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喘息とCOPDのオーバーラップ Asthma and COPD Overlap (ACO)
日本大学医学部 内科学系呼吸器内科 権 寧博
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日本呼吸器学会 CO I 開示 権 寧博 ①顧問: なし ②株保有・利益: なし ③特許使用料: なし ④講演料: アストラゼネカ,ノバルティス,ベーリンガーインゲルハイム ⑤原稿料: なし ⑥受託研究・共同研究費: なし ⑦奨学寄付金: なし ⑧寄付講座所属: フィリップス・レスピロニクス合同会社 ⑨贈答品などの報酬: なし
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喘息とCOPDのオーバーラップ Asthma and COPD Overlap (ACO)
喘息とCOPDは,いずれも慢性の気道炎症を呈する呼吸器疾患であり,炎症のタイプ,気流閉塞の存在や増悪を示すといった共通点を持つことから,しばしば鑑別が難しく,また,両者はしばしば合併することも多いのも事実です。このようなことから,喘息とCOPDの合併は,今日,,Asthma-COPD Overlap (ACO)という一つの概念として取り扱われるようになってきております。ここでは,ACOの概念と臨床的特徴,ACOの診断方法,ACOの治療管理方法なとについて概説することにいたします。
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1965年にReidらにより提唱された学説で,喘息とCOPDとは異なる原因と病態生理に起因するとした
オランダ学説 1961年にオランダのOrieらによって提唱された概念。喘息,慢性気管支炎,肺気腫は,その発現型が異なっているのみで同じ原因に起因するとする説 イギリス学説 1965年にReidらにより提唱された学説で,喘息とCOPDとは異なる原因と病態生理に起因するとした 喘息とCOPDの起源に基づく違いは,古くから議論されてきた問題でもあります。その中でオランダ学説とイギリス学説の二つの仮説の対比はよく知られております。1961年にオランダのOrieらによって提唱されたオランダ学説(Dutch hypothesis)では,喘息とCOPDの両疾患は,遺伝的素因が共通し,環境要因の相違により表現型が異なるだけの一つの疾患である捉えています。一方,イギリス学説は,1965年Reidらにより提唱された学説で,COPDは,喘息と異なる原因と病態生理に起因するとする説で,オランダ学説とは対照的です。
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喘息とCOPDの臨床的特徴 日本呼吸器学会COPDガイドライン第5版 COPD 喘息 発症時期 中高年 全年齢層 要因 喫煙、大気汚染
アレルギー、感染 症状 持続性 進行性 変動性 出現形態 労作性 発作性 呼吸機能 FEV1/FVC<70 正常の場合もある 気流閉塞の可逆性 なし (or 小さい) あり(大きい) FeNO 正常 上昇 CTでの低吸収領域 通常あり なし 肺拡散能 低下 低下しない アレルギー性鼻炎 少ない 2/3であり アトピー素因 通常なし あり 喀痰中の炎症細胞 好中球主体 好酸球主体 血中好酸球数 通常正常 増加傾向 この表は,喘息とCOPDの臨床的特徴を比較したものです。喘息は全年齢層にわたってみられ,COPDは中高年に発症する疾患です。COPDの症状は進行性で労作性であり,喘息は変動性で発作性の症状を呈することが特徴です。気流閉塞はCOPDはもちろん,喘息においても見られますが,可逆性は喘息の特徴の一つとなります。CTでの低吸収領域や肺拡散能の低下などは肺気腫を反映しており,COPDに特徴的な所見となります。気流閉塞の可逆性やFeNO,アレルギー性鼻炎,アトピー素因,喀痰中や血中の好酸球増加などは喘息に特徴的な所見であり,このような特徴を考慮すると,喘息とCOPDとの鑑別は,典型例においてはそれほど難しくはありません。 日本呼吸器学会COPDガイドライン第5版
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喘息・COPDオーバーラップ Asthma COPD Overlap (ACO) 喘息 COPD
しかしながら,実臨床においては,喘息とCOPDとがオーバーラップするケースは多く存在するというのも事実です。このようなオーバーラップは,2014年にGINAとGOLDとの共同宣言で,Asthma COPD Overlap syndromeという概念として提唱されるようになり,現在はAsthma COPD Overlap (ACO)と呼ばれるようになっております。
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喘息の診断の目安(喘息予防・管理ガイドライン2015) 1)発作性の呼吸困難,喘鳴,胸苦しさ,咳(夜間,早朝に出現しやすい)の反復
