菊池 均 y@kkch.net 名鉄病院 予防接種センター B型肝炎ワクチンについて 菊池 均 y@kkch.net  名鉄病院 予防接種センター 2018/11/30 名古屋大学 感染症ファンダメンタルズ.

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1 菊池 均 y@kkch.net 名鉄病院 予防接種センター
B型肝炎ワクチンについて 菊池 均  名鉄病院 予防接種センター 2018/11/30 名古屋大学 感染症ファンダメンタルズ

2 COI 特に記載すべき事項はありません。

3 B型肝炎ウイルスの疫学 世界の疫学 日本の疫学 ■ 全世界で20億人以上の人がHBVに感染している(一過性も含む)と推定される1)。
■ 約3億5,000万人が慢性的にHBVに感染している2)。 ■ 推定で、毎年60万人がHBV感染による疾患(肝硬変や肝がんなど)により   死亡している3)。 日本の疫学 ■ わが国におけるHBV持続感染者は、130~150万人存在すると推計されている4)。 ■ B型急性肝炎による新規の推定入院者数は年間1,800人程度で、軽症や   潜伏感染例も含めると、5,000人以上の新規感染者が想定される5)。 HBV:B型肝炎ウイルス 1) WHO position paper 2009 ; 84 : 405-420 2) 「B型肝炎ワクチン作業チーム報告書」厚生労働省予防接種部会 ワクチン評価に関する小委員会B型肝炎ワクチン作業チーム 3) Goldstein ST et al.International J of Epidemiol 2005 ; 34 : 1329-1339 4) 日本肝臓学会 編集 慢性肝炎の治療ガイド 2013 ;東京、文光堂、2013 5) 田中靖人 他 : 肝臓 2009 ; 50 : 598-604 3

4 B型肝炎流行地図 出典: WHO International Travel and Health

5 B型肝炎の血清型と遺伝子型 血清型 遺伝子型 HBs抗原蛋白の抗原性による血清分類である
4つのサブタイプがある (adw, adr, ayw, ayr) 抗原決定基`a’はすべての血清型に共通している 抗a抗体を含んでいれば、どの血清型のHBs抗原にも結合できる1 遺伝子型 HBV全ゲノムの塩基配列を比較した遺伝子型分類である 配列が8%違っていれば、異なる遺伝子型と判定される 8種の遺伝子型が確認されている (A-H) 遺伝子型分類は臨床的症状を反映し、地理的分布と一致する2 (1) 飯野 四郎 臨床とウイルス 16(3): ,1988 (2) 坂本知行 他. 臨床と研究 2008; 85:

6 ジェノタイプAは慢性化しやすい ジェノタイプAとA以外のジェノタイプによる B型急性肝炎の臨床的特徴の比較 特徴 ジェノタイプA
(n=107) A以外のジェノタイプ (n=105) 年齢(歳) 36.3±12.0 40.7±14.3 0.032 男性 102(95.3%) 75(71.4%) <0.001 HBV-DNA(log copies/mL) 7.0±1.5 5.8±1.5 <0.0001 HBs抗原消失までの期間(月) 6.7±8.5 3.4±6.5 6か月以上HBs抗原陽性が持続した症例 25(23.4%) 9(8.6%) 0.003 12か月以上HBs抗原陽性が持続した症例 8(7.5%) 1(0.9%) 0.018 性行為感染 81/84(96.4%) 71/79(89.9%) 0.095 カテゴリー:カイ2乗検定  nonカテゴリー:Mann-Whitney U検定 Ito K , et al. Hepatology 2014 ; 59(1) : 89-97より一部改変 6

