銀河と共進化するダストに包ま れた巨大ブラックホール Dusty Super Massive Black Holes coevolving with galaxies 2014 年 10 月 2 日 藤代尚文 京都産業大学・神山天文台.

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銀河と共進化するダストに包ま れた巨大ブラックホール Dusty Super Massive Black Holes coevolving with galaxies 2014 年 10 月 2 日 藤代尚文 京都産業大学・神山天文台

話の内容 CTA で z ~ 2 までのブレーザーが見えるようになる – z ~ 2 までの銀河と活動銀河核( AGN )の進化を、赤外線宇 宙望遠鏡の観測データをベースに調べているので、その 研究紹介と、 CTA とのコラボレーションの可能性を議論し たい 本日の話の流れ – 自己紹介 – イントロダクション – ダストに包まれたブラックホールの選択 – ダストに包まれたブラックホールの特性 – まとめと今後の研究

自己紹介 やっていること 赤外線観測データをベースとした銀河進化研究 赤外線天文衛星( AKARI 、 SPICA )の観測機器開発 小型補償光学装置( CRAO )の開発 AKARI SPICA CRAO

イントロダクション Introduction

AGN Unified Model Jet - Gamma-ray - Radio Dusty Torus - Infrared Accretion Disc &Corona - Ultraviolet - X-ray Super Massive Black Hole (SMBH)

Cosmic Star-formation History vs. Accretion History of SMBH Kormendy & Ho 2013 星形成史 ブラックホール降着史 宇宙の星形成史とブラックホール降着史は同じようなプロファイル → 銀河の星形成活動に巨大ブラックホールが関与しているので は?

Magorrian relation 近傍銀河のバルジ質量(光度、速度分散)とブラックホール質量に良い 相関 → 銀河とブラックホールの共進化を示唆 高赤方偏移では近傍銀河より上にオフセット ※ただし、サンプルの偏りの可 能性あり Kormendy & Ho 2013 バルジ質量 ブラックホール質量 バルジ質量 z~0z~0 z>0 近傍銀河

AGN Distribution on Color-Mass Diagram Schawinski 2012 Red sequence Blue cloud Green valley 星形成を終えた重い銀河 (Red sequence) と星形成中の軽い銀河 (Blue cloud) の中間付近 (Green valley) に AGN が多く分布 → AGN は星形成の抑制に関与した? z ~ 0 (SDSS, Galaxy Zoo project) 星質量 ( 静止系 ) u-r カラー

AGN Feedback AGN (ブラックホール)の影響により、 星間ガスの冷却と星形成が抑えられ る – Radiative process: 紫外線、 X 線により周りのガスが 電離され温められる – Mechanical process: ジェットの衝撃波によりガスが 吹き飛ばされる ALMA が明らかにした近傍銀河の分子 ガスのダイナミクスによれば、 Mechanical process が優勢という報告 あり ( 右図, Combes+ 2013) → 高赤方偏移では? NGC1433 中心部 (ALMA の観測 ) Velocity map Intensity map ΔDEC (arcsec) ΔRA(arcsec)

Dusty black holes Massive black hole accretion histories Observed XRB spectrum Compton-thick AGN の寄与 (keV) X 線背景放射のスペクトルは、可視光や軟 X 線では検出できない、ダスト に包まれたブラックホールをもつ AGN (Compton-thick AGN) が大量にある ことを示唆 → ダストによる吸収が弱い硬 X 線 (>10keV) やダストトーラスが放射する赤 外線で検出可能 Ueda ( 観測された X 線背景放 射 Compton-thin AGN の寄 与

ダストに包まれたブラックホー ルの選択 Selection of Dusty Black Holes

SEDs of AGN/star-forming galaxies from ultraviolet to mid-infrared wavelength SWIRE Template Libraries (Polletta+ 2008) PAH features Si absorption Dust torus 赤外線においては、 AGN のダストトーラスからの放射だけで なく、星生成活動が起源の放射もある →SED に着目し両者を見分ける

Infrared Space Telescopes: AKARI & Spitzer フィルターバン ドなし z~2 までの AGN のダストトーラスからの近~中間赤外線放 射を調べられたのは、 AKARI/IRC と Spitzer/IRAC&MIPS のみ ※将来は JWST/MIRI によって観測可能 それぞれの特徴 – Spitzer は波長 10μm 帯にフィルターバンドがないが、感度が深い – AKARI は波長 2μm から 20μm まで漏れなくカバーし、詳細な SED 解 析が可能だが、感度が少し浅い

