食品の安全性に関わる社会システム:総括 健康弱者 ハイリスク集団 HACCP (食肉処理場・食品工場) 農場でのQAP 一般的衛生管理

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食品の安全性に関わる社会システム:総括 健康弱者 ハイリスク集団 HACCP (食肉処理場・食品工場) 農場でのQAP 一般的衛生管理 一般衛生基準 (PP;Prerequisite Program) 適性製造基準 (GMP;Good Manufacturing Practice) 衛生標準作業手順 (SSOP;Sanitation Standard Operation Procedure) 自主衛生管理 免疫低下者(HIV,糖尿病、癌) 子供、老人、妊婦、病弱者 に対する特別措置 高度の安全性 = 付加価値 第三者認証 一般健康成人 法律による規制 衛生教育 衛生基準 営業許可 営業停止 食品の安全性に関わる社会システム:総括

農場から食卓まで」の危害要因と制御法(1) 汚染物質(環境ホルモン、PCB、水銀、放射性物質・・・) 自然毒(動物性、植物性、カビ毒・・・) 病原微生物(ボツリヌス菌、セレウス菌、腸炎ビブリオ・・・) 食品に伴う危害には、  生産・流通過程での制御が全てであるものと、  消費過程で危害を排除できるものがある。 環境 種子・素畜(病原体汚染、遺伝子組換え・・・) 育成資材(肥料、飼料、水・・・) 病原微生物(病気、保菌・・・) 病害虫予防用の化学物質(農薬、動物薬、消毒薬・・・) 収穫後の保蔵(ポストハーベスト農薬・・・) 生産資材 生産過程 生産過程 処理・加工過程 流通過程 消費過程 アフラトキシン(ナッツ類のカビ毒) 耐熱性毒なので、加熱処理によって不活化できない サルモネラ(畜産物) 汚染があっても、調理時の加熱によって制御できるが、室温放置で増える。 農場から食卓まで」の危害要因と制御法(1)

食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針 世界の人口増加に見合った、持続性のある食料生産 ∧農作物∨ 食料 ・農業・農村基本法 食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針 農薬取締法 毒物及び劇物取締法 肥料取締法 世界の人口増加に見合った、持続性のある食料生産 化製場等に関する法律 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律 人畜共通感染症 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律 飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令 家畜伝染病予防法、 牛海綿状脳症対策特別措置法 家畜保健衛生所法 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 薬事法 動物用医薬品等取締規則 動物用医薬品の製造管理及び品質管理に関する省令 動物用医薬品の輸入販売管理及び品質管理に関する省令 動物用医薬品の使用の規制に関する省令 と畜場法、 食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 (旧 伝染病予防法) ∧畜産物∨ ヒトは、生物の一種であり、 動物の仲間である 「農場から食卓まで」の危害要因と制御法(2) 生産過程に関わる法律

鶏肉の安全性に関わる社会システム(1) リスク・レベルのモデル リスクが減るのは2箇所だけ 農場 食鳥センター 流通過程 消費過程 雛 食鳥検査員による 法律に基づいた検査 リスク・レベルのモデル 輸送距離が延びるにつれ、細菌増殖に必要な時間も多くなる。 温度管理等の法的基準もない。 調理時の加熱は細菌を殺滅する。 しかし、食材や料理を室温での放置すれば、菌は増殖する。 病気 動物薬残留 食中毒菌 薬剤耐性菌 リスクが減るのは2箇所だけ 農場 食鳥センター 流通過程 消費過程 雛 飼料・飲水 鶏舎環境 動物薬 食鳥検査 食鳥検査 解体・出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 調理 喫食 鶏肉の安全性に関わる社会システム(1)

? ? 鶏肉の安全性に関わる社会システム(2) リスク・レベルのモデル GAP QAP HACCP リスクは 残る! 農場 食鳥センター 農場における 適正な衛生管理 リスク・レベルのモデル 解体処理工程など 食肉センターの 衛生管理 GAP QAP 消費者は ? ? HACCP リスクは 残る! 流通過程が 変わらなければ 農場 食鳥センター 流通過程 消費過程 雛 飼料・飲水 動物薬 鶏舎環境 食鳥検査 解体・出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 喫食 鶏肉の安全性に関わる社会システム(2)