7 B型肝炎ウイルスのジェノタイプ(遺伝子型)
B型肝炎ウイルスのジェノタイプ分布図1) B型肝炎ウイルスのジェノタイプ(遺伝子型) ●B型肝炎ウイルスは、塩基配列の相違により、ジェノタイプ(遺伝子型)A~H型までの8つに分類される。 ●B型肝炎ウイルスは感染したウイルスのジェノタイプにより、臨床病態や予後が違うことが知られている。 Netherlands 117 France 176 Switzerland 65 Spain 493 5 Tunisia 73 Turkey Nigeria 35 Gambia 113 1403 USA/Canada 15 Mexico 31 Costa Rica El Salvador Honduras Guatemala Nicaragua 66 Benin, Burkina Faso, Mali, Togo 137 Venezuela 26 Tibet 17 Egypt 52 Cote di Ivoire/ Ghana 49 Brazil 4 Bolivia 48 Namibia 34 Argentina 143 South Africa 6 DRC 22 Cameroon 20 Malawi 48 Nepal 137 Thailand 33 Yemen 435 India 59 Kenya 89 Indonesia 5 Caucasians Australia 10 Aborigines 64 Myanmar 392 Taiwan 193 Russia 488 China 27 Korea 2833 Japan 68 The Philippines 53 Papua NewGuinea 120 Vietnam A B C D E F G H Unclassified/mixed genotypes C/D recombinant Kramvis A, et al. Vaccine 2005 ; 23 : 2409-2423 7

8 ジェノタイプAの増加(日本) 従来わが国では、B型急性肝炎はジェノタイプBおよびCが
多数を占めていたが、近年、欧米で流行しているジェノタイプAによる 急性肝炎の割合が増加傾向にある。 (%) 100 80 60 40 20 87.3% 6.0% 76.4% 6.5% 15.4% 49.1% 11.5% 39.4% 47.9% 10.4% 41.7% 1991~1996年 (150例) 1997~2002年 (123例) 2003~2008年 (226例) 2009年 (48例) ジェノタイプA ジェノタイプB ジェノタイプC 対象・方法:国内28の国立病院に入院したB型急性肝炎患者547例を対象に、ジェノタイプA、B、Cの分布と推移を評価した。 Tamada Y, et al ; Gut. 2012 ; 61(5) : 765-73より改編 8 8

9 B型肝炎ワクチンの接種方法 水平感染対策: 垂直感染対策:
WHO が1991年に推奨。世界中で、0才で接種しているワクチン。(ユニバーサル) 全ての新生児は、出産後早期にB型肝炎ワクチンの初回接種を行うべきである。 生後24時間以内の接種をさらに強化すべきである。 HBV感染の有病率が高度の国に限らず、低~中程度の国でも、乳児に対するワクチン接種の導入が勧められる。 184か国(2014年)で実施。 接種率80~90%前後を達成した国で急性B型肝炎の減少 台湾は1984年にユニバーサル開始 日本では1986年選択的接種開始(B型肝炎母子感染防止事業)。2016年度に定期予防接種開始 垂直感染対策: 日本では2013年に世界標準接種法に変更。 出生後12時間以内にワクチンとHBIGを接種。その後 1, 6Moでワクチン接種、その2~3か月後にHBsAg, HBsAb測定。保険適用。

10 乳幼児に対するB型肝炎ワクチン接種の意義
唾液・汗・涙などから感染。 父子感染や集団生活での水平感染予防 周囲のB型肝炎再燃(デノボ肝炎)からも予防。 母子感染予防忘れにも対応。 キャリア化を予防 慢性肝炎・肝硬変・肝がんなどを予防 B型肝炎ワクチンは低年齢ほど効果が高い。 ボーダーレス化。途上国ではキャリア率が10~20%の国も多い。

11 垂直感染対策で効果をあげた下げ止まった。 水平感染が防げない。
日本で定期化が必要な理由 垂直感染対策で効果をあげた下げ止まった。 水平感染が防げない。 HBキャリアの家族・親族からの感染。しかも自費。 幼稚園などの集団生活での感染 将来のSTD予防 海外渡航者、海外からの入国者の増加。 Genotype A増加による疾病負担の増加 2016年10月、定期予防接種に 11 11

