セファイド周期光度関係を求 める 教材のためのデータ取得 富田晃彦 ( Tomita Akihiko 和歌山大学教育学部) FITS 画像教育利用ワークショップ.

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セファイド周期光度関係を求 める 教材のためのデータ取得 富田晃彦 ( Tomita Akihiko 和歌山大学教育学部) FITS 画像教育利用ワークショップ 2007 年 12 月 日、国立天文台三鷹

天文学の基礎のひとつである測距法 (代表的なもの、近距離向けから遠距離向けまで) ● 年周視差法・・・地球の公転運動を利用 ● セファイド法・・・周期光度関係が確立した変光星を利用 ● ハッブルの法則・・・宇宙の膨張を利用 ● Ia 型超新星の最大光度 太陽系近傍の世界が対象 (超高空間分解能位置天文が、その限界を押し広げるだろう)。 かなり明るい星なので、比較的近傍の銀河でも見つけることができる。 銀河系全体の構造から、近傍銀河、近傍銀河団の世界が対象。 遠方の銀河までの距離が測定できる。 宇宙論的な世界が対象。

目的 : セファイドの周期光度関係が導ける ようなデータセットを得る。 WHY: そのようなデータセットが、 なぜか(すぐ入手できる範囲で) 存在していなかったから。 1. 絶対等級があらかじめ求まっているセファイドを対象とする。 → 絶対等級はどうやって決まったか ? それは年周視差などから。 2. 精度の高い、一連の写真データを新規観測で取得する。 そして … 3. このデータから変光曲線を描く。 4. そこから変光の周期を求め、周期光度関係を得る。

セファイドのデータとして参照したも の: M. W. Feast and A. R. Walker, 1987 Annual Review of Astronomy and Astrophysics, Vol.25, 356 観測対象 ( 星座名 ) 周期 (日) 実視等級絶対等級観測バンド RU Sct (たて座) - 5.16 R SV Vul (こぎつね座) - 6.12 V DL Cas (カシオペア座) - 3.86 V SU Cas (カシオペア座) - 1.98 B SZ Tau (おうし座) 4.03(3.15) 6.53 - 3.43 B 観測対象 観測の際のバンドは赤い方を優先するが、対象が明るい と、短時間露出を避けるために、感度の悪い青い方にず らした。

和歌山大学教育学部棟 屋上天文台 三鷹光器製 60cm カセグレン式反射望遠 鏡 焦点距離 7800mm または、ペンタックス 製 10.5cm 屈折望遠鏡 焦点距離 700mm カメラ : SBIG 社製 ST-9E (512x512, 20μm/pix) または ST-7E (765x510, 9μm/pix) Filters: Johnson UBV, Cousins RI カメラ制御ソフト : CCDOPS v5 on WindowsXP 画像整約 : IRAF v on RedHat9 Linux 観測および解析を行ったのは : 久野光輝( 2005 年 3 月、和歌山大学教育学部卒 業)

OBJECT 観測期間 観測回数 / 日 RU Sct ( たて )2004 年 4 月 2 日~ 2004 年 11 月 13 日 1~21~2 SV Vul ( こぎつね )2004 年 4 月 12 日~ 2004 年 11 月 13 日 1~21~2 DL Cas ( カシオペア )2004 年 9 月 30 日~ 2005 年 2 月 22 日 2~32~3 SU Cas ( カシオペア )2004 年 12 月 13 日~ 2005 年 2 月 22 日 8 ~ 10 SZ Tau ( おうし )2004 年 1 月 10 日~ 2004 年 2 月 22 日 3~53~5 観測ログ # of raw frames : 約 7000 枚 # of reduced frames: 約 400 枚 ( 変光曲線の点の数 )

2004 年 4 月 17 日、バンド :R 露出 :10 秒、画角 :4.52’×4.52’ 2004 年 4 月 14 日、バンド :V 露出 :7 秒、画角 :4.52’×4.52’ 2005 年 1 月 18 日、バンド :V 露出 :90 秒、画角 :33.4’×22.5’ 2005 年 1 月 10 日、バンド :B 露出 :15 秒、画角 :50.2’×50.2’ 2005 年 1 月 10 日、バンド :B 露出 :15 秒、画角 :50.2’×50.2’

データは: Dark-subtracted, flat-fielded*, sky-subtracted** reduced FITS images * twilight sky を flat 画像として用いる方法 ** imhistogram からフレーム内カウント最頻値を得て、その値を引く 方法 Makali`i や IRAF で測光: - 参照星との等級差を出す。 - 参照星は複数あり、参照星どうしの等級差を見ることで、参照星が (セファイド変光曲線に影響を与えない範囲で)変光星でないこと を 確認できる。 - 複数の、参照星との等級差を平均して、当該セファイドの変光曲線 を描く。 - セファイドの変光幅は大きいので、参照星との「色」の違いや、明 るさの (極端な)違いによる測光誤差は、大きな問題にならない。太陽系 外惑星 のトランジット観測よりずっと楽( 0.1 等級の精度で十分)。

1 周期: 日 (64814 分 ) 横軸:分 (零点任 意) 縦軸:等級 (零点任 意)

1 周期 :19.7 日 (28368 分 ) 縦軸:等級 (零点任 意) 横軸:分 (零点任 意)

RU SctSV VulDL CasSU CasSZ Tau 既知の周期(分) 実験者 実験者 実験者 実験者 実験者 実験者 実験者 実験者 実験者 実験者 人の平均値 既知の周期との誤差 2.49% 0.45% 0.22% 1.75% 2.45% 変光曲線から、変光周期をちゃんと出せるの か ? 「生」の変光曲線を折り返し、単一の「山」が見える「折り 返し時間」を試行錯誤で得る。 10 人の被験者 → できる !

被験者 10 人が変光曲線から求めた周期と、既知の周期光度関 係 SV Vul RU Sct DL Cas SZ Tau SU Cas 既知の周期 光度関係 光度 ( 絶対等級 :Mv) 周期(日) 周期光度関係 SZ Tau 以外の 4 天体は既知の周期光度関係の周期と、 求めてもらった周期との相対誤差は数 % 以内 SZ Tau は既知の周期光度関係から外れているが、 SZ Tau は他の多くのセファイドとは異なった脈動をしているという報告が実際に ある。 Mv = log 10 P[day] このデータセットから、セファイドの周期光度関係が正 しく再現