「農場から食卓まで」の、全ての段階で安全性確保対策を実施することによって、初めてリスクが小さくなる。 リスク・レベルのモデル GAP QAP 消費者 教育 流通過程の 衛生基準 ? ? HACCP 農場 食鳥センター 流通過程 消費過程 雛 飼料・飲水 動物薬 鶏舎環境 食鳥検査 解体・出荷 輸送 市場 問屋 小売店 調理 喫食 鶏肉の安全性に関わる社会システム(3)

一連のフードチェーンに関わる法システムの整備 「農場から食卓まで」の 一連のフードチェーンに関わる法システムの整備 畜産物の安全性に関る主な法令を挙げると、 農水省所轄: 家畜伝染病予防法、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律、動物用医薬品の使用の規制に関する省令、農薬取締法 厚生労働省所轄: と畜場法、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、食品衛生法  両省の法令は多いが、流通過程の安全性確保に係る法令は皆無である。保管や輸送の温度管理すら規制がなく、専ら商品寿命を考慮する業者の判断に任されている。また、安全性に関る基礎知識を義務教育に取り入れることもきわめて不十分である。こうした法制面の欠陥が、繰り返される「食材バッシング」の温床となっている。

農場における衛生管理対策(GAP,QAP) (1-1)農場と処理場等で同一の基準で措置可能なもの 例:炭疽、結核など (1-2)処理場等での措置基準が農場での措置基準より低いもの 例: ニューカッスル病など (1-3)農場での措置基準が処理場等での措置基準より低いもの 例:動物薬、注射針、病原性大腸菌O157など (1-4)食品衛生法第6条から判断して、農場および処理場等での措置基準が低いもの 例:大半の食中毒菌 註1. GAP: 適正農業基準(Good Agricultural Practice)の略で、一般的衛生管理。 QAP: 品質保証計画(Quality Assurance Program)の略で、一般的衛生管理が整った農場に対し、HACCPの考え方に基づく自主的安全性向上システムを確立していることを認証。 註2. 処理場等:食肉センターと食鳥処理場における検査、ミルクプラントにおける原乳受入時の検査 註3. 食品衛生法第6条第2項: 有毒なもしくは有害な物質が含まれ、もしくは附着し、又はこれらの疑いのあるもの。ただし、人の健康を害う虞がない場合として厚生労働大臣が定める場合においてはこの限りではない。 第3項: 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を害う虞があるもの。 農場QAPとして対処する危害は、主として(1-3)と(1-4)である。

危害のリスク評価と基準  危害要因を、リスクを完全になくすことができるものと、現状の技術水準で完全にはなくせないものに分ける。危害要因が及ぼす健康への影響の程度(罹患率、重篤度)をランク付けする。これらを考慮して、制御基準を考える。 (2-1)危害要因を完全になくすことが可能なもの  農場と処理場等における衛生管理体制で制御可能なものであり、一般的衛生管理の徹底で足りる。大半の(1-3)はこれに含まれ、「例: 動物薬、注射針」については、獣医師の指示書の整備ならびに処理場等でチェックすることによりもれをなくせる。  ただし、(1-3)の中で、ウシが健康保菌しているO157は(2-2)に相当するが、感染症法3類指定されていることもあり、通常の食中毒菌とは異なった取り扱いをする必要がある。米国の。「HACCP に基づいた検査モデル計画(HIMP; HACCP-Based Inspection Models Project)」では、「食品の安全性(food safety)」および「安全性以外の食品の状態(non-food safety conditions)」についての実施基準を設定し、前者については「食品安全1~3」のカテゴリーを設け、「消化管内容物汚染」は2番目のカテゴリーに該当し、基準は「ゼロ」とされている。消化管結紮や糞便・体毛付着部位の切除等の措置を講じ、消化管内容物汚染を「ゼロ」としても、O157に対しては「病原体低減」でしかなく、最終的には放射線殺菌する以外に「O157ゼロ汚染」は達成できない。