12 B型肝炎ワクチンの用法・用量 ■水平感染の予防/定期接種 ■垂直感染の予防 抗体陰性ならもう1シリーズ (保険適用)
初回注射20~24週後 (2回目から16~20週後) ■水平感染の予防/定期接種 4週後 初回注射 成人:1回 0.5mL皮下または筋肉内 小児:1回 0.25mL皮下(10歳未満) 2ヶ月齢が標準開始だが、下限なし 2~3か 月後 HBsAbAg ■垂直感染の予防   (抗HBs人免疫グロブリンとの併用) 出生12Hr 以内 1ヵ月 6ヶ月 6ヶ月 1回 0.25mL皮下 抗体陰性ならもう1シリーズ (保険適用) 出生後 12時間以内 ■暴露後予防(汚染事故)    (抗HBs人免疫グロブリンとの併用) 2~3か 月後 HBsAbAg ヘプタバックス®-Ⅱの効能・効果と用法・用量です。 効能・効果は「B型肝炎予防」「B型肝炎ウイルス母子感染予防」そして「針刺しなどによる汚染事故後のB型肝炎発症予防」の3つがあります。 用法・用量につきましてはスライドに示しましたとおりです。 ただし、いずれの場合も能動的HBs抗体が獲得されていない場合には追加注射を行います。 事故発生後 7日以内 初回注射 1ヶ月後 初回注射  3~6ヶ月後 成人:1回 0.5mL皮下または筋肉内 小児:1回 0.25mL皮下(10歳未満) B型肝炎ワクチン 事故発生7日以内 (48時間以内が望ましい) 抗HBs人免疫グロブリン <能動的HBs抗体が獲得されていない場合は追加接種をする>

13 台湾:ユニバーサルによるキャリア率の減少
●1984年よりB型肝炎ワクチンのユニバーサルワクネーションプログラムが開始 ●導入時9.8%だった5歳未満のウイルスキャリア率が、15年後には0.7%に減少した1) (%) 9.8% 10 HBs 抗原陽性率 4.6% 1.3% 0.7% ユニバーサル ワクチネーション プログラム実施前 実施5年後 実施10年後 実施15年後 1)Chang MH .Antivir ther 2010 ; 15 : 463-469 13

14 台湾:劇症肝炎死亡率の変化 HBワクチン全国予防接種プログラム導入により、台湾の乳児の劇症肝炎による死亡率は、導入前の3分の1に減少した。
(乳児人口10万人あたり) 5.36 平均死亡率 1.71 1975~1984年 1985~1998年 試験概要 対 象:1975~1998年に死亡した台湾国籍の乳児(0~1歳) 方 法:各年度の劇症肝炎による平均死亡率を調査し、HBワクチン全国予防接種プログラム導入前(1975~1984年)と      導入後(1985~1998年)の差をポアソン回帰分析で比較検討した。 Kao JH, et al. J Pediatr 2001 ; 139(3) : 349‐352 14

15 台湾:年齢別の肝癌罹患率 台湾:ユニバーサル開始(1984年)*前後の肝癌罹患率 1984年より前に出生 1984年以降に出生 0.60
海外データ 台湾:ユニバーサル開始(1984年)*前後の肝癌罹患率 (/10万人年) 0.60 0.6 0.56 1984年より前に出生 1984年以降に出生 0.49 0.4 肝癌罹患率 0.21 0.20 0.2 0.16 出生コホート 6~9 10~14 15~19 (歳) 年 齢 *台湾では1984年7月にHBワクチンの全国予防接種プログラムを導入 Chen DS, et al. J Hepatol 2013 ; 59(5) : 1073-1080 15

16 年齢とともに接種後抗体価が低下 筋肉内投与 皮下投与 HBs抗体陽転率 全 体 筋肉内投与 皮下投与 92.4%
(mIU/mL) 211.7 (mIU/mL) 187.4 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 ≥50歳 145.3 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 ≥50歳 100 100 84.3 75.6 46.8 54.0 38.8 HBs 抗体価 24.2 17.5 10 10 幾何平均値 幾何平均値 (ヵ月) (ヵ月) HBs抗体陽転率 全 体 筋肉内投与 皮下投与 92.4% (1,438/1,557例) 95.0% (662/697例) 90.2% (776/860例) 飯野四郎 他 .薬理と治療 1987 ; 15(6) : 2383-2388 山本祐夫 .薬理と治療 1987 ; 15(6) : 2389-2402 飯野四郎 他 .薬理と治療 1987 ; 15(6) : 2403-2415

17 皮下接種の部位 上腕上3分の1 外側 or 前面  上腕下3分の1 後面(肘の近く) 大腿中3分の1 前面外側

18 USA:皮下接種の部位 上腕、大腿のどこでも良い。 (国内未承認)
Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases, CDC

19 USA: 筋肉注射の部位 三角筋 大腿の外側広筋 針の長さは臨機応変 (国内未承認)
針の長さは臨機応変 (国内未承認) Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases, CDC

