ドイツの景気拡大とエネルギーシステムの転換 ー日本における再エネ拡大の課題ー 富士通総研経済研究所 世界バイオエナジー協会常任理事 梶山恵司 2014 年 9 月 6 日.

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ドイツの景気拡大とエネルギーシステムの転換 ー日本における再エネ拡大の課題ー 富士通総研経済研究所 世界バイオエナジー協会常任理事 梶山恵司 2014 年 9 月 6 日

1.ドイツの再生可能エネルギーの実際

ドイツの経験 2  90 年代から始まったドイツのエネルギーシステムの転換。 きっかけは、将来のエネルギー危機と気候変動。  エネルギー効率向上によるエネルギー消費の削減+再生可 能エネルギー拡大が柱。  両者はコインの裏表。小規模分散型エネルギーシステム転 換の原動力。  本日は、再生可能エネルギーに焦点。  ドイツではすでに 14 年の経験・実績。  ドイツ経済・地域経済に多大な恩恵。特に、地域に分散し て存在するエネルギー源であるがゆえに、地域に多大な恩 恵。  日本のポテンシャルはドイツ以上。ドイツの再エネの実際 を分析し、日本と比較することは、日本の地域再生を考え るうえで参考になるところ大。

ドイツの再生可能エネルギー発電量の推 移 3  2000 年の FIT を契機に急拡大。  発電量に占める再エネ比率は 25.4 %( 2013 年)。

ドイツの再生可能エネルギー熱利用の推 移 4  熱も 2000 年以降、急拡大。  再生可能エネルギーの発電 15 万 2560GW h 熱 13 万 2360GW h

5  2000 年代前半のシュレーダー政権の、労働市場改革+社会保障改 革。  気候変動問題・ CO2 削減を背景にした、エネルギーシフト。  エネルギー効率向上、再生可能エネルギーこそ成長の源泉。 GDP 、エネルギー消費、 CO2

貿易の推移 6

財政収支の日独比較 7

世界で最も低い再エネコストを実現 8

ドイツの電力輸出入の推移 9  「ドイツは安い原発の電力を輸入しているから再エネ導入で きる」  実際には大幅な輸出超過。

ドイツの再生可能エネルギー熱利用 10  再生可能エネルギー熱利用量は 13 万 2360GW h。  石油換算で、 130 億㍑。 1 ㍑ =90 円として、 1 兆 2000 億円相当。  実際には、この半分程度のコストで利用。  地域で調達・利用するエネルギー。地産地消の典型で、資金 が地域で循環。  使えば使うほど、皆が幸せになれる。石油を使い続けること に比べ、メリットは明らか。

2.再生可能エネルギーの地域での利用

個人・地域が主体のドイツ 12 2/3 が個人、 小規模事業主

13 Dardesheim 東独の寒村⇒再生可能エネルギー先進地

14 ブレーマーハーフェン 造船の街⇒ 80/90 年代の疲弊⇒洋上風力基地

15 バイオガス利用に見る農村のビフォア・アフ ター 100 軒の集落の事例 before 電気代 1200 万円 灯油代 2400 万円 3600 万円の流出

16 バイオガスを軸に農村に新しい富が創造 木材チッ プ 400 万 Kwh 7000 万円 エネルギー作 物 600 万円 熱供給 1800 万円 1200 万円 熱供給熱供給 電力 バイオガス 7 00kW after 1 億円を超え る経済効果 畜産糞尿

ドイツのバイオガスプラント( 2011 年末)  技術が確立した 2005 年を境に導入が急増。現在では、 8000 以上のプ ラント。  農村に新しい富をもたらす。  担い手はほとんど農民。誰もが参入できるシステム。 バイオガス利用の本格化は 2005 年 17

18 ドイツではバイオガスは農家が主体

再生可能エネルギーの雇用と投資 19  再生可能エネルギーの雇用、投資の多くは地方。

20  10 年間でチップ販売量が 5 倍、チップ価格が 2 倍。 チップ価格の推移 過去 10 年間で 約5倍 過去 10 年間で 倍増 燃料用チップ販売量の推移 (出典)ロッテンブルグ大学講演 資料 林業所得の大幅な向上 ドイツ BW 州有林

21  価格が上がっても油代より安く、ユーザーにとっても恩恵 あり。 灯油 チップ 薪 ペレット ドイツにおけるエネルギー価格の推移 灯油価格の 約3分の1 (出典)ロッテンブルグ大学講演資料 燃料代の削減

3.日本の再生可能エネルギー利用の現場

日本の再エネの膨大なポテンシャル 23  すべての再生可能エネルギー源が豊富に存在。  世界でも有数の再生可能エネルギー賦存量。  風力、太陽光、地熱、バイオマス等々。  風力の潜在量は、約 39,000 億 kWh ( cf. 日本の総発電量 9,500 億 kWh )。  太陽光発電の稼働時間は 1,300 時間(ドイツ 1,000 時間)。  地熱の潜在量は世界第3位。  世界有数の森林蓄積。バイオマスの潜在性が最大。  そのほとんどが地域に存在。地域再生の起爆剤に。

世界有数の蓄積を誇るまでに成長した日本の森 林 24 森林資源の国際比較 日本ドイツ スウェーデ ン 森林面積 ( 万 ha) 2,5001,0002,300 森林蓄積 ( 億 m3) 年間成長量 ( 万 m3) < 18,00 12,5006,000 木材生産量 ( 万 m3) > 2,000 5,000-6,0001,900

しかし、現実は・・・・ 25  太陽光・風力ともに大規模で、地域外資本が多い。  地元は場所貸し(地代、固定資産税)と若干の雇用のみ。  一般市民は無関心。  地域で自律的に発展するメカニズムではなく、従来の企業 誘致・工場誘致と何ら変わらない。  20 年後は、宴のあと?  これで本当に再生可能エネルギーは定着するの?!

怪しい日本のバイオマス発電 26  大型( 5000 ㎾以上)、 5 万㎾の「超大型」発電も。  発電のみ(熱電併給はなし)で、エネルギーの無駄遣い。  林業や熱利用とは関係ない外部資本がほとんど 。  地元は燃料供給のみ。  丸太から作る良質のチップを、しかも、安い価格で要求。  質の悪い部分は使えない。  林業・地元にメリットなし。  本当に集められるの?  何のためのバイオマス発電?  熱利用なら皆が幸せになれる。  ムリして発電をやる意義ない。 日本の発電用燃料

バイオマス発電のリスク 27  FIT により買い取り価格は 20 年間固定=売り上げも 20 年間固 定。  発電経費に占める燃料コストの大きさ。  燃料調達の問題と並んで、燃料代上昇にどう備えるかが、事 業構築の最大のポイント。  ドイツでは、熱利用+残材利用。

大型バイオマス発電の事例( 5700 ㎾) 28  エネルギー効率 26 %をうたっているが、チップ乾燥に多くのエネルギー を消費しているため、実質は 20 %以下。  貴重なバイオマス資源の 8 割がムダ⇒チップも安くしか買えない⇒何のた めのバイオマス発電?! 発電用バイオマス 燃料を乾燥するた めのバイオマス乾 燥機 丸太から作る水分 の低い、高品質 チップを要求。