牛カンピロバクター症 届出伝染病 対象家畜: 牛、水牛

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牛カンピロバクター症 届出伝染病 対象家畜: 牛、水牛 牛カンピロバクター症 届出伝染病 対象家畜: 牛、水牛 原因: Campylobacter fetus。グラム陰性らせん状菌であり、微好気条件下で発育する。 疫学: 生殖器に感染し、感染個体との自然交配、あるいは本菌に汚染された精液や器具を介した人工授精により伝播する。不受胎牛の増加、胎齢5~7カ月齢での流産、特定の交配種牛との関連性などがある。 臨床: 不妊、流産などの繁殖障害が主症状である。特徴的な臨床所見は認められず、個体の臨床診断は困難である。特に雄は症状を示さず、精液性状にも異常は認められない。雌では初感染牛で不妊、流産が認められ、感染初期に子宮内膜炎、頸管炎を示すことがある。 予防・治療: 採取ごとの精液検査および定期的な種畜の細菌学的検査を実施する。汚染農場から牛を導入しない。保菌雄が摘発された場合、淘汰する。雌の治療には、抗生物質投与と子宮洗浄を行う。

発生が減少し、近年は希となった。2010~11年に北海道で種牛2頭の感染が確認された。当該農場で不受胎・流産は起きておらず、侵入経路は特定できなかった。 2012 岩手1件1頭 2011 北海道1件1頭、岩手1件1頭 2010 北海道1件1頭、静岡1件4頭 2009 北海道1件1頭 2008 - 2007 和歌山1件1頭 2006 - 2005 - 2004 青森2件2頭 2003 岩手1件1頭 2002 岩手6件6頭 2001 岩手6件6頭、静岡1県2頭 2000 北海道2件2頭、岩手6件15頭 岩手県では山間部の牧野で自然交配していた日本短角種で2000年に発生した。前年度流産があり、それから種牛が感染していたので淘汰した。頻回の検査と淘汰を繰り返し、人工授精で切抜けながら、不妊・流産の減少を図った。種雄牛の淘汰で約2千万円、雌牛の流産及び不受胎で1千万円の損失と推定された。

食中毒や感染症の高リスク者: 小児、高齢者、妊婦、基礎疾患による免疫低下者、体力低下者 Campylobacter fetus のヒト感染は希であるが、流産の始末や牛肝臓の生食などを介して感染し、重篤な病態に陥った症例が報告されている。発症要因には糖尿病、アルコール中毒および悪性腫瘍などによる宿主免疫能の低下、母体からの感染がある。 新生児髄膜炎の1例(一之宮ら;2011)、髄膜炎・脳膿瘍の 1 新生児例(中村ら;2010)、化膿性脊椎炎の2症例(石村ら;2006)、慢性髄膜炎の一例(戸田ら;2006)、敗血症の1 例(齋藤ら; 2004)、髄膜炎の1 成人例(大塚ら; 2002)、壊死性筋膜炎の1 症例(樫山ら; 2002)、心内膜炎の1 例(芥川ら; 2001)、菌血症の1 例(小崎ら; 1999)、心内膜炎の1 例(齋藤ら; 1999)、新生児髄膜炎の2 例(中島ら; 1996) 自分が楽しんで病気になるのは構わない(?)が、胎児に障害をもたらしても「レバ刺し」を食べるか・・・。 食中毒や感染症の高リスク者: 小児、高齢者、妊婦、基礎疾患による免疫低下者、体力低下者 「秋カマス 嫁に食わすな」などは、「嫁イビリ」ではなく、母体と胎児の健康を案じてのことである。腐敗の進行が速い、消化に悪い、体を冷やすなどの懸念がある食品が「●● 嫁に食わすな」とされてきた。

2012年7月1日から、飲食店や食肉販売店で牛レバーを「生食用」として提供・販売することは禁止された。 牛が保菌する食中毒性カンピロバクター “06 “07 “08 287 114 24 138 48 検体数 陽性数  C. jujuni  C. coli 陽性総数 % 240 79 20 99 41 60 25 5 30 50 牛盲腸便からの検出状況 広島市食肉衛生検査所報告 C. Jujuni と C. coli の2菌種が食中毒菌に指定されている。牛の盲腸便からの検出率は40%以上であり、C. Jujuniが C. coliよりも4倍以上高率である。年齢とともに検出率は下がるが、3歳でも30%程度の保菌率であった。 年齢別検出状況 厚労省のその後の調査で、胆嚢内胆汁236検体中60検体(25.4%)、胆管内胆汁142検体中31検体(21.8%)、肝臓では236検体中27検体(11.4%)が陽性であった。 2012年7月1日から、飲食店や食肉販売店で牛レバーを「生食用」として提供・販売することは禁止された。

