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医療崩壊の実態ー医師不足はなぜ起きたのか ー産婦人科・周産期医療の現場からー

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1 医療崩壊の実態ー医師不足はなぜ起きたのか ー産婦人科・周産期医療の現場からー http://shusanki.org/
平成22年度外科系医科学汎論 2010年6月23日 医療崩壊の実態ー医師不足はなぜ起きたのか ー産婦人科・周産期医療の現場からー 北里大学医学部産婦人科学教授 海野信也 (日本産科婦人科学会・医療改革委員会・委員長)

2 周産期救急医療の抱えている問題 産婦人科医の不足 周産期医療機関の小規模分散 NICU不足 新生児科医不足
稀少症例における施設診断能力の限界 NICU不足 新生児科医不足 緊急症例受入能力の限界 個別周産期センターの受入能力の限界

3 一般救急医療と周産期医療の違い 一般の救急医療 周産期医療 政府・担当部署 厚生労働省医政局指導課・総務省消防庁
厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課 国全体の枠組み 救急医療対策事業 周産期医療対策事業 都道府県の枠組み 救急医療対策協議会・メディカルコントロール協議会 周産期医療協議会 センター 救命救急センター・二次救急指定病院 総合周産期母子医療センター・地域周産期母子医療センター 救急搬送 年間 492万件  (転院搬送9.2%) 年間 4万7千件  (転院搬送 48.5%)

4 一般救急のしくみ 受入の返事 があれば 救命救急センター 救急隊 救急告示病院 救急患者 一次医療機関 時間外の診療所があれば
時間外で受けて くれれば 救急患者 一次医療機関 時間外の診療所があれば 収容先を見付けるのは救急隊の役割

5 周産期救急のしくみ かかりつけの 救急妊婦 産婦人科 時間はかかるけれど必ず収容先を紹介する 総合周産期 母子医療センター 産科と新生児科
周産期医療システム 時間はかかるけれど必ず収容先を紹介する 総合周産期 母子医療センター 産科と新生児科 だけしか規定がない 地域周産期 母子医療センター かかりつけの 産婦人科 救急妊婦 収容先を見付けるのは医療機関の役割=転院搬送

6 なぜ周産期救急は一般救急と 別になっているのか 第一の説明
なぜ周産期救急は一般救急と 別になっているのか 第一の説明 妊婦さんは、大多数(99%以上)がかかりつけ産婦人科医に通院している 最初に相談し、受診する先は、あらかじめ決まっている そこからさがさなければならない一般救急とは違う 産科・周産期医療は、救急医療が発展する以前から、母子の多くの生命の危機に直面し、それに対処してきた 救急対応に関して独自の発展をとげてきた その後、一般救急医療は、すべての診療科の領域をカバーするより広い対象の救命を担当するようになった。 すべての診療科が救命救急センターに集まって、共同で対応するのが原則 産科だけ別扱いに結果的になってしまった 未受診妊婦の問題 産科だけでは対応しきれない母体合併症の対応に 問題が生じる結果になった

7 なぜ周産期救急は一般救急と 別になっているのか 第二の説明
なぜ周産期救急は一般救急と 別になっているのか 第二の説明 周産期救急 周産期医療対策事業 一般救急 救急医療対策事業 救急隊 厚生労働省 雇用均等児童家庭局 母子保健課 厚生労働省 医政局指導課 総務省消防庁 行政組織上の縦割り構造が、施策の縦割りを生み、 現場で融通がききにくい構造となっている

8 行政の縦割りと現場の縦割り かかりつけの 産婦人科 総務省消防庁 雇用均等児童家庭局 母子保健課 医政局指導課 周産期医療システム
地域周産期 母子医療センター 総合周産期 周産期医療システム 連携強化 救命救急センター 救急告示病院 一次医療機関

9 母体搬送受入の県内完結の有無 県内施設が 受け入れる 限られた地域のみ 県外搬送を行う 県外搬送を検討 9

10 周産期救急医療と一般救急の連携を困難にする制度上の制約
救急隊は市町村(1784)単位 一般救急医療は二次医療圏(358)単位 周産期医療は都道府県(47)単位 二次医療圏の範囲では完結できない 県境を越えることを制度上想定していない 救急隊は地域密着 広域搬送への対応は難しい 実際には20都府県で 県外への広域搬送を 日常的に行っている 制度上想定されていない ため非常に効率が悪く、 時間がかかる

11 平成19年医療機関に受入の照会を行った回数ごとの件数 (転院搬送を除く)消防庁「救急搬送における医療機関受入状況等実態調査」
1回 2-3回 4-5回 6-10回 11回以上 最大照会回数 重症以上傷病者 件数 309230 44609 8989 4324 1074 368226 50 割合 84.0% 12.1% 2.4% 1.2% 0.3% 100% 産科・周産期傷病者 18500 2944 721 310 53 22528 43 82.1% 13.1% 3.2% 1.4% 0.2% 小児傷病者 263925 45210 6377 2021 220 317753 35 83.1% 14.2% 2.0% 0.6% 0.1% 救命救急センター等搬送傷病者 97323 17258 4080 2108 802 121571 63 80.1% 3.4% 1.7% 0.7%

12 受入先決定まで4回以上照会が必要だった事例の頻度が全国平均を上回る都府県
宮城 福島 茨城 栃木 埼玉 千葉 東京 神奈川 新潟 大阪 兵庫 奈良 佐賀 重症傷病者 産科・周産期傷病者 小児傷病者

13 周産期救急医療と一般救急医療 救急医療に「必ず受け入れる」しくみは存在しない、という事実を認識する必要がある
行政(国・都道府県・市町村)、医学界、医療現場それぞれの段階での制度上の縦割り構造のために、うまく機能していない 「たらいまわし」問題はどの診療領域にも同じように存在する 「たらいまわし」は大都市とその周辺地域の問題である

