ成功!

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1 いろいろな人工衛星による積雲対流活動の観測例 全球降水観測計画(GPM)主衛星打ち上げ成功!
気候と降雨 (高薮研究室)  地球は低緯度で大きく高緯度で小さい太陽放射エネルギーを受け取っています。このアンバランスが地球大気の大循環を駆動しています。そして、低緯度の地表面で受け取る太陽放射エネルギーを大気に運び上げる役割を果たすのが、積雲対流活動です。熱帯の積雲対流活動は、雲<中規模雲群<大規模雲群という具合に階層的に組織化しながら大気を加熱し、数千kmスケールの大気循環とも相互作用しています。その一方で、降水過程の本質は水蒸気・水・氷の相変化を含む微物理過程であるため、モデル化はもちろん正確な現象把握も容易ではありません。私たちの研究室では、主に衛星データや全球気象データを用いたデータ解析により、熱帯大気・降雨・気候をキーワードに、様々な角度から研究しています。 いろいろな人工衛星による積雲対流活動の観測例 全球降水観測計画(GPM)主衛星打ち上げ成功! CloudSat衛星 TRMM(熱帯降雨観測衛星)  GPM主衛星が2014年2月28日に種子島宇宙センターから無事打ち上げられ、観測を開始しました。 TRMM/PRを発展させた2周波降水レーダ(DPR)を搭載し、弱い雨や降雪も観測可能になります。また、観測域が緯度±65度まで拡大(TRMMは±35度)し、地球上のおよそ9割を観測できるようになりました。GPM計画では国内外の複数の衛星と連携し、約3時間毎の全球降水観測が可能になります。本研究室では、このような新しい観測データをどんどん活用し解析していく予定です。 2006年に打ち上げられた、世界で初めて雲レーダー(CPR)を搭載した人工衛星。降雨に加え、雲の鉛直プロファイルが得られます。 1997年に打ち上げられた、世界で初めて降雨レーダーを搭載した人工衛星で、熱帯・亜熱帯全域を観測しています。降水量の水平分布のみならず、降水の鉛直構造まで得ることができます。 x z アマゾン10月 アマゾン1月 図3:CloudSat が捉えた、アマゾン域での雲システムの例。左は10月(雨期の直前)、右は1月(雨期中)で,季節によってシステムの形状が異なることが示唆される。(Higuchi) 図1:TRMM模式図。(JAXA) 20km 1 その他にも、例えば、MTSAT-1R(ひまわり6号)などの静止衛星観測データを活用すると、積雲対流の時間変化を詳細に追うことができます。 DPRによる降水3次元観測 図5:平成26年3月10日22時39分頃(日本時間)に、GPM主衛星が捉えた、日本の東海上にある発達した温帯低気圧による降水。 13:56 JST 14:11 JST 14:16 JST 14:21 JST 14:30 JST 14:36 JST 図4:MTSAT-1R(ひまわり6号)ラピッドスキャン観測がとらえた、積乱雲の発達の様子。 (Hamada) 図2:TRMM降雨レーダーで観測された台風セパート(2007年8月)の降雨分布。(上)水平分布。(下)TRMMによる3次元レーダ観測。(Yokoyama) Courtesy of JAXA/NASA Courtesy of JAXA/NASA 統計的特性の解析 ② 極端な降水現象の分布  極端な降水現象は、社会的な影響のほか、地球の水循環にも大きな影響を与えます。  特に激しい降水が見られる地域は、熱帯域(特に海洋大陸)のほか、南米やインド、日本などの島嶼部です(図8)。 日本は世界的に見て、降雨強度も強く降雨面積も大きい地域であることが分かります。(図9)。  極端に強い降雨は激しい雷雲に伴うと考えられることもありますが、実際には両者はそれほど一致しません(図10)。 ① 発雷頻度の海陸コントラスト  TRMMの降雨レーダーと雷センサーのデータを複合的に利用することで、降雨量あたりの発雷頻度が海域と陸域で異なることがわかりました(図6上)。すなわち、海と陸では雲降水システムの特性が全然違うのです。  降雨量分布(図6下)よりも海陸コントラストが明瞭な点がとても興味深いところです。 ③ 梅雨前線に伴う降雨特性  梅雨は日本に住む私たちには馴染み深い現象の一つです。