近年の健康政策と 健康寿命 中京大学 経済学部 湯田ゼミ 市川穂 神尾真一 杉山将司 中田翔太 林誉将 藤谷将大 八木竜生 渡邉峻也 1
目次 1. 健康寿命と平均寿命 健康寿命と平均寿命の推移・予測 健康寿命と平均寿命の関係 2. 健康寿命を延ばすための取り組み 取り組み例(国) 取り組み例(自治体) 取り組み例(民間団体) 3.運動習慣と健康水準 グロスマンモデルを用いた考察 高齢者の運動習慣の推移 運動習慣を促進する取り組み 2
健康寿命・平均寿命とは 健康寿命とは、日常的に介護を必要としないで自立し た生活ができる生存期間のことをいう。 平均寿命とは、 0 歳時点の平均余命のことである。 日本人の平均寿命は世界最高水準である。 平均余命とはある年齢の人がその後、何年生きられるかという期待値 である。 健康寿命との違いは、平均余命は生存期間の量に注目 することに対して、健康寿命はその質に注目すること である。 3
我が国の近年の平均寿命と健康寿命の推移 出典 厚生労働省 HP 「健康寿命と平均寿命を見 る」 4
我が国の平均寿命の将来予測 5 出典 健康日本 21 (第二次)の推進に関する資料
健康寿命と平均寿命の関係 平均寿命と健康寿命の差が 9 歳 ( 男)~14歳 ( 女)延び ている 平均寿命はさらなる延伸が予測されている。 これに伴い、健康寿命との差が拡大すれば、介護を必要とする期間が 延びる。 このことは結果として医療費や介護給付費を多く消費 する期間が延びてしまう。 ⇒疾病予防と健康増進、介護予防などによって健康寿 命を延ばすことで、平均寿命との差が縮小する。 これによって、 QOL ( Quality Of Life :生活の質)が向上 する。 さらに、社会保障負担の軽減も期待できる。 6
引用:厚生労働省 ― 平成 22 年度 国民医療費の概要 年齢階級別一人当たりの国民医療費 倍
年齢階級別一人当たりの介護費 8 出典: 厚生労働省-平成 22 年度介護給付費実態調査報 告 -人口推計(平成 22 年現在)
健康寿命を延ばすための取組み 国 健康日本 21 スマート・ライフ・プロジェクト 地方自治体 静岡県 長野県松本市 民間団体 公益財団法人愛知県健康づくり振興事業団(あいち 健康の森健康科学総合センター) 9
健康寿命を延ばすための取り組み例 (国) 健康日本 21 国民の健康の増進の推進に関する基本的な方針や、国民の健康 の増進の目標に関する事項を定めたもの。 主な目的は生活習慣病の予防、疾病の発生を防ぐこと。 2000 年から 2012 年(第一次) 生活習慣病の予防のために具体的な数値目標を設定。 (例) 禁煙 未成年者の喫煙を0% 喫煙が及ぼす健康影響についての知識の普及率100% 2013 年から 2022 年(第二次) 目標の一つとして健康寿命の延伸がある。 国は、医療や介護などの分野における支援を進める。 2022 年までに健康寿命が平均寿命を上回ることを最終目標とし ている。 10
健康寿命を延ばすための取り組み例 (国) スマート・ライフ・プロジェクト 厚生労働省によって展開されている国民運動で、 2011 年 2 月開始にされた。 企業・団体・自治体と厚生労働省が連携し、国民の 健康づくりを応援・推進する運動。 プロジェクトに参画した企業等に対して、生活習慣 病予防に直接つながる3つの行動「適度な運動」、 「適切な食生活」、「禁煙」について、従業員・職 員の方への呼びかけ、地域でのイベントの実施や協 力、商品やサービスを通じた消費者への呼びかけな どを行ってもらう。 11
健康寿命を延ばすための取り組み例 ( 自治体 ) 健康ポイント制度 目的 自治体が行っている健康促進のための制度で、運動不足解消と 健康になってもらうことによる医療費の削減を目的としてい る。 内容 健康診断、スポーツジムなど健康関連施設に行くとポイントが 付与され貯まったポイントによって商品券などの褒美が与えら れる仕組みである。 結果 運動習慣が増加し、健康水準の向上に繋がる。 *兵庫県豊岡市、山口県宇部市、静岡県袋井市、岡山県高梁市 などが行っている。 12