日本における食中毒患者数の推移 細菌性食中毒の患者数は漸減しているが、カンピロバクターを原因とする患者が最も多くなっている。 サルモネラ カンピロバクター その多くは C. Jejuniによるもので、本菌はブロイラーが健康保菌していることが知られている。鹿児島の伝統食「トリ刺」は、湯通しまたは表面を焼いたタタキであるが、 「トリ刺」が全国に普及する過程で「刺身」と誤解された。都会の野蛮人は、鶏肉を生で食べて食中毒を起こしている。 腸炎ビブリオ ぶどう球菌 腸管出血性大腸菌 菌種 C. Fetus C. Hyointestinalis C. mucosalis C. Jejuni C. coli 感受性動物 牛、羊、人 牛、豚、人 豚 人、鶏、牛、豚、犬 豚、牛、鶏、人、犬

黄色ブドウ球菌(牛の乳房炎) 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は保存した乳や乳製品による食中毒の原因として1914年に発見された。グラム陽性のブドウの房状の球菌である。 菌自体ではなく、 S. aureus が産生するエンテロトキシン(腸管毒)によることが1930年に解明され、食品中で産生された毒素はその後の加熱によっても失活しない(高度の耐熱性)。 上:光顕、下:電顕 S. aureus は牛の乳房炎の原因菌の一つであり、罹患牛の乳房内で増殖し、乳汁に含まれることから、搾乳およびそれ以降の衛生管理の重要性が指摘された。 S. aureus はヒトや動物の体表に常在しており、傷をした際に化膿させる主な原因菌であることが判明した。すなわち、様々な動物の化膿巣からの食品汚染が食中毒の原因となっている。 S. aureus は、様々な生理活性物質を産生しており、エンテロトキシンやコアグラーゼ(血液を凝固させる)の抗原性によって区別される複数生物型が食中毒の原因となっている。

原因食品は、衛生管理状態によって異なり、生乳を飲む習慣や乳衛生が不十分な国では乳製品が原因となる例が多い。家畜の外傷が食肉処理工程で汚染する事例も多く、とくに鶏のケージ飼いでは足指の骨折などが発生し易い(バタリー病)。 日本では、「おにぎり」や弁当による事例が多く、調理人の手指の傷が汚染源となっている。

雪印乳業株飲料による集団食中毒事故 2000年6月から7月にかけて、近畿地方を中心に学校給食の低脂肪乳による認定者数14,780人に上る戦後最大の集団食中毒が発生した。 雪印乳業大阪工場での製品の原料となる脱脂粉乳を生産していた北海道にある大樹工場での汚染が原因であることが判明した。大樹工場で3時間の停電が発生し、タンクにあった脱脂乳が20度以上にまで温められたまま約4時間も滞留した。この間に黄色ブドウ球菌が増殖してエンテロトキシンが産生された。 大阪工場が食品衛生法の総合衛生管理製造過程(HACCP)認証工場であったことから、それまで書類審査のみであった認証審査に現地調査が導入され、3年ごとに更新申請が必要とされることなった。 HACCP ( Hazard Analysis and Critical Control Point、危害解析・決定的管理点): 一般的衛生管理と最終製品の検査だけだった従来法に代えて、原料から製造工程の各段階についての危害解析に基づいて最も危害の発生し易い工程の管理基準、検査法、逸脱した場合の是正方法を定めて工程管理する永続的改善手法。 HACCP認証は、この手法を実施する能力と取組み体制が適切であることを審査する。

リステリア症 人獣共通 リステリア菌(Listeria monocytogenes)は、自然の中の土や水など自然界に広く分布するため、動物とリステリアとの接触を回避することは難しい。他の細菌に比べて熱・塩・酸・冷凍・乾燥に強い。冷蔵庫(4~7℃)でもよく増殖、ー4 ℃でもゆっくりと増殖可能である。 リステリア菌が口腔粘膜の傷から侵入し、三叉神経系を介して上行して脳幹部に病変(脳脊髄膜炎)をつくる人獣共通感染症である。 発熱を伴う胃腸炎(全てのヒトが罹患する可能性):潜伏期は24時間以内 全身性のリステリア感染症(基礎疾患を有する者):潜伏期は20~30日以内 環境(土壌、水) 植物(野菜)、飼料(サイレージ) 食品製造環境(器具・器材) 乳・乳製品、食肉、 魚介類、生野菜 動物の排泄物 (糞便、尿、体液) 動物 保菌/感染 ヒト 妊婦のリステリア感染症(周産期):母体は軽症だが、流死産、胎児の髄膜炎 新生児のリステリア感染症(母体感染、院内感染):極めて重症