20 筋肉注射の注意点 肩峰下滑液包注射に ならないように! 体格に応じて、刺入 深さを調節 刺す時の感触を 大切に
患者の体が逃げると こうなりやすい 無理な体勢になったら針を抜く勇気を!! 体格に応じて、刺入 深さを調節 1インチにこだわらない 刺す時の感触を 大切に 25G以下なら感触あり ワクチンでは やっちゃダメ! 六号通り診療所所長のブログより引用

21 年齢とともに抗体陽性率が低下 菊池ら:B型肝炎ワクチン2、3、4回接種後の年齢別抗体陽性率に関する検討,
日本渡航医学会誌 8巻1号 P21-25( )

22 4回接種以後の抗体陽転率(当院) 3回接種による陽転率は 4回目接種による陽転率は38%(18/47)
0才代 97%, 10才代 92%, 20才代 82% 30才代 75% 40才代 67%, 50才代 60% 4回目接種による陽転率は38%(18/47) 5回目接種による陽転率は36%(12/33) 6回目接種による陽転率は43%(6/14) 6回接種後の抗体価が陰性だった3例について 1例は6回接種後の抗体価が4.9mIU/mlだったため7回目を接種して抗体を測定せずに終了した。 1例は7回目接種後に陽転した。 1例は9回目接種後に陽転した。4回目以降の接種後抗体価は順に(0.4, 0.0, 1.2, 1.0, 2.1, 12.3)であった。 菊池ら、2015年ワクチン学会抄録

23 結果2 n:

24 結果1 n: 17 9 27 48 40 16 4 3回接種後の年齢別抗体価を示す。 横軸が年齢階級で、縦軸が抗体価を示す。
検査値は、茶色が0mIU/ml台、赤が1台、オレンジが2~4、黄色が5~9、黄緑が10~19、青が20~49、紫が50~99、灰色が100以上を示す。 3回接種後、0~19才は抗体陰性率は0%であった。20才代は7%、30才代は23%、40才代は25%、50才代は25%であった。このように30才代以上は4人に一人が陽転しなかった。 また0mIU/ml台の人は30才台で2%、40才代で13%、50才代で13%と、40才代以上で上昇した。 60才代はnが少ないので判断は保留する。

25 接種間隔と抗体価 1-2回目間隔は2週間以上で差は見られなかった。
3回接種後抗体価 1-2回目間隔は2週間以上で差は見られなかった。 2-3回目間隔は3か月以上で差は見られなかった。2か月間隔では3か月間隔より低い可能性はあったが、2回接種よりは3回接種の方が高かった。 菊池ら、第20回日本渡航医学会抄録

26 追加接種と免疫記憶 基礎接種で一度免疫がつくと、免疫記憶ができる。 免疫記憶ができると、抗体価が下がっても1回の追加接種で免疫が上昇する。
例外:莢膜(多糖類=ポリサッカライド)を持つ細菌の感染や、ポリサッカライドワクチンでは免疫記憶ができない。結合型ワクチンでは免疫記憶ができる。(Hib, 肺炎球菌, 髄膜炎菌, 腸チフス) 免疫記憶には蛋白抗原が必要。 免疫記憶ができると、抗体価が下がっても1回の追加接種で免疫が上昇する。 HBs抗体が陽性だと、ウイルスは肝臓到達前に除去される。 HBs抗体が下がると、ウイルスは肝臓に到達し肝細胞へ感染を起こす。発病前に抗体が上昇し発病しない。 肝細胞内のウイルスを除去する方法は無く、将来のde Novo肝炎のリスク。 発病を防ぐ為なら、一生追加接種不要。(集団免疫) 肝細胞への感染を防ぎたければ、抗体価を維持する必要がある。(個人免疫) イギリスのGreen Bookでは、職業上暴露を受ける人は、 100mIU/ml以上の人は5年ごとに1回追加接種 10~99mIU/mlの人は1回追加接種した後に5年ごとに1回追加接種