14 周産期医療体制 再建の方向性 縦割り構造からの脱却 妊産婦の受入促進 関係者における共通の問題意識の醸成 「顔の見える」連携体制の構築
周産期医療体制 再建の方向性 縦割り構造からの脱却 行政(国・都道府県・市町村) 学会 医療機関(地域医療連携) 診療科(産婦人科・小児科・麻酔科・救急その他) 関係者における共通の問題意識の醸成 「顔の見える」連携体制の構築 必要な組織改革・人員配置の迅速な実施 周産期医療対策事業の見直し 地域における母体搬送受入能力の強化・受入の効率化・迅速化 周産期医療情報センター機能の強化 広域搬送体制の整備 周産期救急と一般救急との連携強化 MFICU加算算定条件の見直し 妊産婦の受入促進 救急病院における妊産婦加算 ドクターフィーの導入によるincentive付与 地域におけるNICU受入能力の強化 NICU 超重症児対応小児病床 重症心身障害児施設

15 都立墨東病院の事例 事実経過 土曜の夕方、妊娠末期の妊婦さんが強い嘔吐・下痢・頭痛を訴え、救急車で受診している開業医へ
都立墨東病院の事例 事実経過 土曜の夕方、妊娠末期の妊婦さんが強い嘔吐・下痢・頭痛を訴え、救急車で受診している開業医へ 開業医では、最寄りの総合周産期母子医療センターの墨東病院に連絡 墨東病院産科は人員不足のため救急止めとなっていた(2週間前に母体脳出血症例を受け入れており、いつも断っているわけではない) 開業医が都内の大学病院や周産期センター病院に連絡したが、断られた その間、30分ほどの間に妊婦さんの状態が悪化 墨東病院にもう一度電話し、今度は受入となった(重症化の連絡を受けて、他の2大学病院も引き受けの返事をしたが、墨東が最寄りなのでそちらに収容となった) 墨東病院で治療を受けたが、児は救命できたが母体死亡となった。

16 北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 既往歴:特記すべきことなし。前回の分娩は28歳時、妊娠38週で2574gの児を正常経腟分娩
北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 既往歴:特記すべきことなし。前回の分娩は28歳時、妊娠38週で2574gの児を正常経腟分娩 今回妊娠経過:通常の妊婦健診を受けていた 2月9日(34週3日) 体重57.3kg 血圧140/71 尿タンパク(-) 浮腫(-) 2月23日(36週3日) 体重61.5kg 血圧148/85 尿タンパク(-) 浮腫( +/- ) 3月2日(妊娠37週3日) 妊婦健診のため前病院を受診 血圧156/90 尿タンパク(3+) 浮腫(+/-) 背部痛 妊娠高血圧症候群重症の診断 データ上、HELLP症候群は否定的 (Hb 11.5、Plt 19.1万、ALT 19、AST 17、LDH 203、PT 11.8 sec) 翌日の入院、分娩誘発の方針となった。

17 北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 3月3日午前1時20分:血圧186/95mmHg 午前2時:血圧:163/84
北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 3月3日午前1時20分:血圧186/95mmHg 前頭痛を訴え前病院に入院 胎児心拍異常なし  産婦人科当直医の指示でカロナール2錠内服 午前2時:血圧:163/84 子宮口6-8cm開大 展退80% Sp-2 子宮収縮不規則 午前3時:血圧:188/95 「頭痛は楽になりました」 午前4時:血圧:165/86 「たまに痛みがあった」 LDRへ移動

18 北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 午前4時30分:Nsコール「頭痛全体にある」 午前4時41分: Nsコール「頭が痛い」
北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 午前4時30分:Nsコール「頭痛全体にある」 腹緊時に痛みがあるよう 内診所見不変 排便介助:「まだ少し痛みあるが、歩行は大丈夫(手を支える) LDRにてDIVキープ 午前4時41分: Nsコール「頭が痛い」 嘔吐(食物残渣中等量) 血圧 192/95 産婦人科当直医に連絡・指示 アルドメット125mg 経口投与するも嘔吐する 午前4時52分:入眠傾向と時折いびきあり 呼名に返事する、手もあげる 夫より「どうなってるんだ」「何やっているんだよー」 産科、外科、麻酔科当直医コール

19 北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 午前5時: 酸素3-5Lマスクで 午前5時10分:頭部CT撮影 脳出血の診断
北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 午前5時: 酸素3-5Lマスクで 午前5時10分:頭部CT撮影 脳出血の診断 午前5時20分:北里大学病院周産母子センターに緊急コール 夫へ説明する。いびきをかいている 北里大学病院周産母子センター MFICU当直医がコールを受け、直ちに受入を決定 その後、救命救急脳外科に連絡するも緊急手術中 NICU、神経内科、脳外科当直に連絡 産婦人科、MFICU、脳外科、神経内科当直医が救命救急センターで待機 午前5時50分 救急車にて搬送

20 北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 午前6時12分:北里大学病院救命救急センター到着 午前6時50分:緊急帝王切開術開始
北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 午前6時12分:北里大学病院救命救急センター到着 除脳硬直 JCS III-300 血圧 220/120 119番コール ただちに気管内挿管 胎児心拍にて徐脈を認めたため緊急帝切決定 午前6時50分:緊急帝王切開術開始 午前6時53分: 2434gの児出生 アプガースコア 5-6 臍帯動脈pH 6.87 午前7時20分: 帝王切開術終了 直ちに脳外科による開頭血腫除去術開始 午前11時30分:ICU入室 

21 北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 2009/3/2 2009/3/3 6:50 11:30 2009/3/4 6:00
北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 2009/3/2 2009/3/3 6:50 11:30 2009/3/4 6:00 2009/3/5 Hb 11.9 7.3 6.6 8.5 5.8 Plt 19.1 4.0 4.4 11.5 10.5 T.Bil 0.3 1.2 0.6 0.4 ALT 19 562 176 854 663 AST 17 461 105 837 822 LDH 203 1895 429 1395 858 PT 11.8 16.6 16.8 12.4 12.3 APTT 30.2 49.1 50.1 37.9 46.8 ATIII 37% 36% 84%

22 北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 現在北里大学病院にて集中治療中 重症妊娠高血圧症候群 急速に発症し進行したHELLP症候群
北里大学病院の症例:31歳 1回経産婦 重症妊娠高血圧症候群 急速に発症し進行したHELLP症候群 急激な血小板の減少、DICの進行 胎児機能不全 緊急帝王切開術 脳出血 右脳前方の皮質下出血 緊急開頭血腫除去術 肝被膜下出血 輸血全身管理・保存的治療 現在北里大学病院にて集中治療中

