過去 100 年に観測された 夏季日本の気候変動 気象研究所 遠藤洋和 2014.10.9 第 10 回ヤマセ研究会.

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「ヤマセの東西性にみられる季節性」 境田清隆(東北大学環境科学研究科)
CMIP3マルチ気候モデルにおける 夏季東アジアのトレンド
平成12年 1.浜松市. 平成12年 1.浜松市 平成16年 1.浜松市 2.さいたま市 3.北九州市 4.福岡市.
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過去 100 年に観測された 夏季日本の気候変動 気象研究所 遠藤洋和 第 10 回ヤマセ研究会

長期間地上観測を行っている国内の気象官署 ( 1901 年~) 60 地点 気温、降水量、気圧などを観測 欠測はほとんど無い デジタル化済 月平均: 気温、降水量、気圧 日平均: 降水量

地上気温

● 大都市に立地する観測地点の除外: 60 地点 → 44 地点 気象庁における平年値作成(気象庁統計室, 2011 )および気候変動監視 業務(大野ら, 2011 )において採用されている手法に基づく。 1. 主成分分析: 移転前後 16 年を対象に、全国官署の各月の時系列データ に対して主成分分析を行い、累積寄与率 90 %までのモードを抽出。 2. 重回帰分析: 各月の時系列について、「各モードのスコア」と「移転 による不連続」を説明変数とする重回帰式で表現し、残差が最小となる ような係数を決定する。係数 b が補正値。 ● 官署移転時の統計接続: 補正値の算出 都市化の影響を軽減するため、人口 50 万人以上の都市に立地する気 象官署を除外 。 札幌、新潟、宇都宮、名古屋、浜松、東京、横浜、京都、広島、岡 山、神戸、 大阪、福岡、熊本、鹿児島、松山 通常の経年変動移転による不連続残差 ある地点の y 年 m 月の気温 Fi: 第 i 主成分のスコア (累計寄与率 90% まで) S: ステップ関数 移転前 : -0.5 、移転後 0.5

気温トレンド 1901 ~ 2012 年 7~8月は、北日本では太平洋側を中心に、 昇温トレンドが他地域 / 他季節に比べて小さ い

基準: 1901 ~ 1950 年平均 1920 年頃以降はほとんど昇温していない 近年においても冷夏が発生( 1983, 1988, 1993, 2003 年など) 地域平均気温偏差 (7月、北日本太平洋側)

6月 地点別のトレンド [ ℃ /100 年 ] 7月 8月 × : trend < |0.5 ℃ | 7~8月は北日本太平洋側で昇温トレンドが小さい

降水量

気候値 1901 ~ 1950 [mm] 塗りつぶし: 有意水準 10% 以下 トレンド 1901 ~ 2012 [%] 7~8月は日本海側地域で増 加 8月は太平洋側地域で減少 秋雨の減少 基準: 1901 ~ 1950 年平均 梅雨秋雨

6月 地点別トレンド [%/100 年 ] 7月8月 6月: 減少地点が多い 7月: 日本海側を中心に増加地点が多い 8月: 日本海側では増加、太平洋側では 減少 基準: 1901 ~ 1950 年平均 × : trend < |10%|

梅雨の季節進行の変化 Endo (2011, SOLA) 基準: 1901 ~ 1950 年平均 気候値( 1901 ~ 1950 年) 梅雨初期の降水減少 梅雨末期の降水増加 (特に日本海側地 域) 増加減少 トレンド( 1901 ~ 2012 年) 初期 中期 末期

EJ+WJ 梅雨初期: 全域で有意な減少(約20%減) 20 世紀前半の数十年スケール変動 梅雨中期: 有意なトレンドなし 梅雨末期: 日本海側で有意な増加(約50% 増) 年々変動の増加 降水量平年比の時系列(平年 :1901 ~ 1950 年) 太線: 11 年移動平均 Endo (2011, SOLA) EP+WP

大規模循環場

HadCRU4 (気温) 1901 ~ 2012 年 大規模循環場のトレンド(7月、 1901 年~) HadSLP2 (気圧) 1901 ~ 2004 年 HadSLP2(reconstruct) 1901 ~ 2004 年 データの存在頻度が 80% 以下の領域を灰色でマスク 有意水準 10% 未満の領域にハッチ オホーツク海高気圧の強化 太平洋高気圧の弱化 ΔSLP : 網走-石巻 基準: 1901 ~ 1950 年平均

大規模循環場のトレンド(7月、 1958 年~) JRA-55 海面気圧 オホーツク海高気圧の強化 太平洋高気圧の弱化 亜熱帯ジェットの南偏、寒帯前線ジェットの強化 → ヤマセ(北東風)の増加 500hPa 高度 300hPa 東西風 北東風頻度 (daily) 太線: 平年の 15m/s 等値線

まとめ 謝辞 7~8月の気温は、北日本では太平洋側を中心に、昇温量 が他地域 / 他季節に比べて小さい。 7~8月の降水量は、日本海側では増加。8月は太平洋側 の一部で減少。 梅雨末期の降水量が増加。 7月の循環場は、オホーツク海高気圧が強化、太平洋高気 圧の張り出しが弱化。 → ヤマセの増加 ⇒ 梅雨から盛夏への季節進行が遅れて いる 官署移転補正を行った気温データを気象庁気候情報課から提供して頂い た。