27 B型肝炎の発病予防とブレイクスルー感染 ブレイクスル―感染の定義: HBc抗体およびHBV-DNAの検出
解析集団 追跡人数 追跡年数 HBs抗体≧10mIU/L HBs抗原+ HBc抗体+ 肝炎発症 中国 小児1 74 9 38 (51%) 12 (9%) なし 台湾 小児2 140 5 117 (83%) 10 (7%) アラスカ 小児 & 成人3 1194 10 907 (76%) 2 (一過性) 13 (1.1%) ブレイクスル―感染の定義: HBc抗体およびHBV-DNAの検出 ワクチン接種後抗体を獲得した人において、抗体価の減衰が報告されているが、急性/慢性肝炎の発病は報告がない。 ∴ 抗体価が低下しても肝炎発病は防ぐが、肝臓への感染は防げない。 各試験、追跡期間中は毎年採血を実施してチェック。 Lieming D, et al. Clin Infect Dis 1993; 17: Lee PI, et al. Pediatrics 1995; 126: Wainwright RB, et al. J Infect Dis 1997; 175:

28 ワクチン接種後の各時期における≧10mIU/mLのHBs抗体価獲得者の割合
ワクチン投与量の増量による効果 1回投与量を増やすことで抗体陽性率が高まるとする報告がある 概要 過去に1回以上のB型肝炎ワクチン接種シリーズを完了したが、HBs抗体が測定可能となる値に達しなかった健康成人46名を対象に、B型肝炎ワクチン10μgおよび40μgの免疫原性と、pre-S1およびpre-S2およびSサブユニット粒子を含む治験ワクチン(混合粒子ワクチン:MPV)の免疫原性を比較 結果 40μg用量群では100%が発症を阻止できるHBs抗体価を獲得した   ワクチン接種後の各時期における≧10mIU/mLのHBs抗体価獲得者の割合 HBs抗体価獲得者の割合 10mIU/mL以上の (%) 100*** 100 80 60 40 20 93.3 87.5 81.3 ワクチン群 MPV(n=17) S10(n=18) S40(n=17) 68.4 66.7 64.7 62.5 62.5 62.5 53.3 50.0 ワクチンの1回投与量を増やすことで抗体陽性率が高まるとする報告です。 過去に1回以上B型肝炎ワクチン接種シリーズを完了しましたが、HBs抗体が測定可能 値に達しなかった健康な成人46名を対象に、B型肝炎ワクチン10μgおよび40μg の効力と、pre-S1およびpre-S2およびSサブユニット粒子を含む治験ワクチン(混 合粒子ワクチン:MPV)の効力を比較しました。 グラフは、ワクチン接種後の各時期における≧10mIU/mLのHBs抗体価獲得者の割 合を示したものです。6カ月の時点では、40μg用量群の100%が≧10mIU/mLの 抗体価を獲得し、高い効果を示しています。 A Comparative Trial of Standard or High-Dose S Subunit Recombinant Hepatitis B Vaccine versus a Vaccine Containing S Subunit, Pre-S1, and Pre-S2 Particles for Revaccination of Healthy Adult Nonresponders Joseph S. Bertino Jr.,  Abstract The efficacy of 10-µg and 40-µg hepatitis B vaccines was compared with that of an investigational vaccine containing pre-S1, pre-S2, and S subunit particles (mixed particle vaccine) in inducing protective anti — hepatitis B surface antigen (anti-HBs) concentrations in 46 otherwise healthy persons who previously did not develop measurable levels of antibodies to at least one complete course of vaccine. A statistically significant difference was seen in the percentage of subjects who developed protective levels of anti-HBs (⩽10 mIU/mL) with three 40-µg doses of S subunit vaccine versus the other groups. One hundred percent of the 40-µg dose group developed protective anti-HBs titers. No difference in adverse effects was noted. 1カ月 2カ月 3カ月* 6カ月** 初回接種からの経過時間 注記:MPV:B型肝炎混合粒子ワクチン、S10:組換え型ワクチン10µg、S40:組換え型ワクチン40µg * 3回接種シリーズ後1カ月 ** 3回目接種後4カ月、MPVのn=16、S10のn=16、S40のn=14 *** P=0.015、Fisherの直接確率検定によるMPV群およびS10群との比較 Bertino JS Jr, et al. J Infect Dis 1997;175:678–681. 28

