冷却フランシウム原子を用いた 電子の永久電気双極子能率探索のための ルビジウム磁力計の研究

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冷却フランシウム原子を用いた 電子の永久電気双極子能率探索のための ルビジウム磁力計の研究 東北大学 サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター測定器研究部 国際高等研究教育院修士研究教育院生 内山愛子

冷却フランシウム原子を用いた 電子の永久電気双極子能率探索のための ルビジウム磁力計の研究 ・本研究の背景と目的 冷却フランシウム原子を用いた電子の永久電気双極子能率(EDM)探索 EDM探索に必要とされる磁場精度 ・ルビジウム(Rb)磁力計 周波数変調光を用いた非線形磁気光学回転効果(FM-NMOR) ・Rb磁力計による磁場の安定性の評価 Allan分散による安定性の評価 ・まとめ

電子の永久電気双極子能率 EDM : Permanent Electric Dipole Moment 電子のスピン方向に沿って生じる電気双極子能率 標準模型(SM): クォークを介した高次の効果で電子EDM ( de ) が発現 超対称性理論: 統計性の異なる粒子の 伝搬により発現 標準模型より1010 倍 大きい値をとり得る 標準模型を超えた物理モデルの検証を行う EDMの特徴 電場と相互作用してエネルギーシフトを生じさせる 時間反転対称性を破る相互作用をする 原子を用いて電子EDMを探索する

冷却フランシウム原子による 電子EDM探索 フランシウム (Fr) 原子は電子EDM増幅率 (R) が非常に大きい原子 Fr原子EDM ~ 900 増幅率= 電子EDM D Mukherjee, et al.  J. Phys. Chem. A 113(45) 12549 (2009) . ー ー 磁場 電場 原子 + + 電場と磁場が平行 電場と磁場が反平行 m : 磁気モーメント, d: EDM B: 磁場, E: 磁場, s: スピン 原子の共鳴周波数から電子EDMを求められる

冷却フランシウム原子による 電子EDM探索 de = 10-29 ecm , E =100 kV/cm → dFr E = 9×10-20 eV 小 磁場の安定化と 高精度磁力計が必要 ゼーマン効果によるエネルギーシフト mB = 6×10-5 eV/T, B = 1 mT → mB B = 6×10-11 eV 大 生体磁気 都市雑音 地磁気 [ T ] 10-15 10-12 10-9 10-6 10-3 目標精度

本研究の目的 高精度磁力計による磁場の安定性の評価 周波数変調光による非線形磁気光学回転効果を用いたルビジウム磁力計 目標精度 磁気シールド 光検出器 ルビジウムセル コイル レーザー光 レーザー光1本で測定 測定領域に設置するものはRbセルのみ 1軸方向の磁場成分のみ測定 測定レンジが限定される 生体磁気 都市雑音 地磁気 [ T ] 10-15 10-12 10-9 10-6 10-3 目標精度

非線形磁気光学回転効果(NMOR)とは θ 回転角度から磁場を測定 原子の共鳴周波数の光が 磁場中の原子と相互作用することで 光の偏光面が回転する現象 1. 直線偏光によって原子がアラインメント状態になる 原子のアラインメント (光を吸わない状態) θ 直線偏光入射 2. 原子のアラインメントは磁場中で歳差する 直線偏光照射 光の偏光面が原子と相互作用することで回転する  (アラインメント状態に垂直な向きの光のみが吸収される)  gF: g因子 ,mB: ボーア磁子, G:緩和レート 光の吸収により偏光面が回転 回転角度から磁場を測定

有限磁場において高い感度を持つ磁力計を室温で実現 周波数変調光を用いたNMOR 有限磁場において高い感度を持つ磁力計を室温で実現 NMORが生じる磁場の大きさ 5kHzでFMした場合の 85RbのNMORスペクトル n =-1 n =0 n =+1 gF: g因子 ,mB: ボーア磁子, nMod:変調周波数 B B1 t 1/ nMod 原子のアラインメント 原子からみた光 回転角度磁場 [mrad] 磁場 [nT]

