シミュレーション論 Ⅱ 第13回 カオスとフラクタル. 前回のレポート 解答例 図の S1 からスタートし、「上」 → 「下」 → 「左」 → 「右」の順に行動が選択された場合、各状態の Q 値がど うなっているか計算せよ。ただし Q 値の初期値はすべて 1とする。

Slides:



Advertisements
Similar presentations
22 ・ 3 積分形速度式 ◎ 速度式: 微分方程式 ⇒ 濃度を時間の関数として得るためには積分が必要 # 複雑な速度式 数値積分 (コンピューターシミュ レーション) # 単純な場合 解析的な解(積分形速度式) (a)1 次反応 1次の速度式 の積分形 [A] 0 は A の初濃度 (t = 0 の濃度.
Advertisements

シミュレーション論Ⅰ 第 7 回 待ち行列のシミュレーション(2). 第 6 回のレポート(解答例) 乱数表より乱数を記入し、到着間隔・サービス時間にした がってグラフを作成する 例) 最大待ち人数:2人 最大待ち時間:5分 平均待ち時間:3分.
ファーストイヤー・セミナーⅡ 第13回 2次元グラフィックス(1). 2次元グラフィックス Ultra-C では、これまで利用してきた「標準入出力」 以外に「グラフィックス画面」があり、図形などを 表示できる C 言語のグラフィックスには細かな規定がなく、こ れから学ぶ内容が他の環境、システムでは利用でき.
数学のかたち 数学解析の様々なツール GRAPSE編 Masashi Sanae.
情報基礎演習I(プログラミング) 第9回 6月22日 水曜5限 江草由佳
初年次セミナー 第13回 2次元グラフィックス(1).
データ分析入門(12) 第12章 単回帰分析 廣野元久.
初年次セミナー 第14回 2次元グラフィックス(2).
・力のモーメント ・角運動量 ・力のモーメントと角運動量の関係
プログラミング入門 電卓番外編 ~エクセルで関数表示~.
シミュレーション論 Ⅱ 第5回 ランダムウォーク.
情報科学概論I 【第5週】単位区間上のカオスとフラクタル ~実数の不思議~ 徳永隆治 (情報学類).
ファーストイヤー・セミナーⅡ 第8回 データの入力.
第4回 (10/16) 授業の学習目標 先輩の卒論の調査に協力する。 2つの定量的変数間の関係を調べる最も簡単な方法は?
3 一次関数 1章 一次関数とグラフ §3 一次関数の式を求めること          (3時間).
第14章 ファイル操作 (コマンドプロンプト版)
マルチエージェント・シミュレーション(2)
Microsoft Office クイックガイド ~PowerPoint 2013~
第4回:ボールを画面内で弾ませよう! (オブジェクトの移動、二次元)
マルチエージェント・シミュレーション(2)
地理情報システム論 第3回 コンピュータシステムおける データ表現(1)
Excelによる3-D/等高線グラフの描画 2変数関数の描画 Excel によるグレイスケールマップ風描画
シミュレーション論 Ⅱ 第12回 強化学習.
Excelによる3-D/等高線グラフの描画 2変数関数の描画 Excel によるグレイスケールマップ風描画
基礎プログラミング (第五回) 担当者: 伊藤誠 (量子多体物理研究室) 内容: 1. 先週のおさらいと続き (実習)
シミュレーション論Ⅰ 第4回 基礎的なシミュレーション手法.
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
【第三講義】 1次元写像の軌道と安定性.
電気基礎実験 <<グラフ処理>>
4.2 連立非線形方程式 (1)繰返し法による方法
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
第3回:ボールを上下に動かそう! (オブジェクトの移動、一次元)
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 エクセルでの正規分布の グラフの描き方 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
非線形方程式の近似解 (2分法,はさみうち法,Newton-Raphson法)
金沢大学 工学部 情報システム工学科3年 岩淵 勇樹
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 エクセルでの正規分布の グラフの描き方 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
シミュレーション論 Ⅱ 第5回 ランダムウォーク.
Lorenz modelにおける 挙動とそのカオス性
CGと形状モデリング 授業資料 長井 超慧(東京大学)
シミュレーション論 Ⅱ 第12回 様々なシミュレーション手法(3) 強化学習.
C 言語について 補足資料 資料および授業の情報は :
基礎プログラミング演習 第10回.
SystemKOMACO Jw_cad 基本操作(6) Ver.1
電界中の電子の運動 シミュレータ作成 精密工学科プログラミング基礎 資料.
OpenGLライブラリを用いた3次元フラクタルの描画
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 エクセルでの正規分布の グラフの描き方 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
第14章 モデルの結合 修士2年 山川佳洋.
前回の練習問題.
第14章 ファイル操作 (コマンドプロンプト版)
第4回 統計処理(1) 表計算ソフトの基本操作 塩浦 昭義 東北大学全学教育科目 情報基礎 A 1セメスター 木曜1,3講時
Microsoft Office クイックガイド ~PowerPoint 2013~
様々なシミュレーション手法(3) 強化学習/カオスとフラクタル
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
【第五講義】 アトラクタとリアプノフ指数.
SystemKOMACO Jw_cad 基本操作(3) Ver.1
様々なシミュレーション:社会現象のシミュレーション
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 報告者 佐々木 稔 2003年6月25日 3.1 関数近似モデル
計測工学 計測工学8 最小二乗法3 計測工学の8回目です。 最小二乗法を簡単な一時関数以外の関数に適用する方法を学びます。
シミュレーション論 Ⅱ 第1回.
シミュレーション論Ⅰ 第7回 シミュレーションの構築と実施.
22・3 積分形速度式 ◎ 速度式: 微分方程式 ⇒ 濃度を時間の関数として得るためには積分が必要
22・3 積分形速度式 ◎ 速度式: 微分方程式 ⇒ 濃度を時間の関数として得るためには積分が必要
Excelによる3-D/等高線グラフの描画 2変数関数の描画 Excel によるグレイスケールマップ風描画
クローン検出ツールを用いた ソフトウェアシステムの類似度調査
情報工学概論 (アルゴリズムとデータ構造)
2008年6月5日 非線形方程式の近似解 2分法,はさみうち法,Newton-Raphson法)
情報数理Ⅱ 第10章 オートマトン 平成28年12月21日.
CGと形状モデリング 授業資料 1,2限: 大竹豊(東京大学) 3,4限: 俵 丈展(理化学研究所)
コンピュータの高速化により, 即座に計算できるようになってきたが, 手法的にはコンピュータ出現以前に考え出された 方法が数多く使われている。
計算機プログラミングI 第10回 2002年12月19日(木) メソッドの再定義と動的結合 クイズ メソッドの再定義 (オーバーライド)
Presentation transcript:

シミュレーション論 Ⅱ 第13回 カオスとフラクタル

前回のレポート 解答例 図の S1 からスタートし、「上」 → 「下」 → 「左」 → 「右」の順に行動が選択された場合、各状態の Q 値がど うなっているか計算せよ。ただし Q 値の初期値はすべて 1とする。

解答例(1) 各状態での Q 値の初期値を1とする S1 からスタートし、行動「上」が選ばれたとすると → 壁に当たるため位置は S 1のまま、報酬は-1 → よって、 Q 値は

解答例(2) 次に、 S1 で行動「下」が選ばれたとすると → 状態は S 3へ移動、報酬は 0 → よって、 Q 値は

解答例(3) 次に、 S 3で行動「左」が選ばれたとすると → 壁に当たるので状態は S 3のまま、報酬は -1 → よって、 Q 値は

解答例(4) 次に、 S 3で行動「右」が選ばれたとすると → 状態は S 4(ゴール)へ移動、報酬は 1 → よって、 Q 値は 最終的な Q 値は左図のようになる

カオス 1960 年代、ローレンツにより発見 対流問題に関する 3 変数の微分方程式があるパラメー タ領域において不規則な挙動をしめす リーとヨーク 「カオス」と命名 3 周期の周期点があればカオスが存在する リーとヨークの定理

カオスの定義 カオスの厳密な定義は研究者によって異なる – 時間の経過とともに変化する決定論的なシステムにおいて、 初期値に敏感に反応する非周期振動 (伊藤俊秀、草薙信照「コンピュータシミュレーション」 オーム社 より引用) カオスの必要条件 – 非周期である – 何らかのリターンマップによって記述できる – リャプノフ指数が正である

ロジスティック曲線 ロジスティック曲線:人口増加や製品の普及率など の記述に使用される曲線で、以下のような関数(ロ ジスティック関数で表される) ロジスティック曲線の例

ロジスティック曲線のカオス性 ロジスティック関数を差分方程式であらわすと以下 のようになる このとき a の値によって x n の値が大きく変化する

ロジスティック曲線のカオス性(2) a の値によって x n が以下のように変化することがわ かっている –0 ≦ a ≦ 1 ・・・ 0 に収束 –1 < a ≦ 2 ・・・ 1 ー 1/ a に収束 –2 ≦ a < 3 ・・・ 振動しながら 1 ー 1/ a に収束 –3 ≦ a ≦ 3.569… ・・・ 2 k 個の周期点で振動 –3.569… ≦ a < 4 ・・・ カオス性を示し、非周期で 振動

ロジスティック曲線を描いてみよう 以下のような枠を作成する(注: n の列は 50 まで作 成) ノート PC のない人は別課題1をやってください B3 セルに以下のように記述し、下へコピー ( B3 セル) = C$2 * B2 * (1 - B2) C 2セルに以下のように記述(循環参照エラー が出たらキャンセルを押す) ( C 2セル) = IF(C2+0.1<4,C2+0.1,4)