Near-infrared Selection Fujishiro (submitted) λ ~ 5μm のギャップに着目した二色図分類法( e.g. Donley+ 2012) 赤方偏移の情報を使わずに、 0<z<2 のダストトーラスからの放 射が強い AGN を効率的に選択可能 全天体の 10% 程度を AGN 候補として選択 AGN 赤は X 線天体

Mid-infrared Selection Hanami AKARI/IRC のフィルターセッ トを活用した、 PAH features, Si absorption に着目した二 色図分類法 ( e.g. Hanami+2012) 赤方偏移の情報が必要。 Photometric redshift を使用 する場合は、その精度が重 要

SED Fitting with Far-infrared Data 岩手大学・石垣剛氏より SED fitting により、 AGN と星形成活動が混合してい る場合の AGN の割合 (f AGN ) を導出可能 (e.g. Hanami+ 2012) Herschel/PACS の遠赤外線データまで含めれば、 AGN と星形成活動の分離がさらに明確になる AGN の割合 大 小 Herscel/PACS のデータ

ダストに包まれたブラックホー ルの 特性 Physical Properties of Dusty Black Holes

Rest-frame 5μm luminosities Hanami+ 2012, Fujishiro (submitted) 赤は X 線天体 AKARI Spitzer AGN non-AGN 静止系波長 5μm の光度はダスト トーラスからの放射をトレース 近赤外線二色図で AGN に分類され た天体と、それ以外の天体につ いて、 z<2 の静止系波長 5μm の光 度の星質量依存性を調査。ただ し、 spectroscopic redshift をもつ天 体のみ わかったこと – 二色図で AGN と分類された天 体の光度は、明らかにそれ 以外の天体より高い – 星質量依存性は弱い – AGN と分類された天体は、 X 線で検出されている割合が 高い ※ただし、 spectroscopic sample に限っ ているのでバイアスの可能性あり

Infrared luminosities vs. X-ray luminosities AKARI のデータにより AGN と分類された天体について、赤外線 光度と Chandra のデータによる X 線光度を調査。 Photometric redshift sample も含む – X 線で検出されていない天体が多数あり – 軟 X 線で見逃している Compton-thick AGN が多数存在することを示 唆 Krumpe (accepted) AGN の割合:大 AGN の割合:小 Compton-thick AGN の候補 赤外線光度 X 線光度 赤外線光度

Infrared/X-ray - Radio correlation Spitzer に関して、 VLA による 1.4GHz 電波の 100uJy カタログ( Simpson )の天体を、 MIPS24μm のデー タをもとに radio-loud/quiet に分類 (Ibar+ 2008) した後、 近赤外線 AGN 選択二色図上にオーバープロット – 赤外線で AGN と判定された天体の Radio-loud と radio-quiet の数の比は 2:3 – Radio-loud/quiet ともに、軟 X 線ではあ まり検出されていない。電波天体は Compton-thick AGN の可能性が高い? 星形成銀河を見ている?観測条件よる バイアス? AKARI に関しても、最近 VLA のデー タを取得したので、同様な調査を 行う予定 電波で検出される天体には、 ジェットを出す AGN だけではなく、 星形成銀河も含まれるので、これ らを区別するためにガンマ線の情 報に期待 近赤外線の AGN 選択二色図を拡大 AGN 赤は X 線天体、緑は Radio-Loud 天体、 マゼンタは Radio-Quiet 天体

まとめと今後 Summary & Future Plan

Summary 赤外線データを用いれば、高赤方偏移のダ ストに包まれたブラックホール( Compton- thick ) AGN を選択し、調べることが可能と 考えられる 赤外線で選択された AGN には、電波と軟 X 線 に相関があまりみられなかった。ジェット の影響はまだわからないことが多いので、 ガンマ線の将来観測に期待

Future Plan JWST の時代になっても、高赤方偏移の Dusty AGN を空間分解し、星形成活動に 与えるダイナミクスを直接調べることは困難 → 引き続き、多波長データとモデルによる分析から、銀河と AGN の共進化を調べることにな りそう 完成する年代順に Spitzer, AKARI, ASTRO-H, JWST で発見した天体を、 CTA でフォ ローアップするかたちになる? → 角分解能が大きく異なる点をどうするか? 現在: AKARI, Spitzer: ~5arcsec, Chandra: ~0.5arcsec 将来: JWST/MIRI: arcsec, ASTRO-H/HXI:~1.7arcmin, CTA:~1arcmin 以上 ジェット - ガンマ線 - 電波 ダストトーラス - 赤外線 降着円盤・コロナ - 紫外線 - X 線 ブラックホール CTA(2020 ~ ) ASTRO-H(2015 ~ ) JWST(2018 ~ ) SPICA(2025? ~ )