Rb磁力計セットアップ Bz λ/2 磁気シールド PBS PBS 3-axis coil ~377 THz 時間 Rb蒸気セル パラフィンコート (Φ 3 cm, 長さ 3 cm) 飽和吸収分光 磁気シールド 5kHzでFMしたレーザー光 ~パワー 113 μW PBS 光検出器 PBS Bz 3-axis coil λ/2 ロックインアンプ Sig. Sync. DFB laser 信号 発生器 Ref. レーザー光周波数 85Rb原子のエネルギー準位 52S1/2 52P1/2 F=3 F=2 ~ 377.106 THz ~ 794.982 nm D1線 中心周波数 ~377 THz FM変調幅: nWidth ~1.14±0.04 GHz 85RbD1線 F=3→2と3の平均から -0.63±0.02 GHz離調 時間 1/nMod = 0.2 msec, FM変調周波数: nMod = 5 kHz

磁場の安定性の評価‐結果 ∝ 𝜏 磁場の安定性をAllan分散 s2Allanを用いて評価する log(sAllan) Allan 分散 : 磁場測定結果を時間t平均した値のk番目 FM-NMOR信号から求めた 磁場のAllan分散 差分X出力 平均時間 [sec] アラン分散 [pT] ∝ 𝜏 log(sAllan) log(t) t:平均時間 白色雑音 Allan 分散 線形ドリフト

磁場の安定性の評価 ‐磁場変動による影響 これらだけでは 信号の不安定さを説明できない ∝ 𝜏 ∝ 𝜏 ∝ 1 𝜏 磁場のAllan分散と コイル印加電圧のAllan分散の比較 磁場のAllan分散と 外部磁場のAllan分散の比較 差分X出力 コイル印加電圧 ∝ 1 𝜏 アラン分散 [pT] アラン分散 [pT] シールドによる 磁気遮蔽率~10-3と仮定 ∝ 1 𝜏 差分X出力 ∝ 𝜏 フラックスゲート①z方向 ∝ 𝜏 フラックスゲート② z方向 平均時間 [sec] 平均時間 [sec] 外部磁場変動 特にフラックスゲート②側の磁場変動が大きい これらだけでは 信号の不安定さを説明できない 補正コイルの必要性

磁場の安定性の評価 -磁場変動以外による影響 平均時間 [sec] 磁場のAllan分散と 温度のAllan分散の比較 アラン分散 [pT] 差分X出力 温度   差分出力(Vs-Vp) 温度変化 -> 原子数密度変化 -> 出力(Vs-Vp)変化 レーザー光周波数や強度変化の 不安定性が原因である可能性が高い 磁力計自体の不安定さが問題 今後の課題:レーザーパワーの安定化

まとめと今後の展望 目的 実験 結果と考察 今後の展望 冷却Fr原子を用いた電子EDM探索に向けた 高精度磁力計による磁場の安定性の評価 FM-NMOR型Rb磁力計を用いた磁場測定 結果と考察 外部磁場により磁場の不安定さが生み出されていることがわかった 一方で磁力計自身の不安定が示唆された 今後の展望 補正コイルの導入,レーザーパワーの安定化などの改良を行う EDM探索実験への導入,共存磁力計への応用

Collaboration Cyclotron and Radioisotope Center (CYRIC), Tohoku University T. Aoki, K. Harada, T. Inoue*, S. Ito, M. Itoh, K. Kato, H. Kawamura*, K. Sakamoto, A. Uchiyama, and Y. Sakemi *Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences (FRIS), Tohoku University The University of Tokyo T. Aoki Tokyo Inst. Tech K. Asahi Tokyo Metropolitan University T. Furukawa Tokyo Univ. Agri. Tech. A. Hatakeyama Osaka University K. Hatanaka Japan Atomic Energy Agency K. Imai Kyoto University T. Murakami Indian Tech. Roorkee H. S. Nataraj Tokyo Inst. Tech. T. Sato Tohoku University Y. Shimizu Osaka University H. P. Yoshida Okayama University A. Yoshimi Kyushu University T. Wakasa Foreign students J. Mathis (ENSICAEN), L. Koehler (TU Darmstadt)