私たちのグループでは、梅雨前線の南側と北側では大気成層が大きく異なることに注目し(図11上)、それに伴って雨の降り方も異なることをTRMM観測データから明らかにしました。たとえば、対流性の高い雨の出現頻度は梅雨前線の南側で顕著に増加しています(図11下)。  また、同様の視点から、気候モデル実験データによる梅雨の解析も行っています。 陸上:雷が多発! 海上:雷は少ない 気圧[hPa] 図8: 各2.5度格子内で最大降雨強度が上位0.1%を超える雨域として定義した降水システムの雨の強さの分布。(Murayama) →大 面積[km2]   →強 降雨強度[mm/h] 梅雨前線 図6: TRMMのPRおよびLIS観測から求められた8年平均の(上)降雨/発雷比(赤系の色は雷の多い性質の雨,青系は少ない雨を示す)、および(下) 降水量全球分布(36N-36S)。(Takayabu 2006) 降雨頂高度[km] 図9:図8と同じ定義の降水システムの地域的な特徴。(Hamada et al. 2014) こんな研究もしています 南太平洋収束帯付近では、降雨頂の高い雨が年間を通して多く降っており、その詳細や要因について解析しています。季節ごとの解析から、そのような背の高い雨は、特に南半球の夏に多いことが分かりました(図7)。 梅雨前線の中心からの相対緯度 N 図11:(上)JRA25-JCDAS再解析データによる14年平均した6-7月の日本付近の相当温位(色, K),東西風(黒コンター; m/s)、鉛直流(白コンター; Pa/s)。(下)TRMM PRによる対流雨の降雨頂高度の頻度分布のコンポジット(%)。横軸は梅雨前線を中心とした相対緯度。 (Yokoyama et al. 2014) 図10:極端降水をもたらした降水システムのうち、激しい対流活動を伴うものの割合(単位%)。(Hamada and Takayabu 2014) 図7: -20℃以下の降雨頂高度を持った雨が地表付近での全対流雨量に対する貢献率分布。2002年~2010年の12月~2月の季節平均。(Itagaki) 熱帯域の数1000 kmスケールの降雨システム IPCC気候モデルのマルチモデル解析 図14: (a)観測,降雨分布の再現性の(b)高いモデル(HS),(c)低いモデル(LS)の降水量(色; mm/day)と海面温度(等値線; ℃)。(Hirota et al. 2011) (b)HighScore (c)LowScore (a) 観測 9-11月  熱帯域の数千kmスケールの降雨システムは2種類の東進速度を持ちます(図12)。対流と結合したKelvin波とMJOと呼ばれるものがこれに対応し,降雨特性や擾乱の構造なども異なります。   MJOとKelvin波のどちらがより出現しやすいかは,季節や経度、またはエルニーニョの位相などで変化します。この違いには,対流圏中層の比湿や海水面温度といった環境場が関係していると考えられます(図13)。  観測データ解析で得た知見やノウハウを生かして,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書に参加した世界各国の気候モデルの実験結果を包括的に解析し,降雨特性や台風などの大気擾乱の特性の再現性能を評価し,地球温暖化による影響の将来予測を行っています。  左の図14で、熱帯降雨分布の再現性が高い5モデル(HS)と低い5モデル(LS)を比較すると,観測・HSとは異なり,LSでは南太平洋の降雨帯(SPCZ)が海面水温分布に沿って東西に延びています。これはモデルにおける対流活動の海面水温と大気中下層の湿度に対する感度の違いから整合的に説明できます。 MJO Kelvin波 MJOが強い Kelvin波が弱い 図13:環境場の散布図。MJOのケルビン波に対する強度比の上(下)位30%が青(赤)点で示されている。擾乱強度・環境場は3ヶ月平均の平年値,50E-270E (Kogawa) ←図12:MJOとKelvin波擾乱の例。2009年10月から2010年5月の赤道域(10N-10S平均)のOLRの経度-時間断面図。青色ほど強い対流を意味する。赤・青線で囲まれた部分はそれぞれMJOとKelvin波擾乱を示す。(Kogawa)


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