黄熱、ポリオ、髄膜炎菌ワクチンと 海外渡航者のためのガイドライン

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1 黄熱、ポリオ、髄膜炎菌ワクチンと 海外渡航者のためのガイドライン
菊池 均  名鉄病院 予防接種センター 2019/10/30 サノフィ社内講演会 

2 名鉄病院 予防接種センター 海外渡航者前ワクチン接種 定期予防接種 留学前接種 赴任家族に定期接種 が必要

3 トラベルメディスン情報源 渡航医学先進国の知識を日本の状況に適用する 予防接種ガイドライン(毎年更新) 予防接種の手引き 近代出版
予防接種の手引き 近代出版 感染症予防必携 日本公衆衛生協会 予防接種に関するQ&A集 日本ワクチン産業協会 (2018がウエブ公開) 海外渡航者のためのワクチンガイドライン/ガイダンス2019 横浜市衛生研究所 各国の予防接種 : 114か国の定期予防接種 WHO International travel and health  Country List : 黄熱、マラリア要求詳細。各国がWHOに報告。あたらずとも遠からず。 Disease distribution maps : 感染症常在地域マップ。渡航者説明用に印刷しておく。 CDC Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases 通称 Pink book (ウエブ公開) 米国の予防接種マニュアル。appendixに実用資料多数。 CDC Travel : 国別情報: Destinations CDC Vaccine :

4 情報源: 教科書

5

6 海外渡航者のためのワクチンガイドライン 現状: 目的 方法 出版 前の版は2010年。生ポリオの時代。古い。
日本はいまだにワクチン後進国。世界で標準で使われているワクチンが使えない。 日本独自のアレンジが必要。日本のワクチンで組み立てた情報が必要。 しかし日本のワクチンはデータが少ない。 目的 限られたデータをもとに、できるだけエビデンスに基づいたガイドラインを作成する。 各ワクチンの説明は、エビデンスを集めるのが困難なので、ガイダンスとする。 方法 川崎医大小児科中野教授を中心に、日本渡航医学会の専門家の他、狂犬病の西園先生、B型肝炎の四柳先生をくわえた豪華執筆陣 クリニカルクエスチョン(CQ)は執筆陣の投票 出版 2019年9月出版

7 ワクチン要求の種類 Required vaccine : 要求されるワクチン Routine vaccine : 定期予防接種
要求国への感染症流入を防ぐための社会的要求。 接種を拒否すると入国を許可されないこともある。 Routine vaccine : 定期予防接種 WHOのEPI(Expanded Program on Immunization) で基本を定め、各国はこれに準拠して定期予防接種を行っている。就学時には定期予防接種の実施を求められる。 Recommended vaccine : 自己予防、任意 自己防衛のために任意で接種。 過去の接種歴や現地での活動内容などを元に、任意で選択する。 予防するか、罹患してから治療するかの選択。

8 Required Vaccine 本人(ゲスト)の安全よりもホストの安全のため要求。 入出国時要求 入学時要求 流行時臨時要求
感染した渡航者から流行が持ち込まれることを防ぐ。 WHO International Health Regulation (IHR) で規定。現在2005年版。 WHO International Travel and Health (ITH) ホームページで公開 黄熱: 東海/北陸では、セントレア中部空港検疫所支所のみで扱う。 媒介蚊は存在するが、ウイルスは存在しない国:ウイルスが持ち込まれ流行が開始することを防ぐ為、流行国からの入国者に対し接種証明書提示を要求することができる。 媒介蚊もウイルスも常在し、国民の接種率が低いなど、いつ流行が始まってもおかしくない国: 全ての入国者に接種証明提示を要求することができる。 媒介蚊の存在しない国では、要求しない。 WHO International Travel and Health / 検疫所FORTHホームページ ポリオ: 国外への感染拡大を起こしているパキスタンでは、4週間以上の滞在者に対し出国時に、過去1年以内のポリオワクチン接種を要求している。(実際には実施されていないっぽいというのがご愛敬) IAMAT POLIO の情報がわかりやすい 入学時要求 学校内での流行を防ぎ、学校の安全を守るために要求。 USA、カナダのオンタリオ州での要求が厳しい。 一時期イタリアも厳しかったが、今は緩くなった。 流行時臨時要求 麻しん: 2003年のマーシャル諸島のマジュロ環礁での麻疹流行時には、入国者や、6ヶ月~30歳までの全ての乗船者に予防接種証明の提示が要求された。流行の終焉とともに解除された。

9 Routine Vaccine 定期接種は、WHOがposition paperとして標準スケジュールを公開。各国が自国用にアレンジして導入。 各国の定期接種スケジュールは、横浜市衛生研究所参照 横浜市衛生研究所 各国の予防接種 114か国の情報あり。随時追加中。中国が追加になった。 米国では定期接種が入学時要求になっているので重要。 CDC Vaccines and Immunizations CDC By ageとCatch up scheduleが重要。 Catch up scheduleが詳細に規定されているのは素晴らしい。 State Vaccine Requirements – National Vaccine Information Center State-by-State: Vaccinations Required for Public School Kindergarten

10 Recommended Vaccine 自分の身を守るための任意のワクチン。狭義のトラベラーズワクチン。 頻度が高く、中等症~重症の疾患
インフルエンザ A型肝炎 麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘 マラリア (予防薬)  頻度は低いが重症化/慢性化する疾患 黄熱 狂犬病 B型肝炎 破傷風 日本脳炎、ダニ脳炎 ワクチンや予防薬のない疾患は、予防行動で防ぐ デング、チクングニア、ジカ MERS、エボラ、など

11 黄熱ワクチンとGL 困ったこと 時期的な問題 期待 公的輸入ワクチン。 剤形変更があった。 従来、5人用1バイアル。
2018年10月頃から、スタマリル 研究的接種 2019年、1人用1バイアル。値上げ! 時期的な問題 ブラジルでの黄熱流行 。要求国の一時的な変更あり。ワクチン世界的不足。 期待 現在、検疫所、検疫衛生協会と一部の国立病院、一部の大学病院でのみ接種 1人1バイアルになったことで、接種機関が増えるといいな???? 公的輸入ワクチン。 IHR(国際保健規則)に基づき、国際的に接種しないといけないワクチン。 IHRの実施官署である検疫所で接種を行う。 日本の正式な治験は通していないらしい。簡単な審査は行っている。 日本の正式な検定は受けていないらしい。簡単な確認検査は行っている。

