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霧箱を用いた宇宙線と 生成される霧の観測 園田憲一
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実験目的:宇宙線が作るイオンを核にして雲が生成 される可能性があるかを調べる
される可能性があるかを調べる 目的の動機: 太陽活動と地球の気候との因果関係 ・太陽活動は約11年周期 ・太陽黒点増加→極大期、減少→極小期 マウンダー極小期 太陽の活動は約11年の周期で極大期と極小期を繰り返していて、太陽の黒点が多くなると活発な極大期になり、黒点が少なくなると極小期となることが知られています。 下の図は年代ごとの黒点の相対数を表したグラフです。このグラフを見ると、1650~1700年頃は黒点がほとんど現れていないことが分かります、この時期をマウンダー極小期といい、この時代の地球は寒冷化したことが知られています。このように、太陽活動と地球の気候には何らかの因果関係があると考えることが出来ます。 太陽活動と地球の気候に因果関係 太陽活動と地球の雲量に何らかの因果関係
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なぜ太陽活動と地球の雲量に因果関係があるのか? ・宇宙線は電荷を持っていて、地球上にたどり着くまでに太陽風の 地場の影響を受けて進路が変わる
地場の影響を受けて進路が変わる 太陽活動が盛ん 地球上に届く宇宙線減少 宇宙線強度が 太陽活動周期と連動 太陽活動 宇宙線強度 地球上雲量 なぜ太陽活動と地球の気温に因果関係があるのか。一般的に地球の雲量が多くなると気温は低下するので、太陽活動と雲量に因果関係があると考えられます。実際にデンマークの研究者であるフリス・クリステンセンとスベンスマルクは、地球の雲量が太陽の活動周期に対応して11年で変動しているというデータ解析の結果を発表しました。なぜ太陽活動が盛んになると雲量が増え、逆の場合は減少するのかについて二人は次のように考えました。 地球には、銀河宇宙線が常に降り注いでいます。宇宙線のエネルギーは非常に高く、10^20eVにもなります。しかし宇宙線は電荷を持っているので、地球上にたどり着くまでに太陽風の磁場の影響を受けて進路が変わります。太陽活動が盛んだと強力な太陽風によって宇宙線が散乱され、地球上に届く宇宙線は減少することになります。下の図は宇宙線量(実線)と雲量(記号)の変化を表したグラフですが、宇宙線の強度が太陽活動の周期と連動しているのがわかると思います。 連動 連動 連動
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今回の実験目的 エアロゾルが介在せず、宇宙線が作ったイオンを核にして雲を生成する可能性があるかどうかを調べる
クリステンセン・スベンスマルク仮説 宇宙線が対流圏上層部に入り、そこで大気の電子を弾き大気をイオン化して、そのイオンを核として霧を生成し雲が出来ていく この仮説を直接実験で証明することは非常に難しい… 今回の実験目的 エアロゾルが介在せず、宇宙線が作ったイオンを核にして雲を生成する可能性があるかどうかを調べる これについて二人は、宇宙線が対流圏上層部に入り、そこで大気の電子を弾き大気をイオン化して、そのイオンを核として霧を生成し雲が出来ていくという仮説を立てました。これが正しければ、地球の雲量は宇宙線の影響によって増減しているということになります。このクリステンセン・スベンスマルク仮説を直接実験で証明することは難しいため、今回の実験では、エアロゾルが介在せず宇宙線が作ったイオンを核にして雲を生成する可能性があるかどうかを調べるものとしました。
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原理 水蒸気を含む空気が上昇すると温度が低下し過飽和状態になり、水蒸気の一部がエアロゾルなどを核にして凝縮して水滴となり雲が出来ることが知られている 宇宙線が軌道上の電子を弾きイオン生成 温度勾配 宇宙線入射 原理:水蒸気を含む空気が上昇すると温度が低下し過飽和状態になり、水蒸気の一部がエアロゾルなどを核にして凝縮して水滴となり雲が出来ることが知られている。 今回は霧箱を用いて人工的に温度勾配を作り過飽和状態にして、エアロゾル入りの空気と純粋空気の2種類での観測をする。もし純粋空気が入った(エアロゾルが入っていない)霧箱でも霧が観測出来た場合、宇宙線が作るイオンを核にして雲が生成される可能性を示すことが出来る。 通常空気での実験 発生した霧の核が、エアロゾルか宇宙線の生成したイオ ンのどちらかは分からない 純粋空気での実験 エアロゾルがないため、霧の核は宇宙線の生成イオン
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装置図 霧箱に真空ポンプとエアポンプを繋ぎ、中を真空に出来るようにしてある。
霧箱内を真空状態のまま内部にアルコールを入れることが出来る、詳細は次ページ
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装置図(霧箱) 上部の二本のパイプにはチューブを巻いてある。パイプには極小さな穴が空いており、パイプにアルコールを通すことでチューブにアルコールが染みこみ霧箱内にアルコールを入れることが出来る。前年度は内部に布を巻いていたが、布自体がエアロゾル量を増やしている可能性があった。この改良により霧箱内部のエアロゾルを極力増やさないことが可能となった。
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両方を組み合わせることで霧箱内のエアロゾル個数を計測可能 (14.1nm~736.5nmのエアロゾルの粒径分布が計れる)