(2-2)現状の技術水準で完全にはなくせないもの  サルモネラ、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター等の汚染を、生の食材段階で完全になくすことは現在の技術水準で不可能である。どの程度の汚染を許容するのかは、国際貿易を考慮し、かつ、消費者との了解の下で判断されるものである。米国でのBSE発生に伴って、現在、「全頭検査」を巡って紛糾しているが、「日本独自」の基準を国際社会認知させるためには、リスク・アナリシスに基づく科学的根拠を示す必要があることを改めて知ることになった。日本が妥協しない限り、いずれWTOに持ち込まれることになるだろう。  「世論」を気にして、科学的根拠のないことを言うのは、科学者ではなく「政治屋」である。食品の安全性を担う獣医師として、畜産物(乳、肉、卵)の安全性について、現在可能な技術水準と国際的状況を国民に正確に伝えることが大切である。「日本版HACCP」で「リスクゼロ」を目標とするならば、「全頭検査」と同じ問題が出てくることは必至であり、それも、「食中毒が収まらない、ゼロ汚染になっていない」という国民批判として。

農場から食卓までの一連の対策に基づく食肉の安全性の向上 (クリック) 農場から食卓までの一連の対策に基づく食肉の安全性の向上 (クリック) ☆ 食の安全性フォーラム ☆  に掲示してあります(養豚の友 2003/1) 。

 現在、農水省の「生産衛生管理体制整備事業」が各地域において推進されているが、その中で実態調査に基づいた許容基準が審議されるものと思われる。「HACCPの実施レベル」に応じて汚染率が低下するが、そのレベルは農場毎、地域毎で異なっているから、「第三者による客観的評価」においてレベルの線引きが必要となる。生産者の相互間、生産者と消費者の間で「生産工程管理」を評価することは困難であろう。それは認証機関の仕事である。「記録」は自主衛生管理を進める上で必要なものであり、同時に、食中毒事故調査の際に潔白を主張する根拠ともなる。しかし、判りやすいのは数値であり、膨大な「記録」ではない。また、安全性を決めるのは「どれだけやったか」ではなく、汚染率がどうかである。  「現状の技術水準で完全にはなくせないもの」については、「危害のリスク評価と基準」についての理解が欠かせない。このような理解を広げるための資料等を揃える。名目上のHACCPを実施してしまうと、HACCP認定施設での乳製品の黄色ブドウ球菌事故を繰り返す羽目になる。  次表は、米国で基準を策定する根拠となったデータである。このようなデータがあれば、地域における事業推進会議の審議も容易であろうし、全国検討会でも実態に基づいた論議が可能だろう。

重点管理を先行させる畜種別の危害要因 総花的に危害要因を取り上げても、HACCP実施にともなう事前事後の調査は不可能である。それほど重大な健康被害を出していない危害要因については、一般衛生管理の徹底に留めざるを得ない。対費用効果を考慮し、各家畜について現時点で最重要な危害要因を取り上げてHACCP実施計画を立てる。これらに所定の成果が得られた時点で、次に問題となっている危害要因を順次取り上げる。 採卵鶏: サルモネラ 肉養鶏: カンピロバクター、サルモネラ ブ タ: サルモネラ、抗酸菌 肉用牛: O157、BSE 乳用牛: BSE、黄色ブドウ球菌(乳房炎)、アフラトキシン  なお、家畜伝染病予防法やと畜場法等で規定された危害要因(1-1)と(1-2)については、法的措置が採られるので、HACCPが入る余地はない。ただし、HACCP参加農場が、定められた法的措置に協力していることが大前提となる。高病原性鳥インフルエンザで露呈されたモニタリング非協力があっては、HACCP実施の事前事後調査は不可能であるから。