29 B型肝炎の免疫を早くつける工夫 任意接種で、早く免疫をつけたい人には 皮内接種でなく筋注で。
1~2回の間隔は3週間以上、無理なら2週間以上で。 2~3回の間隔は3ヶ月以上、無理なら2ヶ月以上で。 1か月後にHBsAb検査。陰性なら1か月ごとに接種と検査。 20~30才以上で、何度も来院できない場合 3回目接種時に抗体をCLIA法で測定し、 HBsAb<2.0mIU/mlなら1ヶ月後に4回目を接種。 ただし20's:67%、30's:45%、40's~:43%は無駄な接種となる。 3回目接種後1ヶ月で抗体をCLIA法で測定し、 HBsAb<10.0mIU/mlなら次回4回目を接種。

30 その他の方法 (国内未承認) 国内未承認ワクチンを使う 適用外使用をする
その他の方法 (国内未承認) 国内未承認ワクチンを使う GSK Engerix® : s抗原20μg, 0,7,21d, 1Y の4回接種法 GSK Twinrix® : s抗原20μg, HepA, アルミアジュバント添加 GSK Fendrix® : s抗原20μg, AS04アジュバント添加 HEPLISAV-B : s抗原20μg + Dynavax’s アジュバント Sci-Vac-B™ : s抗原、Pre-S1抗原、Pre-S2抗原 10μg? 適用外使用をする 2倍量を使用 海外では透析患者用に40μ認可されている。 ヘプタバックスも、米国ではRecombivax (ヘプタバックスと同じ)の40μがある。 Engerix加速接種法 (20μg 0,7,21d, 1Y ) 最初の3週間で60μg 、日本での2年分を接種する。 皮内接種併用法 (当院では勧めない) 1/5を皮内, 4/5を筋注 皮内接種は1/5の量で筋注と同等の効果と言われている。2倍量筋注と同等。 皮内接種部位に色素沈着が起きることあり。

31 ハイリスク・ローレスポンダーのための工夫(菊池式)
国産ワクチンを0,1,6Mで接種し7Mで抗体検査する。 急ぐ場合、3回目は2回目から2か月まで短縮する。 HBsAb<0.5などローレスポンダーであることが確認できた場合 本人希望が前提 2倍量を接種し、1か月後に抗体検査。これを繰り返す。 Twinrix を0,1,3wで接種し1か月後に抗体検査。 2シリーズ打って10mIU/mlを超えなかった時 抗体価の10未満の値を問い合わせる。 5以上なら、あと1~2回でたぶん陽転。 2~5なら、あと2倍量2回くらいでたぶん陽転。 2未満なら、Twinrix または 2倍量加速接種法 以前、某病院看護師が、2シリーズ接種して10を越えなかったため、看護師をやめなければいけないか思い悩み、当院来院した。2シリーズ後のHBsAbは6台だった。2倍量接種(7回目)し、1か月後に抗体は50台に上昇した。この接種費用は自己負担になった。

32 ビームゲン10μgとEngerix-B10μgの免疫原性
三宅 和彦ら:組み換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来、RIT-HB)の第Ⅱ相臨床試験成績, 臨床医薬6巻5号(5月) 1990

33 Twinrix, EngerixB, HPVaxProの40歳以上の抗体陽転率
Twinrix (GSK HB 20μg + HA + アルミアジュバント) Engerix-B (GSK HB 20μg) + Havrix1440 (GSK HA) HBVacPro(Sanofi-MSD, 10μg)+Vaqta(Merq) J Travel Med Mar-Apr;18(2): doi: /

34 Twinrix, EngerixB, HPVaxProの40歳以上の抗体価
Antibody Persistence and Immune Memory 4 Years Post-Vaccination With Combined Hepatitis A and B Vaccine in Adults Aged Over 40 Years J Travel Med Mar-Apr;18(2): doi: /j x. Epub 2011 Feb 7. J Travel Med Mar-Apr;18(2): doi: /j x. Epub 2011 Feb 7.