12 IHRと黄熱とポリオ IHR 国際保健規則。現在2005年版。 IHRの実施官署が、日本では検疫所である。
国際交通に伴う感染症の移動を防ぐための国際条約。国連加盟国が批准している。 国際渡航者による感染予防を防ぐ為、 黄熱:  A: 常在国  B: 常在はしていないが媒介蚊が存在。持ち込まれたら流行する C: 常在もしていないし媒介蚊も不在 ポリオ:  B: 常在はしていないが、持ち込まれたら流行する衛生状態 C: 常在もしていない。持ち込まれても流行しない衛生状態 Aの国は、すべての入国者に対し、ワクチン接種を義務付けることができる。 Bの国は、Aの国からの入国者に対しワクチン接種を義務付けることができる。 黄熱: 流行国から10日以内に入国する渡航者に対し ポリオ: 流行国に4週間以上滞在した人と、住民に対し Cの国は、ワクチン接種を要求しない。 要求の詳細は、WHO International Travel and Health および、IAMAT ホームページ、 検疫所FORTHホームページ参照のこと。 船舶の水の衛生、船舶/航空機内の蚊やネズミの駆除、船舶/航空機内の患者発生の報告義務なども規定されている。 IHRの実施官署が、日本では検疫所である。

13 日本はワクチン後進国 海外の教科書がそのまま適用できない。 認可されているワクチンが少ない。
MMR、腸チフス、ダニ脳炎、Tdap 供給量が足りない: 急激な需要増加に対応できない。 狂犬病(暴露前接種は割当制) →  Rabipur® GSK  麻疹や風疹流行時 新たに認可されると値段が上がる 不活化ポリオ、髄膜炎菌 国内のみ流通、国際標準ではない 海外製品との互換性データが乏しい(狂犬病) 新しい接種方法が導入されず不便(A型肝炎、狂犬病) 定期予防接種が諸外国と違いすぎる。 0,1才は改善したが、5才のMMR、Tdap,IPV、11才のTdapがまだない。 ワクチン禍に異常に敏感 → 日本独自のワクチンガイドラインが必要。

14 接種部位

15 皮下注射 出典:Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases 13th Edition (2015) Chapter 6, CDC Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases The Pink Book: Course Textbook - 13th Edition (2015)

16 筋肉注射 出典:Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases 13th Edition (2015) Chapter 6, CDC

17 筋肉注射の注意点 ワクチンでは やっちゃダメ! 肩峰下滑液包注射に ならないように! 体格に応じて、刺入 深さを調節 刺す時の感触を 大切に
患者の体が逃げると こうなりやすい 体格に応じて、刺入 深さを調節 1インチにこだわらない 刺す時の感触を 大切に ワクチンでは やっちゃダメ! 六号通り診療所所長のブログより引用

18 異なるワクチンの同時接種の方法 短期間で複数のワクチンを接種するには同時接種が必須 日本方式 (守りましょう)
ワクチンどおしを混ぜてはダメ。 日本方式 (守りましょう) 医師の判断で同時接種が可。同じ日に打つ。 本数規定はない。2~4本が楽。2.5cm以上間隔を取る。 生ワクチン接種後は、27日以上空ける。4週間目に接種可。 生ワクチン以外の接種後は、6日以上空ける。1週目に接種可。 WHO方式 (やむを得ないときのよりどころ) 生ワクチンどおしは、同時または27日以上空ける。 不活化ワクチンはいつ接種してもよい。 接種部位は2.5cm以上間隔を取る。

19 複数回接種の間隔 生ワクチン: 不活化ワクチン、トキソイドの基礎接種: 過去の不完全接種後の対応 1回毎の接種が独立している。
生ワクチン:  1回毎の接種が独立している。 同一ワクチンは6週間以上あける。 不活化ワクチン、トキソイドの基礎接種: 0,1M,6~12Mのものが多い。 接種間隔を極端に短縮しない。(3/4程度まで?) 接種間隔が延びるのは良い。(おおざっぱに4倍程度まで?) 過去の不完全接種後の対応 抗体価測定が理想 とりあえず、接種回数を満たす。 免疫源性が低いワクチンは抗体接種で確認を。(B肝)

20 接種の注意点 西暦で記録 既往歴・現症 接種記録を残す 現在の症状(体温37.5度以下) アレルギー、免疫抑制状態の確認 過去の接種歴の確認
母子手帳に記録 記録カードを作る 接種者サインをする

21 接種部位と接種方法 接種部位と効果は、皮内>筋肉≧皮下≫脂肪組織 皮下注射: 筋肉注射: 接種の注意点:
日本ではワクチンはほとんどが皮下注。 海外では、筋肉注射が多い。 皮下注射: 上腕上3分の1 外側 or 前面  上腕下3分の1 後面(肘の近く) 大腿中3分の1 前面外側 筋肉注射: 上腕 三角筋 大腿中3分の1 前面外側 (外側広筋) 接種の注意点: 肩峰から3横指下以下。上から下へ打つように。(関節腔を避ける) 大腿前面外側=外側広筋。

22 USAでの一般的ワクチン要求 DC~12までは、School Lowでワクチン接種が法的に義務。
0才: DTaP,Hib,PCV,HB,Rot,IPV 1才: DTaP,Hib,PCV,HB,MMR,VZV 4-6才: DTaP,IPV,MMR,VZV 11才: Tdap, MCV4 16才: MCV4 麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘は、ワクチンを規定回数接種しているか、抗体陽性であればOK。 大学は自治が認められているので、大学独自に決めている。 HBは 1-2間は4週以上、1-3間は16週以上の間隔必須。 HAは、要求される場合には6か月以上の間隔で2回

23 ワクチン接種用カレンダー 予防接種センターホームページ

24 計画表

25 各 論

26 忘れちゃいけない三疾患! 黄熱 (アフリカ、南米の流行国) 熱帯熱マラリア (西アフリカ、中央アフリカ、熱帯) 狂犬病 (ほぼ全世界)
黄熱 (アフリカ、南米の流行国) 要求を満たさないと入国できない  ⇒ 検疫所に早めに電話。  初感染で30~50%の死亡率 熱帯熱マラリア (西アフリカ、中央アフリカ、熱帯) 抗マラリア薬で治療しないと重症化→死亡 ワクチンは、まだ、ない。 発病後早期なら、抗マラリア薬内服でなおる。 ⇒ 予防するか、発病したら治療するか? 狂犬病 (ほぼ全世界) 発病したら、99%助からない。 暴露後接種で、発病予防できる。 ⇒ 暴露前接種するか、暴露後接種するか?