23 北里大学病院における過去3年間の 妊産褥婦頭蓋内出血症例の検討
年齢 31 35 32 29 37 発症週数 8週 16週 17週 37週 40週 褥3日 初発症状 意識障害 頭痛 嘔吐 頭痛 嘔吐 頭痛 頭痛 痙攣 左上下肢のしびれ 合併症 うつ病 重症妊娠悪阻 なし AVM PIH HELLP 頭痛発症から到着までの時間 48h 2h 1.5h 5h 4.5h 4h 5.5h 到着時の状態 四肢痙直・除皮質肢位 左片麻痺 意識清明 対光反射(-) 除脳硬直 JCS III-200 0-1 III-300 II-10 出血部位 脳静脈洞血栓症・多発性脳出血 左側頭葉皮質下出血 AVM 右前頭頭頂葉内側AVM 右脳前方皮質下出血 後下小脳動脈瘤破裂 左前頭葉皮質下出血 右前頭葉皮質下出血 IVH(-) SAH(+) IVH(-) SAH(-) IVH(+) SAH(-) IVH(+) SAH(+) 治療 予後 脳室ドレナージ 2日後死亡 開頭血腫除去・AVM摘出 38週で帝切分娩 保存的管理 妊娠継続中 帝切後開頭血腫除去 帝切後 開頭 動脈瘤クリッピング 開頭ドレナージ 保存的治療

24 出血:14例 肺梗塞:4例 敗血症:1例 不明:1例 合併症:12例
妊産婦死亡を含めた重症管理妊産婦調査 日本産科婦人科学会周産期委員会 母体死亡および重症管理妊産婦調査検討小委員会(2006年) 妊産婦死亡の内訳 32例 この年の妊産婦死亡の65%をカバー 出血:14例 分娩時大量出血(4) 常位胎盤早期剥離(3) PIH→頭蓋内出血(4) HELLP→頭蓋内出血(2)  くも膜下出血(1) 肺梗塞:4例 敗血症:1例 不明:1例 合併症:12例 悪性疾患(6) 原発性肺高血圧症(2) 心筋症(1) 大動脈破裂(1) 偽膜性大腸炎(1) Von Willebrand病         →小脳出血(1) 妊婦脳内出血の死亡率   8/18(44%) 推定妊婦脳内出血 :  1/4万人   推定脳内出血妊婦死亡:1/10万人

25 母体救命救急症例への対応 診断がつけば、対応方法は自ずと決まる 診断がつかないと、 診断が曖昧な時点で、判断が求められる
自施設内で診療科間連携で対応 対応可能な他施設へ搬送 診断がつかないと、 対応可能か、自施設も他施設も判断できない 結果的に、適切な対応が開始されるまで時間がかかる 診断が曖昧な時点で、判断が求められる

26 平成20年度厚生労働科学特別研究事業 救急部門と周産期部門との連携強化に資する具体的手法に関する研究(杉本班)
全国救命救急センターにおける妊産婦入院症例に関する研究 わが国の母体救命救急体制に関する調査 総合周産期母子医療センター(75病院)を対象として 日本産科婦人科学会卒後研修指導施設(750病院)を対象として どのような症例をどこで対応しているか 産科と救急の連携の実態は?

27 救命救急センター 妊産婦入院症例アンケート調査集計結果
回答率:210施設中114施設(54%) 回答施設 総合周産期母子医療センター 28 (25%) 地域周産期母子医療センター 38 (33%) その他の病院 産婦人科あり (34%) 産婦人科なし ( 8%) 取扱症例数 総数 ,515 救命救急センター 入院妊産褥婦 ,347 (0.62%)

28 日本産科婦人科学会卒後研修指導施設 母体救命救急体制アンケート調査集計結果
回答率:745施設中481施設(65%) 回答施設 総合周産期母子医療センター 58 (12%) 地域周産期母子医療センター 146 (31%) その他の病院 NICUあり (11%) NICUなし (46%) 救命救急センターあり 175 (38%) 救命救急センターなし 291 (62%) 取扱症例数 分娩総数 ,783 救命救急センター ICU入院妊産褥婦 (0.26%)

29 総合周産期母子医療センター 母体救命救急体制アンケート調査集計結果
回答率:75施設中33施設(44%) 回答施設 救命救急センターあり 23 (70%) 救命救急センターなし 10 (30%) 取扱症例数 分娩総数 ,842 救命救急センター ICU入院妊産褥婦 (0.43%)

30 母体救命救急症例 産科側から;病院・周産期センター症例の 0.26-0.43% 救命側から:救命救急センター症例の 0.62%
産科側から;病院・周産期センター症例の % 救命側から:救命救急センター症例の % 二つのセンターが一緒に管理する必要があるのは全体の1%に満たない まれに発生する事例に適切に対応するための方策を考える必要がある

31 調査回答施設数 28 38 39 9 33 (救命救急センターあり 23) 総合周産期母子医療センター 地域周産期母子医療センター
周産期センター以外の産婦人科 産婦人科なし 救命救急センター調査 (回答率 54%) 28 38 39 9 総合周産期母子医療センター調査 (回答率 44%) 33 (救命救急センターあり 23)

32 調査回答施設・症例数 1347 826 134 16 7 9 6642 2475 216 10 1 症例数 流産・切迫早産を除いた症例数
ショック 母体死亡 直接産科的死亡 間接産科的死亡 救命救急センター調査 1347 826 134 16 7 9 総合周産期母子医療センター調査 6642 2475 216 10 1

33 妊産婦死亡の原因 救命救急センター調査 総合周産期母子医療センター調査 1 4 2 5 3 16 10 直接産科的死亡 子宮外妊娠
分娩時大量出血 4 常位胎盤早期剥離 子癇 子宮破裂 間接産科的死亡 外傷 2 頭蓋内出血 5 来院時心肺停止 その他 3 合計 16 10

34 救命救急センター調査における 母体死亡症例
救命救急センター調査における 母体死亡症例 直接産科的死亡 間接産科的死亡 総合周産期母子医療センター 5 地域周産期母子医療センター 3 2 その他の産婦人科 4