35 国内ワクチンとTwinrix接種後抗体陰性率(当院)
A型肝炎抗体陰性率 B型肝炎抗体陰性率 ●エイムゲン®(化血研)は国内認可のA型肝炎ワクチンで、アジュバントなし。。 ●ビームゲン® (化血研)とヘプタバックス®(MSD)は国内認可のB型肝炎ワクチンで、HBs抗原を10才以上は10μg、10才未満は5μg含有している。初回接種は4週間隔で2回接種、追加接種は5~6か月後。 ● Havrix®(GSK社)はA型肝炎ワクチンで、抗原を1440EUとアルミアジュバントを含有する。基礎接種は1回接種で、6~12か月後に追加接種を1回行う。国内未認可ワクチン。 ● Twinrix® (GSK社) はA型肝炎(720EU)とB型肝炎(20μg)とアルミアジュバントを含有する。基礎接種は4週間間隔で2回接種。6~12か月後に追加接種を行う。国内未認可ワクチン。 左表に、3種のワクチンの基礎接種後と追加接種後の抗体価を示す。年齢とともに抗体陰性率が上昇していること、基礎接種後の抗体陰性率は Twinrix < エイムゲン < Havrixであった。Havrixは出発までに2回接種できない人に限定することが望ましいと考えられた。 右表に、Twinrixの2回接種後抗体価と、国産ワクチンの2,3,4回接種後抗体陰性率を示す。年齢とともに抗体陰性率が上昇していること、国産は3回接種しても20歳以上では抗体陰性率が20%程度あること、2回接種どおしを比較するとTwinrixのほうが抗体陰性率が5分の1と低く、Twinrixの高い免疫原性が示された。 菊池ら, 第21回日本渡航医学会発表

36 Twinrix接種後の血中HBs抗原の推移
ワクチン接種後、派遣前健診で肝炎検査を行う場合に注意。当院でも接種後HBsAg(+)で再検になった報告あり。

37 集団免疫と個人免疫の打ち方 集団免疫 : 定期接種・環境感染学会ガイドライン 個人免疫 : ハイリスク・医療従事者の考え方
集団免疫 : 定期接種・環境感染学会ガイドライン 患者が発生しても感染拡大しなければよい。 再生産率<1が目標。(患者発生0が目標でない) 抗体陽性率が流行阻止レベル以上あれば良い。 麻疹ワクチン接種率95%で陽性率90% B型肝炎定期接種は3回接種で小児の陽性率ほぼ100% 接種前に抗体検査 → 費用/ワクチン節約 (風疹) 個人免疫 : ハイリスク・医療従事者の考え方 接種本人の感染防止が目的。 抗体陽転が目標 → 接種後に抗体検査。 B型肝炎垂直感染予防、医療従事者は接種後抗体測定。 麻疹/風疹/おたふく風邪/水痘を接種後抗体測定

38 環境感染学会ガイドラインは集団免疫 功:医療機関がスタッフにワクチンを打つようになった。 罪:ガイドラインの基準が一人歩きして誤解
「医療関係者のためのワクチンガイドライン」序文 医療機関において院内感染対策の一環 個人個人への厳格な予防を目的として定めたものではない。 医療機関という集団での免疫度を高めることが基本的な概念である。 ごく少数に起こりうる個々の課題までもの解決を求めたものではない。(← 5%は、ごく少数らしい) ほかの方法を排除するものではない。 功:医療機関がスタッフにワクチンを打つようになった。 罪:ガイドラインの基準が一人歩きして誤解 意味:病院が病院の感染制御のために病院負担で行う最低線を定義したものと考えられる。広く浅く、である。

39 環境感染学会GL B型肝炎ワクチン 医療従事者だけでなく、事務、警備等まで含む(そのとおり!) 効果 接種方法 赤字が、半分ウソ
1シリーズのワクチン接種で40歳未満の医療従事者では92%、40歳以上で84%で抗体獲得した。(当院データだと30歳以上は75%程度) 免疫獲得者では抗体価低下しても肝炎の発症予防効果は持続するので追加接種不要。(ただし肝臓へ感染して将来deNovo肝炎起こすけどね) 接種方法 基礎接種: 0,1,6Mで接種, 1-2M後に抗体検査 陽性者 = 一生追加接種不要(ただし抗体下がったら肝臓へ感染) 陰性者 = 0,1,6Mで2シリーズ接種。1-2M後に抗体検査 陰性者 = ワクチン不応者としてワクチンをあきらめる(3シリーズで付く人多いけどね。あきらめちゃダメだよ。) 赤字が、半分ウソ 緑字が、菊池の考え

