職場のメンタルヘルス ~ラインケアについて~ 1 ふらっと教室 ワークシート ( C) 大阪同和・人権問題企業連絡会/特定非営利活動法人ニューメディア人権機構 2012
目 次 ○ 自殺した労働者数の推移 (P3) ○ 精神障がい等に係る労災請求・支給決定件数の推移 (P 4) ○ 自殺やうつ病による経済的損失の推計額 (P5) ○ 職場における4つのケア (P6) ○ ラインによるケアとは (P7) ○ 安全配慮義務 (P8~9) ○ ラインによる具体的ケア (P10) ○ 管理監督者の行うこと (P11) ○ 聴き方の基本 (P12~13) ○ 教育研修・情報提供 (P14~15) ○ 職場復帰支援 (P16 ~17 ) ○ プライバシー保護 (P18) ○ ラインケアのキーワード (P19) 2
自殺した労働者数の推移 注:自殺した労働者数は、平成 18 年までは管理職と被雇用者の合計、平成 19 年以降は「被雇用者・勤め人」の合計 資料「平成 22 年中における自殺の概要資料」 ( 警察庁 ) 3
精神障がい等に係る労災請求・支給決定件数の推移 4 (厚生労働省による)
自殺やうつ病による 経済的損失の推計額 自殺死亡がゼロになることによる所得の増加 1兆9028億円 うつ病による自殺や休業がなかった場合、労災補償給付の減少 456億円 うつ病がきっかけとしての ● 休業がなくなることによる賃金所得の増加 1094億円 ● 失業がなくなることによる求職者給付の減少 187億円 ● 生活保護費受給や医療費がなくなった場合、生活保護、 医療費の減少 6017億円 計2兆6782億円 (厚生労働省による) 5
事業場内産業保健 スタッフ等によるケア セルフケア ラインによるケア 事業場外資源 によるケア 労働者 による 管理監督者 による 職場環境等の把握と改善 部下からの相談対応 職場復帰における支援 情報の提供や助言 専門家による相談や治療 職場における4つのケア (厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」より) 心の健康づくり 計画の策定 産業医 衛生管理者等 による 事業場外の機関・ 専門家による 方針表明・教育研修の実施 心の健康づくり計画の策定 労働者のプライバシーへの配慮 ストレスへの気づき ストレスへの対処 自発的相談 事業者 による 6 職場環境等の評価と改善 労働者への相談対応 事業場外資源とのネットワーク形成 教育研修の実施
ラインによるケアとは ラインとは職場の管理監督者のこと ラインケアとは管理監督者が職場環境の 改善を行ったり、部下に対する相談を受 けたり、こころの健康問題を持つ部下へ の支援を行うことなどをいい、こころの 健康づくりの中心的役割を果たすことを 求めている。 ラインケアは組織としての取り組みと言 うことができる。 7
安全配慮義務 安全配慮義務とは、労働基準法・労働安全 衛生法などに基づき、使用者が労働者に対 して負う義務(雇用契約に付随する義務) の一つで、「使用者は労働者の生命および 健康などを危険から保護するよう配慮しな ければならない」というもの。 8
長時間労働の結果、うつ病にかかり自殺した ケースの裁判事例( ○○ 事件) 【概要】 大手広告会社である使用者Yに勤務していた労働者A(大学卒の新入社員 )は、長時間に及ぶ時間外労働を恒常的に行っていて、うつ病に罹患し 、入社約 1 年 5 ヵ月後に自殺した。原告であるAの両親らは、Aの自殺は Yにより長時間労働を強いられた結果であるとして、Yに対し、民法 415 条または 709 条に基づき約 2 億 2,260 万円の損害賠償を請求した。 【裁判の経過】 一審(東京地裁 1996 年 3 月 28 日判決)では、Aの長時間労働とうつ病、及 び、うつ病とAの自殺による死亡との間の相当因果関係を認め、Yに約 1 億 2,600 万円の賠償金の支払いが命じられた。 