35 日本産科婦人科学会卒後研修指導施設 母体救命救急体制アンケート調査集計結果 母体の大量出血(含むDIC)症例への対応
産婦人科の体制内では対応困難な場合、他施設へ搬送 157 35% 搬送先が決まっている 64 (14%) 搬送先が決まっていない 周産期情報システムを利用 53 (12%) システムなし 40 (9%) 自施設産婦人科の体制内で対応 173 38% 必要時は自施設の救命救急センター等と連携して対応 123 27% 救命救急センター等との連携 取り決めがある 13 (3%) 症例ごとの対応 107 (24%) その他・記載なし 3

36 総合周産期母子医療センター 母体救命救急体制アンケート調査集計結果 母体の大量出血(含むDIC)症例への対応
産婦人科の体制内では対応困難な場合、他施設へ搬送 5 15% 搬送先が決まっている 3 (9%) 搬送先が決まっていない 周産期情報システムを利用 1 (3%) システムなし 自施設産婦人科の体制内で対応 12 36% 必要時は自施設の救命救急センター等と連携して対応 16 48% 救命救急センター等との連携 取り決めがある 症例ごとの対応 13 (39%) その他・記載なし 2 (6%)

37 日本産科婦人科学会卒後研修指導施設 母体救命救急体制アンケート調査集計結果 母体の意識障害等、中枢神経系障害が疑われる症例の対応
自施設では対応困難なため他施設へ搬送 177 40% 搬送先が決まっている 70 (16%) 搬送先が決まっていない 周産期情報システムを利用 62 (14%) システムなし 42 (9%) 記載なし 3 (1%) 必要時は自施設の救命救急センター等と連携して対応 266 60% 救命救急センター等との連携 取り決めがある 18 (4%) 症例ごとの対応 245 (55%) その他・記載なし

38 総合周産期母子医療センター 母体救命救急体制アンケート調査集計結果 母体の意識障害等、中枢神経系障害が疑われる症例の対応
自施設では対応困難なため他施設へ搬送 5 15% 搬送先が決まっている 2 (6%) 搬送先が決まっていない 周産期情報システムを利用 1 (3%) システムなし 必要時は自施設の救命救急センター等と連携して対応 28 85% 救命救急センター等との連携 取り決めがある (15%) 症例ごとの対応 22 (67%) その他・記載なし

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40 母体救命救急 アンケート調査 総合周産期母子医療センターは他の病院と比較して直接産科的死亡が少ない可能性がある
母体救命救急 アンケート調査 総合周産期母子医療センターは他の病院と比較して直接産科的死亡が少ない可能性がある 人員? 設備? 搬送? 母体救命救急症例について、全体では35-40%の施設が他施設に搬送するのに対し、総合周産期母子医療センターでは自施設対応率が高く、搬送は15%程度である 産科的な原因であっても、人員が十分でない施設では、救命対応が必要な症例について、救命救急センター等との密接な連携体制構築が重要

41 周産期救急・母体救命救急をめぐる動き 母体救命救急に関する記載は皆無
2006年2月-2008年8月:福島県立大野病院事件 医師逮捕→無罪判決 2006年4月-2009年3月 厚生労働科学研究費補助金子ども家庭総合研究事業「乳幼児死亡と妊産婦死亡の分析と提言に関する研究」(池田班) 2006年10月:奈良県町立大淀病院母体脳出血死亡事例報道 2007年7月:厚生労働省医政局指導課通知「疾病又は事業ごとの医療体制について」 母体救命救急に関する記載は皆無 2007年8月:奈良県 未受診妊婦死産事例報道 2007年12月:厚生労働省4局長通知「新生児集中治療管理室等に長期入院している児童に対する適切な療養・療育環境の確保等の取り組みについて」 2008年4月:新医療法にもとづく都道府県のあらたな保健医療計画

42 周産期救急・母体救命救急をめぐる動き 2008年6月-11月:日本産科婦人科学会・日本救急医学会「地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築に関する共同作業部会設置」→11月提言 2008年10月: 東京都立墨東病院母体脳出血死亡事例報道 東京都杏林大学病院関連母体脳出血事例報 2008年11月-2009年2月 東京都周産期医療協議会 2009年3月25日 スーパー周産期センター 開始 厚生労働省「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」 2009年3月16日 舛添厚生労働大臣に報告書を提出 東京都周産期医療体制整備プロジェクトチーム 2009年3月17日 舛添厚生労働大臣に要望書を提出

43 周産期救急・母体救命救急をめぐる動き 2009年1月:厚生労働省医政局指導課:「救急・周産期医療等対策室」設置
2009年1月-2009年3月:厚生労働科学特別研究事業「救急部門と周産期部門との連携強化に資する具体的手法に関する研究」(杉本班) 2009年3月16日 舛添厚生労働大臣に提出 2010年1月: 厚労省より「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する通知 および周産期医療体制整備指針の改訂版」発出 都道府県は平成22年度中に新たな周産期医療体制整備計画を策定する。

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45 東京都母体救命搬送システム 緊急に母体救命処置が必要な妊産褥婦(対象患者)について、救急医療と周産期医療が連携して、迅速に受入先を確保
対象患者が、近くの救急医療機関で受け入れられなかった場合に必ず受け入れる「母体救命対応総合周産期母子医療センター」を3か所確保 総合周産期センターと救命救急センターの緊密な連携のもとに対象患者を必ず受け入れ、診断・処置等を行う。 搬送先選定に要する時間を極力短縮し、 迅速に母体の救命処置を行う体制を整備

46 東京都母体救命搬送システムのイメージ スーパー総合周産期センター 産科施設 東京消防庁指令室等 直近で受けられない場合 必ず受入れる
と判断 搬送途上もあたりながら 直近の 救急医療機関 産科施設 救急 部門 周産期 部門 ①要請 連携 ②119番 ④救急車搬送 東京消防庁指令室等 直近で受けられない場合 必ず受入れる ③要請 スーパー総合周産期センター 救命救急センター 総合周産期センター 連携

47 東京都母体救命搬送システムのイメージ 母体救命 傷病妊婦 救急隊 ④救急車搬送 ③要請 スーパー総合周産期センター ①119番 ②要請
直近の救急医療機関 救急隊 搬送途上もあたりながら 各消防本部指令室 救急 周産期 部門 部門 連携 ④救急車搬送 ③要請 スーパー総合周産期センター 救命救急センター 総合周産期センター 連携

