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K・ポラニーの思想: 市場と国家 斎藤 修 「市場と社会」第13回研究会, 2014年11月15日.

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1 K・ポラニーの思想: 市場と国家 斎藤 修 「市場と社会」第13回研究会, 2014年11月15日

2 『大転換』の読み方: 「市場」と「国家」 今回つけ加えた部分

3 2つの問題領域 市場経済の理論:経済人類学 コンセプト: 政治経済学 互酬・再配分・家政 自己調整的市場経済 擬制商品の市場
  コンセプト:    互酬・再配分・家政    自己調整的市場経済    擬制商品の市場 政治経済学 国際経済レジーム 官僚制化:「管理と規律の時代」へ

4 19世紀文明の構造とその崩壊 「国際金本位体制の崩壊は,20世紀の到来と前後して始まった世界経済の解体と,1930年代における一つの文明全体の転換とをつなぐ不可視の環であった。金本位体制の崩壊という要因の決定的な重要性を認識しないかぎり,ヨーロッパを運命的な破局へと導いたメカニズムも,あるいはまた,一つの文明の形式と内容がまったく頼りない基礎の上に成立していたという驚くべき事実の淵源に関する諸事情も,正しく理解することはできないだろう」(35頁)。

5 金本位制 「金本位制は,通貨と予算に関する変動の許容範囲を最小限に押さえ込んだ。金本位制と立憲主義は,新しい国際秩序順守の二つのシンボルを受け入れた多くの諸国に,ロンドンのシティの声を届ける手段であった。たしかにパクス・ブリタニカは,時として砲艦を威圧的に配備することによってその意思を押し通しもしたが,多くの場合は国際通貨の網の目を巧みに操ることによってその支配を維持したのである」(21頁)。

6 歴史観 本書が描き出したこと 「市場経済の興隆と没落」 その意味するところは:
 「市場経済の興隆と没落」   その意味するところは:   市場の社会へのゆったりとした浸透と,19世紀におけるレジームとしての確立,そして規制・管理・組織の時代へ 後述するように,この歴史像は,意外なほどヒックスのそれに近い

7 経済的自由主義と国家 ベンサムの「パラドクス」:             「自由市場の導入は,統制,規制,あるいは干渉の必要性を取り除くどころか,逆にその範囲を驚くほど増大させた」(254頁)。 「ベンサム流の自由主義とは,議会の活動を行政的な機関による活動に置き換えることを意味した」 (253頁)。 21世紀も同様か?

8 経済的自由主義と国家(続) より長期の視点: 「ベンサム・パラドクス」の行く先には,「管理と規律の時代」
官僚制化の文脈で理解できる( M・ウェーバー,R・ベンディクス) 行政だけではなく,企業自体も官僚制化

9 市場経済の問題 or 国家の問題? 「市場経済はイギリスに生まれた。しかし,その弱点がもっとも悲劇的な混乱をもたらしたのはヨーロッパ大陸であった」(50頁)。 市場経済の弱点? - 商品 - 貨幣 - 土地と労働 国家の弱点?

10 ポラニーの市場・社会・歴史観: ヒックスとブローデル との比較
「市場と社会」第1回研究会 (2009年7月18日) 改訂短縮版

11 さまざまな市場経済論 ポラニーの「市場経済」概念は歴史的
  「社会的大変動の源泉は,自己調整的市場システムを打ち立てようとした経済的自由主義のユートピア的な試みにあった」(49頁)   「自己調整とは,すべての生産が市場における販売のために行われ,すべての所得がそのような販売から派生することを意味する」(120頁)。

12 さまざまな市場経済論(続) ブローデルは,資本主義と区別
 「自動調整機能を持つ市場を経験した世紀であるという19-20世紀よりはるか以前に,市場経済は存在した。古代からすでに,価格は変動している。13世紀には,価格はすでにヨーロッパ全域で一致して変動している」(『交換のはたらき』1,281頁)。-ブロックの批判(xlvii頁,註11) 資本主義の領分には「才覚と最強者の権利が君臨していた」。一種の「反-市場のゾーン」。 両者の区分は「中世以来ヨーロッパの不変の状況」(同,284頁)

13 さまざまな市場経済論(続) ヒックスにとって,市場経済は資本主義に先立って勃興し,成長するもの
ただし,その「勃興」は「あまりにも遠い過去」。したがって,歴史的事実にかんする判断としてはブローデルと変りなし( 『経済史の理論』 21頁) ヒックス,ブローデルの「市場経済」概念はともに分析的, ポラニ―のいう「埋め込まれた」市場にも「切り離された」市場にも適用できる概念

14 擬制商品論 ポラニーの慧眼 要素市場は,通常の商品市場とは違う
  要素市場は,通常の商品市場とは違う 「労働は,生活そのものの一部であるような人間生活の別名」「土地は自然の別名」「貨幣は,単に購買力の表象」(125頁) ヒックスによる継承:  「この領域[土地市場と労働市場]においては,市場原理は適合しないか,適合できるとしても困難をともなう。そこに抗争が生ずることになる。この抗争はきわめて初期のころからはじまり,… われわれの時代にいたるまで続いている」(『経済史の理論』174-5頁)

15 擬制商品論(続) 歴史解釈上の不幸 「イギリスでは,労働に先んじて,土地と貨幣が流動化された」(136頁) スピーナムランド法の解釈
  「イギリスでは,労働に先んじて,土地と貨幣が流動化された」(136頁) スピーナムランド法の解釈   「民衆のプロレタリア化を妨げることを狙っていたか,あるいは少なくともそれを遅らせよう」 (142頁)。 - ブロック: 「スピーナムランド法については,ポラニ―の主張の多くに異論が出されている」(xlviii頁,註16)

16 擬制商品論(続) 「市場経済はイギリスに生まれた。しかし,その弱点がもっとも悲劇的な混乱をもたらしたのはヨーロッパ大陸においてであった」(50頁) この視点から土地市場と労働市場が論じられていたら,より生産的であったろう 大分岐論争   経済史における東西,西のなかでも南北の分岐と関連(斎藤『比較経済発展論』)

17 現代における非市場領域の拡大 ヒックスのいう行政革命と固定価格(fixprice)市場の登場
Unorganised flexprice markets have been ‘largely replaced by what I called fixprice markets, in which prices are set by the producers themselves (or by some authority)’ (Hicks, Economic Perspectives, 1977, pp. xi). ‘In a fixprice world, in which so many prices are administered, and have to be administered, the social functions have become more important, and more sensitive, than they were’ (p. viii).

18 産業社会と市場社会 「ひとたび商業社会において精巧な機械と工場が生産に使用されれば,自己調整的市場システムという概念が必然的に姿を現す」(69頁)。 市場のproliferation そこにおける商人の役割-製品の販売だけではなく,「商人の指示に従って組み合わされる労働と原材料」も。「これは,家内工業あるいは「問屋制」工業に限られるものではなく,われわれの時代の産業資本主義を含むあらゆる種類の産業資本主義に当てはまる」(70頁)。

19 産業社会と市場社会(続) このポラニーの産業社会論は,事実上,スミスの分業論に立脚
「産業文明は,自己調整的市場のユートピア的な実験がもはや過去のエピソードにすぎなくなったときにおいても存続しつづけるであろう」(454頁)。 現代の問題: - 「複合社会における自由」(第21章) - 産業社会の終焉:サービス経済の抬頭


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