27 黄熱 Required vaccine。 常在国:資料 / WHO ITH / FORTH 参照 流行形態:
ネッタイシマカが媒介。初感染の死亡率30~50% 平常時は森林で霊長類間で感染循環(森林型流行) 都市部にウイルスが持ち込まれると爆発的に流行が発生する。(都市型流行)

28 黄熱の入国時要求 要求の主目的は自国に病原体を持ち込まないため。 接種要求国には、国際予防接種証明書を提示しないと入国できない。
媒介動物が存在するが流行が起きていない国では、流行国から病原体を持ち込まれることを回避したい。 接種要求国には、国際予防接種証明書を提示しないと入国できない。 証明書は接種10日後から有効 以前は有効期限10年だったが、2016年7月から一生有効に変わった。 ただし、流行しているなら接種しても良い。 国際予防接種証明書は、政府認定機関が発行 日本では検疫所と検疫衛生協会がほぼ独占 禁忌証明は、一般医療機関で作成後、検疫所の印をつくのがベスト。ドクターサインでもおそらくOK。 黄熱ワクチンは、検疫所でのみ接種可能。集団接種。→ 早めの紹介 一般医療機関では入手できない。

29 黄熱地域 2010年 黄熱常在地域 黄熱要求国 出典:WHO international travel and health homepage

30 黄熱ワクチン YF-VAX® 生ワクチン。1回接種。皮下接種。 国際接種証明書は、一生有効 (2016年変更)。
流行地に行く場合には10年を目途に追加接種。 副反応 ワクチン株の感染症状として、接種1週間程度後に発熱、頭痛10% 神経向性副反応、内臓向性副反応が100万人に約1人 禁忌:   9ヶ月齢未満、重度の卵アレルギー、ゼラチンアレルギー、9ヵ月齢未満への授乳 禁忌証明は、一般医療機関で発行可能。 母乳へのワクチンウイルス分泌あり。 注意接種: 高齢者、妊婦 日本では、サノフィパスツールが検疫所と検疫衛生協会と関連施設にのみ供給。添付文書は同社のHPにある。東海北陸では中部空港検疫所のみ。 流行地に入らない高齢者などは禁忌証明が有効かを確認するよう説明する。 2019年8月に、1バイアル5人用→1人用に製剤が変更になった。

31 ポリオ いわゆる小児麻痺 WHO主導で世界で撲滅活動が行われた。 日本では1960年に、1961年にワクチン導入。OPVを2回接種。少ない。
流行国では、小児へのOPV4回接種+予防接種キャンペーン+AFPサーベイ 患者数が減少したら、段階的にIPVへ切り替える。 ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)の放出拡散を防ぐため 2型ポリオ野生株は撲滅状態のため、OPVを3価から2価に変更 →流行国でもOPV2価+IPVに変更 ポリオ拡散を防ぐ為、非流行国でのポリオウイルス、ポリオワクチンを廃棄 →2019年3月、ポリオNT検査中止に。 日本では1960年に、1961年にワクチン導入。OPVを2回接種。少ない。 世界的には、OPVまたは不活化ワクチン(IPV)を3~5回接種。 米国ではIPV4回接種。海外でOPVを接種してきた人には、IPVとOPVの合計4回接種することを求めている。 (OPV単独かIPV単独なら3回) 日本では2012年に定期接種はIPVに移行した。2014年8月にOPVは終了した。 流行地で、医療機関や、人道支援ボランティア等現地の貧困層と接触する場合や汚水と接する場合、ポリオワクチン接種。

32 麻痺型ポリオ症例の症状 数日間の高熱に続いて、非対称性の四肢の弛緩性麻痺を呈する 病初期より著明な罹患部位の筋委縮
罹患部位の腱反射:減弱ないし消失、知覚感覚異常は伴わない 筋力低下、筋緊張低下および筋肉萎縮が永続的な後遺症として 残ることがある 重篤な場合、呼吸筋麻痺や球麻痺等により 死亡する場合もある 国立感染症研究所 ポリオワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版) 32 32

33 ポリオウイルス感染 ポリオウイルス感染は不顕性感染の割合が高いが、まれに永続的な 運動麻痺、場合によっては死に至ることもあります。
ポリオウイルス感染と臨床病型・ウイルスの所在 感染 20 15 10 5 (日) 麻痺性ポリオ:1%以下 麻痺 急性感染症様徴候(発熱など) Abortive infectionや無菌性髄膜炎:数% 不顕性感染:90%以上 (無症状) 【ウイルスが存在する部位】 血液 咽頭 便 脳脊髄液(中枢神経病変有りの場合) 日常診療に役立つ小児感染症マニュアル2012 第3版 p.484 33 33

34 感染経路 中枢神経組織へ侵入 糞口感染 経口飛沫感染 血液脳関門を 介した侵入 腸管感染 ウイルス血症
Three-dimensional structure of poliovirus at 2.9 Å resolution. Hogle JM, Chow M, and Filman DJ. Science 1985; 229(4720): Shown with permission from Professor Hogle JM. 腸管感染 ウイルス血症 ポリオウイルスは、咽頭、扁桃、頸部リンパ節および小腸の細胞に感染し、腸管感染成立後、ウイルス血症を経て、 血液脳関門を介した侵入、あるいは、神経軸索を介した伝達により中枢神経組織へ侵入する。ポリオウイルス感染から麻痺発症までの潜伏期間は、 3日~1ヵ月強の期間、通常は4~10日程度とされている。 国立感染症研究所 ポリオワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版) 34 34

35 治療法と予防法 治療法:治療薬は存在せず、ポリオ発症後は対症療法のみ* 予防法:ポリオワクチンによる予防接種
ポリオの治療薬は存在しないため、ポリオワクチンによる 予防接種がポリオ発症予防および流行制御の基本戦略となる。 *重症例については気管切開・挿管・補助呼吸などが必要とされる場合がある。 35 35

36 ポリオ対策 WHOによるポリオ撲滅活動 日本でのポリオ対策 生ポリオワクチンを4回以上すべての国民に接種する。
世界中で、すべての子供にポリオワクチンを投与するローラー作戦が行われた。 日本からも、医師団が派遣され、人里はなれた民家を訪ね歩き、ポリオを投与した。 並行して、ポリオ麻痺患者を発見し、登録した。 ポリオ患者の頻度が減少したら、IPVに切り替える。 生ポリオワクチンの接種を中止する。 不活化ポリオワクチンの接種を中止する。 日本でのポリオ対策 昭和36年、北海道と九州でポリオ大流行が起き、多数の小児が死亡した。 ロシアとカナダからポリオワクチンを緊急輸入し、ポリオ流行を抑制した。

37 ポリオの海外における最近の動向 世界におけるポリオ発生状況(1987~2014年) 1988年: 世界ポリオ根絶計画開始
(千人) (人) 野生株によるポリオ発生状況 (2000~2014年) 400 300 200 100 1,000 500 2,000 1,500 3,000 2,500 ポリオ患者数 01 05 09 07 03 11 2000 04 08 06 02 10 12 13 14 (年) ポリオウイルス2型 の消滅 海外におけるポリオの動向としては、WHOが世界ポリオ根絶計画を開始した1988年当時、125か国余りにおいて、毎年35万人程度のポリオ症例が発生していたと推測されています。 2013年の報告では、野生株ポリオウイルスによるポリオ症例数は、世界全体で416例でした。 〈研修テキスト19ページ参照〉 1987 89 91 93 95 97 99 01 05 09 07 03 11 88 90 92 94 96 98 2000 04 08 06 02 10 13 12 14 (年) 国立感染症研究所:ポリオワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版)/ * 年:Global Polio Eradication Initiative (2015年8月11日アクセス) 37 37