48 母体救命搬送システム対象症例表 以下の疾患等の妊産褥婦で、緊急に母体救命処置が必要なもの 1.妊産褥婦の救急疾患合併
 ①脳血管障害  ②急性心疾患 ③呼吸不全 ④重症感染症,敗血症性ショック ⑤重症外傷,熱傷 ⑥多臓器機能障害・不全 2.産科救急疾患(重症)  ①羊水塞栓症 ②子癇,妊娠高血圧症候群重症型  ③HELLP症候群,急性妊娠脂肪肝 ④出血性ショック   ⑤産科DIC 3.重篤な症状(診断未確定)  ①意識障害 ②痙攣発作 ③激しい頭痛 ④激しい胸痛⑤激しい腹痛 ⑥原因不明のバイタルサイン異常   以上を呈し重篤な疾患が疑われる症例 4.その他1~3に準ずるもので緊急に母体救命処置必要なもの

49 東京都母体救命搬送システム 2009年3月25日~2010年2月28日 46件
東京都母体救命搬送システム 2009年3月25日~2010年2月28日 46件

50 東京都母体救命搬送システム 2009年3月25日~2010年2月28日 46件
東京都母体救命搬送システム 2009年3月25日~2010年2月28日 46件

51 東京都母体救命搬送システム 2009年3月25日~2010年2月28日 46件 病院選定時間
東京都母体救命搬送システム 2009年3月25日~2010年2月28日 46件 病院選定時間

52 東京都母体救命搬送システム 2009年3月25日~2010年2月28日 46件 入院まで(覚知~病着)
東京都母体救命搬送システム 2009年3月25日~2010年2月28日 46件 入院まで(覚知~病着)

53 平成20年11月18日 地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築に関する提言 日本産科婦人科学会・日本救急医学会
平成20年11月18日 地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築に関する提言  日本産科婦人科学会・日本救急医学会 本提言は、国、都道府県、地方自治体、医療機関、現場の医療スタッフ、一般の住民が、それぞれの立場でこの問題を考えていただくための材料を提供するもの 過酷な勤務の現状を放置したままで、確実な救急対応のみを求めれば、医療スタッフはさらに疲弊し、現場からの急速な離脱が進行することになる。現状が既に到底持続可能な状態にないことを十分に認識した上で、施策が検討される必要がある。 母体救命救急医療は周産期医療と救急医療の境界に位置している。縦割りの弊害は行政・学会・病院の各段階でこの問題に影響を与えている。その弊害を各段階で取り除き、効率のよい合理的なシステムの構築を行っていく必要がある。

54 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業 「妊産婦死亡及び乳幼児死亡の原因究明と予防策に関する研究」
「わが国の妊産婦死亡の調査と評価に関するモデル事業」 主管:国立循環器病研究センター 日本産婦人科医会 母体死亡症例届出システムと連携し、届出症例全例の原因分析を迅速に行っていく。

55 わが国の妊産婦死亡率 年次推移 (出産10万対)
わが国の妊産婦死亡率 年次推移 (出産10万対)

56 平成20年11月18日 地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築に関する提言 検討すべき課題
平成20年11月18日 地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築に関する提言  検討すべき課題 国及び都道府県における母体救急担当部署と責任体制の明確化 救急医療体制整備の検討 地域完結の原則と広域対応: 都道府県における周産期医療関係者と救急医療関係者の交流の促進 地域における周産期医療施設と救命救急センターの配置、連携に関する基礎調査 周産期医療関係者と救急医療関係者の症例検討の実施 施設内連携を深める方策についての検討 救急医療の基盤を強化するための施策の遂行 都道府県における母体救急連携システムの立案→構築

57 行政の動き 周産期救急情報システムの整備と一般救急情報システムの連携 搬送コーディネータの設置 広域搬送システムの整備
NICUの受け入れ能の増強 NICU増床 後方病床に関する制度整備 医療スタッフへのincentive

58 医療崩壊の原因と対策 医師数の増加策 医師の絶対数の不足 地域間・診療科間の医師の適正配置の促進 医師の地域間・診療科間偏在
へき地医療 小児科・産科・麻酔科 医療の地域間格差 コスト負担 地域医療の確保 医療におけるリスク・不確実性 医療関連有害事象 医療紛争 マスコミの報道による風評被害 医師数の増加策 医学部の定員増 歯科医師の医師資格取得 外国人医師の受入促進 地域間・診療科間の医師の適正配置の促進 労働条件の見直し 労働市場の形成 医学部の地域枠・診療科枠 系統的助成措置等の政策誘導 医療関連有害事象・紛争処理制度の創設・整備

59 産婦人科学という分野 「女性」 生殖・妊娠・分娩の生理と病理 女性生殖器に発生する諸疾患 ヒトの生殖内分泌 ヒトの妊娠と分娩 個体の発生
胎児生理 女性生殖器に発生する諸疾患 産婦人科医以外は 研究も診療もしない

60 産婦人科という診療科 不妊症・生殖補助医療 女性のプライマリケア 周産期 生殖内分泌 婦人科腫瘍 日本産科婦人科学会
思春期・更年期 感染症 良性疾患(子宮筋腫・卵巣嚢腫・子宮内膜症等) 健診 周産期 正常妊娠・分娩 異常妊娠・分娩・合併症妊娠 人工妊娠中絶 生殖内分泌 月経異常 不妊症・生殖補助医療 婦人科腫瘍 子宮頚癌 子宮体癌 卵巣癌 日本産科婦人科学会 大学中心の運営 専門医制度 「医学」面の担当 日本産婦人科医会(旧日本母性保護医協会) 実地医家・有床診療所中心の運営 母体保護法の運用・指定医の指定・研修 「医療」面の担当 厚生労働省 医政局 雇用均等児童家庭局母子保健課 24時間体制