食品媒介リステリア感染症の主な集団発生事例 原因食品 発生国 患者数 死者数(%) 発生年 ソフトタイプチーズ アイスクリーム、サラミ、チーズ ミートパテ 豚タンのゼリー寄せ リーエット(豚肉調理品) コーンサラダ ホットドッグ ホットドッグなどの食肉製品 調理済み七面鳥 チーズ(低温殺菌乳使用) 酸性カードチーズ マスクメロン スイス 米国 英国 フランス イタリア カナダ ドイツ 122 143 36 355 279 39 1,566 108 101 29 86 189 147 34(27.9) 48(33.8) 16(44.4) 94(26.5) 85(30.5) 12(30.8) 0(0) 24(22.2) 20(19.8) 7(24.1) ー(ー) 27(14.3) 33(22.4) 1083 1985 1986 1987 1992 1993 1997 1998 1999 2000 2002 2006 2011 本菌が食中毒全体に占める割合は低い。調理済み食品、とくに乳製品や肉製品による事例が多いが、野菜・果実による事例も発生している。米国のマスクメロンの事例は、収穫に使った器材がジャガイモ等の収穫にも使われ、包装・出荷施設も汚染していたことが原因とされた。

日本国内のリステリア感染症の病型別発生状況(~2002 年) 散 発 事 例 日本のリステリア感染の10万人当り発生率は、欧米の 0.2~1.1 と比べて 0.065 と低い。それは食中毒事故が1件しか発生していないことによる。生乳を飲む習慣がなく、法律で牛乳の殺菌が義務付けられており、チーズ等の乳製品の衛生管理が適切である証だろう。 2001年に発生したナチュラルチーズが原因の集団感染事例では、86名の喫食者の内38名が発症したが、いずれも軽症であった。原因食品が製造施設で保管されていた製品の汚染菌数は比較的少なかった。 摂食者の症状区分別発現状況

牛リステリア症: 北海道と本州北部に発生が多く、春先~初夏に好発し、散発的に発生するが、分娩やその他のストレスが発生に影響する。pHの上昇したサイレージは、リステリア菌が増殖しやすい環境となり、本菌が爆発的に増殖することがあり、感染源としてきわめて重要である。発生は本菌を大量に含んだ変敗サイレージ給与に関係するといわれている。牛の糞便中では十数ヵ月、敷わら中で数百日生存可能で、低温(4℃)、低栄養でも増殖するのが特徴である。 突然の発熱、角膜混濁のほか、眼瞼反射消失、沈うつ、昏睡、斜頸、旋回運動、咽頭麻痺および舌麻痺、流涎などの神経症状が発現する。初期では、音に鋭敏に反応し、不安の状態を示し、運動を好まなくなる。中期になると、平衡感覚が失調し、左右いずれかに旋回運動を始める。次第に、斜頸、耳翼の下垂、著しい水様の流涎、咽喉頭麻痺、舌麻痺による嚥下困難があり、食欲があっても採食できないなどの神経症状を示す。また、眼球は乾燥・白濁し、末期には脱水、起立不能から昏睡状態になり死亡する。 良質なサイレージの生産と保存が必須。早期発見と適切な抗生物質の使用により、発症牛の約半数に回復が期待できる。ただし、機能障害に陥ったものは回復させることは困難である。

1月21日にサイレージおよび環境からの分離検査を実施し、酪酸臭があり、pH の高い1 検体の増菌培養からリステリア血清型が分離された。 鳥取県倉吉市での発生事例 農家から育成牛(乳牛約200頭、和約30 頭)を預かり、育成、種付け、放牧を行なっている育成放牧場で、2009年7 月から12 月にかけて、神経症状を呈する牛が3 頭発生した。 聞き取りの結果、2008 年の夏から冬にかけて放牧牛で疑い例が2 例、流産が3 例発生、2009 年には3 月~ 5 月にかけて質の悪いラップサイレージを給与しており、この時期2 例の流産が発生、4 月の受胎率も低下していた。 1月21日にサイレージおよび環境からの分離検査を実施し、酪酸臭があり、pH の高い1 検体の増菌培養からリステリア血清型が分離された。 2010年6月、牛160頭規模の肥育農場で2 頭が、左耳下垂、流涎、左眼球白濁を呈した。鑑定殺でリステリア症と確定。 見た目発酵状態が良質、乾燥、青カビ発生のサイレージのいずれからも菌が分離された。