健康寿命を延ばすための取り組み例 (自治体) 静岡県 ( 健康寿命全国一位) 県民の特定健診データを分析して地図に落とし込み、市町の健 康づくりに資する「見える化の健康マップ」を 2010 (平成 22 ) 年度に作成。 65 歳から元気で自立して暮らせる期間を算出したものであるお 達者度を市町村ごとに算出。 日々の運動、食事などの生活改善や、健康診断の受診、健康講 座やスポーツ教室、ボランティア等の社会参加などを行った住 民が、特典を受けられる「健康マイレージ」の作成。 13
健康寿命を延ばすための取り組み例 (自治体) 長野県松本市 ( 平均寿命全国一位) 若い時から生活習慣を改善することが将来の認知症 予防につながるということを、広く市民に周知する ため、 30 ~ 40 代からの認知症予防事業を 2009 年度か ら開始。 子どもの実態調査(血液検査や歩数調査等)に基づ き、保健指導プログラム等により体力づくりや食生 活の改善を目指す「こどもの生活習慣改善事業」の 実施。 14
健康寿命を延ばすための取り組み例 (民間団体) 公益財団法人愛知県健康づくり振興事業団 (あいち健康の森健康科学総合センター) 県内の小中学校からの支援要請に応じて、学校に出向き、 児童・生徒・保護者に対して健康づくりの大切さを普及す る「学校教育支援事業(出前健康教育)」の実施。 2002 (平成 14 )年に開始してから、積極的に小中学校に出 向いて健康教育を行っている。 15
運動習慣と健康水準の関係 (中央・地方)政府レベルで,様々な健康増進運動が 展開されている。 こうした取り組みは,健康寿命を延伸させることが予 想される。 以下では,運動習慣と健康の関係について考察する。 データによる概観 経済理論(グロスマンモデル)による考察 16
運動習慣のある者の割合 ( 60 歳以上、性別階級)(平成 24 年) 国民健康栄養調査(厚生労働省)参照 17
運動習慣のある者の割合の年次水準 ( 60 歳以上)(平成 20~24 ) 国民健康栄養調査(厚生労働省)参照 18
運動習慣のある高齢者の割合と平均寿命の推移 19
Y x 20 グロスマンモデルによる考察 ( 1 ) 準備:企業の生産関 数
H e 21 グロスマンモデルによる考察 ( 2 ) 健康の生産 関数
H e 22 グロスマンモデルによる考察 ( 3 ) 健康政策の効果 健康増進政策
グロスマンモデルによる健康政策の効 果 グロスマンモデルを用いると、健康政策の推進によっ て健康水準が向上することが説明できる。 しかしながら、政策の推進には一定の費用がかかる。 「命 ( 健康 ) に掛け値なし」と言われるが、昨今の厳しい財政事情の下 では、健康政策に充てられる財源も多くはない。 そこで、政策の費用対効果を検証する必要がある。 23
健康政策の評価 24
弾力値の推計結果 25 弾力値平均寿命健康寿命 男性 女性
まとめ 平均寿命・健康寿命ともに日本は世界最高水準であるが、平均寿命と 健康寿命の差が大きいことが問題である。 その差を縮小するために、日本では国や地方自治体などで健康寿命を 延ばすための取り組みが行われている。 グロスマンモデルを用いて考察した結果、高齢者に運動習慣を身に着 けさせることで、健康水準が上がることが説明できた。 弾力値の推計を行った結果、政策の費用対効果は小さかったが、日本 の平均寿命・健康寿命が世界最高水準であることが要因として考えら れる。 運動を習慣化することで健康水準が上がることが分かり、それを促進 するような取り組みも行われているが、取り組みが知られていないの が現状である。そのため、そのような取り組みがあるということを広 めていく必要がある。なので、地方自治体ごとに呼びかけを行うなど の対応が求められる。 26