38 「根絶」 上田 哲 現代ジャーナリズム出版会 ¥380 → 絶版
「根絶」 上田 哲 現代ジャーナリズム出版会  ¥380  → 絶版 これは、かつて恐れられた病気「ポリオ(脊髄性小児マヒ)」を、1961年(昭和36年)の大発生を前に、生ワクチンで根絶に導いた、NHK記者の上田哲氏の記録です。 ◆ 執念の男  この書は、ポリオの根絶の問題を追求しているが、同時に、日本の陽当りのわるい谷間を歩き続(つづ)けた執念の男の七年間の血の記録である。障害二十万の人のためばかりの本ではない。ぜひ一般人に読んでほしい本である。 水上勉 作家  ■セービン博士からの言葉  はるばる太平洋をこえて、日本のポリオ根絶の報に心から敬意を表す。人類が五十年目にウイルスに勝った喜びを最初に味わったのは日本だ。これから生まれる新しい生命を守ることに成功した素晴らしい人たち、六年間の粘りづよい努力、心からおめでとう。 著者 上田哲(うえだ・てつ) 一九二八年東京に生まる。 一九五四年高校教師のかたわら京都大学法学部卒、NHK入社。 一九六一年社会部記者としてポリオ(小児マヒ)撲滅運動の原動力となる。 のちに首相官邸づめ政治記者、日本マスコミ市民会議代表理事、 月刊「マスコミ市民」発行。著書「貧しきロマン」等。 

39 日本における野生株及びワクチン株によるポリオ麻痺発生状況(1960~2006年)
ポリオの日本における最近の動向 日本における野生株及びワクチン株によるポリオ麻痺発生状況(1960~2006年) 1960年: 北海道を中心にポリオ大流行(患者数5,000人超) (人) 1961年: OPVの緊急輸入 60 50 40 30 20 10 野生株ポリオ ワクチン株ポリオ ポリオ麻痺患者数 OPV: 経口生ポリオワクチン VAPP:ワクチン関連麻痺 1964年: 国産OPV定期接種開始 こちらの図は、日本における野生株及びワクチン株によるポリオ麻痺発生状況です。 日本では、1960年に北海道でポリオが大流行し、1961年に、旧ソビエト連邦及びカナダから経口生ポリオワクチン(Oral Poliovirus Vaccine;OPV、Sabin株)の緊急輸入が行われ、全国一斉集団接種が開始されました。その後、1964年からは国産OPV(Sabin株)の導入・定期接種が開始され、野生株ポリオウイルスによる小児麻痺の発生は激減し、日本では1981年以降、野生株ポリオウイルスによるポリオ患者は報告されていません。 その後は、OPV接種小児のうち、まれにワクチン株に由来する麻痺(Vaccine-Associated Paralytic Poliomyelitis;VAPP)や、OPV接種者から排泄された、生ワクチン由来ポリオウイルスの伝播(circulating Vaccine-Derived Poliovirus;cVDPV)がみられ、問題とされてきました。 〈研修テキスト19ページ参照〉 1981年以降、ポリオ症例はすべてVAPP 1960 65 70 75 80 85 90 95 2000 05 10 (年) 細谷光亮:小児科学レクチャー,2(2), ,2012,(ポリオワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版)を参照して作成)一部改変 39 39

40 年齢/年齢群別のポリオ抗体保有状況2015年※ ■1型 ■2型 ■3型
※主に2015年7月~9月に採取された結成の測定結果 2016年3月現在暫定値 ■1型 ■2型 [抗体価測定:中和法 /N=1937] [抗体価測定:中和法 /N=1937] 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 抗体保有率(%) 抗体保有率(%) 0-5M 6-11M 2 1 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70 3 0-5M 6-11M 2 1 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70 3 年齢/年齢群 (歳) 年齢/年齢群 (歳) ■3型 [抗体価測定:中和法 /N=1937] 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 抗体価 ≧1:4 ≧1:32 ≧1:8 ≧1:64 抗体保有率(%) ≧1:16 ≧1:128 流行予測2015 【2015年度ポリオ感受性調査実施都道府県】 北海道、山形県、群馬県、千葉県、東京都、富山県、愛知県、愛媛県 0-5M 6-11M 2 1 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70 3 年齢/年齢群 (歳) 国立感染症研究所感染症流行予測調査グラフ(2016 年8 月16日アクセス)

41 2004年頃インド周辺とナイジェリア周辺にまで封じ込めたが、再流行。 2019年3月現在、WHOの指定するポリオのリスク国
ポリオ野生株流行国はパキスタン、アフガニスタン、ナイジェリア。ポリオ接種接種推奨。 ワクチン由来ポリオ株流行国は、cVDPV3はソマリア、cVDPV1はインドネシア、パプアニューギニア。cVDPV2はコンゴ民主共和国、ケニヤ、ニジェール。  ポリオ推奨、ポリオ要求は、WHO ITH, IAMAT参照 出典:WHO international travel and health homepage

42 根絶を達成するための条件 効果のあるワクチンが存在する 2. ヒト以外の自然宿主が存在しない 3. 持続感染、潜伏感染がない
4. 政治的・経済的なバックアップがある 中野 貴司:臨床とウィルス44(1):11-17, 2016より作成 42

43 ポリオ最終根絶計画2013~2018年 2020年以降 に延期* 目標1 目標2 目標3 目標4 最後の野生株 ポリオ感染症例 2型OPV
使用中止 根絶宣言 2型OPV 使用中止 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 目標1 ポリオウイルスの検出 および伝播の遮断 野生株ポリオウイルスの遮断 アウトブレイクへの 迅速な対応(特にcVDPVs) 目標2 予防接種体制の強化とOPVの使用中止 予防接種体制の強化 2型OPV中止のための必須条件の提示 IPVの導入完了 3価OPVの 使用中止 IPVと2価OPVの 定期接種での仕様 目標3 ポリオの封じ込めと 根絶の認定 長期封じ込め計画の策定 封じ込めの完了と 世界的な根絶の認定 目標4 継承計画 他の健康問題についてノウハウや インフラに関する助言や応用の検討 継承計画の展開 IPV(Inactivated Polio Vaccine):不活化ポリオワクチン OPV(Oral Polio Vaccine):経口生ポリオワクチン cVDPV(circulating Vaccine-Derived Poliovirus):ワクチン由来ポリオウイルス * (2017年6月5日アクセス)のポリオフリーの定義より推定