2)可逆性の気流閉塞 3)気道過敏性の亢進 4)アトピー素因の存在 5)気道炎症の存在 6)他疾患の除外 喘息,COPDの診断では,相互に除外する必要がある COPDの診断基準(日本呼吸器学会COPDガイドライン第5版) 1)長期の喫煙歴などの曝露因子があること。 2)気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1 / FVC)が70%未満であること 2)他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外すること ACOの診断方法について説明する前に,現在の喘息とCOPDの診断方法を対比してみたいと思います。 本邦の喘息のガイドラインでは診断の目安が示されており,1)症状や2)気流の可逆性,3)気道過敏性,4)アトピー素因,5)気道炎症の存在などを総合的に診断することになりますが,他疾患の除外が診断に必要で,その際COPDの除外が重要となります。 一方,COPDの診断は,本邦COPDのガイドラインの診断基準においては,1)喫煙歴,2)気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで1秒率が70%未満であること,3)他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外することとされており, 喘息及びCOPDの診断のいずれの場合にもそれぞれを鑑別除外することが診断において重要となってまいります。
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吸入ステロイド薬未使用の健常人,喘息,COPD患者の誘発喀痰中の炎症細胞における好酸球の割合
(%) 100 30 10 sputum eosinophils (%) 3 1 0.3 0.1 ~ しかしながら、お示ししたようにCOPDの診断は主に生理機能によって規定されているため,アレルギー性の気道炎症をもった症例がCOPDとして診断されるという事態が生じます。こちらは,海外の研究からですが,ステロイド治療を行っていないCOPD患者の喀痰中には好酸球が多数存在すると報告されており、このようなCOPDにおける気道の好酸球増多を来す症例を,喘息とどのように鑑別するのかという問題が根底にあるわけです。 Healthy asthma COPD 吸入ステロイド薬未使用の健常人,喘息,COPD患者の誘発喀痰中の炎症細胞における好酸球の割合 Saha S. et al.: Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 1: 39-47, 2006
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COPDの臨床試験における選択基準と除外基準の比較
これまで大規模研究で、ACOは様々は基準により除外されている 試験に登録 試験から除外 エビデンスの基本となる大規模臨床研究において,喘息とCOPDのオーバーラップがどのようにこれまで扱われてきたか,その一例を示した表がこちらです。これは,代表的なCOPDの臨床試験における除外基準を比較したものですが,ACOの特徴と関連する種々の項目,例えば,現在の喘息や既往を除外していない試験がある一方で,血中好酸球数600以上を喘息の可能性が高いとして除外している試験もあります。また喘息の大規模研究においては,10 pack year 以上の喫煙喘息患者を試験から除外する場合がほとんどで,ACOと考えられる症例はいずれの大規模研究からも不規則に除外されており,ACOの治療管理に関しては,十分なエビデンスが存在しないのが現状です。 Don D. Sin et al. Eur Respir J 2016;48:
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COPD患者におけるオーバーラップの頻度(海外のデータ)
ACOの有病率は報告により大きく異なっております。これは,その国の医療環境や人種差,対象となる患者集団の違いなど様々な要因によりACOの割合が変化するためと考えられます。こちらは海外のデータとなりますが,COPD患者におけるACOの割を年齢別に示したものです。年齢が上がるに従って増加し,70歳以上においてはおよそ半数以上がACOであると報告されております。今後、 ますます高齢化が進むわが国においては,ACOをどのように診断し,治療管理していくかというのは重要な課題となると考えられます。 Gibson PG et. A;. Thorax 2009 ;
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Silva GE, et al:Chest 2004;126:59-65