61 医師数の変化

62 わが国の人工妊娠中絶の年次推移

63 生殖補助医療・治療周期数の年次推移 日産婦学会・倫理委員会・登録・調査小委員会報告

64  顕微授精ICSI

65 生殖補助医療・出生児数の年次推移 日産婦学会・倫理委員会・登録・調査小委員会報告

66 生殖補助医療・出生児数の年次推移 日産婦学会・倫理委員会・登録・調査小委員会報告

67 子宮がん登録症例数の推移 (日本産科婦人科学会 上皮内癌・異型増殖症を除く)
子宮がん登録症例数の推移 (日本産科婦人科学会 上皮内癌・異型増殖症を除く)

68 産婦人科が抱える問題 生殖内分泌部門・婦人科腫瘍部門については勤務条件は他の診療科と差がない。
産科だけが、すべての施設で24時間対応を必要としている。 産婦人科医の産科の現場から他の分野へのシフトが急激に起きている。

69 わが国の出生と少子化の実態

70 わが国の出生数の推移

71 日本の将来推計出生数(2006年12月推計) 国立社会保障・人口問題研究所
2027年 千人

72 母体年齢毎の出生数の年次推移 20代の出産が減少している

73 年齢別出生率の推移

74 妊娠年齢女性人口の年次推移 全体の96-97%の出生は20-39歳の女性から

75 女性人口の年次推移 今後20年間に妊娠年齢の女性人口は確実に約3分の2に減少する

76 日本の将来推計出生数(2006年12月推計) 国立社会保障・人口問題研究所
2027年 千人

77 わが国の産科医療の実態

78 わが国の妊産婦死亡率(出産10万対)の年次推移 (1982年以降)

79 わが国の周産期死亡率の年次推移 (出生1000対) 周産期死亡率は世界一低い
(周産期死亡率:妊娠22週以降の死産数+生後1週間以内の新生児死亡数)x1000/出生数

80 わが国の新生児死亡率(出生1000対)の年次推移 (1982年以降) 新生児死亡率は世界一低い

81 周産期死亡率の国際比較

82 わが国の周産期医療 「安全」が「安心」につながっていない それではなにが問題なのか 全体としては、非常に安全になってきている
妊産婦死亡率・周産期死亡率・新生児死亡率ともに、確実に低下を続けている 周産期医療の質の変化 死と戦う医療    → 死を回避する医療 救命救急的医療 → 予防的医療 それではなにが問題なのか 「安全」が「安心」につながっていない

83 乳児死亡率 出生時平均余命 低出生体重児出生率 合計特殊出生率 妊産婦死亡率 日本 3 82 8 1.3 U.S.A 7 77 2.1 韓国 5 76 4 1.4 20 中国 30 71 6 1.8 50 フィリピン 27 70 3.1 170 タイ 23 69 9 1.9 36 カンボジア 97 57 11 4.7 440 インド 63 64 3.0 540 ネパール 61 60 21 4.2 アフガニスタン 165 43 6.8 1600 エチオピア 112 46 15 6.1 870

84 母体年齢と妊産婦死亡率 母体年齢が40歳以上だと妊産婦死亡率は20歳代の10倍以上

85 母体年齢と低出生体重児出生率 (2004)

86 産婦人科医療改革グランドデザイン 産婦人科医療 過去60年間の流れの確認
産婦人科医療改革グランドデザイン 産婦人科医療 過去60年間の流れの確認 現状では、病院が全分娩の51%、診療所が48%を担当している。この状況は過去20年間変化していない。

87 分娩取扱医療施設数の変化 (厚生労働省・医療施設静態調査)
過去、15年間の分娩取扱医療施設数(助産所は含まない)の推移を示しました。病院も診療所も減少を続けています。

88 分娩取扱施設における勤務医師数 2005年日産婦学会調査
施設数 分娩取扱 勤務医師数 1 2 3 4 5-9 10- 病院 1273 52% 187 299 285 159 235 93 診療所 1783 47% 1214 452 99 合計 3056 99% 1401 46% 751 25% 871 29%

89 分娩取扱医療施設数の変化率 1993年の施設数との比をとってみると、病院も診療所も15年間で60%前後となっており、その減少の程度に大きな差はないようです。 施設数の減少は出生数の減少より急速に進行しています。 いわゆる「分娩施設の集約化」が進行していることになります。

90 分娩取扱施設数の変化 3年前の調査との差 (厚生労働省・医療施設静態調査)
3年前の調査との差を掲載してみました。2002年までは、診療所の分娩取扱中止がめだっていたようですが、最近は病院の分娩取扱からの撤退施設数が増加してきているのがわかります。

91 施設あたり出生数の年次推移 2005年まで、分娩施設の減少とともに施設あたり出生数は病院でも診療所でも少しずつ増えていました。 それが2008年には、特に病院で20%以上、急増しています。 診療所も増えていますが、病院ほどではありません。 このような変化には臨床研修制度導入時の現場の医師不足による多くの病院の分娩撤退と、政策的組織的集約化の両者が関与している可能性があります。 2005年から2008年は医療崩壊とその対策が同時に進行しています。この施設あたり出生数の増加が、施設あたり医師数の増加に見合ったものかどうか、検証する必要があります。

92 3分の2(5-10%のmoved home delivery)
諸外国の分娩様式 出生数 (千人) 周産期死亡率 妊産婦死亡率 自宅分娩 助産所分娩 小規模施設・医院 大規模施設・病院 イギリス 663 8.2 5.3 非常に少ない 少しはある 少数 大部分(15%程度が院内助産) オランダ 190 7.9 9.5 低リスク 3分の1 ない 3分の2(5-10%のmoved home delivery) スウェーデン 95 5.7 100%(80%が院内助産) ニュージーランド 55 5.8 5.4 50-70%(地域による) 20% アメリカ 4,134 7.1 <1% 98% (院内助産10%以下) 日本 1,111 3.6 6.1 少ない 47% 52%(院内助産は少ない)

93 わが国の分娩の特徴 規模の小さい分娩施設が各地域に多数配置され、各地域で分散して分娩に対応している。
各施設に少数の産婦人科の専門医が勤務し、24時間体制で、現場で問題に対処している。 周産期統計は大規模施設による集中処理方式の国と比較して遜色がない。 一人医師による有床診療所による分娩という様式は、わが国に特徴的なものである。 各施設の医師の献身が期待できるのであれば、有効なシステムであるのかもしれない。

94 わが国の医療訴訟 新受件数

95 わが国の医療訴訟 診療科別既済件数(2006)

