c 北野瑛二 c 小松拓司
目次 日本の貧困(大阪・釜ヶ崎の例) セーフティネット 生活保護の実態 提言 論点
貧困?
貧困とは? 絶対的貧困 一人当たり年間所得 370 ドル以下(世界銀行) 一日 1 ドル以下で生活(国連開発計画) ○ 40 歳未満死亡率、医療や安全な水へのアクセス率、 5 歳未満の低体重児比率、成人非識字率 相対的貧困 等価可処分所得の中央値の半分以下( OECD ) 収入が世帯の食料購入費の平均の 3 倍未満(ア メリカ) ○ 判断者によって異なる ○ ある発展途上国の貧困でないものは、ある先進国 の貧困者よりもずっと貧しい、ということも
日本は? 明確な貧困基準が設定 されていない
所得分布 (2010年) 厚生労働省データより
野宿者人口 全国合計 人 大阪府 4911 人( 26.5 %) 東京都 4690 人( 25.3 %) 神奈川県 2020 人( 10.9 %) 福岡県 1177 人( 6.3 %) 愛知県 1023 人( 5.5 %) 埼玉県 781 人( 4.2 %) 兵庫県 627 人( 3.4 %) 2007 年厚生労働省データより
「寄せ場」 東京 ― 山谷 横浜 ― 寿 名古屋 ― 笹島 大阪 ― 釜ヶ崎
大阪 ― 釜ヶ崎 日雇労働者の就労の場 ← 全国から集まる 簡易宿泊所やビジネスホテルの密集地 = 「ドヤ街」 ← 一泊 800 円位 2011 年度予想生活保護費 2888 億円、 1/4 が 大阪市民税 → 財政難の一因 生活保護者 九州・沖縄 19 %、中国・四国 20 %、大阪以外の 近畿 15 %、大阪府 19 % 路上死などの問題 大阪市で死亡のホームレス 111/294 人が路上死
あいりん労働公共職業安定所
求職者には就職(転職)についての相 談・指導、適性や希望にあった職場への 職業紹介、雇用保険の受給手続きを、雇 用主には雇用保険、雇用に関する国の助 成金・補助金の申請窓口業務や、求人の 受理などのサービスを提供する。公共職 業安定所は、取締、規制は業務としてい ない。
釜ヶ崎での日雇労働 不安定就労・非正規雇用の極限 「手配師」による求人 ← 仲介料( 10 ~ 30 %ほど)はピンハネ 土木建設業・・・日によって仕事量の増 減が激しい⇒「労働の調節弁」 健康保険、社会保険、健康診断等の保障は ほとんどされていない 3 K ・・・危険・汚い・過酷(きつい)
セーフティネット 雇用社会保障公的扶助
雇用 中核的な正規社員 周辺的な正社員 非正規雇用 失業 貧困ライン 貧困ライン?
セーフティネット 雇用社会保障公的扶助
社会保障 失業手当 ・・・ 失業者の 21.8 % ( 2006 年) ←1982 年は 59.6 % 失業 → 無収入 → 生活保護
セーフティネット 雇用社会保障公的扶助
生活扶助 教育扶助 住宅扶助 医療扶助 介護扶助 出産扶助 生業扶助 葬祭扶助
公的扶助から 滑り落ちたらどうなる?
生活保護を受けられない 離職・転職の繰り返し ワーキングプア 1997 年 458 万世帯 12.8 % 2002 年 657 万世帯 18.7 % 2007 年 675 万世帯 19.0 % (総務省就業構造基 本調査より) 安定就労、社会復帰が必要⇒セーフティ ネットの再構築
日本国憲法第 25 条 すべての国民は、健康で文化的な 最低限度の生活を営む権利を有す る 国は、すべての生活面について、 社会福祉、社会保障及び公衆衛生 の向上及び増進に努めなければな らない
貧困 = 自己責任?
野宿者排除のため のバリケード
「五重の排除」 教育課程からの排除 企業福祉からの排除 家族福祉からの排除 公的福祉からの排除 自分自身からの排除
貧困の世代間連鎖 親の貧困 子供の健康、 学力、意欲 子供の貧困不安定労働
貧困世代間連鎖の拡大 社会活力低下社会不安定 国・行政が率先して取り組む べき問題!
生活保護の実態① どれだけの人がもらっているか 21 年現在 127 万世帯、 176 万人が受けている。 増加率はそれぞれ、 10.9 %、 10.7% と、ここ5年 で一番伸びている
表2 被保護実人員・保護の種類別扶助人員及び保護率の年 次推移(1か月平均) 厚生労働省 平成21年度福祉行政報告例 結果
生活保護の実態② 水際行政 北九州市の餓死事件(死後一か月後、ミイ ラ化した遺体で発見された男性 「おにぎ り食べたい」) なぜ、生活保護を受けようとさせないの か? 財政的負担だから。そもそものイメージが 悪い。
生活保護の実態③-1 世間一般の人のイメージ ただで、金をもらっていて、税金の無駄。 生活保護に対するイメージそのものの悪さか ら、生活保護に申請しない、したくないと いう人が生まれている。
生活保護の実態③-2 不正受給 ( 濫給 ) と漏給の割合(以下、全て 2006 年) 生活保護を受けている人 151 万人 しかし、日本の捕足率 15 ~ 20 % → 補足率 15 %として、本来受けるべき人 は 850 万人 濫給件数・・・ 1 万 4669 件 どっちを優先するべきか、明らかではないか。
政策提言の目的 現行の生活保護を生かしながら、貧困を なくす政策を考える。 目的 被生活保護者の社会復帰 生活保護そのものへのイメージ改善
提言① 生活保護費の一部を超低利子の融資にす る制度を設ける。 (グラミン銀行、マイクロクレジットの実 践) 具体的な内容 働ける余地がある人ー独身かつ 20 代~ 40 代を対象に、生活保護費の一部( 1/4 程度) を、年利2%程度の融資にする。(義務で はない)
提言1 続き この制度を利用し、社会復帰を果たした とき(生活保護を受ける必要がなくなっ た時)、その人には、「貧困脱出者奨励 金」を与える。
提言①のメリット ただ、お金をもらっているだけではダメ だというプレッシャーを与える → 社会復帰へのサポートになる ・お金を返すということで、生活保護その ものに対する世間一般のイメージ改善
提言② 自治体主催の被保護者に対する、週一程 度での「無料相談会」の実施。 生活保護に関する相談、融資されたお金の 使い方、貯金の仕方など、社会復帰実現に 向けてのノウハウを教える。 融資制度を利用する場合、この講座を受け ることを義務化する。 専門家(法律、福祉、金融分野など)
提言②のメリット 融資制度を実現させるため。 実際的なノウハウ(お金の使い方など) を学ぶことで、社会復帰のための知識を 得れる。
論点 この政策の是非 融資にする意味があるのか、現行のままの方がい いのか、など。 生活保護行政の在り方、どうあるべきか 野宿者の社会復帰の方法・・・ (ビックイ シュー?) 生活保護を利用しない貧困削減の在り方
参考文献、資料 湯浅誠 『反貧困』 岩波書店 2008 年 門倉貫史 『貧困ビジネス』 幻冬舎 2009 年 厚生労働省 社会福祉行政業務報告 21 年 度 生田武志『ルポ 最底辺ー不安定就労と野 宿』ちくま新書 2007 年 釜ヶ崎資料センター編『釜ヶ崎 歴史と現 在』三一書房 1993 年