44 ポリオワクチン 1975〜77年生まれの者 は I 型の免疫が低かったため、追加接種の実施を厚生労働省は推奨。 ポリオ追加接種方法:
小児の定期接種でOPV2回接種後、IPV1回追加、以後10年ごとに1回追加 小児の定期接種でIPVを4回接種後、5年後にIPV1回追加、以後10年ごとに追加。 成人の場合、IPV1回ポリオ追加。 IPV単味と、DPT-IPV、セービンIPVとソークIPV 野生株由来IPV: イモバックスポリオ(IPV)、 スクエアキッズ(DPT-IPV) ワクチン株由来IPV: テトラビック(DPT-IPV) 、 クアトロバック(DPT-IPV) 流行地に行くなら、海外でポリオ予防実績の豊富な野生株由来を使いたい。 スクエアキッズは来年(2020年5月頃)に販売中止予定なので注意。

45 ポリオ患者発生状況 2018年WPV (野生株,濃青) : 33例、cVPDV (ワクチン由来株,濃橙) : 104例
(1/1~ 10/16) 出典: WHO GPEI

46 ポリオ発症状況(2015年~2016年) 海外では、ポリオが流行している地域があります。 ウクライナ アフガニスタン パキスタン ギニア
2015年:cVDPV 2例 アフガニスタン 2015年:WPV 20例 2016年:WPV 13例 パキスタン 2015年:WPV 54例、cVDPV 2例 2016年:WPV 20例、cVDPV 1例 ギニア 2015年:cVDPV 7例 ラオス 2015年:cVDPV 8例 2016年:cVDPV 3例 ナイジェリア 2015年:cVDPV 1例 2016年:WPV 4例、cVDPV 1例 マダガスカル 2015年:cVDPV 10例 ミャンマー 2015年:cVDPV 2例 ポリオウイルス常在国:地域固有の野生株ポリオウイルスの伝播がいまだに継続している国 2015~2016年の間に野生株またはワクチン由来株ポリオウイルスによる症例が報告された国 WPV(Wild Poliovirus):野生株ポリオウイルス。自然感染した宿主から分離された株。 cVDPV(circulating VDPV):伝播型ワクチン由来ポリオウイルス。ヒト-ヒト伝播の証拠が存在する、遺伝子が変異した経口生ポリオワクチン由来株。 【WPV】Global Polio Eradication Initiative, WILD POLIOVIRUS LIST, 14 Mar (2017年5月17日アクセス: 【cVDPV】Global Polio Eradication Initiative, CIRCULATING VACCINE-DERIVED POLIOVIRUS (2017年5月17日アクセス:

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53 アンゴラ カメルーン 中央アフリカ共和国 チャド 中国 コンゴ民主共和国 赤道ギニア エチオピア ガーナ
ポリオ接種推奨国(=ポリオ発生国) 2019年10月16日現在 アンゴラ カメルーン 中央アフリカ共和国 チャド 中国  コンゴ民主共和国 赤道ギニア エチオピア ガーナ  ギニア インドネシア ケニヤ ラオス リベリア マダガスカル モザンビーク ミャンマー ニジェール ナイジェリア  パプアニューギニア フィリピン シエラレオーネ ソマリア  南スーダン ウクライナ ポリオ発生国からの入国者にポリオワクチンを要求する国 アフガニスタン、ベリーズ、ブルネイ、エジプト、グルジア、インド、 イラン、イラク、ヨルダン、レバノン、リビア、モルジブ、モロッコ、 ネパール、オマーン、パキスタン、カタール、セントキッツネイビス、 サウジアラビア、セーシェル、スリランカ、シリア

54 世界での野生株ポリオ発生状況 (2011~2019年6月まで)
国名 2014 ‘15 ’16 ’17 ’18 ’19 18 Jun パキスタン 306 54 20 8 12 24 アフガニスタン 28 13 14 21 ナイジェリア 6 4 ソマリア 5 カメルーン 赤道ギニア イラク 2 シリア・アラブ共和国 1 エチオピア 合計 74 37 22 33 32 Global Polio Eradication Initiative, WILD POLIOVIRUS LIST, 18 June 2019 (2019年7月1日アクセス:

55 国内では下記サーベイランスにてポリオ発生状況、 発生のリスクなどを調査しています。
日本におけるポリオサーベイランスの現状 国内では下記サーベイランスにてポリオ発生状況、 発生のリスクなどを調査しています。 全数報告対象疾患(感染症法 2類感染症)    診断した場合は、直ちに最寄りの保健所に届出を行う 中和抗体保有状況調査    長期的視野に立ち総合的に疾病の流行を予測する 環境水サーベイランス    ポリオ患者発生およびポリオウィルス伝播の監視 IASR ポリオ中和抗体保有状況ならびにポリオワクチン接種状況( Vol. 30 p : 2009年7月号)より作成 55 55

56 国際線航空機汚水からのウイルス分離 1980年~82年の3年間に成田国際空港に到着した、主に南 回りヨーロッパ線および東南アジア線の27航空路線、合計369 機のトイレ汚水から936検体を採取し、ウイルス分離を試みた。 22機(6%)、25検体(2.7%)に25のウイルスが検出され、 そのうち2つはポリオウイルス1型であった。 両株ともカラチ-バンコク-マニラ路線からの検出であった。 分離されたポリオウイルス1型2株は、いずれも神経毒力の極めて 強い野生型強毒株であった。 抗体を有しない、あるいは抗体価の極めて低い渡航者が感染し、 持ち込んだと考えられ、我が国で初めて野生型強毒株の輸入例 が証明された。 56 甲原照子他:臨床とウイルス 13(1):97-101, 1985

57 日本における野生株検出の例 1984年 愛知県 1993年 滋賀県 分離野生株 ポリオウィルス1型 ポリオウィルス3型 被験者の背景
1984年 愛知県 1993年 滋賀県 分離野生株 ポリオウィルス1型 ポリオウィルス3型 被験者の背景 7歳女児 脳炎で症状を伴う 13歳男性 台湾渡航歴あり 発熱(39.2℃)、上気道 症状、全身倦怠 経 過 野生株の分離後6ヵ月以上経過したが、その間に周辺でのポリオ患者の 発生はみられなかった。 本例は、1984年愛知県での報告以来9年ぶりの報告。 検体採取直前に海外渡航歴があるが、国内感染の可能性も否定できない。 IASR Vol6.No.1 (1985) IASR Vol14.No.11 (1993) 57 57

