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東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之

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Presentation on theme: "東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之"— Presentation transcript:

1 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
修正版 自然言語処理2015 No.12 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之

2 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
今日の内容 文法再入門 (意味論はこの後にします。) 今日はお話しが中心です. へーそうなんだ,といった興味本位で聞いてください. Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

3 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
いろいろな文法理論 日本語文法の現状 構造主義的文法理論 ソシュールの文法理論 チョムスキーの文法理論 結合価文法 (依存関係文法) その他 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

4 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
日本語文法の現状 大槻文彦文法 山田孝雄文法(“最後の国学者”) 松下大三郎文法 橋本進吉文法(文節,学校文法のもとになったもの) 時枝文法(詞と辞,言語過程説,事としての言語観) 学校文法(日本の小学校・中学校で習う文法) 宣教師たちの文法 Chamberlainの文法(近代的日本語研究の先駆者) 本居春庭(宣長の子供)の動詞活用研究(詞の八衢) その他(三上文法) 様々な提案がなされているが,決定版はまだない Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

5 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
日本語研究の現状 言語学の流派 明治以降,海外の言語学研究に影響されたもの 国語学の流派 江戸時代の国学の流れを受け継いでいるもの 日本語学の流派 外国語教育を目的としているもの その他 (注)文法研究が不十分な言語は,日本語だけではなく,    英語文法の場合もまだまだ発展途上である. Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

6 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
考察・検討 (事実)日本語の文法は現在もなお未解決問題であ る(解明されていない).“日本語”という言語には, 何らかの制約・規則・規約(constraint, rule, protocol) としての文法があることは事実として認めて良いであ ろう. 例えば, 「長岡半太郎は日本の物理学者である」 「onakaga suitayo.」 は日本語として正しい(意味が取れる)が, 「は物理学者である日本長岡半太郎の」 「 Es war ein König in Thule.」 は正しくない(意味が取れない). Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

7 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
問題提起 事実(日本語とは,あるいは,文法とは何か?)を 我々が認識できたとする.それを表現化(言語化・ 文字化・記号化)するためには,表現方法自体が問 題となる. 例で考えてみる. Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

8 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
設問 3の倍数は何個あるか? 設定: N=10とし,N以下の場合を考える. 事実: N以下の3の倍数(正数のみで考える)は,      3,6,9 の3個. Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

9 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
解答例 3, 6, 9 の3個. 集合S={ n | n <=10, 3|n } として,#S個. C/C++言語プログラム(その1): for(int n = 1; n < 10; n++ ){ if(n%3 == 0) count = count + 1; } printf(“%d個ある\n”, count); C/C++言語プログラム(その2): N = 10; printf(“%d個ある\n”, N/3); その他 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

10 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
解答例 問題:どれが正しい解答(=知識の記述)? 3, 6, 9 の3個. 集合S={ n | n <=10 } として,#S個. C/C++言語プログラム(その1): for(int n = 1; I < 10; n++ ){ if(n%3 == 0) count = count + 1; } printf(“%d個ある\n”, count); C/C++言語プログラム(その2): N = 10; printf(“%d個ある\n”, N/3); その他 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

11 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
人間の理解モデル 認知 (認識×理解) (直観・発見) 考察対象 (言語,文法) 概念 記号化 体系化 実験・観察・分析 発見・認知・表現 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

12 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
得られた知見 1つのものに対する表現方法は複数あり得る. (当たり前?) int factorial(int N){ int i; int fact = 1; if( N == 0 ) return 1; for( i = 1; i <= N; i++ ){ fact = fact * i; } return( fact ); function fact N integer fact fact=1 if(N eq 0) then return 1   do 1000 i=1,N  fact = fact*I 1000 continue end. (defun fact (N) (if (= N 0) 1 (* (fact (- N 1)) N)) ) Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

13 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
文法の様々な側面 規範文法(prescriptive grammar) 言語のあるべき姿を規定する文法 記述文法(descriptive grammar) 言語のあるがままの姿を書き下す文法 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

14 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
結局,そもそも“文法”とは何? (自分の答えを書いてください) “文法”とは,... (ヒント) 説明するために役立つ用語を書き出してみよう! Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

15 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
文法理論体系 音韻論 語彙論 形態論 統語論 意味論 語用論 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

16 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
文法理論体系 音韻論(音素,音韻,音声など) 語彙論(単語など) 形態論(語構成論など) 統語論(統語構造) 意味論(意味(semantics)) 語用論(言語表現とその使用者・文脈との関係) Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

17 言語について語るとき, 避けて通ることのできない人たち
Ferdinand de Saussure(構造主義の創始者) Norm Chomsky(オートマトンと言語理論) J-P. Sartre J. Derrida’ 脱構築(desconstruction) R. Jakobson(言語学) S. Freud(心理学) など Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

18 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
チョムスキー(1人目) 形式言語理論を確立 形式言語の処理装置(automaton)を明らかにした 形式言語と処理装置の関係を明らかにした Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

19 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
文法 文法G=( Vn, Vt, P, S ): ただし、 Vn: 非終端記号の集合 <= 構文木構成要素の集合 Vt: 終端記号の集合 <= 単語の集合 P: 書き換え規則の集合 S: 開始記号 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

20 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
事実 文は無限個存在する。 (注)単語は有限個ではある. 意味のある文をすべて集めた集合は、 1つの言語を定める。 これはチョムスキーの定義(思想) 任意の単語列(形式的な文,無意味な文も含まれる)に 対して,意味があるものとないものとを区別したい。 つまり、任意の文に対して、それが言語Lの文か否かを 判定したい。 そんなことできるのだろうか? (事実:我々はできている.) Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