喘息を合併したCOPDの予後 実際,こちらに示しますように,症状がコントロールされていない喘息を合併したCOPD患者においては,COPD単独や,症状がコントロールされた喘息合併COPDに比べて予後不良であることから,ACOをいかに適切に管理するかは,喘息やCOPDの治療において重要な課題であるといえます。 Silva GE, et al:Chest 2004;126:59-65
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喘息とCOPDのオーバラップ(AC0)の定義
このような状況から,臨床の現場における診断や治療法の混乱に対処するため,日本呼吸器学会では, ACOをどのように診断するかについてコンセンサスの形成や,ACOのよりよい治療法を探索する目的から,2018年に喘息とCOPDのオーバラップの診療の手引を刊行し,ACOの疾患概念や診断基準を提示しております。 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(P4)
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ACOの診断基準と診断の手順 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(図1,P47)
40歳以上で咳, 痰, 息切れなどの呼吸器症状 あるいは1秒率70%未満 胸部単純X線などによる他疾患除外 気管支拡張薬投与後1秒率70%未満 【COPDの特徴】 以下の1, 2, 3の1項目があてはまる。 喫煙歴(10pack-years 以上)あるいは同程度の大気汚染暴露 胸部CTにおける気腫性変化を示す低呼吸領域の存在 肺拡散能障害(%DLCO<80% あるいは %DLCO/ VA<80% ) 【喘息の特徴】 以下の1, 2, 3の2項目あるいは1, 2, 3のいずれか1項目と4の2項目以上があてはまる。 変動性(日内,日々,季節)あるいは発作性の呼吸器症状(咳,痰,呼吸困難) 40歳以前の喘息の既往 呼気中一酸化窒素(FeNO)>35ppb 4-1) 通年性アレルギー性鼻炎の合併 -2) 気道可逆性(FEV1>12%かつ>200mLの変化) -3) 末消血好酸球>5%あるいは>300μL -4) IgE高値(総IgEあるいは通年性吸入抗原に対する特異的IgE) ACOの診断基準と診断の手順を示します。 まず,40歳以上で呼吸器症状あるいは呼吸機能検査で1秒率70%未満を指摘された患者が受診した場合には,鑑別を要する他の疾患を否定したうえで,気管支拡張薬投与後の1秒率を測定します。 COPD ACO BA 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(図1,P47)
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ACOの診断基準と診断の手順 【COPDの特徴】 以下の1, 2, 3の1項目があてはまる。
喫煙歴(10pack-years 以上)あるいは同程度の大気汚染暴露 胸部CTにおける気腫性変化を示す低呼吸領域の存在 肺拡散能障害(%DLCO<80% あるいは %DLCO/ VA<80% ) 40歳以上で咳, 痰, 息切れなどの呼吸器症状 あるいは1秒率70%未満 胸部単純X線などによる他疾患除外 気管支拡張薬投与後1秒率70%未満 【喘息の特徴】 以下の1, 2, 3の2項目あるいは1, 2, 3のいずれか1項目と4の2項目以上があてはまる。 変動性(日内,日々,季節)あるいは発作性の呼吸器症状(咳,痰,呼吸困難) 40歳以前の喘息の既往 呼気中一酸化窒素(FeNO)>35ppb 4-1) 通年性アレルギー性鼻炎の合併 -2) 気道可逆性(FEV1>12%かつ>200mLの変化) -3) 末消血好酸球>5%あるいは>300μL -4) IgE高値(総IgEあるいは通年性吸入抗原に対する特異的IgE) COPDの特徴は。 喫煙歴(10pack-years 以上)あるいは同程度の大気汚染暴露 胸部CTにおける気腫性変化を示す低呼吸領域の存在 肺拡散能障害(%DLCO<80% あるいは %DLCO/ VA<80% ) 以下の1, 2, 3の1項目があてはまる場合は,COPDの特徴を持つと考えます。 COPD ACO BA 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(図1,P47)
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ACOの診断基準と診断の手順 【喘息の特徴】