58 接種スケジュール(接種回数と接種時期注))
先進国の不活化ポリオワクチン接種スケジュール (接種回数と接種時期注)) 注)接種スケジュールが近似している国は、まとめて記載をしています。 そのため、接種時期を網羅する期間(範囲)を示しています。 先進国の多くでは、就学前に追加接種が実施されています。 国名 接種スケジュール(接種回数と接種時期注)) ルクセンブルク※1、オランダ ❶ 2ヵ月 ❷ 3ヵ月 ❸ 4ヵ月 ➍ 11~13ヵ月 ➎ 4~6歳 ➏ 9~16歳 ラトビア ❷ 4ヵ月 ❸ 6ヵ月 ➍ 12~15ヵ月 ➎ 7歳 ➏ 14歳 ベルギー,ハンガリー ➍ 15~18ヵ月 ➎ 5~7歳 スイスa、カナダa、ポルトガル、エストニア ❶ 2~3ヵ月 ❷ 4~5ヵ月 ➍ 15ヵ月~2歳 ➎ 4~7歳 ドイツ※2、チェコ ➍ 10~14ヵ月 ➎ 9~17歳 フランス※3 ➌ 11ヵ月 ➍ 6歳 ➎ 11~13歳 ギリシャ、スロバキア、オーストリア、 ノルウェー ➌ 6~18ヵ月 ➍ 4~7歳 ➎ 11~18歳 米国b、スペイン、フィンランド、 スウェーデン、デンマーク ➍ 4~6歳 イタリア、ポーランド ❶ 3~4ヵ月 ❷ 5~6ヵ月 ➌ 11~18ヵ月 ➍ 5~6歳 英国 ➍ 3歳 ➎ 14歳 ニュージーランドa、韓国a、アイルランド、オーストラリアa ❶ 6週~2ヵ月 ❷ 3~4ヵ月 ❸ 5~6ヵ月 アイスランド ❶ 3ヵ月 ❷ 5ヵ月 ➌ 12ヵ月 ➍ 14歳 スロベニア ➍ 12ヵ月~2歳 日本c ❸ 5~11ヵ月 ➍ 12~23ヵ月 ●初回接種 ●3歳未満の追加摂取 ●3歳以上のの追加接種 ■3~7歳 a:World Health Organization, WHO vaccine-preventable diseases: monitoring system global summary  (2017年2月17日アクセス: b:Centers for Disease Control and Prevention, Child and Adolescent Schedule  (2017年2月17日アクセス: c:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール ※1:6回目以降は10年毎に接種 ※2:単価ポリオワクチンとポリオを除く混合ワクチンを接種していた場合、2回目接種は任意接種 ※3:25、45歳及び65歳以上への接種も推奨されている(65歳以上は10年毎に接種) European Centre for Disease Prevention and Control, Vaccine Schedule (2017年2月17日アクセス:

59 IPV接種25年後の抗体価 A study of the sero-immunity that has protected the Swedish population against poliomyelitis for 25 years. 不活性ポリオワクチンによる予防接種は6年( )の間 スウェーデンでポリオ麻痺を排除した。 この効果は25年後まで続いていた。 ワクチン接種を受けた人のポリオウィルスに対する平均血清抗体価は、 1978年でタイプ1が500倍、タイプ2が800倍、タイプ3が100倍の 範囲であった。 当時のスウェーデンのIPV接種スケジュールは 初回免疫:1~2ヵ月の間隔で2回 1回目追加接種は6~18ヵ月後 2回目追加接種は1回目追加接種から約5年後 59 Böttiger, Scand J Infect Dis. 1987; 19(6): より作成

60 2009年のACIP勧告 1)4歳以上でブースター接種の重要性を強調すること
2)dose 3からdose 4への最小間隔を4週間から6ヵ月に広げること 3)生後6ヵ月までの最小間隔に注意(precaution)を加える 4)混合ワクチンを用いる場合のポリオワクチン接種スケジュールを  明確にすること 4回のIPV接種は引き続き、生後2ヵ月、4ヵ月、6-18ヵ月、4-6歳で行う 接種最終回は、4歳前の接種回数によらず、4歳以上で行う 第3回から第4回への最終間隔を4週間から6ヵ月に広げる 第1回から第2回、第2回から第3回への最小間隔は引き続き4週間とする 第1回の接種年齢は引き続き最低生後6週間とする 60 MMWR, 2009/58(30); より作成

61 スペイン:2017年よりIPVの接種スケジュールを変更
■ スペイン小児科学会からのRecommendationを受け、2017年よりIPVの 就学前追加接種を開始 Immunisation schedule of the Spanish Association of Paediatrics: 2016 recommendations☆ D. Moreno-Pérez*, F.J. Álvarez Garcia, J. Aristegui Fernández, M.J. Cilleruelo Ortega, J.M. Corretger Rauet, N. Garcia Sánchez, A. Hernández Merino, T. Hernández-Sampelayo Matos, M. Merino Moina, L. Ortigosa del Castillo, J. Ruiz-Contreras and on behalf of Comité Asesor de Vacunas de La Asociación Española de Pediatria (CAv-AEP)◊ 6歳でのIPV追加接種 が新たに開始 2017年スペイン厚生省 推奨予防投与スケジュール ワクチン 年齢 か月 2 4 11 12 15 3-4 6 14 ポリオ IPV ジフテリア・破傷風・百日咳 DTPa Hib <理由> ●欧米諸国の多くで就学前追加接種が実施   されている事実 ●2015年のウクライナでの2例のcVDPV発生を   受け予防接種の強化が必要と判断 Moreno-Perez D, et al.:An Pediatr(Barc) 84(1):60.e1-60. e-13, 2016 スペイン厚生省: 61

62 英国:就学前追加接種後の抗体価の推移 ■ 抗体価予測モデルによると,IPV就学前追加接種を行うことにより,追加接種から
9年後のポリオの抗体価は,発症防御レベル1:8以上であることが予測された ポリオウィルス1型 ポリオウィルス2型 ポリオウィルス3型 5 6 6 4 5 5 4 抗体価 3 4 3 3 2 2 2 1 1 1 2 4 6 8 10 2 4 6 8 10 2 4 6 8 10 就学前追加接種後(年) 就学前追加接種後(年) 就学前追加接種後(年) 発症防御レベル (中和抗体価1:8) Td5aP-IPV DT2aP-IPV 対象:3.5~5歳の健康な男女児童100名 方法:無作為化比較対照試験。対象を無作為に3群にわけ,破傷風・ジフテリア・百日咳・ポリオ4種混合ワクチン(Td5ap-IPV群),破傷風・ジフテリア・百日咳3 種混合ワクチン+経口ポリオワクチン(Td5ap+OPV 群)またはジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ4種混合ワクチン(DT2aP-IPV 群)を投与した。ワクチン投与前,投与1年,3年,5年後の抗体を測定し,抗体価減少モデルを作成することにより9年後の抗体価を予測した。 なお,同時に麻疹・おたふくかぜ・風疹3種混合ワクチンを同時に投与した。 Voysey M, et al.:Vaccine 34(35): , 2016より作成 62