96 わが国の医療訴訟・診療科別既済件数(2006) 医師1000人あたりの件数 医療訴訟は明らかに外科系に多い

97 わが国の産婦人科医の実態

98 1990年以降のわが国の産婦人科医数と 出生数の推移

99 産婦人科+産科 医師の全勤務医師数に占める割合
産婦人科+産科 医師の全勤務医師数に占める割合

100 わが国の産婦人科医数 ー1990年以降の変化ー 1990年 2000年 2006年 産婦人科+産科 医師数 12920 11059 10079 変化率 -14% -22% 1990年からの年間平均減少数 186人減 178人減 医師一人当たりの出生数 95 108 110

101 医師の年齢分布 2004年末現在 (厚労省 医師歯科医師薬剤師調査) 60歳以上 : 産婦人科26.0% 小児科19.6% 麻酔科 3.7%
医師の年齢分布 2004年末現在 (厚労省 医師歯科医師薬剤師調査) 60歳以上 : 産婦人科26.0% 小児科19.6% 麻酔科 3.7%  This slide shows age distribution of OB/GYN doctors, anesthesiologists, and pediatrician in Japans. Among OB/GYN doctors, 26% are more than 60yrs old, while 3.7% in anesthesiologists, and 19.6% in pediatricians. OB/GYN doctors in Japan are relatively older than other specilaties.

102 勤務施設別・産婦人科・産科医師の年齢分布 2006年末現在

103 日本産科婦人科学会会員 年齢別・性別分布 2009年
日本産科婦人科学会会員 年齢別・性別分布 2009年 日産婦学会の会員数は60歳未満では各年齢で概ね 名です。(43歳、45歳、 56歳は特異的に少ないようです。)45歳以下の年代では、次第に男性医師が減少し、 女性医師が増加してきています。

104 産婦人科でおきていること 男性医師の減少と女性医師の増加
日産婦学会の会員に占める女性の割合は年々増加しています。 20歳代では60%を越える状態になっています。 このような変化が過去20年ほどの間に進行を続けていることに注意する必要があります。 この変化は、政策的なものではありません。学会が誘導したわけでもありません。 産婦人科を受診する患者さん側、妊産婦産側のニーズと、産婦人科医になるかどうかを考えている医学生や研修医の選択の結果、こうなったのでしょうが、本当の理由はわかっていません。 若い男性医師にとって、産婦人科を選択しにくい条件がある一方、女性医師にとっては、産婦人科は以前より専攻診療科として候補となりやすいものと考えられます。

105 勤務医の月間当直回数 (栃木県医療対策協議会 平成16年8月調査)
勤務医の月間当直回数 (栃木県医療対策協議会 平成16年8月調査)

106 産婦人科の年代別女性医師率 平成16年 医師歯科医師薬剤師調査による
産婦人科の年代別女性医師率 平成16年 医師歯科医師薬剤師調査による

107 診療科別 年代による女性医師率 平成16年 医師歯科医師薬剤師調査による
診療科別 年代による女性医師率 平成16年 医師歯科医師薬剤師調査による

108 分娩施設に勤務している割合 日産婦学会 女性医師継続的就労支援委員会2007年調査

109 平成19年度 新専門医調査 現在の就労状況 2007年日産婦学会・女性医師継続的就労支援委員会

110 平成19年度 新専門医調査 5年後に希望する就労形態 (複数回答可)
平成19年度 新専門医調査 5年後に希望する就労形態 (複数回答可) 2007年日産婦学会・女性医師継続的就労支援委員会

111 年齢層別 月間在院時間 当直体制のある一般病院
年齢層別 月間在院時間 当直体制のある一般病院 2008年 日本産科婦人科学会調査

112 年齢層別 大学病院勤務医の在院時間 2008年 日本産科婦人科学会調査

113 日本産科婦人科学会の取組 「産婦人科医を増やそう」
学会は若い医師を育てるのが任務。医学生や研修医に積極的に情報提供し、働きかけを行っている。 サマースクール 1泊2日 信州美ヶ原温泉 毎年夏に、産婦人科志望を検討している医学生、研修医を集めて開催。年々参加者が増え、また参加者の中からは高率に新しい産婦人科医が生まれている。 2007  86名 ・2008 174名 ・2009 285名 ニューズレター Reasons for Tomorrow:学会で医学生・研修医向けに、定期的にパンフレットを作成し、配布 学会総会時の若手医師企画シンポジウムの開催 医局の枠を越えた若手医師による自主企画 若手医師研修会の開催(予定):若手産婦人科の「現場離脱」への対策 産婦人科研修のための奨学金制度:国や自治体に要望した結果、医学生や後期研修医を対象とした奨学金、研修奨励金制度が整備されてきている。(「産科医等育成支援事業」)

114 日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科医)

115 産婦人科3大事件について

116 わが国の分娩施設の構成と問題点 分類 類型 施設数 分娩取扱率 医師数 抱える課題 試練 病院 大学病院 91 52% 1718
新規専攻者の減少・女性医師の増加・ 医師の適正配置 新臨床研修制度・産婦人科の中で周産期専攻を希望しない 総合周産期母子医療センター 60 3644 未整備地域・能力不足・母体搬送体制不備 町立大淀病院事件 一般病院 1122 分娩のハイリスク化・医師の立ち去り・萎縮医療 福島県立大野病院事件 診療所 有床診療所 1783 47% 2463 高齢化・助産師不足 ・看護師内診・安全性確保 横浜・堀病院事件 助産所 ~300 1% 嘱託医・嘱託医療機関問題・安全性確保

117 北里大学病院における前置・低置胎盤症例数の推移

118 東大病院における前置胎盤症例の年次推移

119 産科医療改革の方向性 周産期センターへのリソースの集中 母子の安全の確保 地域の産科施設のネットワーク形成による密接な連携
24時間体制が可能な医療資源の確保 産科医 新生児科医 麻酔科医 助産師・看護師 地域の産科施設のネットワーク形成による密接な連携 必要時の連携体制・緊急帝切対応 多様な施設による相互補完 一般病院 産科病院 有床診療所 無床診療所 助産所 役割分担 妊婦健診 ローリスク分娩 ハイリスク分娩 母子の安全の確保 緊急事態に対応可能な周産期センター 母体救急対応 大量出血 肺塞栓症 頭蓋内出血 常位胎盤早期剥離 胎児・新生児救急対応 超緊急の帝王切開 新生児蘇生 NICU 医療提供体制の確保 専門スタッフの継続就労を可能にする労働条件・待遇の確保 女性医師の継続的就労を可能にする諸条件の達成