40歳以上で咳, 痰, 息切れなどの呼吸器症状 あるいは1秒率70%未満 胸部単純X線などによる他疾患除外 【喘息の特徴】 以下の1, 2, 3の2項目あるいは1, 2, 3のいずれか1項目と4の2項目以上があてはまる。 変動性(日内,日々,季節)あるいは発作性の呼吸器症状(咳,痰,呼吸困難) 40歳以前の喘息の既往 呼気中一酸化窒素(FeNO)>35ppb 4-1) 通年性アレルギー性鼻炎の合併 -2) 気道可逆性(FEV1>12%かつ>200mLの変化) -3) 末消血好酸球>5%あるいは>300μL -4) IgE高値(総IgEあるいは通年性吸入抗原に対する特異的IgE) 気管支拡張薬投与後1秒率70%未満 【COPDの特徴】 以下の1, 2, 3の1項目があてはまる。 喫煙歴(10pack-years 以上)あるいは同程度の大気汚染暴露 胸部CTにおける気腫性変化を示す低呼吸領域の存在 肺拡散能障害(%DLCO<80% あるいは %DLCO/ VA<80% ) 喘息の特徴は。 変動性(日内,日々,季節)あるいは発作性の呼吸器症状(咳,痰,呼吸困難) 40歳以前の喘息の既往 呼気中一酸化窒素(FeNO)>35ppb 4-1) 通年性アレルギー性鼻炎の合併 -2) 気道可逆性(FEV1>12%かつ>200mLの変化) -3) 末消血好酸球>5%あるいは>300μL -4) IgE高値(総IgEあるいは通年性吸入抗原に対する特異的IgE) 以下の1, 2, 3の2項目あるいは1, 2, 3のいずれか1項目と4の2項目以上があてはまる場合,喘息の特徴があると評価します。 COPD ACO BA 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(図1,P47)
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ACOの診断基準と診断の手順 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(図1,P47)
40歳以上で咳, 痰, 息切れなどの呼吸器症状 あるいは1秒率70%未満 胸部単純X線などによる他疾患除外 気管支拡張薬投与後1秒率70%未満 【COPDの特徴】 以下の1, 2, 3の1項目があてはまる。 喫煙歴(10pack-years 以上)あるいは同程度の大気汚染暴露 胸部CTにおける気腫性変化を示す低呼吸領域の存在 肺拡散能障害(%DLCO<80% あるいは %DLCO/ VA<80% ) 【喘息の特徴】 以下の1, 2, 3の2項目あるいは1, 2, 3のいずれか1項目と4の2項目以上があてはまる。 変動性(日内,日々,季節)あるいは発作性の呼吸器症状(咳,痰,呼吸困難) 40歳以前の喘息の既往 呼気中一酸化窒素(FeNO)>35ppb 4-1) 通年性アレルギー性鼻炎の合併 -2) 気道可逆性(FEV1>12%かつ>200mLの変化) -3) 末消血好酸球>5%あるいは>300μL -4) IgE高値(総IgEあるいは通年性吸入抗原に対する特異的IgE) COPDの特徴,喘息の特徴が療法みられる場合をACOと診断し,COPDの特徴のみの場合をCOPD,喘息の特徴のみの場合は喘息と診断するという手順が示されております。 COPD ACO BA 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(図1,P47)
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症状およびQOLの改善 呼吸機能障害・気道過敏性亢進の改善 運動耐容能・身体活動性の向上および維持 疾患の進行・気道リモデリングの抑制
ACOの管理目標 症状およびQOLの改善 呼吸機能障害・気道過敏性亢進の改善 運動耐容能・身体活動性の向上および維持 疾患の進行・気道リモデリングの抑制 増悪の予防 合併症・併存症の予防と治療 生命予後の改善 治療薬による副作用の回避 次に,本邦手引に示されている管理目標についてお話いたします。 以下の項目がACOの管理目標として掲げられております。 1.症状およびQOLの改善 2.呼吸機能障害・気道過敏性亢進の改善 3.運動耐容能・身体活動性の向上および維持 4.疾患の進行・気道リモデリングの抑制 5.増悪の予防 6.合併症・併存症の予防と治療 7.生命予後の改善 8.治療薬による副作用の回避 ACO患者は喘息とCOPD両疾患の特徴を併せ持っているため,これら双方の管理目標をあわせて目標とさだめる必要があります。 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(表1,P94)
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ACOの重症度評価 ACO重症度 喘息重症度分類*1 COPDの病期分類*2 グレード1 軽症間欠型 軽症持続型 I期(%FEV1≧80%)