63 ポリオワクチン追加接種後の抗体価(海外データ)
乳幼児期の追加接種後、5歳時点での抗体価の減衰が報告されています。追加免疫の接種により高い抗体価が得られています。 試験名 (被接種者数) IPV46試験1) Pancharoen et al.2) Mallet et al.3) Langue et al.4) (n=60) (n=123) (n=234) (n=162) 実施国 日本 タイ フランス 初回免疫 DTaP-IPV DTaP-IPV-Hib DTwP-IPV-Hib 追加免疫1回目 追加免疫2回目 IPV 追加免疫2回目時点の平均年齢 4.0 歳 4.1 歳 5.2 歳 5.7 歳 追加免疫1回目接種後幾何平均抗体価 ポリオ1型 2,359 2,655 ポリオ2型 2,760 2,738 ポリオ3型 3,980 4,610 追加免疫2回目接種前幾何平均抗体価 313 586 58 72 795 700 78 85 315 462 123 187 追加免疫2回目接種後幾何平均抗体価 3,795 3,043 3,174 3,888 9,213 3,444 3,051 3,729 5,242 3,945 3,847 5,179 DTaP:無菌体型三種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日せき) DTwP:全菌体型三種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日せき) 1)佐々木津他:小児科臨床 68(8): , 2015 2)Pancharoen, C. et al.: Southeast Asian J Trop Med Public Health 43: , 2012 3)Mallet, E. et al.: Vaccine 22: , 2004 4)Langue, J. et al.: Vaccine 22: , 2004 63

64 欧米諸国の多くでは、4歳以降に 追加接種が実施されています。
定期接種 任意接種 0歳* 1歳* 4~6歳※ 初回免疫3回 1回目の追加接種 2回目の追加接種 (実費負担) *標準的な接種年齢 ※製造販売後臨床試験にて対象になった年齢層 不活化ポリオワクチンは接種から時間が経つと感染を予防する力が低下してきます。 4~6歳時に追加接種をすると、ポリオ感染を予防する力がより高く維持されます。 初回免疫3回と1回目の追加接種は定期接種ですが、就学前の追加接種は任意接種(実費負担)になります。 64

65 4~6歳のお子さまがいらっしゃる保護者の皆様へ -ポリオの予防について-
ポリオはワクチンによる 予防が大切 まだ存在している ポリオ感染のリスク ポリオウイルスに感染しても 多くの場合は症状があらわれません。 しかし、まれに手足のまひなど、 生涯にわたる後遺症が残ることが あります。 1)有効な治療法がなく、 ワクチン接種が唯一の予防法です。2) 国内では、1981年以降 野生株ウイルスによるポリオ症例は 報告されていませんが、一部の国ではいまだに報告があります。3) 海外で感染した旅行者などがウイルス を日本に持ち込むリスクがあります。4) 抗体価を高く保つためには 追加接種が必要 就学前に2回目の 追加接種の検討を! 不活化ポリオワクチンは接種から 時間が経つと抗体価が低下することが知られています。抗体価が低下すると、ポリオ感染を予防する力が失われ、 再び感染のリスクにさらされます。5) より長い間ポリオ感染を予防するには、追加接種が必要です。 4~6歳で2回目の追加接種を行うことで抗体価が上昇することが、国内でも示されています。1) 医師と相談のうえ、就学前の追加接種をご検討ください。 1)佐々木 津他:小児科臨床 68(8): , 2015 2)Sabin AB: Poliomyelitis: International Textbook of Medicine (Vol. II) Infectious Diseases and medical Biology, 2nd ed. WB Saunders Company, Philadelphia, p , 1986 3) 国立感染症研究所(2016年9月5日アクセス)  4)病原微生物検出情報(IASR)速報(2016年9月6日アクセス)  5)Vidor E: poliovirus vaccine – inactivated. In : vaccines, Sixth edition. WB Saunders Company, Orland, p , 2013 65

66 日本のポリオワクチンの現状と課題 セービンIPV = 生ポリオワクチンから作った不活化ワクチン
ワクチンによるポリオ免疫の減弱の可能性 日本での長期追跡研究では5年後の抗体価低下は少ないが、対象者が生ポリオワクチン併用時のIPV接種なので、生ポリオブースターがかかっている可能性あり。 生ポリオワクチンは、一人に接種すると環境中に蔓延し、周囲の人への免疫効果がある 海外渡航歴もワクチン接種もないのに抗体上昇者あり。 静岡厚生病院 田中医師報告 生ポリオワクチンを使ったNT法検査では、ソーク株のNT法検査より8倍程度高い数字が出る可能性がある。 大阪市大 セービンIPVと野生株IPVの互換性に関する検討 定期接種の追加は、財源がないと財務省が抵抗 4混の追加接種時期を4才以上で行う(USA方式)はどうか? 消費税UPで状況が変わるか? ソークIPVとセービンOPVではポリオを抑制した実績あり。 セービンIPVでポリオを防いだ実績はない。

67 髄膜炎菌: 莢膜を持つ 莢膜多糖体の糖鎖の構造により13種(A、B、C、D、X、Y、Z、E、W-135、H、I、K、L群)に分類される1)。
髄膜炎菌: 莢膜を持つ 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は細菌性髄膜炎の起因菌の1つである。 菌種 グラム陰性 好気性双球菌 大きさ 0.6~0.8μm1) 血清群 莢膜多糖体の糖鎖の構造により13種(A、B、C、D、X、Y、Z、E、W-135、H、I、K、L群)に分類される1)。 臨床的に分離される菌の90%は、A、B、C、Y、W-135群の5血清群である1)。 感染経路 主に飛沫感染1) 67 1) 竹村 弘ほか : BIO Clinica 22(2) : 55-61, 2007より作成

68 侵襲性髄膜炎菌感染症 (IMD : Invasive Meningococcal Diseases)
重篤性 1 菌血症 2 敗血症 3 髄膜炎 4 髄膜脳炎 5 ウォーターハウス・フリーデリ クセン症候群(急性劇症型) 1) 国立感染症研究所 病原微生物検出情報 月報 Vol.34, No.12(No.406)2013年12月発行 2) Photo reprinted with permission from Schoeller T, et al. N Engl J Med ; 344(18) : ©2001 MassachuseNs Medical Society 68

