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岩本 康志 2013年5月25日 日本金融学会 中央銀行パネル
非伝統的金融政策の効果と限界 岩本 康志 2013年5月25日 日本金融学会 中央銀行パネル
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「マネタリーベース・コントロール」とは無謀で危険な国債管理政策である。
「マネタリーベースが、年間約60~70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」 増加するマネタリーベースは超過準備である。 超過準備は短期国債である。マネーではない。 ポートフォリオ・リバランス効果が働くと,短期国債が大量供給され価格が下落する。短期金利が上昇する。 「量的・質的金融緩和」を貫徹するには,利上げが必要になる。
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コリドー・システム 準備預金のもつ流動性を得る対価が短期金利(と準備預金金利との差)。 準備供給はロンバート型貸出金利で完全に弾力的。
準備需要は準備預金金利で完全に弾力的。
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白川「量的緩和」 短期国債を超過準備に大量に置き換える。 短期金利は準備預金金利に等しい。
流動性の対価はゼロ。超過準備に決済手段の意味がなくなり,超過準備と短期預金が完全代替になる。 資金供給オペが未達になる可能性。
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黒田「異次元緩和」の思惑 長期国債を超過準備に非常に大量に置き換える。
決済手段としての意味をもたなくなっている準備需要はいつまでも準備預金金利で完全に弾力的か? 資金供給オペが未達になる。
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「異次元緩和」の別帰結の可能性 短期国債と長期国債の代替で金利が決まるならば,短期国債の増加で短期金利は(相対的に)上昇する。
金融機関の資金調達にもゼロ金利制約があるため,全体的な金利水準の低下に限界がある。 短期金利の相対的な上昇は,絶対的な上昇になる。
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「無謀」な国債管理政策 準備需要は準備預金金利でどこまでも完全に弾力的でない場合,短期金利の決定は「異次元の世界に入る」。
資金供給オペが未達とならないためには,より高い金利が必要となるかもしれない。 このような異次元の世界を考慮せずに大規模な拡大に事前にコミットしてしまうことは,無謀である。 信認を失わないようにするには,確かめながら進む必要がある(ただし,進むべきか否かは別の問題)。
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「危険」な国債管理政策 統合政府(政府+日銀)から見れば,負債の短期化が図られている。
2%のインフレが実現すれば,短期金利も正常化して,大きく上昇するはず。 短期金利が大きく上昇していくと,統合政府の利払費が大きく増加する。短期調達・長期運用の日銀には大きな損失が発生する。 財政危機が必然的に生じるとまでは言えないが,危険な状態。
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リスク資産購入は問題をはらんだ財政政策である(1)
リスク資産が市場で正当に評価されている場合,中央銀行が正当な価値で購入することに実効的な意味はない。 金融危機によって,市場がリスク資産を正当に評価できない場合には,市場のリスク評価を是正する意義がある。しかし,現状の日本には妥当しない。 中央銀行が正当な価値以上で購入することであり,これはバランスシートの毀損を招くことにつながり,民間部門に価値を移転しているという意味で財政政策として機能している。
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リスク資産購入は問題をはらんだ財政政策である(2)
中央銀行が政府と独立に財政政策を実行することは統治機構上の問題をはらんでいる。 財政政策としての規模は資産購入額ではなく,購入額の正当な価値からの乖離分になる。このため,普通の財政出動に比べて財政政策としての規模が小さく,したがって効果も小さいだろう。 金融市場に介入して財政政策の効果を出すことでデフレ脱却を目指すのは,的外れな政策である。
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