グレード2 中等症持続型 II期(50%≦%FEV1<80%) グレード3 重症持続型 III期(30%≦%FEV1<50%) グレード4 最重症持続型 IV期(%FEV1<30%) ACOと診断された患者は,その重症度評価を行います。上の表にありますように「喘息予防管理ガイドライン2015」で示される喘息重症度分類と「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版」で示される病期分類からACOのグレードを分類しますが,その際,どちらか重症度が高い方を採用するようにします。 *1 「喘息の予防・管理ガイドライン2015」 *2 「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第5版」 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(表5, P97 )
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ACOの治療薬選択 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(表6, P98) グレード1 グレード2 グレード3
グレード4 基本治療 ICS(低用量)/LABA あるいは ICS(低用量)+LAMA ICS(中用量)/LABA あるいは ICS(中用量)+LAMA ICS(中〜高用量)/LABA +LAMA 追加治療 上記の治療で効果不十分な場合にいずれか1剤あるいは複数を併用する ー テオフィリン LTRA テオフィリン LTRA (痰が多い場合) マクロライド 去痰薬 テオフィリン LTRA IgE抗体 IL-5抗体 経口ステロイド薬 酸素療法 (痰が多い場合) マクロライド 去痰薬 発作治療薬 吸入SABA頓用 次にACOの治療選択についてお示しします。それぞれのグレードにもとづいて治療方法を決定いたしますが,グレード1ではICS/LABAまたはICS+LAMA,グレード2ではこれに加えてテオフィリンやLTRAなどの追加治療薬を使用します。グレード3,4では中〜高用量のICS/LABA+LAMAのトリプル療法を基本とし,グレード4では,病態によっては生物製剤やマクロライドを使用するという選択肢が示されております。 LTRA; ロイコトリエン受容体拮抗薬 喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018(表6, P98)
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まとめ ◆ 喘息・COPDオーバーラップ(ACO)は「慢性の気流閉塞を示し,喘息とCOPDのそれぞれの特徴を併せもつ疾患である」と定義される。 ◆ ACOは適切な治療が行われないと,喘息あるいはCOPD単独の場合と比べて増悪しやすく,また,呼吸機能が著しく低下する。 ◆ 本邦においては「喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き」において診断基準が示されている ◆ 治療は重症度を評価の上,ICSとLABAの配合剤,あるいはICSとLAMA,あるいはその3剤で治療することが基本となります。
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設問 65歳の男性。最近,明け方に毎日,咳嗽と呼吸困難とが出現して来院。3年前に坂道を歩くときに息切れを自覚し,近医でCOPDと診断され吸入薬を処方されたが現在は使用してない。喫煙は40本/日を30年間で現在も喫煙中である。喘息やアレルギー性鼻炎の既往なし。血液検査で,血中好酸球1%, 血清IgE 450 IU(ハウスダスト特異的IgE抗体陽性),呼吸機能検査:FVC 3.70L、%FVC 101%、FEV1 1.86L (%FEV1 78%)、1秒率% 50.2%,%DLCO 60%。 SABA吸入30分後FEV1 2.06L、1秒率% 55.6%となった。 FeNO 41ppb。心電図に異常を認めない。 本症例の治療として適切でないのはどれか,一つ選べ。 a 禁煙をすすめる b LABAを単剤で使用する c ICSとLAMAを併用する d ICS/LABA配合薬を併用使用する e ICS/LABA配合薬にLAMAを併用する
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正解 b ヒントとなるスライドは;スライド13と15 ACOの診断方法と重症度の評価及び治療選択の部分
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解説 スライド13にあるように,「喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き 2018 」に従うと,気道可逆性やFeNOとIgE高値から,本症例はACOと診断できる。スライド15の重症度評価に従うと,症状が毎日あることから喘息の重症度分類は中等症持続型以上となり,基本治療は中用量以上のICSとLABAまたはLAMAの併用,あるいは,重症度によっては3剤の併用を考慮する。禁煙指導が重要であることは言うまでもない。 ACOでは気管支拡張薬単剤による治療は行わない。
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