69 侵襲性髄膜炎菌感染症 (IMD : Invasive Meningococcal Diseases)の症状
4時間 5時間 8時間 9時間 12時間 13時間 16時間 17時間 20時間 21時間 24時間 24時間 発症後の時間 4 5 8 1 2 9 1 3 2 6 1 7 2 2 4 1 しゅうめい せんもう けいれん 15~16歳の患者の場合 ・頭痛 0(0-2) ・咽頭痛/鼻汁 ・口渇 4(1-39) ・全身疼痛 6(0-20) ・発熱 6(1-16) ・食欲減退 9(3-21) ・悪心/嘔吐 10(3-19) ・下肢痛 12(5-23) ・気分不良/易刺激性 12(3-25) ・傾眠 14(6-27) ・呼吸困難 15(13-17) ・下痢 16(8-26) ・項部硬直 16(6-30) ・手、足の冷感 16(6-32) ・羞明 17(5-29) ・異常な皮膚色 18(4-29) ・発疹 19(11-26) ・錯乱/譫妄 23(13-30) ・意識低下 24(19-41) ・痙攣 26(25-27) 症 状 平均発症時間 ( 四分位範囲) 発 症 感 染 ※ IMDの症状や経過は、個人差が大きいことが知られている。 69 1) Thompson MJ, et al. : Lancet 367 ; 397‐403, 2006より作図

70 侵襲性髄膜炎菌感染症 (IMD : Invasive Meningococcal Diseases)の治療法
■治療薬1): ペニシリンGないし第三世代セフェム系抗菌薬を経静脈投与する。 ■流行拡大防止措置として接触者への予防投与1): リファンピシンないしニューキノロン系抗菌薬が勧奨されている2)が、予防投与のガイドラインはまだない。 1) 国立感染症研究所 病原微生物検出情報 月報 Vol.34, No.12(No.406)2013年12月発行より改変 2) Tunkel AR, et al. Clin Infect Dis 39 : , 2004 70

71 IMD(侵襲性髄膜炎菌感染症)のハイリスク群
宿主因子 ● 乳児、5歳未満の小児、小児および思春期児(11〜19歳)1) ● 上気道感染症2) ● 終末補体欠損症2)  ● 無脾症2)  ● 脾臓摘出者2)  ● HIV感染者2) 環境因子 ● 高密度集団/密集集団  (寮に住む大学生、軍隊入隊者、メッカの巡礼者)1) ● 流行地域への渡航や滞在1) ● 喫煙/受動喫煙2)  ● 感染患者との接触がある介護者および家族1) ● 髄膜炎菌を扱う企業または研究室で働くもの2) 1)Cushing K, Cohn A. Chapter 8: Meningococcal Disease. VPD Surveillance Manual, 4th Edition, 2008. 2)Centers for Disease Control and Prevention. Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases. Atkinson W, Wolfe S, Hamborsky J, eds. 12th ed., second printing. Washington DC: Public Health Foundation. 193, 2012 71

72 髄膜炎菌感染症の流行地域 髄膜炎菌感染症のリスクのある国 髄膜炎ベルト地帯
髄膜炎菌感染症のリスクのある国はアフリカ中央に集中しており、 「髄膜炎ベルト地帯」として知られている。 髄膜炎菌感染症のリスクのある国 髄膜炎ベルト地帯 髄膜炎菌感染症のリスクが高度の国及び地域 髄膜炎ベルト地帯 (2009 年のWHO のデータに基づく) 2011WHO international travel and health 72 厚生労働省検疫所 FORTH(2014年4月18日アクセス :

73 アジアでも髄膜炎菌感染症の散発的な流行が報告されています
■アジアで発生した髄膜炎菌感染症の 血清群と発生年(発生国別) ■アジアの流行発生国と血清群(2000年以降の発生期間を含む報告) 発生国 発生期間(年) 髄膜炎菌の血清群 A C Y W-135 B その他 日本 1974~2003 1999~2004 台湾 2001~2003 韓国 2000~2001 2002~2003 (29E) フィリピン 2004~2005 インド 2005~2006 バングラデシュ 1999~2006 2002~2004 (アウトブレイク様の流行) 中国 2003~2007 2007 (X) シンガポール 1981~2000 (2000年より) マレーシア 1987~2004 インドネシア 2000 (疑い) 日本 ・B(57%)、Y(21%) 1974~2003 ・A(4%)、C(1%)、 Y(18%)、B(27%) 1999~2004 韓国 ・A、C 2000~2001 (軍部、非アウトブレイク) ・Y(9/11)、B(1/11)、 29E(1/11) 2002~2003 台湾 ・B、W-135 <2000 ・A(2.6%)、C(3.5%)、Y(14.8%)、W-135(26.1%)、B(47.8%) 2001~2003 フィリピン ・A 1989 ・A 2004~2005 マレーシア ・W-135、B 1987~2004 インドネシア ・B(疑い) 2000 シンガポール ・C、B 1981~2000 ・W タイ ・A(12.5%)、C(6.3%)、 W-135(6.3%)、 B(56.3%) 1994~1999 インド ・A 2005~2006 ・A(82.2%)、C(15.6%) 1985 ・B(初回記録) 1994 バングラデシュ ・A(97.7%、アウトブレイク様の流行) 2002~2004 ・B(2.3%) 1999~2006 パキスタン ・A 1998 中国 ・A、A <1980年代 ・A(90%)、B(10%) 1984~1989 ・C(合肥市) 2003~2007 ・X(初回記録) 2007 モンゴル ・A、B 1994~1995 ベトナム ・C 1977~1979 ・A(疑い) ネパール ・A 1993~1994 青字:局所的な流行 橙色:広範囲の流行 赤字:アウトブレイク ●:局所的な流行 ●:広範囲の流行 ●:アウトブレイク SPJP.MENAC Vyse A, et al.:Epidemiol Infect 139(7): , 2011より作成 

74 メッカ巡礼者への要求 サウジアラビアでは、メッカ巡礼者 (Hajj, Umrah)の入国VISA申請の際に、3年以内の4価髄膜炎菌の接種を要求、インフルエンザワクチンを強く推奨。 Hajjは8~10月に行われる。 インフルエンザワクチンを 在庫しておく必要あり。 74 74

75 髄膜炎菌ワクチンの接種 米国: 11~12才と、16才以上で、MCV4を定期予防接種。
School Law制定後に流行が起きたため、要求には入っていないが、学校側から強く推奨される。実質的に、要求あり。 ヨーロッパ: 1才頃に髄膜炎Cを接種、11歳頃にMCV4を接種。 サウジアラビア: メッカ巡礼VISA申請の際に、ACYW4価髄膜炎菌ワクチン要求 日本では、 防衛大学校入学時にMCV4を接種 警察学校入学時にMCV4を接種。 入学前の勤務地での接種を行っている。 大学の入学生、入寮者、留学生への接種 マスギャザリングでの接種

76 おつかれさまでした 菊池 均 y@kkch.net


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