純粋空気での霧箱観測実験は、前年度まではエアロゾル数は0としていた。しかしこれが本当かどうか分からないので、今回新たに装置内のエアロゾル数の計測を行った。 凝縮粒子計数器 (Condensation Particle Counter) 微分型電気移動度分析器 (Differential Mobility Analyzer) エアロゾルの個数濃度を計測出来る エアロゾルの粒径分布を測定出来る 両方を組み合わせることで霧箱内のエアロゾル個数を計測可能 (14.1nm~736.5nmのエアロゾルの粒径分布が計れる)
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実験方法(通常空気) ①開栓 エアロゾル入り 空気 ①開栓
①アルコールを通すチューブの二ヶ所のコックを開栓して、チューブにアルコールを染みこませる ②しばらくそのままにしておき、霧箱内部に細かな水蒸気が雪のように落下しているのを確認する。 ライトを霧が見やすい位置に固定し、霧箱内部をデジタルカメラで動画撮影する ①開栓
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実験方法(純粋空気) ③開栓 ②純粋空気を入れる 真空 ①内部空気を抜く ①開栓 純粋空気 ②純粋空気を入れる
①空気ボンベと真空ポンプのコックをそれぞれ開栓し、真空ポンプで内部の空気を抜く。このとき、真空ポンプの空気を吸う時の音がしなくなるまで続ける ②次に、空気ボンベで霧箱内部に純粋空気を入れる。これにより霧箱内部が純粋空気で満たされる ③アルコールを通すチューブの二ヶ所のコックを開栓してチューブにアルコールを染みこませる ④しばらくそのままにしておき、霧箱内部に細かな水蒸気が雪のように落下しているのを確認する。ライトを霧が見やすい位置に固定し、霧箱内部をデジタルカメラで動画撮影する
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観測結果(通常空気)
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観測結果(純粋空気)
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エアロゾル個数の計測 室内空気でのエアロゾル個数(チェンバー内の総数) 純粋空気でのエアロゾル個数(チェンバー内の総数)
1回目 2回目 3回目 4回目 平均 合計個数 5700 5941 5945 5849 5858 純粋空気でのエアロゾル個数(チェンバー内の総数) 1回目 2回目 3回目 4回目 合計個数 201 100 93 49 飛跡の観測個数(/min) 1回 2回 3回 4回 平均 通常空気 12 15 9 10 11.5 純粋空気 7 10.3
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まとめ 前年度からの改善点 ・拡散霧箱内の空気の純度を向上させた ・残存エアロゾル個数を実際に計測した 飛跡の観測
・エアロゾル入り、純粋空気共に飛跡を確認することが出来た (通常空気:11.5回/分・純粋空気:10.3個/分) エアロゾル個数計測 ・通常の霧箱内部→平均6000個弱のエアロゾルが存在 ・純粋空気→飛跡観測中は最低でも数十個の残存エアロゾルが存在
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結論 昨年度までは純粋空気の観測では、エアロゾル個数が分からないため0と考えていたが、実際には微小ながら残存エアロゾルが存在することが分かった。しかし、 ・飛跡の発生には多数の凝結核が必要な点 ・その飛跡が高頻度で発生していた点 ・残存エアロゾルが非常に小数だった点 以上を合わせて考え、エアロゾルだけでなく宇宙線が生成したイオンも凝結核として機能していたと結論付けることとした。ただ、地球全体の雲の生成に影響を与えるには、エアロゾルと比べて圧倒的に少ない宇宙線の作るイオンが影響を与えることを示す必要があり、それに関しては今のところ未知である。 よって、これがそのまま仮説の証明にはならないが、今回の研究の目的は可能性を示すことだったので、目的は達成したと言っていいのではないだろうか。
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エアロゾル個数計測(エアロゾル入り) ①霧箱を密閉せずに、霧箱とZMAの間のコックを開栓します。
②測定を開始します。14.1nm~736.5nmの範囲を細かくわけて、それぞれの粒径ごとの個数濃度を自動で計測していくので、しばらく待ちます。 ③終了後にデータが出力されるので、合計個数を記録し、粒径ごとの個数濃度をグラフにします。
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エアロゾル個数計測(純粋空気) ①霧箱と真空ポンプの間のコックを開栓し、ポンプの音がしなくなるまで内部の空気を抜きます。
②音がしなくなったらコックを閉め、次に空気ボンベと霧箱の間のコックを開栓し、10分霧箱内に純粋空気を入れます。 ③測定を開始します。14.1nm~736.5nmの範囲を細かくわけて、それぞれの粒径ごとの個数濃度を自動で計測していきます。1回の測定は5分で終わるので、4セット計測を繰り返します。 ④終了後にデータが出力されるので、合計個数を記録し、粒径ごとの個数濃度をグラフにします。
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