40 国内のB型肝炎ワクチン

41 ヘプタバックスのリン酸塩濃度変更 MSD社の製造するB型肝炎ワクチンについて 1986年 MSD社製B型肝炎ワクチン(酵母由来)が米国で承認
2000年 欧州で、6混発売開始 200年 6混とPCV7の同時接種時でB型肝炎の免疫原性が減弱。 アジュバントのアルミニウムヒドロキシフォスフェイト硫酸塩(アジュバント)の、リン酸塩/アルミニウムモル比を2倍に変更することで免疫原性が改善 2008年 欧州でB型肝炎単抗原ワクチンの製法変更が承認 2011年 米国でB型肝炎単抗原ワクチンの製法変更が承認 2017年 12月 日本で承認 (シリンジ製剤の剤形追加)      ↓ シリンジ製剤は免疫原性が改善された。 (バイアル製剤は古いまま)

42 HBs抗体検査の基準物質変更の影響 HBs抗体検査のキャリブレータ、コントロールの製造に使用する基準物質がWHO 1st International Reference Preparation 1977 (Code W1042)からWHO 2nd International Reference Preparation 2008 (Code 07/164)に変更された。 アボット社では2018年に切り替えられた。 当院では2018年2月23日から新試薬に切り替えられた。 新試薬では旧試薬より測定結果が高く表示される。 Y=1.44 X  (10≦X≦1000) Y=1.53X-1.46  (10≦X≦70) 0~20mIU/mlの低値では、Y=1.48 X , 簡便にはY=1.5Xで近似された。 測定下限が旧試薬の10mIU/mlから2.5mU/mlに下がった。 10mIU/ml以下の結果が返って来たら新試薬。 HBワクチン3回目接種時の抗体価を測定し4回目以降が必要かどうかを判断することが可能になる。 WHOはカットオフ値を10 mIU/ml のままとしている。実質的にカットオフ値切り下げ。

43 B型肝炎ワクチン ビームゲン不足 化血研は、明治の資本下に入り、KMバイオロジクス(KMB)に社名変更 熊本震災でビームゲン生産工場が被災
工場を再建し、検査体制を整える一方、過去に生産したワクチンを出荷してきた。 生産認可に想定より時間がかかり、供給開始は2019年4月頃の見込み。 11月頃から完全に欠品する見込み。

44 B型肝炎の定期接種スケジュール 2016年10月に定期接種開始。 A類疾病
対象は2016年4月1日以降生まれの1歳未満。キャッチアップなし。 1回目と2回目の間隔は27日以上。 1回目と3回目の間隔は139日以上。 0.25mlを皮下注射。 標準的な接種開始は2ヶ月齢。 生まれてすぐは出生届がないので定期接種は難しい? 長期療養特例は年齢上限なし。 垂直感染対策は保険診療で行う 予防接種登録機関でなくても接種可能。 ガンマグロブリン、抗体検査、追加接種も保険適用。 母子感染予防と定期のプロトコルが併存。接種漏れ、重複接種注意!

45 まとめ B型肝炎は遺伝子型Aの増加とともに疾病負担増加。 B型肝炎ワクチンは年齢とともに免疫反応低下する。
小児は、1990年代からユニバーサルをWHOが推奨。 日本はセレクティブにこだわり、父子感染や水平感染が防げなかった。 ハイリスク者には、個人免疫か集団免疫を考える。 KK学会GLは集団免疫目的。 ハイリスク者は、抗体を維持することを勧める。 一度抗体陽転すると肝炎は防げるが、感染は防げない。 汚染事故の暴露後接種等、免疫付与を急ぐ場合は、(当院データ) 1回目と2回目の間隔は3週間まで短縮可能 2回目と3回目の間隔は2ヶ月まで短縮可能 2回接種後1ヶ月以上後にHBsAb<2なら、4回まで接種 3回接種後1か月以上後にHBsAb<5なら、5回まで接種 4回接種後以降は4割ずつ抗体陽転する。6回の陽転率は95% 6回で付かなくても9回までに付く可能性大。諦める必要ない。 ただ、すぐに下がる人がいるので6か月~1年後抗体検査。 ローレスポンダーには、抗原量を増やすと改善する可能性(国内未承認)


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