我が国における家畜およびヒト等からの検出状況(食品安全委員会) 家畜生産段階での保菌は、牛が豚の2倍以上となっているが、環境材料の汚染率はそれらを上回っている。さらに、ペットやヒトの糞便からも高率に分離されており、リステリア菌の分布が広範であり、対策を絞り込むことの困難性を示している。 枝肉表面の拭き取り検査では、牛が4.9%(202/4,106)、豚が7.4%(321/4,330)であり、処理工程の差を反映していると思われる。

国内流通食品からの検出状況(食品安全委員会)

国内流通食品から検出されたリステリアの血清型(食品安全委員会) リステリア感染症患者から最も多く分離される4b型は、14.9%しか検出されておらず、 1/2c型、 1/2a型、 1/2b型が多い。最も多く検出される1/2c型については、リステリア症患者からは1.4%しか検出されていない。このことは、ヒト感染が食肉以外によっても起きていることを示唆している。 患者数等の動向把握が困難な現状にあり、国内で流通する加熱調理済み食品について、その喫食によってリステリア感染症の発生にどの程度寄与しているのか明確となっていない。

ボツリヌス症(Botulism) 自然毒は人工毒よりもはるかに強毒 ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は酸素がない環境でのみ増殖する偏性嫌気性菌で、土壌中で芽胞が長期生残する。増殖に伴って産生された毒素を摂取することによりヒトや動物が発症する。 毒素はA~G型まで7種類あり、ヒトが発症するのは A、B、E 型で、希にF型の食中毒もある。家畜が発症するのは主に C、D型 で、希にB型でも発症する。 自然毒は人工毒よりもはるかに強毒 毒の種類 ボツリヌス菌毒素D ボツリヌス菌毒素A 破傷風菌毒素 ベロ毒素 サキシトキシン テトロドトキシン サリン 青酸カリ (KCN) LD50 (mg/kg) 0.00000032 0.0000011 0.000002 0.0034 0.01 0.2 10 由来 ボツリヌス菌 破傷風菌 赤痢菌、大腸菌O157 二枚貝(プランクトン) フグ、ヒョウモンダコ(細菌) 毒ガス(オウム真理教) 人工毒(失楽園)

鳥取県の酪農家における牛ボツリヌス症 ベッド数140 床のフリーストール牛舎で成乳牛130 頭、育成牛35 頭、肥育素牛80 頭を飼養する複合経営の酪農家である。2005年12 月9日、突然1頭が起立不能に陥り翌日斃死した。その後も次々と起立不能牛が発生し、発症頭数は35 頭に達した。死亡牛1 頭の小腸内容からD型毒素が確認された。ラップサイレージを給与していない乾乳牛に発生はなかったことから、それが原因と推定された。 四肢伸張し横臥状態 後躯麻痺による開脚姿勢

岡山県における牛ボツリヌス症 2010年1月10日に突然の積雪があり、牛舎内に多数のカラスが進入、牛舎奥の通路はカラスの糞だらけになった。 その日の夕方に1頭急死したのが事の始まりで、その後起立不能牛が続発、計8頭が発症した。2頭剖検して1頭の直腸便からD型毒素が、また環境材料10検体中飼料添加剤(EM菌ボカシ)からD型毒素が、通路のカラスの糞からD型毒素遺伝子(PCR)が検出されボツリヌス症と診断した。 牛舎の清掃と消毒とともに、カラス対策として牛舎にネットを張った。 しかし、1月下旬に2頭、3月初旬に1頭発生した。芽胞対策として、該当牛房前の通路と飼槽の火炎消毒を実施した。それでも5月中旬に4頭発生した。発症牛房の敷料、ウォーターカップの水、その下の汚泥、それが流れ込んだ側溝の水からD型毒素と毒素遺伝子が検出された。 塩素系消毒薬(クレンテ、ビルコンなど)、ヨード系消毒薬、アルデヒド系消毒薬。 後肢麻痺による起立不能