グラフを描く n, Xn の列を選択し、「散布図」でグラフを 描く

循環参照を許可する 循環参照を許可し、シミュレーションを実行可能にする 「ツール」 → 「オプション」 → 「計算方法」タブで計算方法を 「手動」、「反復計算を許可」にチェックし、最大反復回数を 「1」に できたらF9キーを押してシミュレーションを実行してみよう

様々なロジスティック曲線の挙動

初期値とカオス カオスの特徴のひとつに「初期値に敏感に反応する」 というものがある 先ほどの例は全て初期値( x 0 ) = 0.01 の場合であるが、 わずかに変えるだけで挙動が大きく異なる

(参考)リターンマップ リターンマップを用いるとロジスティック関数の挙動 の違いが分かりやすい a = 4, x 0 = 0.01 a = 4, x 0 = 0.02

(参考)リャプノフ指数 リャプノフ指数:初期値が変化したときにその後の挙 動がいかに変化するかを示す指数 カオスであるかどうかを判断する指標のひとつとされ る この数値が正であることがカオスである条件のひとつ とされている

フラクタル フラクタルの厳密な定義は非常に難しいが、直感的に は「図形の部分と全体が自己相似」になっているもの などが挙げられる 例)海岸線の形状、木の枝、血管の形状など

フラクタル研究の歴史 始まりは、イギリスの気象学者ルイス・フライ・リ チャードソンの国境線に関する検討である。国境を接 するスペインとポルトガルは、国境線の長さとしてそ れぞれ 987km と 1214km と別の値を主張していた。リ チャードソンは、国境線の長さは用いる地図の縮尺に よって変化し、縮尺と国境線の長さがそれぞれ対数を 取ると直線状に相関することを発見した。この様な特 徴をフラクタルと名付けて一般化したのがマンデルブ ローである。 マンデルブローによるフラクタルの定義:「ハウスド ルフ次元が位相次元を厳密に上回るような集合」 (以上 Wikipedia より引用)

フラクタル図形 自然界に存在するもののほかに、人工的なフラクタル 図形が数多く考案されている セルオートマトンの練習問題であらわれたシェルピン スキー・ガスケットも代表的なフラクタル図形である

コッホ曲線 コッホ曲線:代表的なフラクタル図形 直線を3等分して中央に正三角形の2辺を描く → この操作を繰り返すと、全体と部分が相似になる図形 が 描かれる

フラクタルの利用:シダの葉の描 画 シダの葉もフラクタル図形の特徴を満たしている Excel を用いてシダの葉(に似た模様)を描画してみよ う ノート PC のない人は別課題2、3をやってください

シダの葉の描画(1) 以下の 4 組の式を、右側に示す確率で適用してやるとシダの葉に似 た図形が描ける ・・・ 73 % ・・・ 13 % ・・・ 1 %

シダの葉の描画(2) 以下のような枠を描き、 A 3セルに = RAND() と記入する Xn 、 Yn の初期値は 1 とする 乱数の値によって分類し、先ほどの4組の式を適用する 0 ~ 0.73 、 0.73 ~ 0.86 、 0.86 ~ 0.99 、 0.99 ~ 1 の4つに分類

シダの葉の描画(3) B 3セル、 C 3セルに以下のように記入する ( B 3セル) =IF(A3<0.73,0.856*B *C2+0.07, IF(A3<0.86,0.244*B *C , IF(A3<0.99,-0.144*B2+0.39*C , 0.486))) ( C 3セル) =IF(A3<0.73, *B *C , IF(A3<0.86,0.176*B *C , IF(A3<0.99,0.181*B *C , 0.355*B *C2+0.05)))

シダの葉の描画(4) 記入できたら下へ 行ほどコピーし、 B 、 C 列を選択して「散 布図」でグラフを描く

シダの葉の描画(5) うまくいったら背景色や点の色などを変更してみよう

さまざまなフラクタル図形

フラクタルの応用 CGや図形の描画 – 山岳や海岸線の描画 – CGによる芸術作品 破壊の進展や強度の測定 – 岩石の強度診断 ・・・岩石に圧力がかかった際のクラック(ひび割れ)の進展を フラクタル次元を用いて計測し、破壊の様子と強度を測定する フラクタル次元:フラクタル図形の複雑さを示す指標 いくつかの計算法が提案されている 例)相似次元、ディバイダ、ボックス カウント法など

第13回のレポート オリジナルのフラクタル図形を考えて描画せよ コッホ曲線やシェルピンスキー・ガスケットなどを参 考にするとよい 自分で考えたものであれば既に提案されているもので あったとしても問題ない