21 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
アイデア1) 我々はすべての文を事前に知っている. つまり,自分の母語に関する文(意味のある文)は すべて知っている(記憶されている). 文S1 S1 S2 S3 … Sn オートマトン S1は言語Lの文だよ! 図.意味ある文とそうでない文とを識別するシステム Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

22 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
問題点 すべての文を知ることはできるのか? 会話文の単語数:10個程度 人の発話速度:1分当たり:10文程度 一日(8時間)に接する文の総数(延べ): 10[文/分]×60[分]×24[時間]×365[日]×10年 =約      個 (注)意味ある文の個数は実質有限個? 識別処理動作が止まらないことがある.我々人 間は有限時間に処理を終えるのに... Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

23 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
アイデア2) 文は無限個. これを有限の記述(規則)で捉えたい. これを文法と呼ぼう!(チョムスキーの思想) 文法G = ( Vn, Vt, P, S ): ただし、 Vn(非終端記号の集合): 0 < #Vn < +∞ Vt: 終端記号の集合: 0 < #Vt < +∞ P: 書き換え規則の集合 {α→β| α, β ∈ (Vn∪Vt)*} S: 開始記号(S∈Vn) 言語L = L(G) = { x | S =*> x } ただし、S => ・・・ => x ∈ Vt Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

24 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
結 論 言語と文法の関係 言語 (languages)      文法(grammar) 句構造言語(PSL) ⇔ 句構造文法(PSG) 文脈依存言語(CSL) ⇔ 文脈依存文法(CSG) 文脈自由言語(CFL) ⇔ 文脈自由文法(CFG) 正規言語(RL) ⇔ 正規文法(RG) 計算モデルやプログラミング言語設計に 深くかかわっています。 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

25 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
結 論 言語とオートマトンの関係 言語 (languages)   処理装置 (devices) 句構造言語(PSL) ⇔ チューリングマシン 文脈依存言語(CSL) ⇔ 線形有界オートマトン 文脈自由言語(CFL) ⇔ プッシュダウンオートマトン 正規言語(RL) ⇔ 有限オートマトン 計算モデルやプログラミング言語設計に 深くかかわっています。 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

26 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
その後の発展 言語理論 オートマトン 正規文法 → 正規表現 文脈自由文法 → プログラミング言語 → Bakus-Naur Form その他 弱文脈依存文法 (mildly context-sensitive grammar), GPSGなど チューリングマシン → 計算論  計算の概念,計算可能性,   計算量,計算効率(データ  構造とアルゴリズム)など その他 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

27 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
考察 チョムスキーは,アメリカの構造主義者とみなされ ている. アメリカの構造主義とは,スキナーらの心理学(行 動主義, Behaviorism)の思想であり,atomism(ア・ プリオリ(a priori)に個々の実体があり,それらの 総和が全体を創るという要素主義). チョムスキーも,原子的なもの(終端記号や非終端 記号)からすべてが構成されている,と考えている ことにもなる.それらに,生成規則(書き換え規則) が適用されている.生成規則は自然物理解におけ る“法則”に相当? Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

28 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
ソシュール(2人目) 欧州を中心とする“構造主義”の創始者 科学的パラダイム転換*に寄与 そもそも“言語学”は科学的研究ではなかった. 言語の研究を科学的なものにしたのがソシュール. そもそも“科学的(scientific)”とはどういうことなのか? (注)パラダイムシフト: Thomas Kuhnの提唱した理論. Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

29 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
Epistemology((科学的)認識論) 何が科学的か? 例:言語学は科学的か? 科学的真理とは何か? 科学的とは何か? 思想の側からの科学批判(Wertkritik) ← M. Weber 例:演繹推論だけが科学的なのか?   データ・経験に基づく帰納推論は科学的なのか?   理論に基づくものだけが科学的なのか? 価値批判(Wertkritik)  Epistemology 発展課題 “科学的” とはどういうことを意味するのか? 考えてみよう! Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

30 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
ソシュールの理論(一部) ラング(langue,体系としての言語) パロール(parole,個々の発話や書かれた文) ランガージュ(langage,言語能力) シニフィエ(signifié)とシニフィアン(signfiant) イヌ Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

31 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
ソシュールの理論(一部) ラング(langue,体系としての言語) パロール(parole,個々の発話や書かれた文) ランガージュ(langage,言語能力) シニフィエ(signifié)とシニフィアン(signfiant) イヌ シニフィアン シニフィエ Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

32 結合価理論(Valency theory)
テニエールが(依存関係文法を)提唱 日本語における結合価文法研究(西野) 日本語動詞の結合価(三省堂) ドイツ語文法版 ドイツ語辞書,ドイツ語文法(Duden) (参考)似たものとして,依存関係文法というのもある. Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)

33 Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)
今日のまとめ 文法って色々あり,まだまだ研究しなければならない. ではどうやって? 用例を一所懸命手作業で集める? プログラムを作ってデータを集めたり分析する. データマイニングツールやシステムを作る. 既存の機械学習(人工知能理論,統計理論)を駆使する. 新たな機械学習理論を構築し,システムとして実現する. 脳科学や心理学の研究(ヒト自体の研究)を頑張る. それとも... (連絡事項)次回は12月24日(木),次々回は1月18日(月),         最終回は1月20日(水)です.         定期試験は1月25日(月)1限(9:00~10:00). Natural Language Processing 2015 (Tokyo University of Technology)


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