120 地域分娩施設群(構成例) 有床診療所 無床診療所 助産所 有床診療所 無床診療所 助産所 有床診療所 有床診療所 有床診療所 地域病院
地域分娩施設群(構成例)  有床診療所 無床診療所 オープン・ セミオープン 助産所 院内・近接 地域病院 有床診療所 無床診療所 オープン・ セミオープン 地域産婦人科センター 助産所 院内・近接 地域病院 有床診療所 地域病院 有床診療所 有床診療所 産科単科病院

121 地域産婦人科センター 24時間救急に対応 地域の産婦人科医療ニーズに応えることのできる診療体制
24時間救急に対応可能な合法的勤務体制をとることのできる産婦人科の勤務医師数の確保 小児科、麻酔科等の関連他科の安定的協力体制 病院全体の24時間救急に対応可能な体制 地域の産婦人科医療ニーズに応えることのできる診療体制 女性医師を含むすべての医師が継続的就労が可能な制度整備・職場環境整備 臨床研修の中心施設としての役割 臨床研究の中心施設としての役割

122 新しい周産期医療体制のイメージ 中核病院 産科医療圏 地域分娩 施設群 (総合周産期 母子医療センター) 産科医療圏 地域分娩 施設群
地域産婦人科センター 地域分娩 施設群 中核病院 (総合周産期 母子医療センター) 産科医療圏 地域産婦人科センター 地域分娩 施設群 産科医療圏 地域産婦人科センター 地域分娩 施設群

123 地域産婦人科センター・地域小児科センター
地域の女性・周産期の健康管理体制 地域産婦人科医療ネットワーク(仮称) 中核病院 地域産婦人科センター・地域小児科センター 一次医療機関 地域母子健康ネットワーク(仮称) 一般市民・教育機関・行政・医療機関等

124 わが国の分娩の将来像 医療安全の確保 分娩文化におけるニーズの多様性への対応 三次医療圏における大規模周産期センターの整備
「へき地」における中小規模の二次分娩施設の確保 Incentiveの付与 大規模センターとの相互連携 分娩文化におけるニーズの多様性への対応 地域分娩施設群の整備とネットワークによる医療安全の確保

125 産婦人科医療改革グランドデザイン2010 ー骨子案ー http://shusanki.org
2010年3月15日 産婦人科医療改革グランドデザイン2010 ー骨子案ー 日本産科婦人科学会医療改革委員会

126 グランドデザインにおける目標 20年後、90万分娩に対応する。 地域で分娩場所が確保されている。
病院において労働関連法令を遵守した医師の勤務条件が確保されている。 女性医師がそのライフサイクルに応じた勤務形態で継続的に就労することが可能になっている。 産婦人科医及び助産師不足が発生していない。 世界最高水準の産婦人科医療提供が安定的に確保されている。

127 産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その1
本グランドデザインは、単なる将来の産婦人科医療体制の予測ではなく、より望ましい産婦人科医療体制を実現するための現時点における行動指針として検討されたものである。 産婦人科医師数:年間最低500名の新規産婦人科専攻医を確保する。 社会の理解と協力を要請するとともに、行政(国、地方自治体)、学会、医学部産婦人科、研修指定病院が中心となって新規専攻医増加のための協力体制を構築する。 産婦人科医の質の向上のため、産婦人科専門医育成制度の改革を着実に進めていく。 助産師数:助産師養成数を年間2000名以上まで増員する。 助産師養成システムの再検討を行う。 助産師がすべての分娩施設で分娩のケアにあたる体制を整備するため、特に診療所への助産師の配置に対してincentiveを付与する。

128 産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その2
勤務環境: 分娩取扱病院:勤務医数を年間分娩500件あたり6-8名とする。 月間在院時間240時間未満を当面の目標とする。 勤務医の勤務条件緩和、処遇改善策を推進する。 特に女性医師の継続的就労率の増加を図る。 産科診療所: 複数医師勤務、助産師雇用増等により、診療所医師の負担を軽減するとともに 診療の質の確保と向上を図る。 勤務環境の改善と診療の質の向上のために、診療規模の拡大を志向していく

129 産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その3
地域周産期医療体制: 地域の周産期医療体制整備を推進し安全性を確保する。 分娩管理の効率化と多様性を確保するため分娩数全体の2分の1から3分の2を産科診療所または産科専門施設*で担当する。 地域分娩環境を確保するため、産科診療所の新規開業、継承、事業拡大、事業継続への積極的incentive付与を行う。 産科診療所の事業拡大を促進するため、新たな施設形態としての「産科病院」の導入を検討する。 産科専門施設*:低リスク妊娠分娩管理を中心とする医療施設。妊産婦の多様なニーズに効率的に対応する。複数の医師が勤務し、緊急帝王切開が実施可能であることが望ましい。 直近の診療所の出生の割合は都道府県によって幅があり26%から73%(全体では48%)となっている(2008年人口動態調査)。

130 産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その4
地域周産期医療体制(続き): 地域ごとに、その地域の実情に即した医療施設の配置等を検討し、現実的でかつ安全な分娩取扱が可能な地域周産期医療体制を構築する。 限られた医療資源を最大限に活用するため、診療機能及び妊産婦・患者のバランスのとれた集約化と分散により、安全、安心、効率化の同時実現を目指していく。 麻酔科、新生児科、救急関係諸診療部門を擁する周産期センターを中心とした周産期医療システムを各地域に整備する。 施設内連携を強化する。

131 産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その5
地域周産期医療体制(続き): 地域における一次施設から三次施設までの施設間連携を強化し、周産期医療における安全性の向上を図る。 診療ガイドラインの作成やその普及等により周産期医療の標準化を推進し、周産期医療の質の向上に寄与する。 上記施策を5年間継続し、成果を確認した上で、計画の再評価を行う。


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