二審(東京高裁 1997 年 9 月 26 日判決)では、 A さんの性格や両親の対応を 理由に、賠償額が減額され、約 8,900 万の支払いが命じられた。 本件の結論としては、二審の損害額の算定 ( 減額 ) についての判断は破棄、 差戻しとされ ( 最高裁 2000 年 3 月 24 日判決 ) 、その後の差戻審 ( 東京高裁 2000 年 6 月 23 日 ) において、最終的には、会社が約 1 億 6,800 万を支払うと の内容で和解が成立した。 9
ラインによる具体的ケア ①職場環境などの把握と改善 ・作業環境、作業方法、労働時間、仕事の質と量 ・職場内のハラスメントを含む職場の人間関係 ・職場の組織、人事労務体制 など ②部下からの相談対応 ・管理職として、日頃から部下に対する観察、気づき、 声かけ ・部下からの相談への迅速な対応 など ③職場復帰における支援 ・復職プログラムに従って職場復帰を支援するために事業 場内外の資源の活用 10
管理監督者の行うこと -仕事の管理者であり健康の管理者- ①日ごろの気配り・目配り ・日頃から、部下の一人ひとりの健康状態を温かい目で 見守り、日常の状態と変化に早く気づくことが第一 ②声かけ ・相談のきっかけをつくるために、 「どうしたの?」などのような声かけを行う ③話を聴く ・相談が始まったら相手の悩みをじっくりと聴く 解決やアドバイスを急がない 11
あなたの 〈きく〉 はどれ? 聞く(Hear) 訊く(Ask) 聴く(Listen) 12
聴き方の基本 ①時間をかけて最後までじっくりと聴く (聴き役に徹する) ②私見を交えず、相手の気持ちを受けとめ るつもりで聴く ③理解した相手の気持ちや考えを伝え返し てみる ④相手を十分理解したうえで、助言や自分 の意見を言う 13
メンタルヘルスケアを推進するための 教育研修・情報提供 管理監督者を含むすべての労働者が対象に なる。そして、管理監督者を含む労働者や 事業場内産業保健スタッフなどに対し、職 務に応じた教育研修や情報提供を行う必要 がある。 14
管理監督者への教育研修・情報提供 ①メンタルヘルスケアに関する事業場の方針 ②職場でメンタルヘルスケアを行う意義 ③ストレスやメンタルヘルスケアに関する基礎知識 ④管理監督者の役割、心の健康問題に対する正しい態度 ⑤職場環境等の評価、改善の方法 ⑥労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供・助言の方法等) ⑦メンタルヘルス不全によって休職した者の職場復帰支援方法 ⑧事業場内産業保健スタッフとの連携方法 ⑨事業場外資源との連携方法 ⑩セルフケアの方法 ⑪事業場内の相談先、事業場外資源に関する情報 ⑫労働者の個人情報の保護 15
職場復帰における支援 ・メンタルヘルス不調・不全により休職 者が出た場合には、復職プログラムに 従って円滑に職場復帰できるよう、産 業医や人事担当者などとタイアップし て適切に対応する。 16
職場復帰支援の流れと各ステップ 職 場 復 帰 【第1ステップ】 病気休業開始及び休業中のケア 1 【第5ステップ】 職場復帰後のフォローアップ 5 【第4ステップ】 最終的な職場復帰の決定 4 【第3ステップ】 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成 3 【第2ステップ】 主治医による職場復帰可能の判断 2 17
プライバシー保護 ・復職に関する情報のほとんどは、労働 者のプライバシーに深く関わるもので あるため、従業員の個人情報について は原則として常に本人の同意を得た上 で扱うよう配慮しなければならない。 18
「ラインケア」のキーワード メンタル不調・不全を発生させないた めに職場の環境改善を図るとともに つなぐ聴く声掛け気付く 19