鹿児島県における牛ボツリヌス症 501 頭を飼養する肥育経営農場で, 2011 年3 月から4 月にかけて13 頭が起立不能,浅速腹式呼吸などを呈し死亡した。うち1 頭について病性鑑定を実施し, 母牛21 頭,子牛11 頭を飼養する繁殖経営農場で,2011年3 月に5 ヶ月齢の子牛1 頭が努力性呼吸, 歩様蹌踉を呈し急死した。 いずれも、ルーメン内容物及び直腸便からボツリヌス菌及びD 型毒素を検出した。飼槽内オーツヘイから菌が分離された。 岐阜県における牛ボツリヌス症 農家は肉用牛約200頭を飼育。内80頭がいた牛舎で、 2012年5月24日から6月6日にかけ、生後5~17カ月の子牛48頭が、立てなくなったり、呼吸困難になったりした後に死んだ。ボツリヌス毒素遺伝子の陽性反応を確認した。 近年は毎年数件が報告されている。 原因不明の突然死で終わる例もある。 流涎、呼吸促迫

芽胞を摂取し、生体内で菌が増殖して毒素産生 飼料などで産生された毒素の経口摂取 芽胞を摂取し、生体内で菌が増殖して毒素産生 腸管でボツリヌス毒素を吸収 血流に乗って全身へ 末梢神経(コリン作動性神経)の神経筋接合部でアセチルコリン放出を阻害 神経筋の伝達遮断 歩様異常、流涎、舌麻痺、咀嚼・嚥下困難、起立不能、横臥姿勢、呼吸促迫 死亡 毒素は飼料中で産生されるか、芽胞がルーメンで発芽して産生する場合がある。 後肢から始まる進行性弛緩性麻痺が特徴で、中毒なので経過が速い。 ボツリヌス毒は強力であり少数の菌が存在すると十分量を産生する。すなわち、菌分離が困難でも毒素検出が可能な場合が多い。 ルーメン、腸内容物、変敗サイレージ、乾草等から分離を試みる。 発症(死亡)牛の,血清,消化管内容物,乳剤,腹水等からボツリヌス毒素を検出する。

牛ボツリヌス症のまとめ ボツリヌス毒素含有飼料を摂取することにより、3~7日で症状が発現するが、毒素の摂取量が多いと発現が早まる(8時間程度)。野生小動物の死体が混入したり、品質の悪いサイレージおよび乾草などの摂取からの感染もみられる。本菌は腐敗動物、変敗植物中において適温・適湿下で増殖し、その際に毒素が産出される。 四肢、下顎および喉頭部から始まる筋肉の麻痺が特徴。食欲不振から起立不能に陥り、活力低下、沈うつ、歩様異常、流涎、舌麻痺、咀嚼・嚥下困難、首を横に曲げ、うずくまる乳熱様姿勢などを呈し、ついで筋肉麻痺、横臥・四肢伸長となり、最後には呼吸不全に至り窒息死する。牛は苦悶することなく死亡し、腹囲が極端に縮小する。多くの場合、体温、知覚、便などに異常はみられない。 高水分サイレージ給与を避けること、野生の水鳥が集まる水場などに放牧地や採草地の設置を避けること、動物の死体処理を確実に実施することが重要。有効な治療法はない。発生農場での発症予防用に、牛クロストリジウム・ボツリヌス(C・D型)感染症(アジュバント加)トキソイドが2009 年12 月に製造販売承認された。

破傷風: 希ではあるが、創傷後に C. tetani(破傷風菌)による強直性痙攣を伴う死亡。 届出伝染病 牛の突然死の原因としてボツリヌス症、その他の Clostridium 属菌による感染症、血栓栓塞性髄膜脳炎(Haemophilis somnus)、硝酸塩中毒、鉛中毒などがある。 ボツリヌス菌以外の Clostridium 属菌のうち、牛では下記の菌種による疾病が重要視されている. 破傷風: 希ではあるが、創傷後に C. tetani(破傷風菌)による強直性痙攣を伴う死亡。 届出伝染病 気腫疽:  C. chauvoei による気腫を伴う骨格筋の壊死により特徴づけられる 届出伝染病 悪性水腫:  C. septicum、 C. perfringens および C. novyi による感染部の出血・水腫を伴った壊死。 C. sordellii は悪性水腫の原因となることもある菌で, 羊の突然死に関わることが示唆されているが、牛の突然死に関与することは稀である。 出血性腸炎:  C. perfringens を原因とし、中枢神経系を含む実質臓器の出血や壊死が観察されるエンテロトキセミアに進展。 土壌中には、炭疽菌とともにこれらのクロストリジウム属の芽胞が存在する。